アリーは停車すると、訝しい視線を向けるグラハムの頬に手を伸ばした。
「さ、触るな!」
ぱしんと手を弾くも、反対にその手首を掴まれ、シートに押し付けられる。
「っ…お前」
「触るな、か。ユニオンのエース殿は潔癖無垢なお嬢様らしい。あぁ気にいらねえなあ、
俺はあんたみたいな人間見てると反吐が出るんだよ。真っ白な雪原を見ると荒らしてみたくなるだろう?
そういう気分になるんだよ」
危険を察知したグラハムよりアリーの方が一瞬行動が早かった。助手席のシートに乗り込むと、
そのままグラハムに圧し掛かりシートベルトで両腕を拘束する。
「貴様!」
彼の瞳は驚きを見せた後直ぐにそれを怒りに変え、鋭い光を放っている。
だがそれも、アリーの歪んだ歯車の回転速度を速めるための油になったに過ぎなかった。
「ああ、いいなそういう眼は。蹂躙して屈服して、屈辱で濡れる様を見てみたくなる」
剥き出しになったアリーの本性を前に、グラハムは逃げ場を既に無くしていた。
「っ…おい、お前は、とんでもない奴だな」
何の前触れの無いまま、突っ込んだ。その割には思いの他根元まで呑み込ませるのに苦労しなかったし、
その割には中の締め付けは息を呑むほどにきつい。潔癖無垢、と思ったのは本当だった。
顔を傾けるたびに共に揺れ動く金色の巻き毛や、生まれつきの白い肌、森の緑とも海の緑とも見れるグリーンアイ。
少女が夢見る王子様みたいな容姿をしている男はその風貌に相応しい雰囲気まで備えていた。
誇りとか仲間とか、愛情だとか、アリーがもっとも嫌悪するものをもっとも尊重する人間だと、全身全霊が言っていた。
汚れなど知らないとその双眸が言っていた。
だが、どうだろう。この身体は十分に知っている。知り尽くしている。
「ハッ、とんだお嬢様だったな。処女の振りしてどれだけ男を騙した?」
アリーは笑いながら腰を打ち付ける。グラハムは顔を背けたまま、息を呑んだ。眼も口も堅く閉じている。
「おい、目を開けろ…口も」
それが気に触ったアリーがグラハムに命令するが、彼は全てを遮断したように微動たりともしない。
「おい、聞こえねぇのか!」
ぎゅ、とアリーがグラハムのペニスを握ると悲鳴染みた声を漏らしたが、それは聞こえるか聞こえないか程度のもので
アリーの苛立ちを冗長させる。
なんて、気に入らないんだろう。気に入らない、ユニオンの、このエースパイロット──
眼を閉じていたために、アリーがこの上なく非情な微笑を見せたのをグラハムは知るよしもなかった。
アリーは頭上で結ばれているグラハムの両腕の内の片方の手首を掴んだ。
「なぁ、お前は空が好きか?」
グラハムは相変わらず顔を背けたままだったが、その言葉に僅かな反応を見せた。
「俺は嫌いじゃない、少なくとも地上よりは…なぁ、飛べなくなったら寂しいよなぁ?」
掴んでいた手の力を強めると、走った痛みにグラハムの身体が強張った。
「あ!や、止めろ!」
グラハムは真っ直ぐにアリーを見た。その瞳は不安げな色に滲んでいる。
「あぁ?なんだって?聞こえないねぇ」
ぞくぞくと身体の内側から嵐のような乱暴な加虐心が湧き上がる。その心のままにアリーは止まらなかった。
ひ、とグラハムが叫ぶのも甘美でしかなかった。
「止めてくれ!お願いだ!」
グラハムの上げた声は悲痛だった。その様子にアリーの熱が膨らみを増すのに対して、グラハムは恐怖から
ますます凝縮を強くし、結果アリーを更に煽る。
「だったらいう事を聞くんだな。いいか、しっかり俺を見ろ」
その眼で。手首から手を離し、代わりに腰を掴むとアリーは容赦なくグラハムを突き上げた。
「鳴け。声を殺すな」
「…っ、あ、あぁ…ん」
「そうだ…」
この身体が、心がすべて自分に向けられる事を望んでいる。一片の隙間もなく、自分だけに。
その執着が特異な物である事を、アリー自身まだ気付いていなかった。
