TOP   1    2    3    4    5    6    7    8    9

※赤い文字色のページには性描写があります


 

 自分の牢には設置してあるユニットバスで暮羽に促されるままにシャワーとトイレを済ませた風薙は、申し訳ない気持ちに苛まれながら極力音を立てずに風呂場兼便所の古い扉を開け、足音も余り立てぬようにして元いた場所……格子にもたれる暮羽の背後に戻って来た。出来る事なら変わってあげたい。せめて、ウェットティッシュなどでは拭いきれぬ汚れにまみれた身体をシャワーで充分に洗い流す時間だけでも……
「今、何時ぐらいなンだろうな」
 壁を向いたままひとりごちるような暮羽の声に考え事を一時中断する。正しい時間は分からないが、少なくとも日付は変わっていると思った。正確さには密かな自信がある体内時計とこのような状況でも僅かながら感じ始めている眠気から、日付が変わって一、二時間と言った所だろうか。
 そのような旨を伝えると暮羽は、そうか、と曖昧な返事をして顔を横に向けた。彼の視線の先には出口へと向かう階段と其処へ行くのを阻む小さな鉄格子の扉。何とか脱出出来ないかと考えているのだろうか。自分も同じ場所を見れないかと首を伸ばそうとする風薙を暮羽は妙に落ち着いた声で呼んだ。
「風薙」
「はい?」
「もう遅いだろうから休め。寝る時は隅っこで毛布被って耳塞いでろ。いいな」
「え?」
 休めと言うのは分かるが休み方まで指定して来る事に疑問を覚えて、それを素直に相手に伝えると、暮羽は表情も声色も変えずに答えた。
「いや、灯り点けっぱだし、少しでも光や音をシャットアウトした方が良く眠れるかなって思っただけだ。何せ、こンな状況だ。寝れる時に少しでもガッツリ寝て体力回復させる方がいいだろ?」
「は、はぁ」
 何だか腑に落ちなかったが、色々と彼に負い目を感じている風薙はこれ以上彼に余計な負担を掛けたくなかったので、彼に言われるままに古毛布を持って牢の隅に移動し、所々が毛羽立ったそれに身を包めた。
「おやすみなさい、暮羽さん」
「あぁ」
 暮羽が返事をしてくれた事に思わず胸を高鳴らせてしまう自分の緊張感の無さに呆れながらも、言われた通りに毛布に潜り込む…が、耳は塞がなかった。やはり、彼の言う事に納得出来ない所があったし、何処となく寝るのを急かされたような気もしたからだ。何か、彼なりの考えが、作戦があるのか。寝た振りをしつつ耳を澄ませていると、どれ位経っただろう彼の手錠の鎖の音が聞こえた。どうやら何やら動きを見せたらしい。
「……」
 暮羽に見つからぬように毛布を少しだけ持ち上げて、その隙間から外の様子を覗き見る。彼は何処だ。いた。彼は牢の角で自分に背を向け、しゃがんでいた。もしかして、男達に借りた道具の中から脱出に使えそうな物でも見つけたのだろうか。それとも、あの場所に脱走する為の何かがあるのだろうか。ついつい希望的観測をしてしまって、微かに胸を躍らせる風薙だったが、その躍る胸は次の瞬間にドキリと跳ねた。
「あっ」
 毛布の中でうっかり声を漏らした口を慌てて塞ぐ風薙が見た物は、しゃがみ込む暮羽の両足の間から飛び出した小水。本来、男である彼ならば立ってするであろう行為をしゃがんで致すのは、少しでも音を立てないようにする為、自分に聞かれないように、見られないようにする為か。
「……」
 見てはいけないと頭では分かっているが、目が離れない。悪趣味だと分かっているが耳をそばだて、ショワショワと聞こえるささやかな水流音をじっくりと聞いてしまう。彼は排泄している所を自分に見せたくなくて、目も耳も塞げと言ったのだろうに、自分は何をしている? 放尿する彼の後姿に歪んだ情欲を確かに覚え、汚れた熱に胸が高鳴るのは何故だ?
