とんだ変態じゃないですかと、目の前の部下は笑ってみせた。
左の頬だけを引き攣らせて厭味たらしく瞳を細めるのは、ジョシュアの癖のひとつだ。
ペン先を引っ込めたボールペンは、不躾に無遠慮に、白いワイシャツの上を走っていく。
温い感覚に身をよじりたいのに、薬のせいで体は弛緩してしまって上手く力が入らない。
寝起きのけだるさに似たあの感覚が、体のすべてを支配しいる。
まったく何も出来ないわけではないのに、いざ体に力を込めようとすると、体から芯が抜けたようになるのだ。
切っ先が不意に腕から首筋、耳元へと動き、耳の裏をくすぐると、体を震わすだけでやり過ごしていた私は、とうとう掠れた声を上げてしまった。
「ひ…っや、」
やめろと言おうとして、私は先ほど自分が堂々と宣言した言葉を思い出し、冷えた空気と共に飲み込む。
最初からお願いの内容ぐらい把握しておけばという後悔がよぎった。
そんなことなどお構いなしに、耳の中の産毛に触れるように、ジョシュアのボールペンは耳朶からじわじわと中を探り始めた。
詰まる呼気にうっかりと声を乗せやしないかと、耳を弄ばれている間、私はそれにばかり気をとられている。
どんな顔をしてこの痴態を見ているのかを思うと情けなくてジョシュアを直視出来ず、ずり落ちそうにながらも身を預けているオフィスチェアーの背もたれに、頭を預けるしかない。
顔を背けると眼鏡がずれてきて、視界に黒い枠が現れた。
むずがっている私にはお構いなしでボールペンは胸を、腰を、ふとももを走っては粟立たせいく。
「ふ、っく、…ん…」
スラックスの前がきついことは、自分でもとうに気付いている。
この男も私の体の変化には気付いているはずだが、この『お願い』がいつまで続くかを一切聞かされていない私には、あとの展開など予想もできない。
腿の内側を言ったり来たりしている感触が判断力をゆっくり蝕んでいく。
ずり落ちていく体のせいで、オフィスチェアーにこすりつけたワイシャツの布地が強く皮膚を摩擦し、熱い。
「あ、あ、う…あ……ぁっ…!」
もどかしく性感をさすり続けるペンに、思わず綻んだ口唇から甘ったるい声が零れ落ちた。
忍耐力という壁をぶち破ったそれは、今までのそれよりもずっと甲高く、脱力しきっていて情けない。
耳をふさぎたいのに腕は金縛りにあったかのように持ち上がらない。
「とんだ変態じゃないですか」
乱雑に書類がばら撒かれた、散らかった机たちを視界に納めていた私は、顔は動かさずに視線だけでジョシュアを見た。
首を涙の膜を通して、白い肌と金髪と青いジャケットが滲んでいる。
輪郭が曖昧な中ででも、彼が笑っていることだけははっきりとわかる。
嘲笑う口調とは逆に、空いた左手で私の髪を撫でる感触は柔らかだったが、愛撫するような丁寧さはなかった。
目元から耳元へとゆっくりたどる指先が眼鏡のつるを上げ、いつ落ちるかという危うさで引っかかっていたそれを私の顔にかけ直す。
「いくら伊達とはいえ、気に入りの、上等な眼鏡なんですよ。落とされたら困ります」
唇を寄せた耳元で、低く囁く合間にも、ペンは足の付け根から離れない。歯痒い。
(…もう少し…もう少しで、触れるのに…)
そう思って私ははっとした。
一種陰湿な嫌がらせを部下から受けているに等しいというのに興奮し、あまつさえ性器に触れて決定打を与えてほしいなどと。
思考すら麻痺し始めているのか。
「…腰が、揺れてますよ」
ねっとりと耳に舌を差し込まれる。
粘着質な水音と温かい感触に肌が総毛立ち、熱が蓄積されていく。
動悸が激しくなるにつれて、血管が脈打つ感覚に合わせて指先が痙攣しているのがわかる。
ジョシュアは私の襟からネクタイを抜くと、ワイシャツのボタンを上からはずし始める。
ぴちゃぴちゃと私の耳を舌先で嬲りながら、ゆっくりと。
「っん…は、あ…」
シャツを開いたところからひんやりと空気が肌を撫で、息苦しさを緩和する。
肌蹴た胸元からジョシュアの指が割り込んできた。
汗ばんでいるせいかひたりと肌になじみ、迷いなく乳首へと辿り着く。
すでにかたくしこっているのを引っかかれて、その甘い痺れに私は反射的に首を反らした。
つま先が不器用に空を切ったのも視界の端に見えた。
重力に従って落ちるばかりの四肢のせいで、チェアーはもはやイスとしての役目をまったく果たしておらず、私は下半身をジョシュアに突き出し、股間を彼の足に擦り付ける形になっている。
「私にどうしてほしいんですか、いやらしい上級大尉殿は…」
ジョシュアに投げ出されたペンが床に落ちる音が聞こえた。