恐ろしい、と確かに思った。あれほどまでに鍛えられたグラハムが恐怖を覚えた事に、彼自身驚いていた。
「んっ…あ、」
どくん、と自分の中の男の精が弾けて、生暖かいものが注ぎ込まれたのを感じた。これで2度目だ。
車内は湿度が増し、体液の生臭さが篭っている。外は雨が降り出していた。
「あぁ、善いなお前の中は…」
アリーが耳元に寄せて言った。鳶色の髪がグラハムの金髪に混じる。
「いい加減、我慢はよしたらどうだ?」
そう言ってアリーが握ったグラハムのペニスは既に立ち上がり、与えられる快楽に震えている。
だがその根元を強く圧迫され、解放を許される状態に置かれていない。アリーが先端を親指の腹で擦ると、
じわりと精液が滲んだ。それと同じように、グラハムの瞳にも涙が滲んでいた。
「あ、あぁ…」
その苦しさに身悶えながら、こんな事ぐらい、とグラハムは思った。こんな事ぐらい、大したことではない。
このユニオン屈指のエース・パイロットが祖国の元鍛えられたのは、その飛行技術だけではない。
(『グラハム。ここへ、来なさい』)
あの声を思い出すだけで、腹の底に重い石を詰められた様な感覚に陥る。そんな風にさせる相手は、
この大国家を統べるプレシデントだけだった。「訓練」…と彼は呼んだ。常人では考え付きもしないような、
あの、行いの数々を自分は──……。思い出すだけで、身体の芯が炙られる様にじりじりと焼ける。
しかし今では、プレシデントが何故そう扱ったのか、解る。自分がこのような容姿に生まれつき、軍に身を置く限り
避けられない愚劣な行為にも耐える事が出来るようになった。そして逆に、この容姿を武器にして渡り歩く術も身に付けた。
予感はあったが、今も正にこの男を取り込むべく、彼は自分を使ったのだろう。
それなのに。それでも、恐ろしいと確かに思ってしまったのだ。
プレシデントは決してパイロットとしての自分を損なうような危害を加える事は無く、また自分も
そんな危惧だけは全くしていなかった。それが、この男は、自分の一番大切なものを賭けて脅してきたのだ。
あの、空。光。世界。
─フラッグ。
あの空駆ける美しき姿を思い出した途端、不安になった。止めてくれ、と気が付けば叫んでいた。恐ろしかった。
失う事など考えられない。
(空。フラッグ。わたしの、フラッグ──)
「どうした?降参か?」
アリーがグラハムの耳を舐め上げながら言うと、下敷きにしている身体が一つ跳ねた。ここも性感帯か、と思った。
「…アリー・アル・サーシェス」
「ん?」
「腕を自由にして欲しい」
言われた言葉のは確かに聞いた。しかしその意図を計りかけ、アリーは目を覗き込んだ。
「なんだって?エース殿」
「こんな状態では逃げられもしない…解るだろう」
「………お前、何を企んでいる?」
「企みも何も無い。お前がしてくれないと言うのなら、自分でするまでだ」
しばしグラハムの顔を見詰めてから、は、とアリーは笑った。
「面白ぇ。やってみせろ」
そう言って、アリーはグラハムの両腕を自由にした。手が自由になったのはいい。が、
「…いい加減……抜かないのか…?」
「ああ、抜きたくないねぇ。居心地がいいもんで」
「そう、か…」
グラハムは溜息を付くと、自分の欲を縛っていた物を外した。アリーが髪を纏めていたゴムだった。
既に先に溢れていた液体でべとべとに濡れたそれをグラハムは車内へ無造作に放った。
「おい、どこへ投げた」
「知らない」
と余裕の無さそうな声で答えた主は、アリーが反論する間もなく自分のペニスを握り、扱き始めた。
細い雨が車体を叩く硬質な音の中に、ねちゃねちゃという粘質な音が空間の隙間を埋めるかのように響く。
「ふ…ぅ…あぁ、ん」
やっと訪れた、待ち望んだ時に、グラハムはうっとりと眼を閉じる。
首を傾けると、首筋と、汗でそこに張り付く金糸がアリーの眼の前に差し出された。