 だが、その奮いはすぐに呆気なく握りつぶされた。
「ひっく、えぐッ……」
 興奮を潰したのは、水の音が終わると共に聞こえて来た暮羽の弱々しく啜り泣く声。その悲哀に満ちた涙声は自然と風薙の眉も沈痛な形に顰めさせ、ぐっと込み上げて来た涙で鼻に痛みがつんと刺さる。
 彼は、暮羽は、ずっと耐えていたのだ。本当は辛かったのに、もっと早く泣きたかったのに、泣いたり弱音を吐いたりしたら一緒にいる自分の心まで折れてしまう事を危惧していたに違いない。彼は、このような状態の中でも、何処までも、自分を心配してくれていたのだ。
 暮羽の隠された心を自分なりに少し知った気がした風薙は、密かに息を詰まらせながらそっと毛布を被りなおし、漸く暮羽が望んだように涙で視界が揺らぐ瞳を固く閉じて、耳の穴に指を突っ込んだ。暗闇の中で風薙は繰り返す。俺は何も見ていない。俺は何も聞いていない――

 心は悪い意味で昂ぶっていたが、疲労した身体は純粋に休息を求めていたらしく、元々の寝付きの良さも手伝って、風薙は自分も知らない間に毛布にすっぽりと身を収めたままウトウトと浅い眠りについていた。
 遠ざかっていた意識がふと何かを聞き取った。バタバタと気忙しい足音。複数人の話し声の中には暮羽の声も含まれているが、話している内容までは分からない。そして続くのは鎖と誰かの身体が床に叩きつけられる音。罵声。呻吟。嘲笑。悲鳴。
「えっ?!」
 羅列される音の異常さに漸く気付いて覚醒した風薙は、先程と同じように小さく捲った毛布の隙間から異常な音の正体を覗き見た瞬間に、息が止まるのを感じた。被さる毛布と鉄格子が邪魔をする眼界の奥で、仰向けに倒れた暮羽が万歳をするように揚げられた両手首を痩せた男に押さえ込まれ、彼の仲間の一人であろう見知らぬ男が暮羽の大きく開かれた両足の間に腰を沈めて揺さぶっていた。その周りにも順番待ちをするかのように数人の男達が暮羽を取り囲んでいて、その表情は窺い知れなかったが恐らく下卑た微笑みを浮かべているのだろう。
「ひっ、ひう、ぅん……あ、や、やめ……」
 苦痛によって零れる喘ぎを必死に抑えているのは風薙に聞かれぬようにする為か。息が出来ぬ風薙の耳に、彼も時々世話になる猥褻な動画や本のような、品も知性も無い台詞が飛び込む。
「お前、何休んでたんだよ。お前は俺達の公衆便所なんだ。便所は休まずに二十四時間相手を受け容れるモンだろ?」
「あーあー、またションベン垂れ流しちまって。便所って言うより動物だなこりゃ。豚だ豚」
 隅に放置されたままの小水溜りを指差して笑う男に暮羽は慌てた様子で顔を上げ、うわずった声で言った。
「そ、それ、はッ、あ、んっ……か、片付けようと、してたら、てめェら、が、来て、あぁ……!!」
 相手の事など微塵も考えぬ男の一方的な律動に言葉が詰まり、上げていた頭は忙しく床に落ちる。目に涙を浮かべてハァハァと息衝く暮羽の顔を両手首を掴んだままの痩せ男が歪んだ笑顔で覗き込んだ。
「お前も馬鹿だよなぁ。あの後輩といつでも代わってもいいって言ってやってんのに頑なに断りやがって」
「!?」
 毛布の中の風薙の身体が一瞬飛び上がり、牢の外の暮羽や男達にバレたのではないかと背中に冷や汗を伝わせたが、幸い誰一人として自分の方を見ていなかったらしい。震えそうな身体を必死に押さえる風薙の耳中に男のからかい声が続いた。
