※赤い文字色のページには性描写があります
牢の中で横たわる風薙を、へたり込んだ姿勢のまま呆けた眼で見据える暮羽の背後に先程まで繋がっていた男がそっと近付く。その気配にハッと振り向こうとした時には腰を掴んで持ち上げられ、性交を求めるように高く掲げられた肉穴に男の陰棒がズブズブと入り込んで来た。浮き上がりそうな上体を床につけた両手で支える暮羽の口から辛苦の呻きが飛び出す。
「いっ、あ、あうぁ……! や、ぁ、い、イッた、ばかりなの、にぃ……!!」
「てめぇはイッても俺はまだイッてねぇんだ。ほら、さっきみてぇにケツの穴をいやらしくヒクヒクさせて刺激してみろ!」
暮羽の腰に爪を立てて自分の欲望のままに乱暴な抽送を繰り返す男に暮羽は涙が滲んだ声で答えた。
「ンな事、言われて、も、ど、どうすりゃイイか、分かン、ねェ……い、ひぃ、ひあぁああ!!」
「チッ……じゃあ、てめぇで棒でも何でも突っ込んで練習しとけ!! いいな!!」
念を押すように男が下半身を最奥まで突き出した瞬間に暮羽の中で雄が弾け、中身が派手にぶちまけられた。
「ッ!!! あ、あぁ、あ……ま、また……中、に……」
暮羽の頭が急速に落ち、その瞳から滴る涙が床に散った。普段はそうしている間に相手が満足気な溜め息を一度吐いて身を離すのだが、今回は動く気配が無い。訝しげに振り返る暮羽と男の眼が合った瞬間、男はニヤッと歯を見せて卑小な笑みを見せた。
「お前ってさ、俺達の公衆便所なんだよな」
「…………」
ぶしつけな言葉に眉根を寄せ、赤い眼を吊り上げる暮羽の反応に構わず男は笑顔のまま続けた。
「便所って事はよ……ションベン出してもいいって事だよな!!」
男の非道な言葉に暮羽は尖った眼をそのまま円く開き、繋がったままの身体を何とか離そうと身悶えた。
「!! ば、馬鹿!! ふざけンな!! だ、出すな……た、頼むから……あ、あ、あああぁあァああ!!! い、いやっだ…な、何か、入っ、マジで、出されてる!! 嫌だ嫌だ嫌だ、き、気持ち悪ィ!! う、うえ、ぇ、ぐえ……!!」
精とは違う異物への拒否反応による空嘔吐きを繰り返しつつ何とか逃れようと前進しかける暮羽の腰を男は掴んで引き寄せる。拒絶の叫びを絞り出す暮羽との接合部に向かって小水を流し込みながら、男は最近よく街角で耳にする流行曲を口笛で呑気に吹いた。
「く、暮羽さん」
漸く瞳に理性の光を取り戻した風薙の目の前で、暮羽の腸内への長い排泄を終えた男がやっとの事で腰を引く。男の肉杭の頭と暮羽の後孔から黄色い雫が数滴ずつ宙を飛んだ。
「ひッ、ひ、ひうぁ、うっ、ぅあぁあああ!!」
苦しげな声をあげて蹲る暮羽の顔が瞬く間に蒼くなり、ギリギリと音がしそうなまでに歯を食い縛る彼の横顔を脂汗が何筋も伝った。丸めた身体が庇うようにしている腹から中身がゴロゴロと転がっているような不穏な音が漏れ聞こえる。身体に悪影響を及ぼす物を一刻も早く吐き出す為の過剰な蠕動運動特有の音が。
「ははっ、ぽんぽんが痛いんでちゅかー?」
痩せた男が額づく暮羽の金髪を撫でるが、その刺激さえも耐えられないらしく、触るなと裏声で喚いて骨ばった手を振り払った。そうしている間も例の運動音が腹から零れ、暮羽の唸り声が徐々に高くなる。
「頼む……トイレに、行かせてくれ……」
「あぁ? 聞こえねぇな」
本当は聞こえていた筈なのに底意地の悪い返答をする痩せ男に共鳴したかのように坊主の男が暮羽の後ろに回り、落ち着き無く揺れるその肉丘を舐めるように見た後に指を広げた手の平を振り上げた。
「聞こえねぇってさ! もっとハッキリ言えよ!!」
バチンッ!! 肉を打つ鋭い破裂音が響き、暮羽の絶叫が続く。尻を打たれた衝撃に、括約筋に力を入れて必死に塞いでいた穴が微かに開いて、男に飲まされた尿水がちょぴちょぴっと僅かながら零れ落ちた。
「い、いぎひいいぃいい!! あー! あぁー!! で、で、出る、出る、出ちまうぅうう!! トイレッ、トイレええぇええ!!」
双丘の右側に巨大な紅葉を浮かばせて、差し込む痛みに床に額を擦り付けて狂い泣く暮羽の髪を痩せ男が掴み、無理矢理引き上げて眼を交ぜさせた。
