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カテゴリー「龍龍」の検索結果は以下のとおりです。

[真神メンバー]チョコレート・フレンズ

  • 2012/02/14 16:30
  • カテゴリー:龍龍
バレンタインです。皆仲良し真神メンバー。



京一は甘い物は好きではない。
食べられない、とまでは行かないが、出来れば口に入れたくない程度には、好んでいない方だった。

しかし、年に一度のこの日だけは話が違ってくる。



「蓬莱寺先輩ッ!」
「あ?」



グラウンドを通り抜ける最中、唐突に背中から声をかけられて、振り向いてみると、其処には見覚えのない女子生徒が一人。
先輩、と言ったからには恐らく後輩なのだろうが、生憎、京一にはまるで記憶にない少女であった。

長い黒髪を後ろで二つに括った少女は、沸騰しそうな程に赤い顔をしている。
頭から湯気出そうだな、とぼんやり思っていた京一の前で、少女はしばらくもじもじとしていた。
そんな少女から少し離れた所には、これまた見覚えのない少女が数名、必死に何事か口を動かしている。
口の動きを何とはなしに読み取って、「がんばれ!」「いけーッ!」と少女達が言っている事を知り、それが自分の目の前にいる少女へと向けられている事を知った。


少女は何かを堪えるように、への字に噤んでいた口を開いた。
それと同時に、背に隠していたものを京一に差し出す。



「こ、こここ、これッ、受け取って下さいッ!」



やっぱり沸騰しそうな顔のまま、そう言った少女の勢いに、京一が半身を引く。
が、直ぐに少女が差し出したものに気付いて、



「お、おお……サンキュ」
「い、いえッ!それじゃッ!失礼しますッ!」



少女の手から、綺麗にラッピングされた十センチ程の長方形の箱を受け取る。
すると少女は、どもりまくって挨拶をした後、一目散に友人達の下へ駆けて行った。
ほんの数メートルの道程を、足を絡ませて転びながら。

どんだけドジだ、と思いながらしばし少女を見送る格好になっていると、友人達と合流した少女が振り返り、ぺこりと頭を下げる。
京一はそれに対して特にリアクションはしなかったが、少女は構わず、友人達と───京一のいる場所を大きく迂回して───共に下駄箱に向かって消えた。


京一は、自分の手に収まった箱に視線を落とした。
箱にはリボンが取り付けられ、其処にハートのシールで『Happy Valentine』の文字。

……どうりでさっきから視線が痛い筈だ。
僻みと妬みが多量に混じったそれを浴びつつ、京一は思った。
それ以上は特に気にする事はなく、薄っぺらい鞄の中に箱を入れる。


────其処で、元気の良い声が響いた。



「さっすが、モテるわねー、京一は。やっぱり剣道部の主将って肩書きが効くのかしら」
「……ンだよ、アン子か」



ファインダーから此方を覗き込みながら言う遠野。
いつも通りにカメラを握っている彼女だが、その反対の手には、小さな袋が一杯に詰められた紙袋がある。



「なんだ、そりゃあ」
「何って、バレンタイン用のチョコよ。はい、これあんたの分ね」



言うなり、遠野は紙袋から小さな袋を一つ取出し、京一に差し出した。
京一は先程の少女を相手にした時と同じように、ハート型のチョコが詰まった袋を受け取り、また鞄に入れた。

