「じゃあな、約束の金だ。また縁があったらよろしく頼むぜぇ」
下品な笑い声が複数の足音と共に遠のいていく。
虚ろな目で、グラハムは金髪の男を追った。
「…ジョ、シュア……」
目の前が白く霞む。何故だか涙が止まらなかった。
名前を呼んだ瞬間に気付いてしまったのだ、彼はジョシュアではないと。
そうだ、ジョシュアではない……ジョシュアは、あの時——あのガンダムに。
「う…い、やだ……」
立ち上がろうと足に力を入れる。しかし体が言うことを聞かず、グラハムは前に倒れこんだ。
腰が痛い。散々乱暴をされた、下腹部も。
先程まで男のモノを咥えていた場所がひりひりと痛む。
だが、何より胸が張り裂けるように痛かった。
彼がジョシュアではないというなら、ジョシュアは何処に?
死んだはずはない、先程までジョシュアは此処に……私の傍に。
いいや、彼はジョシュアではなかった。ああ、駄目だ、彼を、ジョシュアを見失ってしまう——
金が捻じ込まれた上着を拾い、よろよろと壁伝いに扉へと向かった。そのまま部屋を出、階段を降りる。
フロントにいた男が驚いた顔でこちらを見ていたが、構わず外へ出た。
下品な笑い声が複数の足音と共に遠のいていく。
虚ろな目で、グラハムは金髪の男を追った。
「…ジョ、シュア……」
目の前が白く霞む。何故だか涙が止まらなかった。
名前を呼んだ瞬間に気付いてしまったのだ、彼はジョシュアではないと。
そうだ、ジョシュアではない……ジョシュアは、あの時——あのガンダムに。
「う…い、やだ……」
立ち上がろうと足に力を入れる。しかし体が言うことを聞かず、グラハムは前に倒れこんだ。
腰が痛い。散々乱暴をされた、下腹部も。
先程まで男のモノを咥えていた場所がひりひりと痛む。
だが、何より胸が張り裂けるように痛かった。
彼がジョシュアではないというなら、ジョシュアは何処に?
死んだはずはない、先程までジョシュアは此処に……私の傍に。
いいや、彼はジョシュアではなかった。ああ、駄目だ、彼を、ジョシュアを見失ってしまう——
金が捻じ込まれた上着を拾い、よろよろと壁伝いに扉へと向かった。そのまま部屋を出、階段を降りる。
フロントにいた男が驚いた顔でこちらを見ていたが、構わず外へ出た。
治安の悪い夜の繁華街は、雨のせいかいつもより静かだった。
グラハムは必死に消えた部下を探すが、もう既に何処にもいない。
どこかへ行ってしまった。
「そん、な……」
いない。どこにもいない。
ああ、そうだ、最初からジョシュアなどここにはいなかった。
そしてもう、どこにもいなくなってしまった。
あの日……私が未熟だったせいで。私がもっと立派な上官であれば、彼が死ぬことには。
「……ジョシュア」
絶望に、急に視界が歪んだ。
がくりと足の力が抜け、膝が崩れかけたその時、不意に右腕を上へ引っ張られた。
「おい、大丈夫か?」
ゆっくり声のした方を振り向くと、見覚えのない青年が立っていた。
グラハムを支えた手を離し、もう片方の手に持っていた傘を差し出してくる。
彼は呆けたグラハムが泣いている事に気付き、次に乱れた衣服に目が行った。
「……大丈夫か、あんた」
「——……う……、……」
険しい表情で伺う青年の言葉に、グラハムは答えることなく意識を手放した。
「お、おい!」
冷たく濡れた地面に触れると思った体は、暖かい腕に包まれた。
「なんだってんだ、ったく……」
思わず抱き留めてしまったが、この後この少年をどうしたものか。
「……ってか……」
華奢な少年かと思いきや、抱きとめた体にはしっかりと筋肉がついていた。
スーツの上着を持っている。ワイシャツに、よく見れば下もスーツだ。
幾つだ?と思いながら顔を覗き込み、すぐに異常に気付いた。
髪にこびりついているのは精液で、額の近くに乱暴をされたような痕がある。
首筋にも幾つか赤い痣のようなものが見えた。
「…マジかよ」
「どうしたんだい、ロックオン」
「アレルヤ」
両手に一杯荷物を抱えたまま、アレルヤは状況が全く飲み込めないままロックオンを凝視していた。
「なんか拾っちまった。買い出し済んだならホテルに戻るか」
「彼を運ぶのかい?」
「このままここに置いておけねーだろ」
「ティエリア辺りに怒られそうだ」
確かに。部外者を潜伏先に連れてくるなんてーとか言ってキレられそうだ。
苦笑しながら、ぐったりと眠る…というよりは、気を失っている青年の肩を担ぎ歩き出した。
グラハムは必死に消えた部下を探すが、もう既に何処にもいない。
どこかへ行ってしまった。
「そん、な……」
いない。どこにもいない。
ああ、そうだ、最初からジョシュアなどここにはいなかった。
そしてもう、どこにもいなくなってしまった。
あの日……私が未熟だったせいで。私がもっと立派な上官であれば、彼が死ぬことには。
「……ジョシュア」
絶望に、急に視界が歪んだ。
がくりと足の力が抜け、膝が崩れかけたその時、不意に右腕を上へ引っ張られた。
「おい、大丈夫か?」
ゆっくり声のした方を振り向くと、見覚えのない青年が立っていた。
グラハムを支えた手を離し、もう片方の手に持っていた傘を差し出してくる。
彼は呆けたグラハムが泣いている事に気付き、次に乱れた衣服に目が行った。
「……大丈夫か、あんた」
「——……う……、……」
険しい表情で伺う青年の言葉に、グラハムは答えることなく意識を手放した。
「お、おい!」
冷たく濡れた地面に触れると思った体は、暖かい腕に包まれた。
「なんだってんだ、ったく……」
思わず抱き留めてしまったが、この後この少年をどうしたものか。
「……ってか……」
華奢な少年かと思いきや、抱きとめた体にはしっかりと筋肉がついていた。
スーツの上着を持っている。ワイシャツに、よく見れば下もスーツだ。
幾つだ?と思いながら顔を覗き込み、すぐに異常に気付いた。
髪にこびりついているのは精液で、額の近くに乱暴をされたような痕がある。
首筋にも幾つか赤い痣のようなものが見えた。
「…マジかよ」
「どうしたんだい、ロックオン」
「アレルヤ」
両手に一杯荷物を抱えたまま、アレルヤは状況が全く飲み込めないままロックオンを凝視していた。
「なんか拾っちまった。買い出し済んだならホテルに戻るか」
「彼を運ぶのかい?」
「このままここに置いておけねーだろ」
「ティエリア辺りに怒られそうだ」
確かに。部外者を潜伏先に連れてくるなんてーとか言ってキレられそうだ。
苦笑しながら、ぐったりと眠る…というよりは、気を失っている青年の肩を担ぎ歩き出した。
| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 01:55 AM