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Mプレジデント1(part6 766-770)
電話が鳴る。
ユニオンの盟主たる米国大統領執務机に置かれたその直通電話を鳴らせるのは、
一部の側近と、ホットラインを持つ主要国の国家元首。
——そうして、あと、もうひとりだけ。

「プレジデント。今、よろしいですか。お力をお貸し願いたいのです」
「何だね。——エーカー上級大尉」

有無を言わせぬ、ストレートなグラハムの声に、どくんと、鼓動が高鳴るのを、大統領は自覚する。
まるで恋をする十代の若者のように。
国民の前でどれだけ威厳を持ってふるまおうとも、彼の前でだけは、子供のように弄ばれる自分がいる。

「ジンクスの件です。——私は、あのように怪しげな来歴の機体になど命を預けられません」
「どういうことだ。君はUNIONでも最も優秀なパイロットのひとりなのだぞ。
 確かに曰くはあるが、ずば抜けた性能を持つ機体だ。君が乗ってくれなければ誰が任務を……、」
「私の部下達は皆優秀です。——それよりも、私が欲しいのは、プレジデント、貴方の英断です」

台詞の後半が、軍人らしい生真面目さから、不意に、深く甘い響きを帯びる。
彼はこの声の効果をわかってやっているのだ。どうすれば自分が、
相手に言うことを聞かせられるかを熟知している。

「私のために、あれを一体、解析用に回してください。我が軍の技術向上にも繋がりますから、
 不可能ではないはずです。その解析結果を用いて、私のフラッグを改造します。
 費用と人員を必要充分に回して頂きたい。決戦までにはおそらく時間がない。急ぐのです」
「君の言うことにも一利ある、しかし……、あれの運用にはAEUと人革との連携も、」
「だからこそ、プレジデントに直接お願いをしているのです。——今夜、お時間は」
彼のその低い声を聴き、体の芯に、期待の灯が点る。

「官邸にお伺い致します。私の希望を呑んでくだされば、何なりと仰せのままにご奉仕いたしましょう」

きつく閉ざしたまぶたの裏に、彼の妖艶な笑みが見えるようだと思った。
あの淫らで誇り高い獣に。逆らえるわけなど、ないのだ。



続き▽

| その他名ありキャラ::10:プレジデント(M) | 2008,03,11, Tuesday 12:26 AM

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