じゃり、と砂を踏む音がして、二人が振り返ると、葵と小蒔の姿があった。



「おはよう、京一君、アン子ちゃん」
「おはよー、二人とも」
「ああ」
「おはよ」



短い反応の京一と、手を振って返事をする遠野と。
そんな二人に笑みを見せて、葵が鞄の中からラッピングされた箱を取り出す。



「はい、京一君。アン子ちゃんにも」
「おー」
「やった!ありがと美里ちゃん、絶対にお返しするからね!」



抱き着いて喜びを全身で表現する遠野に、葵がくすぐったそうに笑う。
その傍ら、ボクも貰ったんだ、と小蒔が手に持っていた箱を見せた。

京一はひらひらと箱を手の中で遊ばせつつ、嬉しそうに箱を見ている小蒔を見る。



「お前は渡す予定はねェのかよ」
「予定がないって言うか、忘れてたんだよね。何、欲しかったの?京一」
「バーカ。誰が男から貰って喜ぶか」
「誰が男だッ!」



噛み付いて来る小蒔を交わし、そうじゃなくてな、と京一は仕切り直す。



「身近に渡すような奴いねェのかって言ってんだ」
「弟達にはあげるよ。ああ、あとお父さんにも」
「……………」
「何さ?」



白い眼で見る京一に、小蒔が唇を尖らせる。
その傍ら、遠野と葵が顔を見合わせて肩を竦めていた事に、彼女は終ぞ気付かなかった。

────其処に、いつものメンバーの残り二人も合流する。



「おはよう」
「おはよう。早いな、皆」
「おう」



挨拶を終えると、醍醐が鞄の中からいそいそと何かを取り出す。
そして、まだ京一を睨んでいる小蒔に声をかけ、



「あ、あの、桜井さん」
「ん?どしたの、醍醐君」
「こ、これ、作ってみたんです。この時期でチョコも安かったし……その、良ければ、どうぞ」
「ホント?いいの?」



やった、と喜んで小蒔が醍醐から受け取ったのは、チョコレート生地の一口サイズのカップケーキ。
女子受けの良さそうな絵柄の入った透明袋に入れて、モールで蝶結びにしてラッピングしてあった。
カップケーキは一つ一つきちんとデコレーションもされていた。

ありがとう、と笑う小蒔を見て、醍醐の顔が崩れるのを、京一は白い眼で見ていた。
それに気付いた醍醐が、なんだ、とばかりに眦に力を込めるが、京一には効果はない。
寧ろ彼は更に呆れるばかりであった。



「お前、情けねェと思わねェのかよ。フツーはお前が貰うトコだろが」
「……別にいいんだ、俺は。桜井さんが喜んでくれるなら」
「あっそ。献身的っつーか、なんつーか」
「それより、ほら」
「あん?」



醍醐が差し出したものを反射的に受け取った後、京一は今日一番の胡乱な顔をして見せた。

其処にあったのは、小蒔と同じカップケーキ。
ただし、此方は少々形が崩れている。



「……ヤローに貰っても嬉しくねえし、気持ち悪ィ」
「俺だってお前にバレンタインプレゼントなんて気持ちが悪い。しかし、食べ物は無駄にする訳にはいかないからな。処理に付き合え」
「…………オレが甘ったるいモン好きじゃねえの知ってんだろ」
「じゃあ、僕が貰ってもいい?」



唐突に割り込んできた声に、醍醐が驚いたように目を瞠る。
京一の方は慣れたものだったから、振り返るついでにカップケーキを差し出した。



「ほらよ」
「ありがとう、京一」
「オレじゃなくて醍醐に言え」
「うん。醍醐君、ありがとう」



カップケーキを受け取った龍麻の言葉に、こっちこそ、と醍醐が眉尻を下げて言った。

京一と違い、龍麻は甘いものが好きだ。
いつもチョコだの苺系の菓子だのと持ち歩いているから、醍醐の作ったカップケーキも美味しく頂ける事だろう。
京一の方は────鞄の中に収まっているものを、果たして全部消費できるのか、正直、微妙な所だ。
それでも今日だけは甘味を拒否はするまい、男から渡される場合は別として。


さて、そろそろ教室に行かねば、始業のチャイムが鳴ってしまう。
めいめい賑やかにしている友人達を置いて行く形で、京一は一歩踏み出した。

─────その肩を、とんとん、と叩かれて引き留められる。



「あ?」



振り返れば、にこにこと上機嫌な相棒がいて、



「はい、あげる」
「んぁ?」




何が、と確認する間もなく、甘ったるいものが口の中に広がった。






うちの龍麻は京一の口に食べ物突っ込むの好きですね……
渡そうとしてるものが大体甘いものだから、普通にしても受け取らないんですよ、京一が。だから了解を待たずに突っ込む。

相変わらずうちの二人はナチュラルにラブラブ。友情でも恋愛でも。
…最近、自分で書いてて龍京なのか龍&京なのか判らない時がある。もういいか、どっちでも。どうせこいつらラブラブだから!
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[Cat Panic]防御本能

  • 2012/02/06 12:57
  • カテゴリー:龍龍



京一は、犬が嫌いだ。
苦手と言うよりも、嫌いと言った方が当て嵌まる。

その存在の気配を敏感に察知すると、彼は脱兎の如く逃げ出してしまう。
明らかに怖がっていると判る行動なのだが、本人はそれを認めるのは悔しいらしく、「ちょっとトイレ!」とか「鳥!」とか言いながら、逆方向へ走って行く。
一時して、犬が遠くに去って行ってから、八剣が京一が逃げた方向へと向かうと、彼は大抵、茂みの中に頭だけを突っ込んでいたりする。


