3P、3P、追悼
ブリーフィングルームに、しばしの沈黙が満ちた。いつも自信たっぷりな態度で、周囲の人間を牽引してきたこの上官が、
素直な弱音を吐いたことにハワードは内心動揺していた。
そんな姿を見たくないという勝手な想いがある一方で、
実力が飛び抜けているがゆえに、孤独であり、上昇志向ばかり強いと誤解されがちである彼が、
実際には情が深い人間でもあるのだと実感させられてもいた。
軍人らしからぬ端正な顔を俯け、グラハムは目を伏せ、じっと何かを噛みしめている。
まだこの部隊がオーバーフラッグスという名前さえ無かった頃から苦楽を共にしてきた自分たちには、
そんな姿を見せてしまうくらいに心を許してくれているのだろう。
ならば、その信頼に応えたいともハワードは思う。彼の苦しみを癒すために、自分たちには何ができるのか。
そう考えたとき、勝手に体が動いていた。
「隊長。——もう、いいでしょう。それよりも少し、休んで下さい」
言って、ハワードはグラハムの隣に立ち、その肩に腕を回す。
上官に対して無礼だとは思ったが、衝動を止められなかった。
「待機中、我々は交代で仮眠をとりましたが、貴方はずっとお休みになっていないでしょう。
もう、いったいどれくらい寝ていないんです」
プライドの高い彼のことで、振り払われるかもしれないと内心ひやひやしていたが、
その気力も無いのか、ただグラハムはされるがままになっている。
「しかし、……対ガンダム特別対策の第一種警戒態勢が解かれていない以上、
オーバーフラッグスの隊長たる私が現場を離れるわけにはいかない」
毅然と呟く彼の表情にはしかし、さすがに疲労の色が濃い。
それでも、生真面目さと自責の念のあまり、眠れないのだろう。
ふと目が合うと、ダリルもまた反対側からグラハムの腰に手を回した。
「とにかく、部屋に戻りましょう。スクランブルがかかればすぐ呼び出されるのは、何処に居ても同じです」
ダリルがやんわりと説くと、ようやくグラハムは頷く。それでも自分からは歩き出そうとしないグラハムを、
ふたりで促しつつ、部屋へと連れていった。
※
続き▽
| オーバーフラッグス::5:ダリル、ハワード | 2008,02,04, Monday 09:50 PM