寝る時にだけこの男は敬語を取り止めるのだなと、グラハムは快楽に霞む頭でぼんやりと考えた。
それが気に入らないわけではなく、自分を呼ぶ優しい声色に彼は満足していた。
仕事場で聞く尊敬の念を滲ませたものとは違い、劣情が含まれていて、何よりもグラハムを興奮させたからだ。
元より私生活に仕事を持ち込むつもりはなかった。
ただ部下で恋人である男の新しい部分を見つけた気がして、少しばかり嬉しかったのかもしれない。
「どうした? グラハム」
「いや、なんでもない、ただ…」
「ただ? ただ何だ?」
「少しおかしかった、君がそんな風に私の名前を呼ぶなんて」
ハワードの頬に赤みが差し、唇が止まる。腰の辺りを探っていた指も今は動いてはいない。
ベッドに寝転がりながら始まったセックスは、グラハムが一度目の射精を終えてから
ハワードの気遣いで再開されないままだった。
ハワードはいつだって兎に角恋人を大事にしたから、これも彼なりの優しさなのだろうとグラハムは思う。
そして本当に自分を思うんなら今すぐにでももう一度挿入してくれたらよいのに、とも。
「ふざけてるのか?」
「いや、本当に嬉しかったんだ、君に名前を呼ばれると気持よくて…」
「グラハム!」
その含みを持たせた発言に、ハワードは頬を染めた。
グラハムはそれを見つめながら微笑み、自分にのしかかってくる男の、艶のあるブルネットの髪に指を通す。
普段なら丁寧に撫で付けられている髪は、さっきまでのいささか激しいセックスのせいで乱れてしまっていた。
体を引き寄せて首筋に顔を埋めると、汗に混じってエンジンオイルの匂いがする。
(またフラッグの整備班に混じって手伝いでもしてたのか…)
汗ばんだ男の背中に腕をかけ、グラハムはうっとりと瞳を閉じる。
ハワードは訓練中でなくてもフラッグから離れることはほとんどなかった。
彼は人一倍丁寧なフラッグの整備を求めて技術者とよく揉めた。彼の情熱はオーバーフラッグスの誰もが知っている。
グラハムも勿論、自分の恋人が誰よりもフラッグを愛する男だというのは知っていた。
けれど、もしかしたらその熱烈さは自分以上じゃないかと笑いそうにもなる。
(ハワードはフラッグにやられてるんだ)
それは笑うグラハムにとっても同じだった。彼らはフラッグを何よりも愛していた。
ユニオンの最新鋭機を誇り、愛しい恋人が駆る機体を愛した。
「ハワード…」
もう一度入れてくれ、そう続けようとした言葉は、いきなり重ねられた唇に消えてしまった。
グラハムの腰を撫でていた指はいつの間にかペニスをいじり、もう片方の手のひらは膝の裏に差しこまれている。
「俺に名前を呼ばれたら感じるんですか? 隊長…」
わざと隊長と、ハワードは呼んだ。
そして口付けに震える男を覗き込むと唇を歪め、子供のように笑う。
グラハムを覗き込む青の瞳はしっとりと濡れており、一度は薄れた空気を濃厚にした。
「答えろよ…」
ハワードはグラハムの膝を強引にたてさせると、精液を注いでやった場所に指を突き入れた。
いきなりの感触にあえぎを漏らしながら、グラハムは背中に爪を立てる。
そして彼は荒れた息で恋人の耳元に「そうだ」と囁くと、足を腰に絡め続きをねだった。
ハワードが息を詰めるのが分かる。純粋な男だから、もしかしたら照れているのかもしれない。
「グラハム、明日フラッグで飛べなくても知らないからな」
「お手柔らかに頼むよ、ハワード、でも加減はなしで」
グラハムがそう求めると、ハワードは今度こそ降参だとでも言うように肩をすくめ、そして熱心な愛撫を再開した。
めまいがするくらいの喜びがただただ恐ろしかった。
