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売春リンカーン→分岐1-c-1:カタギリルート未遂(part4 540)
スーツの内ポケットに残された支給品の電話を鳴らす。

「…カタギリ…私は…」

体中が痛む、特に殴られた頬も、腰も…口淫を強いられつづけていた口は上手く言葉を発する事も出来ない。
スーツに入っていた財布は無くなっていた。
車のキーも消えていたから車も盗られたのだろう。
ユニオンは広い。モーテルから軍に戻るとしても車かタクシーに乗る金が無ければ帰る事は不可能だ。

鳴らし続ける電話。
しかし、電話の向こうの主は取る事をしてはくれなかった。
それもその筈だ。

「クジョウ…か、当然だな。」

持ち上げるのも億劫な手でグラハムは額に手をあて目を隠した。
今日はクジョウと合っているはずなのだから。

まだハワードもジョシュアも生きていた頃にカタギリはクジョウと再会を果たし、それから何度か会っている。
自分は男でクジョウとは違う。
いつか写真を見せてもらったがスタイルの良い美しい女性だった。
クジョウと再会を果たした時のカタギリの顔を思い出せば想いを寄せているのは一目瞭然だ。
所詮、男の自分など遊びにすぎなかったという事だろう。
わかっていた筈だ。

「…ハワード、ジョシュア…」

二人の顔を思い出すとまた新たに涙が頬を伝った。

「おまけに、私は…こんな事をする男ときている。」

シャワーをあびる気にはなれなかった。
青臭い精液だらけの体にスーツを適当に着て、ふらつきながら雪の中、モーテルを後にする。

このまま寒さに命運を果てるか、運良く自室に帰り着くか。
そんな賭けをするのも悪くないと思えた。

———ハワードとジョシュアに会えるなら…

視界は激しく舞う雪で幸い青臭い匂いも白い精液の固まりも目立たなくしてくれる。
空から舞う白い清浄な氷はセンチメンタリズムにもこの世のものとは思えない世界にいるように錯覚させる。

——二人に会えたら、謝って、ハワードはきっとジョーク混じりに咎めてジョシュアは皮肉りながら高慢な言葉をはいて

ふらついた足取りで寒さから帰路を急ぐ車が多く走る通りの端を歩いていく。
勢いを強める雪は激しい無理矢理な行為で体力を失った体から通常よりも早く体温を奪っていく。
コートも着ていない。その姿の異様さは高か不幸か車のみの人通りのない道路では誰も気にも止めなかった。

どこまでも白い世界が続くと思える中で、ふと前が陰りグラハムは顔をあげた。

「…ハワード…?いや…ジョシュア…か?」

喘がされつづけて枯れ果てた喉では相手に声が聞こえていたかどうか。
それも気にせずにグラハムは微笑んだ。
やっと…やっと、二人に会えるのだと。

| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 03:16 AM

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