京一がどうしてそんなにも犬が嫌いなのか、八剣は知らない。
八剣が彼を拾う以前に何かあったのだろう事は予測がつくのだが、詳細を聞いた事はなかった。
意地っ張りな子猫の事だから、聞いてもきっと教えてくれないだろうし。



以前は専ら八剣の部屋で過ごすばかりであった京一だが、龍麻と知り合ってからは外遊びをする事も増えた。
とは言え、京一の遊び相手と言えばやはり龍麻一人である為、公園などに言っても大抵一人でジャングルジムに上ったりして遊んでいる。

行くのが平日の昼間であるから、見た目小学生程度の京一と同じような子供は学校に行っている時間だし、仮に誰か子供がいたとしても、京一が自ら近付く事はないだろう。
見た目が小さな子供とは言え、ヒトと動物の中間的存在である京一の成長スピードは、どちらかと言えば動物寄りだ。
まだまだ子供のような生意気さがあるものの、京一は野良で過ごした日々の所為か、子供にしては大人びている所がある。
本人も、人間の子供の事を「ガキくさい」と言っており、感覚が合わない事は自覚しているようだった。


八剣は、一人で鉄棒遊びをしている京一を遠目に眺めながら、一つ小さな溜息を吐く。

龍麻と言う友達が出来たとは言え、京一は相変わらず、一人遊びばかりをしている。
これは子育てとしてどうなのかな────等と、最近、妙に所帯じみて来た頭で、そんな心配が浮かんでいた。




「────いてっ!」




短い悲鳴を聞いて、八剣が顔を上げると、京一が鉄棒から落ちていた。
彼は悔しそうに尻尾を揺らしながら立ち上がると、リベンジとばかりに、鉄棒に跳び付いた。


見た目は人間の子供に獣の耳と尻尾がついただけでも、やはり彼の中身は猫である。
身体能力も人間にしては優れており、身軽さやバランス感覚は、正に猫のそれであった。

しかし、やはりまだまだ幼い所為か、経験不足で小さなミスをする事は多い。
大人の猫でも、マンションのベランダから足を踏み外して落下する事故があるのだから、子猫など尚の事だ。
身軽さと好奇心だけで動いてしまうので、その後の事など考えていない。


京一は、自分の身長よりも高い位置にある鉄棒にぶら下がっている。
尻尾がバランスを取ってゆらゆら揺れて、せーの、と勢いと腕の力で逆上がりに足を上に振り上げた。
くるんと小さな体が回って、京一は体が一番高い位置を迎える直前に、鉄棒を握る持ち手を変えて、伸ばしていた足を引っ込める。

ちょこん、と京一は鉄棒の上に座って、満足げにふふんと尻尾を揺らす。
昨日のテレビで見た、体操選手の演技の真似が出来て嬉しいのだ。




「京ちゃん、落ちて怪我しないようにね」
「ンなドジやんねーよ!」




ついさっき落ちたばかりである事は忘れて、京一は言った。

京一は足元に気を付けつつ、体が揺れない体勢と位置を探す。
しばしもぞもぞと身動ぎしてから、落ち着くと、京一は鉄棒から手を離して立ち上がった。




「お、お、」
「危ないよ、京ちゃん」
「ヘーキ、だ、と、おっ」




片足を浮かせ、両手を飛行機のように左右に伸ばし、ぐらぐらと不安定な体勢。
鉄棒から地面までの高さは一メートルと少しだが、うっかり落ちて頭でも打ったら、先の尻餅の比ではないだろう。

結局、京一はそのままバランスを保てず、自ら地面へと飛び降りた。
危なげなく着地した京一に、八剣は浮かしかけていた腰をベンチに戻す。
その様子を見た京一が、拗ねたように唇を尖らせた。




「なんでェ。その辺のガキじゃねえんだから、オレがケガするようなドジする訳ねェだろ」
「それなら、良いんだけどね」
「高いトコくらい、なんともねーし。ガキ扱いすんなよ」




胸を張って得意げな表情をする子猫に、そうだね、と八剣は眉尻を下げて笑う。

─────その直後。




「…………!!」
「京ちゃん?」
「うにゃっ!」




ぼんっと京一の尻尾が膨らんで、かと思うと、京一は踵を返して一目散に駆け出した。
そのまま彼は公園を囲んでいる木の一本に駆け寄り、瞬く間にその天辺まで上り詰める。

八剣がベンチから腰を上げ、その木の下まで行くと、京一は尻尾を抱えるように丸めて縮こまっていた。




「京ちゃん」
「フ─────ッ!」
「……ん?」




膨らんだ尻尾を抱えたまま、京一は何かに向かって激しく威嚇する。
八剣は、子猫の視線を追って振り返った。

……そして理解する。


ハッ、ハッ、と舌を出して尻尾を振っている、大きな犬が一匹。
人懐こい顔をした雑種で、ふさふさと尻尾をぱたぱたと揺らしながら、八剣を見ている。

ばっちり目が合った後、犬はやはり尻尾を揺らしながら、八剣の下まで歩み寄って来た。
頭上から「フギャーッ!」と言う、泣き出しそうな声が響く。
八剣が膝を曲げて手を差し出すと、犬は其処に頭を摺り寄せる。




