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売春リンカーン→分岐1-a:カタギリルート(part4 522,524)
グラハムからの電話を受け、ビリーは必死で車を走らせた。
早く彼を迎えに行ってやらねばならない、それだけが頭にあり、
信号を無視してクラクションを鳴らされてもスピードを落とすことはなかった。


今から一時間程前、基地のベッドで仮眠をとっていたビリーを起こしたのは
一本の電話だった。寝惚け眼で鳴り続ける携帯を耳に押し当てた彼が聞いたのは
友人のか細い声だった。そしてその声はこう言った。
「助けてくれカタギリ、今モーテルにいる…」
ただ事ではないのはすぐに分かった。だが続いた言葉にビリーは言葉を失った。
「客に金も服も取られたんだ、無様だろう…」
客に、とグラハムは言った。声は憐れなほど震えている。
だからこそビリーは問い詰めることが出来なかった。
何があったのか、彼のプライドの高さをを知っているから聞けなかった。
だがグラハムの声は更に自分を追い詰めるように続く。
「金を貰って寝なきゃならないのにこれだ、久しぶりだったから腕がなまったかな」
「グラハム…」
「今モーテルの場所を言うから来てくれないか?こんなこと頼めるのは君しかいない」
住人を告げると電話はあっけなく切れた。

ビリーは仮眠室のベッドの上でしばらく呆然としてから
替えの衣服をかき集め告げられた住所へ車を走らせた。
確かにグラハムは部下の死からこちらおかしかったが
金で寝るなんて彼らしくなかった。
やがて見えてくるモーテルの看板を眺め、ビリーは唇を噛む。
本当に彼らしくなかった。自暴自棄になったのなら自分でもよかったはずだ。
知らない男だなんて病気でも移されたらどうするつもりなのだ。
ビリーはモーテルの駐車場に車を停め、替えの服を入れた鞄を手に指定された部屋に走った。
扉を開けて一まず番に、部屋に充満する精液の青臭い臭いが鼻をついた。
モーテルの一室は明かりが落とされているために暗く、そしてじめじめとしていた。
グラハムを探せば、部屋の隅で薄汚いシーツにくるまり震える影がある。
「グラハム?」
名前を呼ぶと、シーツの影はおずおずと立ち上がる。
窓から差し込む薄い明かりが照らすのは、は精液にまみれたグラハムだった。
青白い肌のあちこちには噛み跡や乱暴なキスマーク、
殴られた跡にできたのだろう痣がちらばっていた。
グラハムはそれを隠そうとシーツを口許に寄せたが
ビリーはそれを許さなかった。
「君はなんてことを…」
隅で震えるグラハムの腕を掴むと狭いバスルームの扉を開け、
コックを捻りシャワーから水を金髪にかける。
いきなりのことにグラハムは戸惑い、脅えているようだった。
だがビリーはその憐れな姿を見ても止めてやる気にはなれなかった。
足の隙間に膝をいれ、裸の背をタイルの壁に押し付ける。
「僕が綺麗にしてあげるよ…」
耳元に唇を寄せてそう囁けば、グラハムは肩を揺らし息を飲んだ。
「中まで綺麗にしてやるよ…」
指を尻に這わせ囁く。
どうしてここまでの怒りが自分を覆っているのか、ビリーには分からなかった。
汚れたグラハムに欲情している自分がいることしか、彼には分からなかった。

| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 01:34 AM

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