「人に物を頼む態度じゃねぇよなぁ。もっと、誠意を見せてもらわねぇと」
「う、うぐッ、うぅう……!」
眼から鼻からそれぞれ流れる体液でグシャグシャになった顔を苦痛と屈辱で歪ませる暮羽を別の男が囃し立てた。
「おーい、このままぶちまけちまって良いのか? まさかのスカトロショーかよ」
「…………」
暮羽は、くぅ……と小さく嗚咽を漏らしながら眼を落として床のコンクリートを暫し見詰めていたが、不吉な音が腹の中で大きく鳴った瞬間に瞼を硬く閉じた。そして、ついに観念したかのように頭を、両手を地面に引っ付けて、震える声で哀願した。
「お、お願い、します……トイレに、行かせてください……」
その惨めささえ覚える平伏に、ある者は憫笑し、ある者は苦笑した。集団を代表して痩せた男がジャッジを下す。
「よし、良いだろ。その無様な姿に免じて行かせてやるよ」
男の言葉を聞いた瞬間に風薙が暮羽よりも先に素早く立ち上がり、少しでも早く彼を楽にさせてあげられればと暮羽が渇望するトイレが待つユニットバスへと駆けて扉を開けていると、判決の続きが背中に刺さった。
「だが、ドアを開けっ放しにして俺達にやってる所を見せるんだ。で、そいつにシモの世話してもらえ」
“そいつ”の所で風薙が指差され、暮羽と風薙の全身が凍った。
「そ、そンな……うぅッ!!」
声を揺らす暮羽だったが、襲い来る腹の差し込みに顔を顰めて蹲り、涙混じりの息をひぃひぃと切らす。風薙もまた顔を強張らせて固まっていたが、やがて意を決したかのように鍵が開いたままだった牢の扉を開け、苦しげに呻く暮羽の前で片膝をついた。
「暮羽さん、早く」
「か、風、薙……だ、だが……」
「良いですから」
有無を言わさぬ強い声を出し、食事を取っていない所為か冷たくなっている手をとって暮羽をゆっくりと立ち上がらせる。男達の無数のニヤニヤ笑顔の中を暮羽の手を引いて進み、ユニットバスへと導いた。
古めかしい洋式便器に腰掛けた暮羽は一瞬安堵の表情を浮かべたが、男に命ぜられるままに直ぐ目の前で膝を落とす風薙を見た瞬間に顔を赤らめて俯いた。落として表情を窺え知れぬ顔から涙の粒をポトポトと太腿の上に落とし、肩を震わせる暮羽に風薙は大丈夫ですよ、と優しく言って冷たい手を温めるように擦った。その行為に緊張が解けたのか、最早ヤケになったのか、暮羽は風薙への謝罪の言葉を口の中で呟き、落ち着かぬ腹部に力を入れた。まず、別の人間の小水が水の張られた深淵へと消えていく。
そして。
「ククッ……しっかりケツ拭いてやれよ後輩ちゃん」
ドアの外から一部始終を見物していた男達の失笑の中で、赤い顔を両手で覆って泣きじゃくる暮羽の身体を風薙は座り込んだまま何度もさすった。
「うッく……か、風薙ッ、す、すまねェ……ひぐッ」
泣かなくていいですよ。俺は、何とも思っていませんから。頭の中では言えるが、自分自身が受けたショックも存外大きかったらしく、その台詞を口に出す事は出来なかった。何も言わぬという反応は、暮羽の深い心の傷をより一層悪化させてしまう可能性があるのは充分に分かっている筈なのに。
声がへばり付いているようなカラカラの喉に幾度も唾を流し込みながら、千切り畳んだトイレットペーパーを暮羽の両足の間へと伸ばして目当ての場所を拭うと、頭の上から聞こえる嗚咽が一層大きくなった気がした。
「可愛い後輩にシモの世話をして貰って幸せだろ?」
「後輩ちゃんも満更じゃなさそうじゃねぇか。汚ぇトコを丁寧に拭いちまって」
人面獣心の男達の嘲笑を背中に浴びつつ、風薙は無言のまま手を動かして涙ぐむ暮羽の汚れを清め続けた。これで、今までの穢れも心の傷も全て拭い去れたらどれだけ嬉しいだろう。そう、思いながら。
風薙の願いも空しく、暮羽の穢れや心の傷は日増しに深くなっていった。
昼夜を問わず奸賊達の邪な欲望の贄にされ、時には鬱憤晴らしの為に胃が空になるまで腹を殴られ、流石に死なれると面倒なのか、それとも折角の玩具を簡単に失いたくはないのか、とにかく生命維持の為の食事を与えられる事はあったが、毎日二度は必ず与えられる風薙に対して、暮羽には誰かが気が向いた時にしか与えられず、その内容も風薙と同じコンビニ弁当やパンであれば幸運な方で、彼らの残飯や安っぽいドッグフードを食器もなしに投げ付けられる事も少なくなかった。