「首輪があるな。野良ではないか」
「フーッ!フギャーッ!」
「わふっ」
「フ────ッッ!!」




頭上で威嚇を続ける猫に対し、犬の吠える声は、なんとも暢気なものであった。
その差が無性に可笑しくて、八剣はくつくつと笑う。
それが聞こえたのか、頭上で子猫がより一層鳴き出した。




「フギャーッ!にゃ、フシャ────ッ!」
「はいはい」




くすりと笑って、八剣は犬の頭を撫でて、八剣は地面に落ちていた枝を拾う。
犬の鼻先でそれをちらちらと揺らせて見せ、犬の視線がそれを追うのを確認して、枝を遠くへと放り投げた。
犬は直ぐにそれを追って走り出す。

公園の反対側の茂みにその姿が見えなくなって、八剣は頭上へと視線を戻す。




「ほら、今の内だ」
「………」
「降りておいで、京ちゃん。早くしないと、犬が戻ってくるよ」




京一は、枝にしがみ付いていた。
尻尾はまだ膨らんでいるが、先程よりは幾らか落ち着いたようだ。

しかし、京一は全く動こうとしない。
どうしたのかと八剣が微かに首を傾げると、





「……………たけェ………」





へにゃ、と頭の上の耳も、膨らんでいた尻尾も、可愛そうにすっかり萎んで。
泣きそうな顔で見下ろす子猫を見て、八剣はつい吹き出してしまった。







子猫って、自分で得意げに高いトコ上って、降りられなくなるよね。
「どうしよう…」な感じで途方に暮れてるのが可愛い。
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ClaimhSolais 14

  • 2012/01/13 22:44
  • カテゴリー:龍龍
ファンタジーRPGパラレルの第十四話です。
やっと三人がまともに向き合いました。

01~10
11 12 13


ClaimhSolais 14

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ClaimhSolais 13

  • 2012/01/06 00:58
  • カテゴリー:龍龍
ファンタジーRPGパラレルの第十三話です。
ちょっと一段落。

01~10
11 12


ClaimhSolais 13

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[ちび京一]あなたの為の聖夜

  • 2011/12/25 00:18
  • カテゴリー:龍龍



クリスマス色に彩られた店の中をぐるりと見渡す。

壁にはリボンが巡らされ、窓辺には小さなサンタクロースやトナカイが並び、店内の真ん中にはクリスマスツリー。
ツリーの一番上には星が飾られ、その上の天井には、ミラーボールがきらきらと光りながら回っている。
いつもはどちらかと言えば質素な店内が、今日ばかりは賑やかなものになっていた。



数日前から『女優』は忙しなくなっており、朝から買い出しやら何やらとバタバタした日が続いていた。
それは全て今日と言う日の為のもので、手作りのクリスマスグッズ制作に精を出していたらしい。
その傍らで京一はと言えば、此方はいつもと変わらず、『女優』の側の河川敷で木刀を振っていたり、師に稽古をつけて貰って青痣を作っていた。

京一とてまだ10歳の子供であるから、クリスマスと言うものが楽しみでなかった訳ではない。
ぱっと見では興味のない素振りをしていた京一だが、それも生来の意地っ張りと天邪鬼、加えて育ち盛りの背伸びの所為だ。
内心では、運び込まれた日から、段々と着実に色付いて行くモミの木に、心躍っていた。


そしてクリスマスの当日。
京一は、今日ばかりは日課の稽古も休みにして、クリスマス一色の店内で楽しい一日を過ごしていた。




「はァい、京ちゃん、クリスマスプレゼントよォ」




そう言って大きな箱を京一に差し出したのは、アンジーだった。

自分の肩幅と同じだけの横幅のそれを、京一は受け取る。
大きさの割に重さはなく、ゆさゆさと軽く揺すってみるものの、中から音らしい音は聞こえない。


ソファに座ってラッピングを解き、箱の蓋を持ち上げると、綺麗に折りたたまれたタートルトレーナー。
手に取って広げようと持ち上げると、その下からジーンズが出てきて、京一はこれも一緒に箱から取り出した。

