※赤い文字色のページには性描写があります
牢を出された暮羽が密かに眼を横に向けると、数メートル先に人一人が通れるほどの鉄格子の扉が一つあり、その格子越しに狭くて急な階段が見え、上り先に少し錆びた鉄の扉が鎮座していた。予想はついていたが、脱出は簡単に出来そうではない。手錠の鎖は比較的長くて、ちょっとした行動には余り支障はないが、全力で相手に殴りかかれる程の長さはないので、相手をのして鍵を奪う事も難しいだろう。何よりも、下手な抵抗をすれば、自分もそうだが、牢の中から自分を不安げに見詰めている風薙も何をされるか分かったものではない。
「何よそ見してんだ?」
不意にピアスの男に顎を掴まれた暮羽の瞳に歪んだ笑顔のアップが映る。その余りにも卑湿な笑みにこの上ない不快感を覚え、不快は瞬く間に苛立ちと怒りへと変わり、ほぼ激情に駆られるままに相手の醜い笑みに思い切り唾を吐きかけていた。
「っ! てめぇ!! 何しやがる!!」
「ぐッ……!!」
鈍い音と鋭い痛みが重なり、風薙の悲鳴に近い叫びが一瞬遅れて続く中で暮羽の身体が鉄格子に激突し、そのまま床に横倒れになった。熱く痛む左の頬の内側から滲み出て来る赤い鉄が口の中をみるみる満たし溢れて唇の端から伝い落ちる。
「あーあ、何だコイツ。せっかく優しくしてやろうと思ったのによ!」
「嘘吐け。んな事ちっとも考えてなかっただろ」
棒読みの罵声と馬鹿笑いを浴び、背中を蹴り上げられて苦しげな声を漏らした暮羽だったが、不意にその顔と身体が強張った。やや青くなる彼の頬にピタピタと触れるのは銀色に光る真新しい裁ち鋏。
「そうそう、そんな感じで大人しくしとけよ。下手に暴れたらお前の大事なトコをちょん切っちまうかも知れないぜ?」
相変わらずの笑顔を浮かべながら、男が刃を暮羽の履いているジーンズの腰元に滑り込ませると、太ももに刃面が何かの舌のようにヒタリと当たり、その冷たさと心の奥底で燻り始めた密やかな恐怖に暮羽が小さく身を震わせる。ジャキリ。硬めの生地があっさりと切り裂かれる音と他の仲間たちの口笛や歓声、そして暮羽の息を呑む声が地下室に重なり響いた。
「ヘヘッ、いつまでもこんなの履いてんじゃねぇよ……っと!」
幼児の紙切り遊びのようにズタズタに裂かれたデニム生地の隙間から見える灰色のボクサートランクスにも躊躇いなく入れた切れ込みに鉤型に曲げた太い指を突っ込み、思い切り腕を後ろに引く事で下着を乱暴に引き裂くと、大男の胡坐に座るような形で羽交い絞めにされていた暮羽は小さく短い金切り声をあげ、男の一人は仲間の台詞に腹を抱えて笑い、男の一人は拍手をして囃し立てた。
「はははは!! お前、その台詞何だよ!! AVの観過ぎじゃね?」
「イエーイ! ちんこ出て来ましたー! おーい、両足もっとガバーッと広げてくれや。コイツのケツの穴も見てぇからよー」
「へいへい、ほーら御開帳♪」
「や、やめろ、……クソが! やめろッて!! くっそ……汚ェ目で見ンじゃねェ!!」
手錠を鳴らしての抵抗も空しく、背後の男に両膝裏を掴まれて限界までに広げられ、その全容を男達の熱視線と快哉の叫びの前に晒される。実は別の場所からも、暮羽の開け放たれた恥部に向かってかなり強い眼光がぶつけられていたのだが、興に夢中の男達も、恥辱に涙を浮かべる暮羽も全く気付いていなかった。
「何嫌がってんだよ。満足させられるって大口叩いていたのはテメェの方じゃねぇか」
嘲り声で言いつつ、男は暮羽の両足の間に顔を埋めるように近付け、臀肉の間を通る細道に人差し指を滑らせた先に到達した綺麗な放射を描く小皺をなぞり、検診でもするかのように皺の中心部に位置する小穴を軽く突付いて覗き込んだ。
「ご大層な事言ってたから、てっきり男とヤリまくってる淫乱尻軽野郎かと思ってたが、これどう見ても処女だよなぁ?」
「え? お前、もしかしてアイツ庇ったワケ? うわーセンパイやっさしー」
「!?」
