Hなグラハムエーカーだが…まとめ

関係が始まったのは、フラッグの制式採用を記念した軍事演習の時だった。
視察に訪れた後、見事な腕前を披露した若きトップガンを官邸に招き、直々に激励を与えた。
その時点で既に、彼の美貌と、はち切れんばかりの若い肉体に魅せられていた劣情を、
——彼には、まんまと見抜かれていたのだろう。
彼の個人的な「お願い」を大統領権限を以て叶えてやるのと引き替えに、肉体関係を持つ。
そんな間柄がもうずっと続いていた。

ガンダムが登場して以来の軍事的な緊迫が、グラハムの「お願い」の頻度と度合いを上げる。
すなわち、見返りとして与えられる行為の頻度と度合いもまた増していく。
ただそれだけの理由で、この多忙で政治的にも苦しい状況をすら、
自分がどこか甘美に感じているのを、彼は理解していた。
こんな夜が何度でも訪れるなら、戦争でも破滅でも惜しくはない気がした。

「……さて、今宵はどのようなお楽しみをご所望ですか」
居間に招き入れられたグラハムは、ソファーでワイングラスを傾けながら、不敵な笑みを浮かべた。
「——こちらへ」
指で招くと、挑発的な目をして、グラハムはデスクを回り込み、大統領の座る椅子の肘掛に尻を載せた。
すぐ至近に迫った、彼の鍛え抜かれた肉体の熱に、身体中が渇望の声をあげる。
グラハムの淫蕩に乱れた姿を、彼が来るまでずっと妄想し続けていたのだ。もはや一刻も待てない。

「その……、」
「何ですか。仰っていただけなければ、何もしてさしあげられませんよ」
「見せてくれ……、君の、」
「何をです」
「君の、っ、その、——オナニーをしているところを」

意を決して言い放つと、形の良い眉を跳ね上げて、グラハムは赤面する大統領を無遠慮に眺めた。
「貴方と言う人は、本当に——、お好きですね、そういうのが。いいでしょう。ここで？」
プレジデントの欲情しきっていることなど熟知しているとでもいうように、
グラハムはデスクに腰を下ろし、大統領の正面で股を開く。
躊躇なくベルトを弛め、ネクタイを解き、ジャケットとシャツのボタンを外す。
その長い指のなめらかな動きにさえ色気を感じて、大統領は生唾を飲み込んだ。
やがて、ほっとため息を吐きながら、グラハムがまだ萎えたままのペニスを晒す。
大統領のそれは、衣服の内側で既に痛いほど勃起している。

「どうぞ存分に、ご覧になってください」

革靴と靴下を脱いだグラハムの足が、大統領の膝と肘掛に投げ出される。
片手を後ろにつき、無造作に髪をかき回すと、グラハムはまたひとつ、深い息を吐いた。
俯くと、そのまつ毛が驚くほど長いのがわかる。しっとりと濡れた緑の眼。薄く開かれた唇の赤。
ぞくぞくと、背筋を欲望が駆け上がるのを感じながら、大統領はこぶしを握った。

一瞬目を伏せて、自分を鼓舞するためどんなものを脳裏に思い浮かべたのか。
青年は自分のペニスに指を絡め、ゆっくりとしごきだす。唇から、かすかに甘い吐息が漏れる。
「んっ……、ふ、」
硬さと質量を増し、赤みを帯びていくその性器から目が離せない。
その浮き立った血管に指を這わせたくて、衝動を懸命に堪える。グラハムは契約に対して杓子定規だ。
オナニーを見せてくれと頼んだ以上、こちらから触れることを許しはしない。
ただ、涎を垂らして見ていろ。そう、彼の誇り高い目の色が言外に命じている。

「グラハム……、」
「プレジデント、……貴方も、ご自分でなさればいい」

許可を与えられ、慌てて下半身をはだける。先走りの汁の滲む先端を掴み、思わず安堵の喘ぎを漏らすと、
グラハムはそんな大統領の醜態を鼻で笑って、片脚を股間に乗せてくる。
そんなぞんざいな刺激にさえ身体は反応して、息を飲めば、グラハムは艶やかに笑うのだ。

「はっ……、本当に、貴方はどうしようもない変態ですね。国民がこんな性癖を知ったらどう思うでしょう？」
「……ぅ、君だって、見られて興奮しているじゃないか、あっ」

堪りかねてスラックス越しに引き締まった脚に手を這わせれば、はしたないと咎めるように、
グラハムの踵がプレジデントのペニスを踏みつける。
痛いほどのそんな刺激さえ、脳髄が痺れるほど甘美に感じられて、プレジデントは恍惚の呻きを漏らす。
そんな様が面白くなったのか、グラハムの足指は戯れるように幹をなぞり上げ、先端をぐりぐりと押した。
あのフラッグを、フットペダルへの繊細な力加減で自在に操るグラハムの足は存外に器用だった。
——そういえば、前回の時は自慰をしながら、このすらりと綺麗な足指を一本ずつ舐めさせて貰ったのだった。
その時の興奮を思い出して、己の手の中で陰部が脈を打つ。