(ホントに、始めやがった)
何のためらいもなく。
アリーは自分の直ぐ傍にあるその顔をじっと見積めた。少し腫れた目元からこめかみに掛けて、涙の筋が見える。
睫毛まで髪と同じ金色なんだな、と当たり前の事をこの時に思った。金髪の女なら幾度でも抱いてきたというのに、
今始めてそういう事を思った。だらしなく開いた口から健康的な白い歯が見え、その隙間から真っ赤な舌がちらついている。
グラハムが動かすペニスの先がアリーの腹にも当たる。規則的に、何回も何回も、同じリズムで。
窓ガラスは雨雫が何本も垂れ、内から見る外の世界を歪ませていた。
甘いばかりの吐息の中に混じる嬌声が細く小さく耳に届いた。
眼が離せなかった。 ふいに翡翠の瞳が自分を捕らえた。 笑っていた。
カッ、と熱が、再び付いた。その事を咥えたままのグラハムも中で感じたのだろう。
逃げるように浮きかけた細い腰を押さえつけると、アリーはグラハムが自分を煽る動きに合わせて腰を打ち付け、
そのもっとも奥までを刺激する。
びくびくとグラハムの白い太ももの内側が引きつり、不安定に空中に浮いていた脚がギアか何かを蹴った。
自分自身で高める前と、前立腺を押す後ろと、腰に疼くものをどうにかしてしまいたい。
「ふ…ぅんっ…あ、もう、もう」
グラハムは、いよいよ乱れた。アリーにもっとと請い、益々強く自分に押し入っている熱い肉棒を締め付る。
もっと、奥まで──と、無言で求めていた。アリーは以前より勢いを増してその触感を貪った。
この目の前の男の全てを、喰らい味わい尽すかのように。
「あ、あ、ぁっ…」
ここで、2人はほぼ同時に果てた。
次官の元へ連れて行く間、アリー・アル・サーシェスの機嫌は非常に良いものであるように見えた。
(一応自分の勤めも、果たせたものかな…)
少し痛む手首を摩りながらグラハムが思い浮かべたのは、プレシデントの執務室と、広がる青空だった。
「さ、触るな!」
ぱしんと手を弾くも、反対にその手首を掴まれ、シートに押し付けられる。
「っ…お前」
「触るな、か。ユニオンのエース殿は潔癖無垢なお嬢様らしい。あぁ気にいらねえなあ、
俺はあんたみたいな人間見てると反吐が出るんだよ。真っ白な雪原を見ると荒らしてみたくなるだろう?
そういう気分になるんだよ」
危険を察知したグラハムよりアリーの方が一瞬行動が早かった。助手席のシートに乗り込むと、
そのままグラハムに圧し掛かりシートベルトで両腕を拘束する。
「貴様!」
彼の瞳は驚きを見せた後直ぐにそれを怒りに変え、鋭い光を放っている。
だがそれも、アリーの歪んだ歯車の回転速度を速めるための油になったに過ぎなかった。
「ああ、いいなそういう眼は。蹂躙して屈服して、屈辱で濡れる様を見てみたくなる」
剥き出しになったアリーの本性を前に、グラハムは逃げ場を既に無くしていた。
「っ…おい、お前は、とんでもない奴だな」
何の前触れの無いまま、突っ込んだ。その割には思いの他根元まで呑み込ませるのに苦労しなかったし、
その割には中の締め付けは息を呑むほどにきつい。潔癖無垢、と思ったのは本当だった。
顔を傾けるたびに共に揺れ動く金色の巻き毛や、生まれつきの白い肌、森の緑とも海の緑とも見れるグリーンアイ。
少女が夢見る王子様みたいな容姿をしている男はその風貌に相応しい雰囲気まで備えていた。
誇りとか仲間とか、愛情だとか、アリーがもっとも嫌悪するものをもっとも尊重する人間だと、全身全霊が言っていた。
汚れなど知らないとその双眸が言っていた。
だが、どうだろう。この身体は十分に知っている。知り尽くしている。
「ハッ、とんだお嬢様だったな。処女の振りしてどれだけ男を騙した?」
アリーは笑いながら腰を打ち付ける。グラハムは顔を背けたまま、息を呑んだ。眼も口も堅く閉じている。
「おい、目を開けろ…口も」
