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ジョピュア(ダリル)3(part4 41-44)

ジョピュア

「いつまでそんな顔しているんですか、グラハム・エーカー上級大尉殿」
背後から呼びかける声に、グラハムは驚いて振り返った。
視界には延々と続く仲間達の眠る墓、どんよりと暗い曇り空。
吹く風は生温く、未だ微かな煙の臭いを含んでいた。
これは、現実だ。まぎれもない現実。
遠くには崩壊したMSWAD基地が、まるでそれ自体が墓標の用に立っている。
足下には遺体のない棺が眠り、彼の同僚はもう戻らない。
そう、永遠に戻らなかったはずなのだ。
だが。
「そんな…君は」
「随分と無防備な顔ですね。空母で見せた傲慢な態度ははったりですか?」
声が震える。屈辱的な言葉を投げられているのに、怒りにではない。
もう会えないはずだった存在に再び触れる事ができる、歓喜にだ。

「君は…君は戦死したはずだ、ジョシュア」
生きている筈がない。ガンダムに逃げられた後、
三国はそれぞれ生存者の探索を入念に行ったのだから。
センサーも経験も何もかも、あの状況で彼が生き残っている可能性を否定している。

無意識に、グラハムの腕はジョシュアの頬に伸びていた。
目尻から耳へのラインを、確かめるように何度も撫でる。
「さわれる…」
「ハっ!まるで人がゴーストだとでも言いたげですね。」
頬に添えられたグラハムの手を、ジョシュアが乱暴に掴んで引き離した。
「…っ!」
「触れますよ。当然でしょう。あんたの腕をひねり上げる事だってできる。
 それとも淫乱な上級大尉殿は別の場所を確かめたかったんですか?
 頬じゃなくて、ほら」
掴まれた手はゆっくりと下に導かれ、すでに熱を持った彼の象徴に添えられる。
ジョシュアはニヤニヤといけすかない笑みを浮かべているが、グラハムは自身が確実に高揚しているのを感じていた。
「俺にブっ込まれるの、好きだったんでしょう。目の前で死なれてショックでしたか?俺にもう、愛してもらえないか、ら……っうあ」
体が自然に動いていた。無理矢理添えられた手を、熱にそって必死で上下させる。
「っつ、はっ…なんだ、そんなに我慢できないんですか、困ったお人だ」
「…………っ」
無言で彼のペニスを擦る。
衝動だった。いつの間にか勃ち上がった自身のものも取り出し、
私のも、と口に出した時は、さすがに彼のシニカルな笑いもひきつったが。
空は曇天で、周りには墓標で、ここは屋外で。
普段なら理性が許さないはずなのに、男達は立ち尽くしたまま、無言で互いの熱を高め合った。
証が。彼が生きている証が欲しい。
彼の命がまやかしでない事を、一番感じ取れる場所で感じたい。
「っあ、ジョシュ、ア……っ!」
「も、う…限界ですかっ、上級大尉、殿」
「っ…………挿れて、くれ……」
「!!」

今までグラハムが強請った事は一度も無かった。行為はいつもジョシュアから一方的にはじめられ、彼が満足した時に終わるからだ。
ジョシュアの企みで、複数人に追いつめられた事も一度や二度ではない。
まして恋人のように抱かれた事など、一度も。

青い目が驚愕に見開かれた後、小さな舌打ちと共に伏せられた。
寄せられた眉根に小首をかしげると、ペニスに添えられた手が急に激しさをもって追いつめてくる。
「う、あぁっん、アぁっっ…アっ…あっ、あっあっあっ!」
「くそっ………!」
「や、ジョッシュ、挿れ、挿れてくれっ…!」
「黙れ、黙ってくれよグラハム・エーカー!」
名前を呼ばれて肩が跳ねる。縋るように翡翠の瞳が蒼を追うが、避けられた視線は交わる事がない。
ぐちゅぐちゅと響く淫猥な音が耳につく。
嫌だ、嫌だとかぶりを振るが、今日に限ってその望みは、いつまでもかなえられる事はなかった。
「いやだ、ジョシュア、挿れ、て、くれ……!
 …どうし、てっ…!」
「くそ、今更言ってもっ、遅いんだ、よっ!」
「いっ…あっ、アッアッあああああああ!」


「あんたが余りにも頼りない顔してるから、だから俺は、」

「隊長」
意識が浮上する。無機質の天井に反射する蛍光灯が眩しくて、一度開いた目をぎゅっと瞑った。隊長、起きて下さい、と聞き慣れた声が降ってくる。
その声が記憶と食い違っていて、グラハムは勢い良く上半身を起こした。
「目が覚めましたか?隊長。」
「ダリル………」
そこに居たのは皮肉っぽくグラハムを見下ろす彼ではなく、忠義の厚い黒人の部下。そうだ、自分は彼と墓参りをしていて、それで……
「ハワードの墓の前で考え込んでたと思ったら、いきなりブっ倒れたんですぜ。
 酷い熱だったから自分がここに運んだんですが……覚えてないですかい?」
「熱……」

酷い喪失感に身体が震えた。寒気を感じて両の腕で肩を抱く。
夢だったのか。あれは全て。弱い自分が作り出した幻だったのか。
ふと湿った感覚に意識が呼び戻される。

「あの…隊長、言いにくい事なんですけど」
「なんだ」

声が、また掠れた。夢の時と同じように。
手にべっとりとついた白濁の液が、外気に冷えて体温を奪って行く。
「どういう夢見てたんですか。挿れてくれ、だなんて。」
「!!」

ジョシュアの言葉とダリルの視線が身体の中を駆け巡って、
グラハムはまた身体に熱が集まるのを感じた。
君は、挿れてくれるのか。
吐息と共に吐き出せば、忠義の厚い部下はぎしり、とベッドに体重をかけた。

| ジョシュア::12:ジョピュア(ダリル)3 | 2008,02,19, Tuesday 02:39 AM

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