それが気に入らないわけではなく、自分を呼ぶ優しい声色に彼は満足していた。
仕事場で聞く尊敬の念を滲ませたものとは違い、劣情が含まれていて、何よりもグラハムを興奮させたからだ。
元より私生活に仕事を持ち込むつもりはなかった。
ただ部下で恋人である男の新しい部分を見つけた気がして、少しばかり嬉しかったのかもしれない。
「どうした? グラハム」
「いや、なんでもない、ただ…」
「ただ? ただ何だ?」
「少しおかしかった、君がそんな風に私の名前を呼ぶなんて」
ハワードの頬に赤みが差し、唇が止まる。腰の辺りを探っていた指も今は動いてはいない。
ベッドに寝転がりながら始まったセックスは、グラハムが一度目の射精を終えてから
ハワードの気遣いで再開されないままだった。
ハワードはいつだって兎に角恋人を大事にしたから、これも彼なりの優しさなのだろうとグラハムは思う。
そして本当に自分を思うんなら今すぐにでももう一度挿入してくれたらよいのに、とも。
「ふざけてるのか?」
「いや、本当に嬉しかったんだ、君に名前を呼ばれると気持よくて…」
「グラハム!」
その含みを持たせた発言に、ハワードは頬を染めた。
グラハムはそれを見つめながら微笑み、自分にのしかかってくる男の、艶のあるブルネットの髪に指を通す。
普段なら丁寧に撫で付けられている髪は、さっきまでのいささか激しいセックスのせいで乱れてしまっていた。
体を引き寄せて首筋に顔を埋めると、汗に混じってエンジンオイルの匂いがする。
(またフラッグの整備班に混じって手伝いでもしてたのか…)
汗ばんだ男の背中に腕をかけ、グラハムはうっとりと瞳を閉じる。
ハワードは訓練中でなくてもフラッグから離れることはほとんどなかった。
彼は人一倍丁寧なフラッグの整備を求めて技術者とよく揉めた。彼の情熱はオーバーフラッグスの誰もが知っている。
グラハムも勿論、自分の恋人が誰よりもフラッグを愛する男だというのは知っていた。
けれど、もしかしたらその熱烈さは自分以上じゃないかと笑いそうにもなる。
(ハワードはフラッグにやられてるんだ)
それは笑うグラハムにとっても同じだった。彼らはフラッグを何よりも愛していた。
ユニオンの最新鋭機を誇り、愛しい恋人が駆る機体を愛した。
「ハワード…」
もう一度入れてくれ、そう続けようとした言葉は、いきなり重ねられた唇に消えてしまった。
グラハムの腰を撫でていた指はいつの間にかペニスをいじり、もう片方の手のひらは膝の裏に差しこまれている。
「俺に名前を呼ばれたら感じるんですか? 隊長…」
わざと隊長と、ハワードは呼んだ。
そして口付けに震える男を覗き込むと唇を歪め、子供のように笑う。
グラハムを覗き込む青の瞳はしっとりと濡れており、一度は薄れた空気を濃厚にした。
「答えろよ…」
ハワードはグラハムの膝を強引にたてさせると、精液を注いでやった場所に指を突き入れた。
いきなりの感触にあえぎを漏らしながら、グラハムは背中に爪を立てる。
そして彼は荒れた息で恋人の耳元に「そうだ」と囁くと、足を腰に絡め続きをねだった。
ハワードが息を詰めるのが分かる。純粋な男だから、もしかしたら照れているのかもしれない。
「グラハム、明日フラッグで飛べなくても知らないからな」
「お手柔らかに頼むよ、ハワード、でも加減はなしで」
グラハムがそう求めると、ハワードは今度こそ降参だとでも言うように肩をすくめ、そして熱心な愛撫を再開した。
めまいがするくらいの喜びがただただ恐ろしかった。
| オーバーフラッグス::6:ハワード3 | 2008,03,04, Tuesday 06:03 AM