何故、彼らが自分達の関係を知っているのか。暮羽と風薙は思わず顔を見合わせたが、互いの丸い目を見ている内にその理由を理解した。奪われた二人の荷物の中には各自の財布があって、その中に学生証が入っていた筈。恐らく奴らはそれを見て二人が同じ大学の先輩後輩である事実を知ったのだろう。
「処女ってマジかよ! ちょっと見せろ」
そんな場の空気を読まずに、他の仲間から一歩引いた所でニヤニヤと眺めていた痩男が、暮羽の処女を眺める男の肩を押して割り込んで来た。押し退けられた方はムッとしたが、割り込み男は意に介さず、暮羽の両足の中心に頭を埋めてヒッヒッと気味の悪い引き笑いを漏らす。
「あー、マジだ。この締まりは完璧処女だわ。それなら、ちょっと突っ込む前に……」
「ッ!!! ひ、ひィっ……ひぃいい!! なっ、何、してンだ!!」
赤と青が一緒くたになったような顔を眩暈がしそうなほどにブルブル振って暴れる暮羽の秘所の周りを男の長髪がいやらしく蠢く。まずは男の尖った鼻先が窄まりに近付いて、触れるか触れないかの所で鼻を暫しヒクつかせて短い呼吸をした後に、名花の香りを堪能するかのように大きく鼻から息を吸い、その匂いを肺一杯に吸い込んだ。
「いッ……! き、き、きっ、気持ち悪ィ!!! うあぁあああ!!! やめろ!! 変態!! 変態いぃぃあぁああ!!!」
ある意味最高の褒め言葉を暮羽から賜った男の口から伸びた赤い舌が肉縁の線を一本一本丁寧になぞり、唾液に濡れた先端が微かに震える硬菊に侵入して入り口付近でグリグリと回った。
暮羽にとっては感じた事のない、感じたくもない、皮膚の裏を足の多い小虫が這い回り、身体の芯を爬虫類のようなヒタヒタする何かが巻き付き愛撫してくる悪夢の如き感触に、悲鳴は自然と大きくなる。
「はー、やっぱ処女ケツ穴イイわー。まだよく分かってなくて、手入れも準備もなってない初々しさがたまんねぇ」
「だからって、洗浄どころかシャワーも浴びてねぇのに、よくそんな事出来るよな、お前……」
「そうゴチャゴチャ言うなって。たっぷり濡らして解してやるし、ちんこ突っ込むのはお前らに譲ってやるからよ」
「やめろ!! やめろッつってンだろ!! やッ、やだ、やだ、やだ……!! 嫌、だッ!! あぁああ……」
呆れた声をあげる仲間に流し目を返した男は暮羽の純潔に一方的なディープキスをして熱く粘る舌を絡めた後にチュウチュウと吸い、口付けをされた方は走る虫唾に歯軋りをして全身を引き攣らせる中、鉄檻に隔離されたままの風薙は格子に手を滑らせながら、へなへなと力無くへたり込んだ。
「あ、あ、暮羽、さん……」
声を出しているつもりだが、カラカラになった喉が貼り付いて、牢の向こうの世界までは届いていない。たとえ、まともに声を出せたとしても、男達の狂気じみた歓声と暮羽の悲痛な叫び声に掻き消されてしまっていただろう。
風薙は小さく呻き、髪が頬の横に流れるほどにぐったりと頭を項垂れた。床のコンクリートがジワジワとぼやけてくる。
俺のせいで、暮羽さんが、あんな目に。俺が、あいつらにぶつかったりしたから。俺がサッサと暮羽さんと逃げなかったから。
罪悪感に苛まれて唇を噛み締める風薙だったが、その顔色は感情とは裏腹に何処か赤かった。……熱い。俺は、何で、こんな時に硬くなってるんだ。両太腿を重ね合わせて隠すのは、うっすらと起き上がりつつある男の象徴。暮羽が男達に服を裂かれ始め、露わにされた局部をまともに見てしまった瞬間に下腹部に焼け石を埋め込まれたような熱さを覚え、熱は素直に風薙の中心に集まり、雄の本能を刺激した。己の劣情に怒りと情けなさを覚える風薙ではあったが、不意に頭の中にいる誰かが言った。その性的反応は心の奥の奥で燻っている願望の表れであるのだと。
……自分は、もっと近くで彼の痴態を見たいのだろうか。自分は、あの男達に交ざりたいのだろうか。自分は、彼を、辱めたいのだろうか。
「ち、違う……違う……」
震え声による否定を俯いたまま繰り返す風薙の頭頂部に聞きたくもない男達の声が刺さる。
「はい、ご馳走様でしたっと。俺は存分に味わったからもういいわ。で、誰が一番最初にそいつのバージンにちんこをプレゼントしてやるんだ?」
「あー、お前そのまま後ろから座位で突っ込んじまえよ」