「さっきも床に垂らした水飲めって言った時、最初は滅茶苦茶拒否ったくせに“お前が飲まないなら後輩ちゃんに飲ませるぞ。いつでもお前とアイツを交代させてもいいんだぞ”って言ったら急に飲みだしたよなぁ。何? お前、アイツの事好きなの? アイツの事必死に庇いやがってよ」
 語尾の辺りで自分の方を振り向いて来る気配を察した風薙は慌てて毛布の口を閉じて一体の臆病な亀となった。アイツ、こんな状況で寝てるのかよ。男の苦笑混じりの舌打ちが聞こえた。
 視覚が遮られた分、聴覚の方に意識を集中させる。お前、アイツの事好きなの? 男の何気ない言葉が幾度も頭の中で繰り返される。暮羽は、どう答えるのだろう。心臓が暴れる。鼓動が骨に響くまでに。聞きたいような、聞きたくないような。怖い、怖い、怖い。
 少しして、暮羽の返事が聞こえた。
「……ンなの、どうでもいいだろうが」
 否定はしないが肯定もしないその言葉に風薙の心は甘くときめき、同時に鋭く痛んだ。どうでもいいと言うのは、男の質問の内容がどうでもいいと言う事なのだろうが、自分の存在がどうでもいいと言う意味にも捉えられぬだろうか。暗い毛布の中で唇を噛む風薙だったが、直後に耳に飛び込んだ暮羽の悲痛な声に眼を見開いた。
「ま、俺にとってもどうでもいいけどな。とにかく、今は便所として働いてくれや。しょっぱなから二本挿しされた割には結構締まってるじゃねぇか。案外、名器かも知れないぜコイツ」
「いっ、痛ッ、そンな、乱暴に、されたら……あ、ああ穴が、変になって、る……おかしくなっちまうぅ!」
「うぅう……!」
 実状が耳からしか入らぬ分、より淫猥な想像をしてしまった風薙は不意に身体の中心に熱を感じて、微かに呻いた。暮羽の排泄行為を覗き見た時から密かに燻っていた燠火が燃え上がって腹の下を疼かせ、もっと下部に存在する雄を猛らせてズボンの布を引っ張り上げる。風薙は劣欲に正直かつ敏感な愚息を軽く叩いて戒めつつも、無意識の内にその耳は毛布の障壁の外から聞こえる生々しい性交音や彼らの声を一瞬たりとも取り零さぬよう研ぎ澄まされていた。
「よ、よし、出すぞ! 便器の中に全部出してやるぞっ……!」
「ひっ! や、やめろッ! 抜け! 外に出せ馬鹿ッ……あぁあぁあああ!! あ、あつい、熱いッ!! い、い、嫌、だ、中出し嫌だああぁあああ!!!」
「そんなにデケェ声出して騒ぐと後輩ちゃん起きちゃうぞ? お前がレイプされてるトコ見られていいのかよ」
「聞こえてるんじゃね? 本当は起きてて、あの毛布の中でお前の声オカズにしてコッソリちんこシコッてたりしてなぁ! あはははははは!!」
 笑いながらの男の言葉に風薙がビクッと肩を上下させ、熱り立つ分身を両手で隠すように包むのも知らずに、暮羽は少し抑えた声量で唸るように言う。
「う、うる、せェ……アイツの事は、言うんじゃねェ!」
「へっ、ケツからザーメン垂らしながらよく言うぜ。にしても、お前本当にちんこ勃てないのな。不感症のマグロとか面白くねぇや」
「ただのインポだろ。お若いのになぁ」
「まぁ、俺達はお前の身体でヌけりゃ、それでいいけどな。今から俺達全員が満足するまでマワしてやるから、せいぜい頑張れよ。公衆便所の雌豚ちゃん
「ふ、ふ、ふざけンな、クソが! 何が豚だ!! や、ぃやだッ、は、入って、来るンじゃねェ!! はッ、は、あぁ、あ、や……ぃああぁあああぁああ!!!!」
 暮羽の痛ましい叫びを最後に風薙は改めて耳を手で押さえて眼を強く瞑り、腹部を、熱持つ肉竿を抱えるように身体を丸めて歯を軋ませた。
