翌日。やっぱり誰に聞いても何も分からない。進展はなかった。
何だか、ひどく怠い。
昨日、行動の愚かさを思ってしまった所為なんだろうか。
一週間何も見ず、何も考えず、ただひたすら突っ走ってた。
……疑問だって消えた訳ではない。
諦めた訳でも、勿論ない。
しかし、自分達に、それを解決するだけの能力があるのか、そこに自信を失ってしまっていた。
授業を終え、部活にも入っていないので素直に寮に帰る。
外出するのも億劫だし、取り立ててしたい事もない。
寮に入っている人間は学内の約半数。
基本は二人部屋なのだが、おれは今は一人きりで入っていた。
おれの同室者は郁也様だったから……。
初めから何もなかったかの様にマットだけが無造作に置かれたベッド。
その寒々とした情景には、未だに慣れない。
二人でも広いくらいだった部屋は、一人だと心許なくなる程だ。
お金持ちの学校な所為か、備え付けの調度の類は豪華だし、一部屋一部屋にトイレとシャワーが付いている。
浴場は別にあるけれど、冬以外は大抵部屋のシャワーで済ませていた。
この部屋が、今は全部おれ一人のもの……そう考えると、泣き出したい様な不安感に襲われる。
しかし、今はそんな事を頭から振り払い、明日の分の宿題を机に広げる。
やらなきゃいけない事は分かっているのにやる気は起きず、ぼーっとして空を見上げた。
眠いけれど、今の時間から寝ては明日学校に行けるかどうか分からない。
郁弥様が亡くなられてからというもの、おれはよく眠る事が出来なかった。
消灯時間に布団に入っても、何時間も眠れなくて結局朝日を見てしまったのは、つい一昨日の事だ。
たとえ眠れても直ぐに目が覚める。
あんまり寝覚めが悪いから、多分悪夢でも見たのだろうけど、内容は全く覚えていなかった。
精神的に参っている自覚はあるが……自分で思っている以上に危ないのかも知れない。
空の明るさが寝不足の目には辛い。
天気は良かった。
空に浮かぶ小さな雲を眺める。
窓は北側だから、光は入って来ない。
空の色に目が慣れたら、眺める余裕は出て来る。
……とても不毛だけど、こういった何もない時を過ごすのは好きだ。何も考えず、ただ無為の時を感じる。
ずっと張り詰めてばかりだと、おれも疲れ切ってしまう。
焦る気持ちはとても強いけれど、今現在出来る事がないのはおれの所為じゃない。
……そう、思いたい。
と、いきなりドアがノックされた。
「はい」
「寛希、僕です」
……昭隆様!
「どうぞ。ドアは開いています」
今更居留守は使えない。
何だか……嫌な予感がする。
「何か御用でしょうか」
「デートでもしませんか?」
少しほっとする。外出なさる気だったのか。
でも、お付き合いする気にはなれない。
「街で何処かの女性でも誘っては如何ですか」
「貴方と外出したいのです」
「生憎おれは忙しいので。宿題がありますから」
机に向き直ってノートに目を落とす。
「じゃあ、僕が手伝いましょう」
「結構です。自分でやらなくては意味がないでしょう」
とにかく、一刻も早く出て行って欲しい。
「……そんなに僕と一緒にいるのが厭なのですか?」
傷付いた様に言われる。諦めて振り向いた。
「そういう訳では……」
使用人扱いの身では、はっきり厭だと申し上げられないのが辛い。
カチャ。
「え?」
何? 今の音……。
昭隆様が近付く。
「別に、外出でなくても構いませんから」
にっこりと微笑まれる。鍵を閉められたらしい。
おれは昭隆様には決して勝てないのだ。
無理に鍵を開けに行く事も出来ない。
……溜息を吐くしかない。
奥様には申し上げられない関係……。
昭隆様が更に密接し、その唇がおれの首筋に降りる。
「厭です……」
力無い抵抗は許したも同然だと受け取られるのだろう。
「厭……」
手で昭隆様の顔を制しようと試みる。
でも、やはり抵抗しきれない。
