こんなん観ました

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The Pacific

2010.05.16 Sunday | TVシリーズ

『The Pacific』HBO公式サイト

(2010年)
『Band of Brothers』を手がけたトム・ハンクス&スティーヴン・スピルバーグのタッグによる、第二次世界大戦:日米沖縄戦を描いたドラマシリーズ。全10話完結。

同じ製作者というだけあって構成などは『BoB』に酷似しているが、『BoB』に比べると「戦場の絆」的描写にはさほど重点を置いておらず、同じ戦争ものでも毛色はかなり違う感じ。家族や恋人など、戦場の外でのドラマに割かれている時間が多いのも特徴。
一応メインとなる登場人物は数人いて、彼らそれぞれに焦点をあてたエピソードはあるものの、私は観ていてそれほど感情移入はしなかった。
まぁもちろん、日米戦争がテーマになっているだけに、自分が無意識にでもアメリカに対して構えて距離を置いた見方をしていたせいもあるだろうけど。

トム・ハンクス本人が語っていたように、この物語は故意に一方的なアメリカ側の視点からのみで描かれている。本人評通り、それが結果として公平な視点になっているかどうかはともかくとして、
「太平洋戦線で戦ったアメリカ兵たちの勇敢さを称えたい気持ちはある。 しかし同時に、アメリカ兵が日本の人々に何をしたか、ということも知ってもらいたい」
……とのことで、確かにアメリカ兵の残虐行為などは(アメリカ視点で描かれたものにしては珍しく)かなりグラフィックに描写されている。が、しかしそれも、日本兵側の残酷さや不気味さをさんざん植え付けてからという前提があるため、「こんな残虐で得体の知れない野蛮なサルどもには、こちらも多少非人道的なことをしても仕方ないよね!」と思わせるような言い訳めいた逃げ道を作ってあるのが、姑息といえば姑息。
アメリカ兵が民家で死にかけた日本人女性の最期を看取ったり、銃弾の飛び交う中、民間人の子供を助けに飛び出そうとしたり……などといった場面を効果的に入れてくるあたり、なんだかんだいってもやっぱりアメリカを悪者的に描くのは抵抗があるとみえる。

ラストでのアメリカによる原爆投下も、終戦の決定打となった大きな攻撃だったにも関わらず、扱いはものすごくあっさりしていた。
「どでかいの落として決着」という単純なものではない、日本はここからがまた別の地獄だったのだと思うと、物語が終戦ムードできれいにまとめに入っていく一方、日本人の私はどんよりと気が沈んだままだった。

兵士たちにしてみれば、「やらなければ自分がやられる」というのが真実であり、人道だとか倫理だとかよりも自身や仲間が生き延びることで精一杯だったのだから、実際に戦った人々についてとやかくいう気は私にももちろんない。彼らは“英雄”ではないだろうが、敬意は表されて然るべきだと思う。
だけどこのドラマに関していえば、日本人としては観た後になんとも形容しがたいモヤモヤが残るし、公平な視点で描かれているかと問われればやはり微妙で、首を縦には振れない。どうせなら、これと同じボリュームで日本側の視点から描いたものも作るってのはどうでしょう、ハンクス&スピルバーグ監督。クリント・イーストウッド作品の真似になっちゃうかもしれんけどw
というかいっそ、「日本側バージョン」を日本が製作しちゃえばいいのにと思うけど、これと同じ規模で作れってのは無茶な希望か……

そんなわけで内容的には多少しっくりこないものが残るけど、いろいろと考えさせられるという点では非常に興味深いし、作り手のこだわりや思い入れは感じた作品だった。
それにしてもこのドラマの中で、「Jap」って侮蔑語1000回以上は聞かされたんじゃないだろうか。そういう内容だから仕方ないとはいえ、聞いてるこっちにしてみればどうしても流せず反応しちゃうわけで、そこもけっこう試される要素だったなぁw

マイ評価:★★★★☆
author : 四葉 | - | -