白い喉に柔らかく噛み付くと、グラハムはひっと息を詰めてみせた。
セックスの最中だけ不可思議なマゾヒズムを見せるのは、彼が普段捕食者の立場だからなのか。
決して口には出さないが、グラハムは、今このときだけはどれだけ嗜虐してもノーを言わず、むしろよく鳴いた。
あの日から、彼は変わってしまった。
否、変わったふりをするようになった。
突き付けられた歪みそのものを体言するかのように、まがまがしい仮面をつけた。
ただ唯一僕の前でだけは仮面を外してみせ、懺悔を吐露するかわりに嬌声を吐き出す。
僕は決してサディスティックな性交が好きなわけではなかったが、啜り泣くグラハムを見ていると、そうしてやるのが良いように思えて、体を痛め付けるでなく、言葉で何度も彼を虐めた。
他愛のない話で談笑して、部屋の明かりもそのまま、彼は僕を誘って来た。
付け足すならば、今日1番初めに顔を突き合わせたときから、瞳は潤んだ膜を張っていたのだ。
ベッドに座る僕が伸ばした脚の上、両の膝を跨いで彼は膝立ちし、緩慢な動作で自慰をしている。
それも自分のペニスに対してでなく、僕が手渡したディルドで、アヌスを自分で犯すことによって、だ。
悪趣味な鈍さで光るそれを、羞恥心と戦いながら懸命に動かす。
背中側から利き手をまわし、滑り落ちた腺液とローションでぬめる持ち手を引いては自分の内に突き立てる。
内股が引き攣っては腰が揺れ、否定できぬ高揚感を振り払いたがる彼は、子供のような拙さでいやいやをしてみせる。
「どうして、こんな綺麗な顔を隠したりするんだい」
「あッ…ア、う」
前触れなしに性器に触れると、赤い先端の割れ目からまたぷくりと透明な雫が生まれて落ちる。
そこに親指を突き立てて弄ってやると声にならぬ喘ぎは上ずって、つられるようにその美しい体躯が仰け反った。
細身の骨格に鍛え抜かれた筋肉がなだらかに隆起し、あくまで実用のための、軍人の肉体として完成され、仕上がった白い四肢。
答えることが出来ない彼の前を、いいように擦り上げる。
セックスの最中だけ不可思議なマゾヒズムを見せるのは、彼が普段捕食者の立場だからなのか。
決して口には出さないが、グラハムは、今このときだけはどれだけ嗜虐してもノーを言わず、むしろよく鳴いた。
あの日から、彼は変わってしまった。
否、変わったふりをするようになった。
突き付けられた歪みそのものを体言するかのように、まがまがしい仮面をつけた。
ただ唯一僕の前でだけは仮面を外してみせ、懺悔を吐露するかわりに嬌声を吐き出す。
僕は決してサディスティックな性交が好きなわけではなかったが、啜り泣くグラハムを見ていると、そうしてやるのが良いように思えて、体を痛め付けるでなく、言葉で何度も彼を虐めた。
他愛のない話で談笑して、部屋の明かりもそのまま、彼は僕を誘って来た。
付け足すならば、今日1番初めに顔を突き合わせたときから、瞳は潤んだ膜を張っていたのだ。
ベッドに座る僕が伸ばした脚の上、両の膝を跨いで彼は膝立ちし、緩慢な動作で自慰をしている。
それも自分のペニスに対してでなく、僕が手渡したディルドで、アヌスを自分で犯すことによって、だ。
悪趣味な鈍さで光るそれを、羞恥心と戦いながら懸命に動かす。
背中側から利き手をまわし、滑り落ちた腺液とローションでぬめる持ち手を引いては自分の内に突き立てる。
内股が引き攣っては腰が揺れ、否定できぬ高揚感を振り払いたがる彼は、子供のような拙さでいやいやをしてみせる。
「どうして、こんな綺麗な顔を隠したりするんだい」
「あッ…ア、う」
前触れなしに性器に触れると、赤い先端の割れ目からまたぷくりと透明な雫が生まれて落ちる。
そこに親指を突き立てて弄ってやると声にならぬ喘ぎは上ずって、つられるようにその美しい体躯が仰け反った。
細身の骨格に鍛え抜かれた筋肉がなだらかに隆起し、あくまで実用のための、軍人の肉体として完成され、仕上がった白い四肢。
答えることが出来ない彼の前を、いいように擦り上げる。
「っん…く、あ、ぁ」
彼の眉間には、4年前のガンダムとの最終戦闘で入った傷がある。
が、目立たないといえば嘘になるものの、人に不快感や嫌悪感を与えるようなグロテスクなキズでも、大きな傷でもなかった。
むしろ、現代医学の粋によれば、その傷跡すら消し去ってしまえるはずのものなのに。
体勢を立て直したのを見取り、裏筋を強めに指で辿ってやれば、今度は前に崩れ落ちそうになる。