左の頬だけを引き攣らせて厭味たらしく瞳を細めるのは、ジョシュアの癖のひとつだ。
ペン先を引っ込めたボールペンは、不躾に無遠慮に、白いワイシャツの上を走っていく。
温い感覚に身をよじりたいのに、薬のせいで体は弛緩してしまって上手く力が入らない。
寝起きのけだるさに似たあの感覚が、体のすべてを支配しいる。
まったく何も出来ないわけではないのに、いざ体に力を込めようとすると、体から芯が抜けたようになるのだ。
切っ先が不意に腕から首筋、耳元へと動き、耳の裏をくすぐると、体を震わすだけでやり過ごしていた私は、とうとう掠れた声を上げてしまった。
「ひ…っや、」
やめろと言おうとして、私は先ほど自分が堂々と宣言した言葉を思い出し、冷えた空気と共に飲み込む。
最初からお願いの内容ぐらい把握しておけばという後悔がよぎった。
そんなことなどお構いなしに、耳の中の産毛に触れるように、ジョシュアのボールペンは耳朶からじわじわと中を探り始めた。
詰まる呼気にうっかりと声を乗せやしないかと、耳を弄ばれている間、私はそれにばかり気をとられている。
どんな顔をしてこの痴態を見ているのかを思うと情けなくてジョシュアを直視出来ず、ずり落ちそうにながらも身を預けているオフィスチェアーの背もたれに、頭を預けるしかない。
顔を背けると眼鏡がずれてきて、視界に黒い枠が現れた。
むずがっている私にはお構いなしでボールペンは胸を、腰を、ふとももを走っては粟立たせいく。
「ふ、っく、…ん…」
スラックスの前がきついことは、自分でもとうに気付いている。
この男も私の体の変化には気付いているはずだが、この『お願い』がいつまで続くかを一切聞かされていない私には、あとの展開など予想もできない。
腿の内側を言ったり来たりしている感触が判断力をゆっくり蝕んでいく。
ずり落ちていく体のせいで、オフィスチェアーにこすりつけたワイシャツの布地が強く皮膚を摩擦し、熱い。
「あ、あ、う…あ……ぁっ…!」
もどかしく性感をさすり続けるペンに、思わず綻んだ口唇から甘ったるい声が零れ落ちた。
忍耐力という壁をぶち破ったそれは、今までのそれよりもずっと甲高く、脱力しきっていて情けない。
耳をふさぎたいのに腕は金縛りにあったかのように持ち上がらない。
「とんだ変態じゃないですか」
乱雑に書類がばら撒かれた、散らかった机たちを視界に納めていた私は、顔は動かさずに視線だけでジョシュアを見た。
首を涙の膜を通して、白い肌と金髪と青いジャケットが滲んでいる。
輪郭が曖昧な中ででも、彼が笑っていることだけははっきりとわかる。
嘲笑う口調とは逆に、空いた左手で私の髪を撫でる感触は柔らかだったが、愛撫するような丁寧さはなかった。
目元から耳元へとゆっくりたどる指先が眼鏡のつるを上げ、いつ落ちるかという危うさで引っかかっていたそれを私の顔にかけ直す。
「いくら伊達とはいえ、気に入りの、上等な眼鏡なんですよ。落とされたら困ります」
唇を寄せた耳元で、低く囁く合間にも、ペンは足の付け根から離れない。歯痒い。
(…もう少し…もう少しで、触れるのに…)
そう思って私ははっとした。
一種陰湿な嫌がらせを部下から受けているに等しいというのに興奮し、あまつさえ性器に触れて決定打を与えてほしいなどと。
思考すら麻痺し始めているのか。
「…腰が、揺れてますよ」
ねっとりと耳に舌を差し込まれる。
粘着質な水音と温かい感触に肌が総毛立ち、熱が蓄積されていく。
動悸が激しくなるにつれて、血管が脈打つ感覚に合わせて指先が痙攣しているのがわかる。
ジョシュアは私の襟からネクタイを抜くと、ワイシャツのボタンを上からはずし始める。
ぴちゃぴちゃと私の耳を舌先で嬲りながら、ゆっくりと。
「っん…は、あ…」
シャツを開いたところからひんやりと空気が肌を撫で、息苦しさを緩和する。
肌蹴た胸元からジョシュアの指が割り込んできた。
汗ばんでいるせいかひたりと肌になじみ、迷いなく乳首へと辿り着く。
すでにかたくしこっているのを引っかかれて、その甘い痺れに私は反射的に首を反らした。
つま先が不器用に空を切ったのも視界の端に見えた。
重力に従って落ちるばかりの四肢のせいで、チェアーはもはやイスとしての役目をまったく果たしておらず、私は下半身をジョシュアに突き出し、股間を彼の足に擦り付ける形になっている。
「私にどうしてほしいんですか、いやらしい上級大尉殿は…」
ジョシュアに投げ出されたペンが床に落ちる音が聞こえた。
| ジョシュア::18 | 2008,03,18, Tuesday 06:36 PM