昭隆様はおれがノって来るまで無理に抱こうとはなさらない。
でも、だからこそ逃れられなかった。
そもそも、十年の時をかけてゆっくりと深く構築されてしまった使用人根性で、主の系譜に連なる方に強く逆らえよう筈もない。
「少し、大人しくしていて下さいね。でなくては、貴方を傷付ける事になる。分かっているでしょう」
「放して下さい……」
藻掻きはしても、そんなもの意味を成さない。
それは結果として、昭隆様を煽る結果としかならないのだ。
そしておれは、触れて来る手に、唇に、身を竦ませるだけ。
行為はどんどんエスカレートして行く。
シャツを捲り上げられ胸の突起を吸われると、身体が撥ねた。
厭なのに……もう既に慣らされてしまっている自分がいる。
お家の方々に隠れて、もう三年以上になる関係。
それは決して短いものではなかった。
心は郁弥様のもの。
でも、身体は旦那様と……昭隆様のものだ。
昭隆様が本当に抱きたいのは郁弥様。
兄弟という以上の感情をお持ちだった。
でも、郁弥様のお身体にそんな事は出来なかったから……一番身近にいたおれに白羽の矢が立てられた。
昭隆様がご友人や本、雑誌、ビデオなどからそういう行為を知られて以来……折角二枚目俳優並の外見をしていらっしゃるのだ。
何処かの女性とでも遊ばれればいいのに、いつだって玩具で実験台になるのはおれ。
かなりの無茶をされた事も多い。
昔は逃げようと何度も思ったけれど、郁弥様がいらっしゃる限り踏ん切りは付かなかった。
郁弥様が丈夫になられれば共に逃げる算段もあっただろうが、もう亡き人だ。
そして、今のおれには逃げる気力もない。
おれは……一生このまま飼い慣らされ続けるのだろう。
唇を噛む。
声を上げそうになる自分が厭だ。
「んっ…………」
厭……。
顔面を掴んで引き離そうとする。
しかし爪で昭隆様の頬を引っ掻いてしまい、慌てて手を放した。
その手を掴んで、指先に舌を這わせられる。
背筋に震えが走った。
昭隆様はおれの身体をよく知っていらっしゃる。
おれ自身以上に。
口の中に骨張った指が入り込む。
口内をなぞられる。
思わず感じて鼓動が撥ねる。
……しなくてはならない事は分かる。
指に舌を絡めた。
よく唾液を絡めないと、辛いのはおれなんだ。
ぴちゃぴちゃと自分が立てる音に、耳からも犯されている気分になる。
乱暴にベルトが外され、ホックも外される。
ズボンのファスナーを下げられ、そのまま脱がされた。
下着も取り去られる。
上半身は服を着たまま…………変態くさいのにも程がある。
「ふぁ……」
おれの男の証に指が絡む。
口の中から出て行った指。そのぬめりを借りて軽く扱く。
おれは直ぐに昂まった。
堪えるつもりは元よりない。
それより、早く終わりたかった。
「このままでは汚れてしまいますね」
手が止まる。
促す様に、無意識に腰が動いた。
「……ちょっと我慢して下さい」
「えっ? ……っぁ!」
突然局部に痛みと圧迫感が走る。
阻まれた射精感が身体の中で渦巻く。
「昭隆様っ!」
黒い紐の様なものが巻き付いている。
ゴム、か。輪ゴムではない。
何の用があってそんなものを持っているのか……髪を括るゴムだ。
輪ゴムよりは幾分マシだが…………。
退けようと藻掻く手を制される。
「ちゃんと後で外してあげますから。我慢しなくては汚れるでしょう?」
「どうせ……どのみち……」
堰き止めたって、透明な液体は止め処なく溢れてくる。
要するに、只単に昭隆様が遊びたいだけなんだ。
だったら、妙な言い訳なんて作らずに、はっきりそう仰って下さればいいのに。
どうせ、おれは大した抵抗なんて出来ないんだから。
「っや……ぁ……」
ゆっくりと、形を辿る様に指先でなぞられる。
何度も何度も行き来して、おれを煽る。
自分の上げる甘い声に気が遠くなる。
厭……厭……いやぁ…………っ……!