その身体を受け止め、背中を抱いてさすってやりながら、まだもう片方の手はペニスを弄るのをやめない。
「理由を、教えて」
「そ、っ…あ、カタ…っリ、も…」
肩から肩甲骨、背骨、首筋、臀部、どの部分を切り取っても美しいその体の芯を確かめるように、僕は手を滑らせる。
じりじりと、ろうそくの炎が芯を燃やすような緩やかさで。
「教えてよ、グラハム」
余すことなく鍛えられた肉体の、引き締まった双丘を割り、彼が玩具を受け止めているそこへと指を這わす。
やはり焦らす速度でゆっくりと、ディルドを引き抜いた。
自らの手で存分に解きほぐした肉壁を、意地悪く擦りながら、ディルドは出てゆく。
「あ、あ、あ…!」
性器を模した玩具の先端部分が、彼の好きなところにあたるのだろう、こらえ切れずグラハムは目の前にあった僕の肩、白衣を噛み締めている。
「…教えて?グラハム」
漸く全てを彼の体内から抜き切り、僕はもう一度彼に尋ねた。
その快感ゆえにぼろぼろと零れた涙と唾液で、僕をうかがう彼の顔はべちゃべちゃになっていた。
あの頃から大人気ないところはたくさんあったけれど、4年経った今でも、自制のきかないところや我慢がきかないところは、ちっとも変わっちゃいない。
むしろ、僕と身体を重ねるがゆえに、もっと我慢弱くなってしまったのではないか。
…僕の前で、だけ。
仮面を外すときだけ。
「醜い、からだ」
ゆるゆると口を開くと、彼はか細い声でそう言った。
僕がひどく悲しくなって、そんなことはと言うと、彼は首を横に振った。
癖で跳ねるハニーブロンドは無邪気なままなのに、いつだって彼は苦しそうだ。
「わたし、の内面の…醜い、歪みが、外に出やしまいかと…」
仮面をつけることで、自分を戒め、その醜さを押し込めているのだと。
僕は、あの仮面こそが、彼を苦しめているのではないかとずっと考えている。
けれど、彼が悲壮なまでに僕に居場所を求め、縋りつくのを見ていると、その真実すら彼を苦しめてしまうのではないかと思って、一度も言い出せなかった。
「ごめんね」
何かにずっと胸を痛め続けるのであれば、僕はせめて彼がほしがるものを全部与えて、救いになってやりたかった。
刺さり続けた棘の痛みが消えることなど、本当は有りはしないのだ。
僕が彼に対してそうしてやりたいと思っている本来の丁寧さでもって、僕は彼の腰を抱いた。
スラックスの前を寛げ、彼の痴態だけで勃起してしまった性器を取り出す。
ひくつく彼の尻へあてがうと、またグラハムの喉が鳴る。
「あ、カタギ、リ、あ…あ…!」
「っ、グラハム…!」
肌に馴染んだ暖かいローションの滑りで先端は簡単に彼の中へ侵入を果たす。
彼は押し広げられる感覚に喘ぎ、僕は包み込む粘膜の感触にめまいを覚えた。
少しの窮屈さを伴って、それでもなお彼の身体は僕を根元まで飲み込んだ。
は、と一息ついたのもつかの間、僕が下から腰を揺すると、彼の声が弾む。
もう何年となく犯した彼のその部分、もっとも好きなところを、容赦なく突き上げては腰を引き、押し付ける。
溶けそうなほどの熱量で。
動きに合わせて結合部から漏れる水音は淫靡で、同じタイミングでグラハムが声を上げ、仰け反り、無意識に腰を動かす。
「は、…ふ、ぁ」
僕は熱の篭もる呼気を吐き出し、彼は意味を成さない本能的な声を上げ続けた。
お互いの絶頂は、近づく足音が聞こえそうなほどに近くまでやってきている。
眉間の傷を指でなぞれば、彼は瞳を細めて艶然と、だがしかし悲しそうに笑ってみせた。
彼の濡れたペニスに指を絡めると、嬌声が上手く吐き出せずに彼がえづきはじめ、僕にしがみつく。
それを合図に最奥へと衝動を叩き込むと、絡めた指の中で、彼の熱が弾けた。
僕だって、失わずに済んだわけではなかったけれども、多数のものを立て続けに喪失した彼は、もう充分に苦しんだはずだった。
忘れてはいけないと自分を律し戒めるその潔さは彼の美徳であったけれど、それを見ている僕にはとてもつらいものだった。
「…君はもう、そこに立ち止まり続けなくたって、いいんだよ…」
寝息を立てる彼が、寝たふりをしているのか本当に眠りの世界に居るのかは、分からなかった。
彼の眉間には、4年前のガンダムとの最終戦闘で入った傷がある。
が、目立たないといえば嘘になるものの、人に不快感や嫌悪感を与えるようなグロテスクなキズでも、大きな傷でもなかった。
