TVで鑑賞。
夜中に眠れなくてチャンネルサーフ中、HBOでの放映をキャッチ。
寝るまでの繋ぎに……と気軽に観始めたつもりが引き込まれ、けっきょくそのまま最後まで観てしまった。気づいたら朝方w
寝不足にはなったけど、観てよかったぁぁああ! と思える映画だった。
たまたまやっているのを偶然という形でこういういい作品に巡り会うと、ものすごく得をした気分になる。
自分とは違う、もしくは一般に『普通』とされる基準から外れた相手に出会ったとき、多くの人の反応は驚き言葉を失うか、あからさまな奇異の目を向けるか、あるいは不自然に目を逸らすか、に分類されると思う。心構えもないままいきなりの対面であれば、それもある意味仕方のない反応といえるかもしれない。
結合体双生児のブレイクとフランシスに出会ったペニーも、初めはただ驚き混乱し、どうしていいかわからず黙って逃げ出してしまう。
バッグを忘れていなければ部屋に二度と戻っては来なかっただろうし、具合が悪くなっているのを発見したりしなければ、その後双子と係わることもきっとなかったはずだろう。
でもその最初の驚きを乗り越えてしまうと、知り合いの医者を部屋に呼んでやったり、病気の双子の看病をして朝までついていてやったりと、ペニーが本来もつ優しさや思いやりが自然と顔を出してくる。
後日の再会、ハロウィンの夜に双子と町へ繰り出してデートをしたり、自宅によんでギターをおしえてもらったりしているのも本当に嬉しそう。
彼女が双子に向ける興味は『フリークス』に対するそれではなくて、ただ単に好意と関心をもった相手に対するものと何ら変わりはない。
ブレイクの足の爪にエナメルを塗ったり、「フランシスも感じるかしら」「大丈夫じゃないかな」とこっそりキスをしたり(即座にフランシスに気づかれてはいたけど)するシーンは、状況だけ見れば確かにかなり変わってはいるのだろうけど、普通にドキっとさせられる。
娼婦の化粧の奥に隠していたペニーの素顔はとても純粋であたたかで、ブレイクが彼女に惹かれていく一方、それを最も間近で見ているフランシスは男女として仲を深めていく二人に嫉妬する。
「自分たちの体が別々であったなら」という思いを、ペニーと出会ったことでおそらくは生涯最も強く意識する双子。
誰よりも近い存在で文字通り一心同体、かけがえのない大事な存在でありながら、しかし同時に離れたくとも離れられない、ときに疎ましくさえある自分の分身。
双子の抱えたもどかしさや悲しさや痛みがとても切ない。
その間にも、もともと弱かったフランシスがどんどん衰弱していく。
「この世に生まれたのも同時なら、退場するときも一緒だ」とブレイクは誓うが……
クライマックスに訪れる長い暗転と沈黙。
ひっそりとしたラストはしみじみともの哀しいけれど優しい。
ブレイクがぽつぽつと語る『列車の音の話』がじんわりと痛い。
マイ評価:★★★★☆
<<続きを畳む