シャワーも同じく誰かが暮羽に染み付いた男の臭いに耐え切れなくなった時に漸く許される程度の頻度であり、用足しは風薙を狭いユニットバスへと払って獄の隅で済ませた後、無駄に豊富な掃除道具を使って後始末をすると言う人間の尊厳を無視した扱いであった。
ろくに寝かせて貰えない。まともに食べさせて貰えない。望まぬ性交のみを男達は容赦なく与えて来る。人間の三大欲求のバランスが極端に崩れた日々を送らされる暮羽と苛烈な陵辱と理不尽な暴行に悶え苦しむ彼に何もしてやれずにただ膝を抱えて見る事しか出来ない風薙。
二人はすっかり疲弊し、その精神は徐々に蝕まれ始めていたのだが、本人達はまだ気付く段階までには達していなかった。
「暮羽さん」
ある時、珍しく入浴を許されて少しサッパリとした様子の暮羽の背中に風薙が格子越しに声をかけると、暮羽はゆっくりと振り向いた。
「どうかしたか?」
絶望的な毎日が続く中でも自分を心配してくれているような言葉に涙が出そうになる。何でだろう。最近、ちょっとした事で泣きたくなる。以前は、ここに連れて来られる前は、涙なんて欠伸の時ぐらいしか出なかったのに。
「どうして、俺を責めないんですか?」
「あ?」
突拍子も無い質問に眉間に皺を寄せて小首を傾げる暮羽に風薙は少し前から抱いていた思いの丈をぶつけた。
――彼が男達に辱められ、暴行を受けている時に自分は牢の隅にしゃがみ込んで目を硬く閉じ、耳を押さえて彼らの声が聞こえないように叫び続けた。余りにも惨たらしい蛮行に見ている方が耐え切れなくて便所へと駆け込み、便器に顔を突っ込んで消化液を吐き散らしたのも一度や二度ではない。
だが、彼はそんな自分を全く非難しなかった。寧ろ、彼が嬲られている間逃げるような行動を繰り返す自分を気遣ってくれた。暴虐の時が終わり、男達が笑いながら去った後に、恐る恐る近付き、涙ぐんで謝る自分に彼はよくこう言った。
「お前も辛いよな。あンなの見せられたりして」
今や遠い存在になってしまった“普段”の中ではすぐに感情を剥き出しにしていた彼が、本来ならとっくの昔に自分を責め、思いつく限りの恨み言を浴びせているであろう彼が何故――
そのような事を堰を切ったように伝えた風薙は、黙って話を聞く暮羽の目を見据えながら一度溜まった唾を飲んで呼吸を整え、改めて口を開いた。
「頼みますから、お願いですから、これ以上優しくしないでください。そんな事されたら、俺……」
暮羽さんの事を一層好きになってしまいます。最も言いたいその台詞を風薙は喉の奥に留め、唾液と一緒に腹に落とした。ただでさえ疲れ果てているであろう彼の心を下手な一言で乱し、重荷を背負わせたくはなかったからだ。
「そンな事されたら、何だ?」
怪訝そうに聞く暮羽に風薙は取り繕うようにかぶりを振り、少し慌てた様子で上ずり声を出した。
「と、とにかく、俺を非難してもいいんです。いえ、非難してください。怒鳴ってください。愚痴を吐いてください。俺に弱音を吐いたっていいん」
風薙が言葉を切ったのは暮羽が興味なさげに視線を馴染みの壁へと戻したから。何か彼が不愉快になるような事を言ってしまったのだろうかと、不安げに眉を八の字にする風薙の反応を読んだかのように暮羽は軽く肩をすくめて静かに言った。
「俺は、年下のお前にグチャグチャ言うほど小せェ人間じゃねェんだよ」
後に続いた、ふっと言う吐息から風薙は彼が少し笑ってくれたように感じた。
背中を向けてはいるが、自分が大好きな、あのへらっとした笑顔を浮かべてくれているような気がした。
そして、同時に思った。
彼が普段一生懸命に隠している(つもりだが、実際は余り隠せていない)優しさや、彼の方が年上だからと言う理由だけで自分を庇い、あの地獄を甘んじて受けられるのだろうか、と。