それが気に触ったアリーがグラハムに命令するが、彼は全てを遮断したように微動たりともしない。
「おい、聞こえねぇのか!」
ぎゅ、とアリーがグラハムのペニスを握ると悲鳴染みた声を漏らしたが、それは聞こえるか聞こえないか程度のもので
アリーの苛立ちを冗長させる。
なんて、気に入らないんだろう。気に入らない、ユニオンの、このエースパイロット──
眼を閉じていたために、アリーがこの上なく非情な微笑を見せたのをグラハムは知るよしもなかった。
アリーは頭上で結ばれているグラハムの両腕の内の片方の手首を掴んだ。
「なぁ、お前は空が好きか?」
グラハムは相変わらず顔を背けたままだったが、その言葉に僅かな反応を見せた。
「俺は嫌いじゃない、少なくとも地上よりは…なぁ、飛べなくなったら寂しいよなぁ?」
掴んでいた手の力を強めると、走った痛みにグラハムの身体が強張った。
「あ!や、止めろ!」
グラハムは真っ直ぐにアリーを見た。その瞳は不安げな色に滲んでいる。
「あぁ?なんだって?聞こえないねぇ」
ぞくぞくと身体の内側から嵐のような乱暴な加虐心が湧き上がる。その心のままにアリーは止まらなかった。
ひ、とグラハムが叫ぶのも甘美でしかなかった。
「止めてくれ!お願いだ!」
グラハムの上げた声は悲痛だった。その様子にアリーの熱が膨らみを増すのに対して、グラハムは恐怖から
ますます凝縮を強くし、結果アリーを更に煽る。
「だったらいう事を聞くんだな。いいか、しっかり俺を見ろ」
その眼で。手首から手を離し、代わりに腰を掴むとアリーは容赦なくグラハムを突き上げた。
「鳴け。声を殺すな」
「…っ、あ、あぁ…ん」
「そうだ…」
この身体が、心がすべて自分に向けられる事を望んでいる。一片の隙間もなく、自分だけに。
その執着が特異な物である事を、アリー自身まだ気付いていなかった。
恐ろしい、と確かに思った。あれほどまでに鍛えられたグラハムが恐怖を覚えた事に、彼自身驚いていた。
「んっ…あ、」
どくん、と自分の中の男の精が弾けて、生暖かいものが注ぎ込まれたのを感じた。これで2度目だ。
車内は湿度が増し、体液の生臭さが篭っている。外は雨が降り出していた。
「あぁ、善いなお前の中は…」
アリーが耳元に寄せて言った。鳶色の髪がグラハムの金髪に混じる。
「いい加減、我慢はよしたらどうだ?」
そう言ってアリーが握ったグラハムのペニスは既に立ち上がり、与えられる快楽に震えている。
だがその根元を強く圧迫され、解放を許される状態に置かれていない。アリーが先端を親指の腹で擦ると、
じわりと精液が滲んだ。それと同じように、グラハムの瞳にも涙が滲んでいた。
「あ、あぁ…」
その苦しさに身悶えながら、こんな事ぐらい、とグラハムは思った。こんな事ぐらい、大したことではない。
このユニオン屈指のエース・パイロットが祖国の元鍛えられたのは、その飛行技術だけではない。
(『グラハム。ここへ、来なさい』)
あの声を思い出すだけで、腹の底に重い石を詰められた様な感覚に陥る。そんな風にさせる相手は、
この大国家を統べるプレシデントだけだった。「訓練」…と彼は呼んだ。常人では考え付きもしないような、
あの、行いの数々を自分は──……。思い出すだけで、身体の芯が炙られる様にじりじりと焼ける。
しかし今では、プレシデントが何故そう扱ったのか、解る。自分がこのような容姿に生まれつき、軍に身を置く限り
避けられない愚劣な行為にも耐える事が出来るようになった。そして逆に、この容姿を武器にして渡り歩く術も身に付けた。
予感はあったが、今も正にこの男を取り込むべく、彼は自分を使ったのだろう。
それなのに。それでも、恐ろしいと確かに思ってしまったのだ。
プレシデントは決してパイロットとしての自分を損なうような危害を加える事は無く、また自分も
そんな危惧だけは全くしていなかった。それが、この男は、自分の一番大切なものを賭けて脅してきたのだ。