立っていられなくなって昭隆様に縋り付く。
「どうしました?」
声が笑っている。
「どうして欲しいのです?」
「……昭……隆様……お願…………」
言葉が上手く紡げない。息が完全に上がってしまっている。
「いやっ……ぁ……あぁ……」
指の腹で先端を弄ばれる。
より強く、昭隆様に縋った。
それでももう自分を支えられず、ずるずると床に膝を付く。
「仕方ないですね。それでは、ちゃんと僕に奉仕出来たら、許してあげますよ」
言われて、ズボンのファスナーを降ろそうとする。
と、手を制された。
「口だけで、どうぞ」
……どうしてこの方は、そういうプレイがお好きなんだろう……。
でも、おれが何を言っても無駄だ。
大人しく従う。
顔を寄せ、歯で噛んでファスナーを下げる。
ボタン、外しにくいな……。
それでも何とか外し、どうせこの後の事もあるだろうからズボンも下げる。
そして、顔を潜り込ませる様にトランクスの中へ……。
おれより二周り程大きいそれは、もう随分整って来ている様だった。勃ち上がりかけている。
「ふっ…………ぅ」
手を使わずに銜える。舐めにくいな……。
慣らさせられたから、何とかなるけれど……。
裏の筋を舌で丁寧に舐め上げる。
ごく軽く歯を立て、先端を吸う。
更に熱を孕み、口の中で大きくなる。
嘔吐感が迫り上がって来たが、流石に吐き戻す訳にもいかない。
上から見下ろされている視線を感じる。
こんな浅ましい、恥ずかしい姿を見られている……その事に妙な興奮を覚えていた。
そう躾けられたのだ。
……そう思う事が、自分にとってはある種の免罪符となっている。
早く達して頂いて、おれも解放されたい……そうして、精一杯ご奉仕する。
「んっ……くっ」
一際大きく……昭隆様は僅かに胸を喘がせて果てられた。
えぐくて青臭い……はっきり言って不味いものが口の中に広がる。
吐き出したくても許されない。
嘔吐感さえも超えた、気が遠くなる様な感覚に襲われながら飲み込む。
期せずして、一筋唇の端へ洩れる。
昭隆様の指が軽くそれを拭った。
「よく出来ました」
郁弥様が亡くなられてまだ一週間しか経たないのに、昭隆様の行為はエスカレートしている様に思う。
元々変わった事がお好きではあったけれど、何だか数日前から妙に大人……と言えば聞こえはいいが、親爺くさい様な気がする。
「さて、どうぞイって下さい」
顎で示す。
して……くれないらしい。
ゴムを外そうと手を遣る。
でも、指が震えて上手く出来ない。
「うっ……ん……」
鬱血してる。
涙が込み上げて来た。
痛い。
苦しい。
楽になりたいのに……昭隆様は只薄笑いを浮かべておれの痴態を眺めている。
羞恥に目が眩んだ。
おれがお願いするのを待っているんだろう。
抗いたいけれど…………限界だった。
「昭隆様……お願いです…………もう」
「どうして欲しいのです」
たった一言が言えなくて顔を背ける。
「ちゃんと言わなくては分かりませんよ」
「お……ねがっ…………」
声が震える。
込み上げる羞恥に消え入ってしまいたくなる。
頭の芯が次第に痺れて来るのを感じた。
「外し……て…………」
ひどく息が乱れる。
「僕の目を見てお願いして下さい」
抗えない。
緩慢に顔を向けた。
目が合う。
昭隆様は微笑まれた。
嫌い……だ。こんな表情。そして、それに媚びようとする自分も。
けれど、もういい加減限界だった。
じっと昭隆様を見詰める。
辛くて涙が込み上げて来た。
身体の中で耐え難い欲求が蜷局(とぐろ)を巻き、おれを飲み込もうとしている。
「お願い……ほ……どい……っ……下さ……」
「よく言えましたね」
屈辱と安堵。
相反する二つの感情に苛まれながら一線を越える。
酷薄な笑み。
昭隆様は屈まれ、目線をおれと合わせられた。
冷たい手の甲で頬を撫でられる。
抱き寄せられながら股間に手が伸びる。
「っぁ……」
分かっていても身体が竦み、太腿を合わせてしまう。
昭隆様は、可笑しそうに声を立てて笑われた。
「足を開いて。でなくてはどうしようもないでしょう」
「は……い……」
顔を背ける為に昭隆様に縋り付く。