「マジで? じゃ、遠慮なく……ちょーっと痛いだろうが男の子だから我慢しような?」
「あっ、あッ、や、やだ……い、嫌だッつってんだろ! あ、あぁ……!!」
「!!」
陵辱の始まりを示す言葉にハッと風薙が顔を上げると、眼前で暮羽の身体が胡坐をかいたままの小山男に軽々と持ち上げられ、仲間の男が手伝うように男の微かに左右する屹立が動かぬように手を添えて固定した。そそり立つ赤黒い肉搭の上に、男に鷲掴みにされた暮羽の双丘が下りて来て唾液に濡れた肉口が触れる。くちゅん、と言う体液が触れ合う音に暮羽の唸りとも悲鳴ともつかぬ声が重なった。
「よーし、このままゆっくり腰落とせ…っつっても初めてだから無理か。すっげぇ震えてるじゃねぇか」
大男が背後から少し優しく声を掛けてみるが、男の胸元に背中を預けたままの暮羽は血の気の無い顔に涙を浮かべて身体をガタガタと揺らす事しか出来ない。それを見ていた彼らの仲間の一人が億劫そうに歩み寄り、繋がろうとする二人の前に立った。
「ったく、仕方ねぇな。手伝ってやるよ。……せぇーのっ!!」
「――――ッ!!! あ、あ、あァ!! あ、ぁひ! ひぎッ! ぃぎゃあああぁあぁ!!!」
暮羽の両肩を全力で押さえ付けて無理矢理挿入させると言う力任せの手伝いに、肉が裂ける音が響き、暮羽の甲高い悲鳴が轟いた。一気に最奥まで沈められた接合部からジワジワと熱い赤が穴の形の円を作り、結構な勢いで床に滴り落ちていく。
「く、暮羽さん!! や、やめろ!! やめろー!!」
今度はしっかりと喉の奥から叫びを絞り出せたが、牢の外の男達は自分の方を一瞥してクックと嘲るように笑うのみ。先程、口で暮羽の初物を陵辱した痩せ男が鉄格子にもたれかかり、横目で暮羽を見遣りながらからかうように言った。
「あーあ、アイツも可哀想になぁ。お前を庇ったばかりにあんな事になっちまって」
「…………」
風薙の大きな眼の底に長い間こんもりと浮かんでいた涙が瞬きの衝撃についにポロリと零れ落ち、足の親指の上で砕け散った。俺のせいで。俺の、せいで。
「何だぁ? さっきの威勢の良さは何処行ったんだ? 満足、させて、くれるんじゃ、なかったの、かよ!!」
「んうっ! うぅ! ううぁ! ああ!! い、痛ッ! 痛ェ!! ば、馬鹿!! 動くな!! 動くなッ……てえぇえええ!!」
男が言葉を切る度に腰を突き上げ、その猛襲に暮羽は悲愴な声をあげ、血と涙が細かな飛沫となってコンクリートに散る。その声に暮羽の初物を強奪した男は口を大きく裂いて笑い、暮羽の首を無理矢理捻って顔を自分の方へと向かせ、開きっ放しの口内に己の舌を挿し入れた。その生温かく濡れた肉の侵入に、うえっと小さく嘔吐く暮羽の逃げ回る舌を男は執拗に追いかける。その追いかけっこは必然的に舌を絡め合う結果となり、艶かしい水音がピチャピチャと鳴り、熱い息を漏らしながら涙ぐむ暮羽の口の端から、唾液の糸が光って流れ落ちた。そんな二人の交わりを見ていたあぶれた形のピアスの男が軽く自分の股を押さえ、少し苛立った様子で声を掛ける。
「おい、初物譲ってやったんだからちょっと急げや。後がつかえてるっつーか俺もサッサとそいつヤりてぇんだからよ」
急かす声に暮羽の上下の口を貪っていた男は一瞬、唇を不満げに歪めたが、即座に何かを思いついたかのように目を輝かせ、唇の歪みを笑みのそれに変えた。
「お前と俺の仲だ。美味しい物は分け合おうじゃねぇか」
「え? そいつ初めてだけど……やっちまう?」
「イイだろ別に。ここに連れて来た以上、コイツはもう俺達の玩具なんだからな」
「うぅ、うくッ、な、何……何する気だ、テメェ、らッ……!! あ、あっ!」
不気味な笑顔で交わす会話に不穏な何かを感じ取り、必死で問おうとする暮羽ではあったが、繋がっている男が不意に立ち上がる事によって襲って来た痛みに思わず細かな喘ぎを漏らしてしまう。その“玩具”の様子に、より強い欲情を抱いたらしいピアス男は少し鼻息を荒くしつつ、まさぐったズボンのポケットから小さなボトルを取り出した。興奮している割には衣服に手をかける動きは何処か落ち着いていて、下着をずり下ろすと同時に陰棒が僅かに揺れながら出て来ると、男はそのボトルの蓋をゆっくりと開けた。そのまま容器を己の下腹部に向けて傾けると少し粘る透明な何かが垂れ落ちて、赤黒い蛇のようなそれをよりグロテスクな物体へと変貌させる。