 一瞬とはいえ、頭の中であの男達に交じって暮羽を陵辱してしまった己を罵倒し、彼への謝罪を心の中で何度も何度も繰り返しながら。

「お前さ、ちんこからションベンばっかだらしなく出してるけど、精液出ねぇの? 夕べも散々犯したのに殆ど勃たなかったしよ」
 風薙が殆ど眠れぬ休息をとってから数時間後。飽きもせずに暮羽を嬲りに来たらしい男達が疲労の色を滲ませる彼の周りを囲み、その中の一人が暮羽の柔らかな肉茎を手にとって、ピタピタと己の手の平にぶつけて弄んでいると、暮羽がケッと小さく漏らして上目で男を睨んだ。
「てめェらのテクがダメ過ぎって事じゃねェの? ……この下手クソが」
 散々玩弄され、幾度も醜態を晒してもなお、彼らしい憎まれ口を叩く暮羽に風薙は内心で感心と憧憬の再燃を感じつつ、常識とかそう言う物が通用しないであろう彼ら相手に余計な事は言わない方がいいのに、とハラハラとした面持ちで成り行きを見守る事しか出来なかった。
 言われた方は一瞬憎々しげに顔を顰めたが、意外にも風薙が予想したような暴力行為には及ばず、手の内の暮羽の本体を暫し眺めて渋面を卑しい笑顔に変える。この牢に再来する前から、今回は暮羽でどう遊ぶか仲間と決めていたらしい彼は手中の温かな棒を軽く握り、自分をねめつけて来るその瞳を薄暗い眼で見返した。
「今までたっぷり俺達を満足させてくれたからな。お礼にお前を無理矢理にでもイかせてやるよ」
「ッ!! 要らねェ! そんな礼なンざ、ちっとも欲しく、ねッ……は、離せ!!」
 暮羽の腰が一瞬跳ねたのは、男が無遠慮に握った肉軸をゆるゆると擦り、扱き始めたから。
 それが合図であるかのように大男が風薙がいる牢の扉を開けて、怖気による悲鳴を小さく零して身体を硬直させる風薙に接近する。男の手が風薙の青い髪を乱暴に掴み、その痛みに歪む顔を鉄格子にめり込みそうなまでに密着させた。風薙の名を叫ぶ暮羽の雄根をもてあそんでいた男は暮羽の身体を風薙の眼前の格子へと押し付けた。
「俺達が駄目でも可愛い後輩ちゃんが相手ならイけるだろ? 手伝って貰え、おら!!」
「てめぇも何ボケーッとしてんだ! しゃぶって先輩を気持ち良くしてやるんだよ!」
「や、やめろ! コイツは、巻き込みたくねェんだ!」
 もがく暮羽の抵抗も空しく、男の刺激によって硬度がやや増している陰根が格子の隙間を縫って風薙の鼻先まで突き出される。風薙。暮羽が再度彼の名を叫び呼んだ。
「…………」
 目の前に来た瞬間は思わず息を呑んだが、数度の瞬きの内に見慣れたそれが暮羽の大事な場所だと思うと胸がじわっと熱くなり、昨夜、毛布の中に置いて来た筈の痴熱が風薙の頭を甘く痺れさせた。
「暮羽、さん……」
 呟くままに開いた口に暮羽の先を導くと、やめろと言う相手の裏返った声と男達の哄笑が重なり合って牢に響いた。
「よ、よせ、頼むから、やめてくれ……き、汚ェ、から……」
「ぅん、んちゅっ……うぅ……ん」
 確かに風呂に入れぬまま半日以上は清められていない其処からは独特の味とニオイを感じたが、それも暮羽の雄のフェロモンだと思うと風薙の興奮はより強まって、恐怖でずっと揺らいでいた瞳がとろんと熱っぽく蕩け始める。正直、男の一物を口に咥えると言う奉仕行為は初めてだったのだが、元来天賦の才に恵まれた彼は、このような行為にさえもその才能を発揮して、相手に確実な快感を与え続けた。
「あぁッ、あ……か、風な、ぎ……はぁ、はッ、だ、だめ……」