肩に頭を預け、決して昭隆様が見えない様にする。
そして、怖ず怖ずと足を開いた。
どうしても慣れる事が出来ない。
ぎゅっとを目を瞑る。
「っや……ぁ……」
鬱血が過ぎて、少し触られるだけでも痛い。
痛い上に過敏になっていて相当辛い。
思わずしがみつく腕に力が入る。
「貴方は…………いつまで経っても初々しいのですね」
「痛いっ!」
爪を立てる様にゴムに指を引っ掛けられる。
外す段取りとして仕方がないのは分かるけれど…………思わず悲鳴を上げてしまう。
涙が滲む。
瞬きをして雫を落とした。
「我慢して下さい。顔を良く見せて……」
身体を僅かに離されて目が合ってしまう。
受け入れられなくて、また目を閉ざした。
「可愛らしい方ですね、全く…………」
分かってる。
おれが怯えたり、苦しそうにしてたり、昭隆様はそういうのがお好きなんだ。
分かってても、結局おれには同じ様な反応しか出来ない。
恥ずかしがらせたり、痛がらせたり…………どれだけ拒んでも、だからか余計に喜ばれてしまう。
この方のこの性癖だけは何とかならないものかと思う。
でも、おれに言える事なんて何も…………。
それに、まだ凝ったお道具を持ち出されたり、縛られたり、といった事はないから…………マシ、だ。
そう思わなくては、おれは生きても行けなくなってしまう。
「やっだ……ぁっ……」
ゴムを引っ張られる。
声が厭でも引き攣れた。
解ける。
そう思った瞬間、視界いっぱいに何かが弾ける。
達してしまっていた。
開放感に荒く安堵の息を吐く。
「おや……早かったですね」
先を指先で拭われる。
そこはまだ過敏で、思わず身体を震わせた。
「やはりまだ足りない様ですね。今度は……何処に欲しいのです?」
昭隆様が待っている言葉は知ってる。
でも言える訳ない。
絶対言えない!
強く頭を振る。
「……そうですか。なら、ちゃんと欲しがれるよう、お手伝いしてあげましょう」
……楽しんでる。
何年経っても慣れる事が出来ない自分自身が一番悪いんだろうけど、でも…………。
「そのまま後ろを向いて。立って、ベッドに手をついて下さい」
それって…………。
顔から火を噴きそうだ。
それでも、逆らえない……。
「そう、足を開いて……」
言いなりに従う。
屈辱的なだけではなく、ひたすらに恥ずかしい。
当然自分でも見た事なんてある筈もないところを見られているのだ……。
「ちゃんと出来るではありませんか」
突き出す様な形になったところへ息が触れる。
身体を縮まらせた。
「ひぅっ…………」
湿り気のあるものがそこに当たる。
見なくたって分かる。舌だ。
「ここは正直なのですよね、貴方は」
入り込んで来る。
手元のシーツを握り締めた。口にさえ含んで噛む。
「っん……く……」
気持ち悪い…………でも、それだけじゃない。
すっかり慣らされて、もう、自分でもどうしようもなかった。
「あっ…………ぁあ……」
身体が震える。
自分が恨めしい。
もう一度勃ち上がりつつある。
感じたくなくても、身体は正直だった。
「い……いや……ぁ」
「力を抜いて。辛いのは貴方ですよ」
指が差し込まれて……膝ががくがくと、身体を支えられない。
両腕だけで支える。それでも堪えられなくて床に膝を着いた。
「そう。そのまま……」
くいっと中で指が曲げられる。
昭隆様はおれの身体を熟知されている。
シーツを握り込む。
身体に力が入るとそれだけ締め付けてしまう。
細いとはいえ指の存在が恐ろしい。
……違う…………違う。
浅ましさを見せる自分が怖いんだ。
自制の効かない自分が。
「はっ……ぁ……」
抜き差しが繰り返される。
くちゅくちゅと濡れた卑猥な音が聞こえていた。
熱い息が洩れる。
頬をベッドに押し付けた。
そうすると却って腰を上げる結果となってしまう。
更に身体に力が入ってしまった。
「可愛いですよ、寛希」
昭隆様の呼吸も荒い。
……興奮していらっしゃるなら、早く終わらせて下さればいいのに。
「よく緩んでいますね。僕の指をちゃんと奥へ引き込もうとしている。もう……大丈夫かな」
どうしてそんな恥ずかしい事を臆面もなく仰れるんだ?