「え……」
乾いた血が左端にこびり付いた暮羽の唇がわなないた。冷酷な笑顔のピアスの男が、赤黒蛇に粘液を塗りたくって近付いて来る。暫し動きを止めていた背後の男の手が肉丘を引っ掴んで思い切り広げると、ほんの少し、結合部に冷気を感じた気がした。本当に微かに、僅かに生じた間隙。まさか。
「サービスでローションたっぷり塗ったからな。……せいぜい、イイ声で鳴いてくれよ?」
「ま、ま、まさか……! ぃや、ややややめッ、やめ、ろ……ぜ、ぜぜ絶対ェ無理、む、む、無理……」
身体の震動に合わせて声もみっともなく揺れるが、そんな事を気にする余裕などない。とにかく、プライドも何もかも捨てて必死に懇願する暮羽の鼻先にピアス男のニヤケ面が寄る。件の隙間に蛇の頭が触れる。やめてくれ。そう、叫べただろうか。それとも、間に合わなかっただろうか。
身体が真っ二つに裂け、声が地下室を割った。
「あ、あぁあああ……!! い、いぎぃッ、ぃぎゃぁああああぁあぁああ゛ああァぁあああ!!!! あぁああ!! あー!! ぎあぁああ゛ああァああああ!!!!!」
喉から血が噴き出んばかりの暮羽の絶叫に、風薙は耳を塞いで目を固く閉じた。悲鳴なんてものではない。これは、断末魔の叫び。頭単位で数える獣が残酷で愚かしい人間の戯れによって殺される時、こんな声を出すのかもしれない。
「あーあー、ひっでぇ声。やっぱ処女尻穴にいきなり二本挿しはキツかったかなぁ?」
「あぁ、あ、あ……ぁ……」
一頻り叫んだ暮羽の口から漏れるのは、先程の叫声とは正反対のか細い声で、発する度に少しずつ小さくなっていき、暮羽の頭も落ちていく。
バシン! 鋭い平手打ちの音が牢に響くと共に閉じかけた瞼を重たそうに開く暮羽の左頬に真っ赤な紅葉が拡がっていった。
「……う、ぅ」
「てめぇ何勝手に寝ようとしてんだよ! 終わるまで気絶してようってのか? そんなつまんねぇ事させるワケねぇだろ!!」
暮羽を張ったピアスの男は口こそ笑っていたがその眼は怒りの色に染まっていて、その感情を平手に込めて何度も何度も暮羽の頬を左右から打つ。見る間に赤く腫れあがっていく両頬にポロポロと涙を零しながら、暮羽は弱々しい嗚咽を漏らし始めた。
「おっ、ガチで泣き出したな。中々そそる泣き顔するじゃねぇか」
「ほらほら、もっと可愛い泣き声出してみろよ!」
「う! うっ!! う、動く、なッ!! や、やめ、てッ、やめてくれ!! こ、こ、こ壊れるッ……!! あ、穴が……ぁ、穴が駄目になっちまうううぅうう!!! あー!! あぁー!!! あぁああー!!!
痛いッ、痛いィぃいいい!!!!」
男達が前後から息も合わせずに無遠慮に動き、突き上げ、二人分の雄を咥えさせられた事で不自然に拡がり鮮血が滴る肉穴もろとも内蔵を掻き回される暮羽の瞬きを忘れた瞳は、大きな黒目が引っくり返って殆ど白目になり、真っ赤な鼻の両穴からは透明な粘液がダラダラと唇まで流れ、閉じる気配を見せない口からは泡のような涎が溢れ返って、舌がだらりと伸び出ていた。少し前まで強張っていたその肢体は今は弛緩し、糸の切れた操り人形のように力なくぶら下がったままの両腕は男の律動に合わせて曖昧に動き、鉄の鎖がジャラジャラ鳴った。
「あ、あぁ……や、やめ、やめろっ! 頼むから、やめてくれ! 暮羽さんが死んでしまう!!」
顔を真っ青にした風薙が鉄格子を揺すり鳴らして叫ぶが、その音さえも暮羽の絶え間ない叫喚と、昂奮しきった様子の男達が唾を飛ばして喚き散らす下卑た罵声に消され、狂宴に夢中の獣達は振り向く素振りをまるで見せない。自分のみが別の世界に隔離されているような錯覚にとらわれながら、風薙は髪を振り乱して暮羽を裏返った声で何度も呼び、彼への許しを必死で請うたが、その声が届く事はなかった。