 格子の間に差し入れた手で風薙の青い髪を緩く掴む暮羽の背後から男の手が伸びて来て
「おい、見ろよコイツ、乳首立ってるぜ。 後輩にちんこしゃぶられて感じてやんの」
 胸元をまさぐったその手はぷっくりと起き上がった突起を乱暴に抓って捏ね回した。暮羽の喉からあられもない嬌声が飛び出し、風薙と男からの二重の刺激に腰が艶かしく揺れた。
 風薙は窄めた唇を前後させる毎に口内の暮羽が膨張し、舌先で暮羽の先端にある窪みを突付けば味わった事の無い不可思議な汁が舌の上に広がる事を素直に喜んだ。自分の与える刺激によって暮羽が快楽を得ていると言う確かな実感を得られたから。
「か、風薙ッ、もう、や、めッ……!! あ、あぐッ!!」
 暮羽の声が一度大きく詰まった原因は暮羽の後ろから彼の胸元を撫で擦っていた男。膨らんだ肉豆を摘み遊ぶだけでは飽き足らず、上向いた弾道をそのまま暮羽の肛穴に捻りこんで来たのだ。
「あぁ、あはぁ……あんっ……だ、駄目……抜いて、くれッ、んぅう……」
「何かいつもよりもやらしい声出せてるじゃん。後輩ちゃんのエロフェラに感じてるからかな?」
「ひうぅッ、んッ、違、うっ、ううぅう!! あぁあ……!! もう、やだッ……やめ、やめろッてェええ……!!」
 二人の男に挟まれた暮羽は腹背からの攻め立てに耐え切れず、掴んだ鉄格子に力無く身体を預けて鉄棒に頬擦りをした。その両足が少しずつ開き、緩慢だった腰が動きを刻み始める。暮羽の異変に後ろの男がいち早く気付き、暮羽の臍の辺りに両腕を回した。
「おっと、出す時は後輩ちゃんのお口から離れろよ? お前がみっともなく精液ぶっ放す瞬間が見てぇんだからよ」
 言うや否や腕に力を込めて風薙の口から暮羽を引き離すと、牢の中の風薙は涎の端を暮羽の肉根との間に引きながら、お預けを食らった挙句に餌を取り上げられた犬のように悲しげな顔で暮羽の名を叫んだ。
「あ、あうっ、くぅっ、ひ、ひぁ、あ、あ、あぁ、あッ!」
 男の手が暮羽の屹立を掴み、乱暴に擦り上げると鉄格子を掴んだままの暮羽の口から短い艶声が飛び出し始める。
「イキそうなんだろ? ほら、イケよ! 俺達の見てる前で精子ぶちまけてみろ!」
「ひっ、ひぃ、ひあぁっ!! や、やだ……い、イキたく、ねェ……!! こ、こ、こンな、中で、イキたくねェ……!! は、はぁっ! も、も、う、駄目ッ、い、イクッ、出るッ、イクイクイクッ!! あ、あぁっ、あぁああァああああッ……!!!」
「うおっ!」
 背後の男が驚愕と動揺の声を上げる中、足が震え、腰が弾け、爆ぜた先端から精汁が勢い良く飛び出して、鉄格子に、そして風薙の呆け顔にびちゃびちゃと降りかかった。男達が手を打って囃し立てる声をボンヤリと聞きながら、暮羽は崩れるようにその場にへたり込んだ。その動きで暮羽から抜けてしまった己のぬめる分身を撫でて、男は感嘆の溜め息を吐いてニヤリと笑う。
「やっべ……コイツ、イク瞬間にすっげぇヒクついてちんこに食い付きやがる。こっちまでイカされる所だったぜ」
「か、風薙……」
 男の感想など聞こえていない様子で暮羽は少しボンヤリした声で牢の中に脛を床につけて座り込んだままの風薙に声をかける。端正な顔を白濁で汚された彼の表情は何処か虚ろで。その眸は熱っぽく浮いていて。
「ぁ……」