「はぁっ……、あ、ぅ、」
グラハムの呼吸がしだいに荒くなる。彼自身に体臭はほとんどないが、熱を帯びた陰部からは、
高揚した雄の匂いが漂っている。
手の動きがしだいに速くなり、時折快楽を飲み込むように、眉がしかめられる。
暑くなってきたのか、グラハムはジャケットとシャツの片袖だけ抜いて、スラックスを脱ぎ捨てた。
細身だがよく鍛え上げられた、その白い半裸体の彫像のような美しさにプレジデントは恍惚となる。
引き締まった腰と、綺麗に割れた腹筋、その下に続く、髪色よりわずかに濃い陰部の茂み。
かすかに汗ばんだ胸部に、グラハムは自ら指を這わせ、尖った乳首を捏ね回す。
乱れた薄い色の金髪が、額に、うなじに貼りつき、色づいた唇からは熱っぽい吐息があふれだす。
自らの快楽に没頭していく、至玉の緑の瞳。

「……頂戴した契約の内容には感謝しています、プレジデント。
　しかしまだひとつ、私には足りないものがあるのです。おわかりですか」

グラハムは自分の指を舐め、たっぷりと唾液を絡めると、自ら尻の窄みへと這わせた。
周囲を解し、指を一本滑り込ませると、深く甘い呻きを漏らす。息が更に乱れ、痩せた腹の起伏が大きくなる。
快楽に己で髪を振り乱し、頬を上気させ、俯いた額から汗を滴らせるその姿は、
この世のものと思われぬほど妖艶で美しく、ただひたすら、淫らだった。

「金銭、物資、人員……、どれも素晴らしく潤沢なものです。私の欲しいものは、あとひとつ。
——それを下さるとお約束いただけたなら、私もさしあげましょう、貴方の欲するものを、さあ」

どさりと、筋肉質なので見かけよりは重いグラハムの身体が降りてきて、大統領の上に跨がる。
その肉体の生々しい気配に眩暈がしそうだ。
これほど乱れていても、その澄んだ目のせいか、グラハムの存在は、
いっそ健やかなほど汚れがないように感じられる。
だからこそ。何度求めても、決して満ち足りることはないのだった。触れるたび、飢えは激しくなるばかり。

これを、欲しい。
狂いそうな欲望が、壮年の肉体の内側にこみ上げる。
これを手に入れるためなら何を失っても構わない、金も地位も名誉も誇りも、何を投げ打ってでも今これが欲しい。
彼をこの至上の地位まで昇り詰めさせた、旺盛な権力欲と鋭敏な頭脳は、
今やためらいなく、ただ一夜の劣情のためだけにすべての精力を注ごうとしていた。
ただグラハム・エーカーという、ひとりのエースパイロットのために。

「……君に、行動の自由をやろう。それがUNIONの安寧に繋がるならば、君のどんなスタンドプレーも
私が事後承諾を下そう。何人たりとも、君の翼を妨げさせない」

「見事なお答えです、プレジデント。——ならば、私も約束を守りましょう」

爽やかなほど率直に笑って、グラハムは腰を上げ、大統領のペニスに手を添えて、
自らの下肢にそれを飲み込んでいく。

「んっ……、ぅ、ふ、……あぁっ、」

耳許に注がれる喘ぎ声と、締めつけてくる内側の熱さに、身も心も酔わされる。
不安定な姿勢のはずなのに、平衡感覚に優れたグラハムはそれをものともせず、
腰を揺り動かす。不意に激しく感じてのけ反ったとき、晒される喉の白さ、薄い皮膚越しに透ける頚動脈。
その若く瑞々しい肉体にひとときであっても溺れられるとは、何と甘美なことだろう。
翻弄され、利用されているのでもいい、むしろ望むところだ。

「ああ……、素晴らしい、プレジデント……、」
「君に、……自由な、翼を、君のフラッグに、無限の空を、許可しよう、」
「んっ……、そうです、男に二言はありませんよ、」

言って、いっそう深く、後孔にペニスを銜え込んで、グラハムが大統領の目をまっすぐに見る。
あられもない行為に臨んで、快楽に潤みながらも、その瞳は凛と気高い。

「……私はプレジデントに、この国に、身体も命も捧げて、忠誠を誓いましょう、この翼ある限り」

背筋を、愉悦とも感動ともつかぬ熱い痺れが駆け上がる。
彼がこのような存在である限り。自分は永遠にこの男の虜だと、絶頂の快楽に霞む意識のなかで確信した。