むしろ、現代医学の粋によれば、その傷跡すら消し去ってしまえるはずのものなのに。
体勢を立て直したのを見取り、裏筋を強めに指で辿ってやれば、今度は前に崩れ落ちそうになる。
その身体を受け止め、背中を抱いてさすってやりながら、まだもう片方の手はペニスを弄るのをやめない。
「理由を、教えて」
「そ、っ…あ、カタ…っリ、も…」
肩から肩甲骨、背骨、首筋、臀部、どの部分を切り取っても美しいその体の芯を確かめるように、僕は手を滑らせる。
じりじりと、ろうそくの炎が芯を燃やすような緩やかさで。
「教えてよ、グラハム」
余すことなく鍛えられた肉体の、引き締まった双丘を割り、彼が玩具を受け止めているそこへと指を這わす。
やはり焦らす速度でゆっくりと、ディルドを引き抜いた。
自らの手で存分に解きほぐした肉壁を、意地悪く擦りながら、ディルドは出てゆく。
「あ、あ、あ…!」
性器を模した玩具の先端部分が、彼の好きなところにあたるのだろう、こらえ切れずグラハムは目の前にあった僕の肩、白衣を噛み締めている。
「…教えて?グラハム」
漸く全てを彼の体内から抜き切り、僕はもう一度彼に尋ねた。
その快感ゆえにぼろぼろと零れた涙と唾液で、僕をうかがう彼の顔はべちゃべちゃになっていた。
あの頃から大人気ないところはたくさんあったけれど、4年経った今でも、自制のきかないところや我慢がきかないところは、ちっとも変わっちゃいない。
むしろ、僕と身体を重ねるがゆえに、もっと我慢弱くなってしまったのではないか。
…僕の前で、だけ。
仮面を外すときだけ。
「醜い、からだ」
ゆるゆると口を開くと、彼はか細い声でそう言った。
僕がひどく悲しくなって、そんなことはと言うと、彼は首を横に振った。
癖で跳ねるハニーブロンドは無邪気なままなのに、いつだって彼は苦しそうだ。
「わたし、の内面の…醜い、歪みが、外に出やしまいかと…」
仮面をつけることで、自分を戒め、その醜さを押し込めているのだと。
僕は、あの仮面こそが、彼を苦しめているのではないかとずっと考えている。
けれど、彼が悲壮なまでに僕に居場所を求め、縋りつくのを見ていると、その真実すら彼を苦しめてしまうのではないかと思って、一度も言い出せなかった。
「ごめんね」
何かにずっと胸を痛め続けるのであれば、僕はせめて彼がほしがるものを全部与えて、救いになってやりたかった。
刺さり続けた棘の痛みが消えることなど、本当は有りはしないのだ。
僕が彼に対してそうしてやりたいと思っている本来の丁寧さでもって、僕は彼の腰を抱いた。
スラックスの前を寛げ、彼の痴態だけで勃起してしまった性器を取り出す。
ひくつく彼の尻へあてがうと、またグラハムの喉が鳴る。
「あ、カタギ、リ、あ…あ…!」
「っ、グラハム…!」
肌に馴染んだ暖かいローションの滑りで先端は簡単に彼の中へ侵入を果たす。
彼は押し広げられる感覚に喘ぎ、僕は包み込む粘膜の感触にめまいを覚えた。
少しの窮屈さを伴って、それでもなお彼の身体は僕を根元まで飲み込んだ。
は、と一息ついたのもつかの間、僕が下から腰を揺すると、彼の声が弾む。
もう何年となく犯した彼のその部分、もっとも好きなところを、容赦なく突き上げては腰を引き、押し付ける。
溶けそうなほどの熱量で。
動きに合わせて結合部から漏れる水音は淫靡で、同じタイミングでグラハムが声を上げ、仰け反り、無意識に腰を動かす。
「は、…ふ、ぁ」
僕は熱の篭もる呼気を吐き出し、彼は意味を成さない本能的な声を上げ続けた。
お互いの絶頂は、近づく足音が聞こえそうなほどに近くまでやってきている。
眉間の傷を指でなぞれば、彼は瞳を細めて艶然と、だがしかし悲しそうに笑ってみせた。
彼の濡れたペニスに指を絡めると、嬌声が上手く吐き出せずに彼がえづきはじめ、僕にしがみつく。
それを合図に最奥へと衝動を叩き込むと、絡めた指の中で、彼の熱が弾けた。
僕だって、失わずに済んだわけではなかったけれども、多数のものを立て続けに喪失した彼は、もう充分に苦しんだはずだった。
忘れてはいけないと自分を律し戒めるその潔さは彼の美徳であったけれど、それを見ている僕にはとてもつらいものだった。
「…君はもう、そこに立ち止まり続けなくたって、いいんだよ…」
寝息を立てる彼が、寝たふりをしているのか本当に眠りの世界に居るのかは、分からなかった。
| カタギリ::18:仮面 | 2008,03,31, Monday 11:59 PM