 小さく開いたままの唇から表情そのままの声が零れ落ちたかと思うと、風薙の腰から上がゆっくりと仰向けに倒れこんだ。その緩やかな動きと表情とは裏腹に下半身に伸びた手は忙しなくベルトを外し、下着もろとも膝の辺りまで擦り下ろすと、既に濡れた先端から汁を撒き散らしながら風薙の雄棒が飛び出して来た。突然の行動に呆気にとられる暮羽の眼前で、頭をプルプルと揺らす愛息に添えた手を異常な速さで上下させ始めると、地下牢をしんとした静寂が包み、直後に男達の高笑いが爆発した。
「マジかよコイツ、オナニーおっ始めやがった!」
「よっぽど憧れの先輩のおちんちんが美味しかったのかなー? ぎゃははははは!!」
「んくっ、うっ、うっ、うっ、くぅ、はぁ、はぁ、はぁ!!」
 男の蔑笑も聞こえぬ様子で一心不乱に自分を慰める。暮羽の本体を口にする事で昨夜から耐え続けていた欲情が完全に暴走し、風薙の理性を焼き尽くし、翻弄していた。頬を伝う暮羽の精汁の感触が、鼻を衝く青臭さが、唇に零れる味が、全てが今の風薙には媚薬となる。みっともなく浮き始める腰を愕然と見る暮羽の視線さえも心地良い。
 風薙は熱に侵された頭の中で暮羽の肉体をひたすら貪っていた。それは、大学の食堂で弁当を分けてくれた暮羽の笑顔に惹かれたあの日から、性的欲求の解消や就眠儀式として時折していた行為であり、時には恋人同士のように甘く抱き合い愛し合い、時には自分が知り得る限りの乱暴な方法で彼を陵辱していた。
 今回は脳内の自分に暮羽を徹底的に犯すように命令した。例の悪漢達と共に涙ぐむ暮羽を取り囲み、先に男達が幾度も幾度も輪姦し、狼藉を加えられた哀れな後穴から有り得ない量の精を零して泣きじゃくる彼に自分はトドメを刺すべく、猛りを彼の中に埋めるのだ。妄想の彼が慟哭と共にある言葉を叫ぶ。それは猥雑な本やビデオの中で登場する度に激しい興奮を覚え、全身の熱が中心に集まる台詞。
「やめろッ、頼むから、中に出すな!! 今日は危険日なンだよ!! 妊娠しちまう……赤ちゃん出来るぅうう!!」
 実際には有り得ない事なのだが、妄想と言う何でも許される世界の中で、身篭る恐怖に身体を引き攣らせ、絶望の慟哭を繰り返す彼に自分はどす黒い昂ぶりを覚え、残酷に微笑んで冷たく言う。
 いいですよ、どうぞ妊娠してください。俺の子供を身篭ってください。
 妄想世界の自分は最初の内は冷静に言うが、絶頂が近付くにつれて本性と言う名の自分の中の獣が剥き出しになり、彼との上下関係も忘れて自分は気が触れたように叫び続けるのだ。
「は、孕め、孕め孕め……! 身篭れ……! 俺の子、を……あ、あああぁあああっ!!!」
 無意識に現実世界でも吐き出した狂人的なその台詞は殆ど吐息に近い声でブツブツと口の中で紡いでいたので、近くにいる大男や暮羽にさえも聞き取られる事はなかったが、最後の金切り声に近い叫びは辺りに充分に轟いた。頭の中の自分が暮羽の肉体に子種を注ぎ込む瞬間に白く爆発し、現実の自分も殆ど同じタイミングで達してしまう。風薙の腰が上下にグラインドして、恥部に騎乗している透明人間とまぐわっているかのように虚空を幾度も突き、限界まで天へと突き上げた所で噴火した陽物の尖端から白種を勢い良く天井に向けて飛ばし、それは重力のままに風薙の腹部や床に白い雨となって降って来た。
「はぁ、はー、はー……」
 自分の種を身体に浴びたまま息を荒げる風薙の下半身がゆっくりと床へと落下する。
「風、薙……?」
 地下室が震撼しそうなほどの男達の爆笑の渦の中で、暮羽は乱れた呼吸を繰り返す風薙を唖然とした様子で見詰めていた。