「うぅ……んっ」
指が出て行く。
安堵したのは束の間、そこにぴたりと熱いものが当てられる。
「まっ、待って下さ…………っあぁぁっっ!!」
いっ、痛いっ!
呼吸のタイミングが合わない。
分かっていても身体に力が入って抜けない。
太さに慣れず、張り裂けそうだ。
……今や、昭隆様のでそうはならないって……分かってはいるけど…………もう少し緩めてからだって……。
身体の震えが止まらない。
シーツを手繰り寄せ、更に口に詰め込んだ。
強く噛めるものが欲しかった。
「声が聞けないではありませんか」
無理にシーツが引き出される。
布は口の中の水分を吸って擦られる。
そしてこの感じ…………ぞくりと背筋に走り抜ける感覚。悪寒だと思いたいけれど、身体は確かに反応していた。
視界に入る昭隆様の服の袖……着たまま、嬲られているのか…………。
間を考えると、ズボンもちゃんとは脱いではいらっしゃらないのだろうな。
より羞恥心と屈辱感を煽られる。
身体が自然に強張った。
「力を抜いて下さい。そのままでは……貴方も辛いでしょう……?」
昭隆様も苦しそうでいらっしゃる。
「うっ……うぅ……」
ゆっくりと抽送を開始される。
それと同時に、前を弄られた。
後ろの痛みと感覚には気を遣りたくなくて、意識を前に集中させる。
昂ぶる身体とは裏腹に、心は冷めたままだった。
喘ぎも洩れるし涙も溢れる。
身体も震える。
だけど……それは殆ど生理的なものだ。
厭でも身体は慣れる。
「あっ……あぁっ!」
堪える事もせず、達しようとしたところを抑えられる。
根元を強く掴まれていた。
「はな……しっ……」
「くっ……でも、まだ早過ぎますよ」
……昭隆様だって、十分お苦しそうなくせに。
「あぁ……っふ……」
次第に昭隆様の動きが激しくなって行く。
感覚に翻弄されながらも、やっぱりおれは……身体以外、何も感じる事が出来なかった。
動物の交尾。
その他の何だというのだろう。
「ひぁっ」
ずるりと引き抜かれる。
腸まで引き擦り出される様な感覚に吐き気がする。
熱い迸りが背にぶちまけられた。
そして、おれの前を押さえていた手が放される。
「あ……ぁあ…………」
熱い衝動も何もない。
ただ、突然の開放感に安堵して欲望を吐き出す。
そのまま、ベッドに突っ伏した。
昭隆様が離れて行かれる。
そして少しごそごそいう音が聞こえたかと思うと、背に何かが触れた。
「ああ、動かないで下さい。拭きますから」
「はい……」
溜息を吐く。
全身が怠い。
起きて自分で処理をするだけの気力はなかった。
……中で出されなかったのは、昭隆様なりの気遣いなのだろう。
感謝……しなくてはならないのだろうか。
「シャワー、使いますか?」
「…………後で……」
「では、借りますね」
衣擦れの音が聞こえる。
そして、部屋に備えられているシャワー室のドアが開き、暫くすると水音が聞こえて来た。
…………おれ、一体を何やってるんだろう。
あーあ……シーツ、洗わなきゃな…………。