どちらも厚手で伸びの良い生地が使われており、よく動き回る京一の邪魔になる事もない。
トレーナーの背中には大きな英字ロゴが入っており、ジーンズにはベルトがついていて、光沢の良い黒皮で出来ている。
かっこいい、と小さく呟いた京一に、アンジーが嬉しそうに笑った。




「ねえ、京ちゃん。折角だから、着てみてくれない?」




京一はこの冬になっても、相変わらず薄着をしている。
日々を過ごす時に着ているのは、決まって家出の時に着ていた草臥れたトレーナーと緩んだジーンズ。
シャツ一枚でないだけマシかも知れないが、それでも夏から秋の時期頃にかけて着るものであったから、やはり防寒としては心許ない。
最近は朝夜の冷え込む間に寒さを覚えて、身を振わせる事も少なくなかった。

───そうした経緯から、京一に新しい服をプレゼントしよう、とアンジー達も思い至った訳である。



京一は着ていたトレーナーを脱いでソファに投げ、プレゼントのトレーナーに袖を通す。
もぞもぞとしばし奮闘した後、頭も潜らせて、ふぅ、と一息。

トレーナーは今の京一には少し大きなサイズで、袖も裾も長さが余ってしまっている。
けれども、京一は今こそが育ち盛りの時期だから、直に足りない分も届くだろうし、一年経つ頃には小さくなっているかも知れない。
京一は余った袖を見ながら、絶対でかくなってやる、とひっそり心に決意した。


余る袖は寄せ上げて、裾は今は諦める。
ジーンズは今から履き直すのは面倒なので、明日にでも履いた時にアンジー達に見せる事にしよう。

京一はソファーから下りて、自分を囲むアンジー、キャメロン、サユリの前で両腕を広げて見せる。




「どうだ?」
「あ~ん、似合ってるゥ!」
「やっぱり可愛いわァ」
「可愛いは嫌だ」
「怒っちゃいやん。格好良いわよォ、京ちゃん!」




アンジーにぎゅっと抱き締められて、頬を摺り寄せられる。
剃り残しのヒゲが少しちくちくと当たったけれど、今日は我慢する事にした。

アンジーばかりずるいと言うキャメロンとサユリにも抱き締められた。
相変わらずキャメロンの強力に潰されるかと思ったが、流石に彼女も、其処まで加減知らずではない。
白粉を塗ったサユリの手が、京一の耳にかかる髪を撫でて、くすぐったさに京一は目を細める。


一頻り京一を抱き締めて、納得したキャメロンとサユリが小さな体を解放する。
そのタイミングを見計らったように、ビッグママとアンジーが沢山の料理をテーブルに並べて行った。




「すっげー美味そう!」




テーブルに乗り出した京一は、今すぐにでも料理に食いつかんばかりの勢いだ。

アンジーはそんな京一を抱き上げてソファに下ろし、自分はその隣に腰を下ろして、皿とフォークを手に取る。
綺麗に盛り付けられた料理の中から、カリッと香ばしく揚げられた唐揚げを取り、




「はい、京ちゃん。あ~ん」
「あー」




子ども扱いするな、と言ういつもの背伸び盛りの台詞はない。
言えばきっと思い出して、真っ赤になって照れて怒るだろうから、誰もそれについては言わなかった。

京一は大きく口を開けて、差し出された唐揚げをぱくっと頬張る。
リスのように頬を膨らませてもごもごと顎を動かすのが、小動物のようで可愛らしい。
彼にそんな自覚はないし、これも言えば真っ赤になって怒り出すだろうから、誰も口には出さない。


口の中一杯に広がるジューシーな味わいに、京一も頬を染めて笑う。
言葉なくとも、全身で「おいしい!」を表現する子供に、『女優』の面々は皆夢中になっていた。




「次は何がいいかしら」
「あの団子みたいなの、なんだ?」
「じゃがいものニョッキね。ソースはママの手作りよォ、食べたい?」
「ん、美味そう!」




頷く京一に、じゃあアタシが、とサユリがフォークを手に、ニョッキの一つを取り上げる。
あーん、と促された子供は、今度も素直にぱかっと口を開いた。

その仕草だけで、アンジー達には可愛らしくて堪らない。





ケーキもあるからね、と言ったビッグママに、子供は嬉しそうに、にーっと笑った。







似たような話を春に書いたような気もするが、まあいいや!
って言うか、うちの『女優』メンバー+京一では、これ通常運転ですな。
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