DVDで鑑賞。
これと対になっている『Flags of Our Fathers(父親たちの星条旗)』もかなりいい作品だったが、心に訴えかけてくるものの強さとしては個人的にこちらのほうが上。
自分が日本人であるというのも、もちろん評価に多少は影響していると思うけど。
主要キャラを日本人俳優でかため、劇中の台詞も90%以上日本語。
これがアメリカ人の監督によって作られた映画であるということをときどき忘れそうになるくらい、『日本映画らしさ』にこだわって作ろうとした姿勢がうかがえる。
実際の出来事とは違っていたり、かなり飛躍した設定をつけられていたりする部分もあるのだろうが、それはやっぱり「映画だから」と割り切って観るのも大事だと思う。
ただ、主人公の西郷があまりにも現代人的すぎたのが残念!
なんだか、「現代からタイムスリップしてきた男の視点」で物語を見ているような感覚があり、それがところどころにうっすらと違和感を与えていた。
戦闘や日本軍の自決場面などでは、かなり生々しい表現も。
実際にこうして散って行った方々のいることにとても胸が痛む。
戦場で獣のようになる者、正常な判断力や倫理観が麻痺していく者、ぎりぎりでも人間らしさを失わずにいられる者。
敵を惨殺する者がいる一方で手当てをする者がおり、国のために死ぬことこそが華と信じる者がいる一方で、死にたくない、生きて帰るのだと命にしがみつく者もいる。
敵味方関係なくどちらにも存在するそんな人々、そして物語の大事なキーアイテムとなる様々の『手紙』に、「兵士も一人の、普通の人間なのだ」ということを改めて思い知らされる。
戦争映画ではどちらかの国が一方的な視点で悪者のように描かれることが少なくないが、国というレベルではあくまでも一歩引いた視線で、そして兵士個人に対しては丁寧にクロースアップした視線で、作り手の思い入れを込め丁寧に描かれている本作はとても好感が持てた。
鑑賞後に『実際の硫黄島』に興味を持ち、ネットなどであれこれ調べてみた人は多いのではないか。私もその一人。
マイ評価:★★★★☆
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