あの、空。光。世界。
─フラッグ。
あの空駆ける美しき姿を思い出した途端、不安になった。止めてくれ、と気が付けば叫んでいた。恐ろしかった。
失う事など考えられない。
(空。フラッグ。わたしの、フラッグ──)
「どうした?降参か?」
アリーがグラハムの耳を舐め上げながら言うと、下敷きにしている身体が一つ跳ねた。ここも性感帯か、と思った。
「…アリー・アル・サーシェス」
「ん?」
「腕を自由にして欲しい」
言われた言葉のは確かに聞いた。しかしその意図を計りかけ、アリーは目を覗き込んだ。
「なんだって?エース殿」
「こんな状態では逃げられもしない…解るだろう」
「………お前、何を企んでいる?」
「企みも何も無い。お前がしてくれないと言うのなら、自分でするまでだ」
しばしグラハムの顔を見詰めてから、は、とアリーは笑った。
「面白ぇ。やってみせろ」
そう言って、アリーはグラハムの両腕を自由にした。手が自由になったのはいい。が、
「…いい加減……抜かないのか…?」
「ああ、抜きたくないねぇ。居心地がいいもんで」
「そう、か…」
グラハムは溜息を付くと、自分の欲を縛っていた物を外した。アリーが髪を纏めていたゴムだった。
既に先に溢れていた液体でべとべとに濡れたそれをグラハムは車内へ無造作に放った。
「おい、どこへ投げた」
「知らない」
と余裕の無さそうな声で答えた主は、アリーが反論する間もなく自分のペニスを握り、扱き始めた。
細い雨が車体を叩く硬質な音の中に、ねちゃねちゃという粘質な音が空間の隙間を埋めるかのように響く。
「ふ…ぅ…あぁ、ん」
やっと訪れた、待ち望んだ時に、グラハムはうっとりと眼を閉じる。
首を傾けると、首筋と、汗でそこに張り付く金糸がアリーの眼の前に差し出された。
(ホントに、始めやがった)
何のためらいもなく。
アリーは自分の直ぐ傍にあるその顔をじっと見積めた。少し腫れた目元からこめかみに掛けて、涙の筋が見える。
睫毛まで髪と同じ金色なんだな、と当たり前の事をこの時に思った。金髪の女なら幾度でも抱いてきたというのに、
今始めてそういう事を思った。だらしなく開いた口から健康的な白い歯が見え、その隙間から真っ赤な舌がちらついている。
グラハムが動かすペニスの先がアリーの腹にも当たる。規則的に、何回も何回も、同じリズムで。
窓ガラスは雨雫が何本も垂れ、内から見る外の世界を歪ませていた。
甘いばかりの吐息の中に混じる嬌声が細く小さく耳に届いた。
眼が離せなかった。 ふいに翡翠の瞳が自分を捕らえた。 笑っていた。
カッ、と熱が、再び付いた。その事を咥えたままのグラハムも中で感じたのだろう。
逃げるように浮きかけた細い腰を押さえつけると、アリーはグラハムが自分を煽る動きに合わせて腰を打ち付け、
そのもっとも奥までを刺激する。
びくびくとグラハムの白い太ももの内側が引きつり、不安定に空中に浮いていた脚がギアか何かを蹴った。
自分自身で高める前と、前立腺を押す後ろと、腰に疼くものをどうにかしてしまいたい。
「ふ…ぅんっ…あ、もう、もう」
グラハムは、いよいよ乱れた。アリーにもっとと請い、益々強く自分に押し入っている熱い肉棒を締め付る。
もっと、奥まで──と、無言で求めていた。アリーは以前より勢いを増してその触感を貪った。
この目の前の男の全てを、喰らい味わい尽すかのように。
「あ、あ、ぁっ…」
ここで、2人はほぼ同時に果てた。
次官の元へ連れて行く間、アリー・アル・サーシェスの機嫌は非常に良いものであるように見えた。
(一応自分の勤めも、果たせたものかな…)
少し痛む手首を摩りながらグラハムが思い浮かべたのは、プレシデントの執務室と、広がる青空だった。
| その他名ありキャラ::5:アリー1 | 2008,02,26, Tuesday 05:24 AM