暫時の後、地獄への扉がまた重く開き、悪魔の使いのような男達が談笑と共に下りて来る音に暮羽の頭が気だるげに動いた。諦めさえ感じるその動きに胸を痛める風薙と地下室に入って来たピアスの男の眼がパチッとぶつかり、男は何故か風薙の顔を見てニタッといやらしく笑う。その笑顔から不気味さと不快感を覚えて怖気立つ風薙の瞳を刺すように見ながら、ピアスの男は嘲り混じりのからかい声で言った。
「後輩ちゃんもホントは大好きな先輩にちんこ突っ込みてぇんだろ? トイレやシャワーで毎日のようにオナニーしてるじゃねぇか。暮羽さん暮羽さん言いながらシコりやがって。先輩のレイプシーンをオカズにしてたのかな? ひひっ」
「!!?」
下品な引き笑いをしながら紡がれる言葉に暮羽は風薙の方を首の筋が違えそうな勢いで振り返り、風薙は顔をサッと青褪めさせる。風薙? 暮羽が確認するように小さく自分を呼ぶ震え声が鋭く胸に刺さった。
何で奴らが自分の秘密を知っているのだろう。それは暮羽に対する侮辱であると分かっているのに、暮羽が過激な蹂躙の犠牲になっている姿に時折興奮し、滾る淫熱に耐え切れなくなって入浴や用足しのついでに熱を精に変えて吐き出している事を。
へなへなと座り込み、瞬きを忘れた風薙の眼に光る円盤が飛び込んだ。それは、何の変哲もないDVDディスク。
「今まで黙ってて悪かったな。実はこの牢とかユニットバスにカメラをいくつか設置してたのよ。えーっと、シャワールームとシャワーヘッドとトイレの蓋の裏っかわと……あー、あと便器の中にも耐水性の滅茶苦茶小っちぇカメラ入れてたっけ?」
思いがけぬ告白に息を呑んで瞠目する風薙を牢越しに面白そうに眺めつつ、設置した隠しカメラの数を指を折って確認するピアスの男の台詞の続きを痩せた男が受け取る。
「お前みたいな綺麗な顔した奴のシャワーやオナニーの盗撮映像はともかく、こんなのまで売れるとか世の中悪趣味な奴が多いよなぁ!」
痩せ男の言葉を聞いたピアスの男が笑いを強め、他の仲間から手渡されたポータブルプレイヤーにディスクを捻じ込んで再生ボタンを押すと、画面の中に風薙が現れた。映像の自分の動きに生身の風薙が甲高い悲鳴を上げた。
「あ、あ、あぁああああ……!!!」
小さな液晶画面の中で、便器の蓋裏に設置されていたと言うカメラの存在を知らぬ自分が真正面からズボンと下着をずらして局部を堂々と見せる。そして、パッと切り替わった画面に映るのはまさに便座にゆっくりと座る自分。そして、その後に。
「い、いやっ、やだっ、やめて、停めて、停めてくだ、さ……あ、あぁ、あ……うわあぁああああ!!!!」
喉が裂けんばかりの悲鳴は血を吐くような慟哭に変わり、男の手中の再生機器を奪おうと牢から腕を限界まで伸ばしてもがくが、男は腕が届かぬギリギリの所まで機器を引っ込めて、風薙の叫号を愉しんで哂う。陰惨な地下室に響く狂った底抜け騒ぎの声に暮羽の怒号が加わった。
「ふッざけンな! 好い加減にしろ!! そいつを寄越しやがれ!!」
乱れた感情をぶつけるように床を拳で幾度も打って泣き喚く風薙の代わりに、暮羽が何とかして男から猥褻の範疇を越えた映像が流れるポータブルプレイヤーをもぎ取ろうとするが、大男が暮羽のうなじまで伸びた後ろ髪を乱暴に掴んで引き寄せた。ブチブチと何本か毟り取られたような焼け付く痛みに顔を顰める暮羽の耳に大男は分厚い唇を寄せる。
「お前も結構恥ずかしい事してるよなぁ? シャワーの許可が下りた時に、シャワーヘッドに口付けて水ガブ飲みしてたじゃねぇか。水をまともに貰えてなかったとは言え、ありゃあ中々みっともなかったぜぇ? それもバッチリ録ってんだからな。何なら、上から持って来てココで再生してやろうか? お前が一番最初にレイプされた時に鼻水垂らして泣きながらションベン漏らしたりゲロ吐き散らかした奴や、野郎なのに女みたいにしゃがんでションベンしてる奴も勿論あるぜ?」
「…………」
もはや、どう反応すれば良いのか分からなくなってしまった暮羽の虚ろな目の底に涙がみるみる溜まっていき、それは呆気なく零れ落ちる。呆ける暮羽の余り見えていないであろう視線の先で、床に四肢をついた風薙が泣き過ぎた幼児のように咽返り、何度か嘔吐き、その動きに触発されたかのように胃液を床に散らした。