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売春リンカーン→分岐1-d:アレハンドロルート(part4 620)

リボンズ様が見てる

目が覚めると、ひどく体が冷えた。頭が痛いのは酒のせいか。
乱暴のかぎりを尽くした名前も知らない下品な男達は、
後処理もしないままモーテルを出て行ったらしい。
体内に残ったままの欲望に吐き気がした。

軍のIDバーとカード、携帯は自宅に置いてきたから無事だったが、
財布の中身と着ていたコートと、仕立てのいいスーツはなくなっていた。
仕方なく精液でぐちゃぐちゃのワイシャツを身にまとい、ネクタイをしめる。
部屋に入ってすぐ後ろから無理矢理脱がされて、無造作に床に捨てられた
トランクスに足を通すが、人に会わないで自宅にたどり着けるかどうか。
タクシーを拾おうにも金がない。
靴をはこうとして、それも残っていない事に気付いた。
悪態をつこうとして、声も掠れすぎてでない事に気付く。
仕方がないから、人の通らない場所を選んでいこう…
だが裸足のままシャツ一枚で一目を避けて路地裏を行くには、
イリノイの土地も、グラハムの心も寒すぎた。

「車を止めてくれ。」
人も車も沈黙する深夜。いや、もう明け方も近い。
一見優雅そうに見えるがその実多忙な男は、黒い車を人気のない路地につけさせた。
「珍しい毛並みの猫がいると思ったら……これはこれは」
先日の雨のあとが未だ乾かない、汚い水の溜まった薄暗い路地裏。
シャツにネクタイという奇妙ないでたちで、彼は倒れていた。
「ふむ。」
「どうされました、アレハンドロ・コーナー様」
スケジュールがおしているというのに、仕事に向かう車から降り
路地の一点を見つめて動かない男に、しびれを切らした従者らしき少年が問いかける。
「リボンズ、猫を拾ったら怒るかね?」
「どういう意味でしょうか」
アレハンドロ・コーナー、と先ほど呼ばれた男はその場にしゃがみこみ、
泥にまみれてなお輝きを失わない金髪をかきあげる。
「美しい猫だよリボンズ。ああ、美しい捨て猫だ。」
男が目配せをすると、黒いスーツを着た体格のいいSP達が
ぼろぼろのグラハムの体を持ち上げて車へ乗せた。

| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 11:59 PM

売春リンカーン→分岐1-c-1-2:コーラサワールート(part4 605,749,750)

新橋

「なっ…なんだあッ?!」

いきなり倒れ掛かってきた男をコーラサワーは慌てて抱き起こそうとした。
が、手に持っていた大きな赤い薔薇の花束のせいで一瞬反応が遅れ、そのまま雪道へ一緒に倒れこんでしまった。

「なにすんだ、おい!…あれ?」

意識を手放した男の顔はどこかで会ったことがある気がする。
蒼白な顔色に凍えた体。人通りもまばらな夜道でこのまま放置するには忍びない。耳元で大きな声で呼びかけたがそのまま反応は無かった。

「ったくしょーがねーなー」

コーラサワーは携帯を取り出しデート予定だった相手に電話をかけた。


ホテルの部屋に彼を連れ帰ったコーラサワーは雪で白くなったジャケットを脱がせた。
「…!」息を呑む。なんてことだろう、気を失っただけだと思っていたがシャツは切り裂かれ、
そこから覗く白い肌には明らかな暴力の跡がある。これ以上傷つけることのないようにと、そっとベッドへ寝かせる。
少し躊躇ったがボロボロのシャツを脱がせ、濡れたボトムと下着も剥がすように脱がせた。
傷が痛むのか時々堪えきれぬ息が漏れる。精液で汚れきったその肌をコーラサワーは怒りのような感情を抑えながら
丁寧に熱いタオルできれいにぬぐっていく。ところどころに噛み跡やキスマークが淫らに存在し
対照的な子供のような寝顔に痛々しさが増すばかりだ。

「ひでえな…おい、大丈夫か?」

軽く頬を叩くとグラハムは微かにその長い睫毛を震わせ、うわごとのように何かつぶやいた。

「…わたしは…ない…」
「なに?なんだ?聞こえないぞ」

うっすらと目を開け、グラハムはコーラサワーの顔を幻でも見るかのように定まらない目線で見つめる。
綺麗な深緑の瞳…確かにどこかで。
その目元に大粒の涙が浮かび、頬を伝い落ちた。
肩を震わせわななく唇から搾りだす必死な掠れた声で言う。

「わたしは…守れない…助けてく、れ…ジョシュア…ハワード…」
「あんた…」

そのまましがみつかれて、どうしようもない気分になる。
このまま肩を抱きしめていいものか?
だが傷ついた捨て猫のような青年の姿に同情と困惑と、コーラサワー自身でも分からない感情があった。
どうしても放っておけない。…だが、どうすれば彼を慰めることができるのか。
制御できない感情のまま、その金糸の髪にそっと口付けてみた。

続き▽

| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 11:15 PM

売春リンカーン→分岐1-b-2:ロックオンルート2(part4 546)
「…すまない。君には感謝している…みっともないところを見せてしまった」
ベッドに腰掛け、頭からタオルを被り、うつむいている彼は、シャワーを浴びる前よりも更にしおれて見える。
ツインのもう片方に座ったロックオンは苦笑いしながらぱたぱた手を振った。
「あー、いいっていいって。アンタの家の近くまで送ってくからさ、
アンタの名前も聞かない。俺の名前も言わない。お互い何も見なかったことにしようぜ。
ただ、小うるさいのと教育上あんまりバレたくないお子様がいるもんでね。悪いが連中が寝付くまで待ってくれ」
ついでにロックオンの人目を忍ぶ立場としては、人通りは少ないほどいい。となると数時間は待つことになる。

コーヒーを入れて、暖房を利かせて、TVを付けて。間は持たないが、何も聞かない方がいいだろう。
よほどの目にあったことはさっきの服の上からでも充分見てとれた。

無言の時間がどれだけ過ぎたか。聞こえるか聞こえないかの声で、彼が呟いた
「こんな男など、捨て置けば良かっただろうに。何故助けた?」
さっぱり頭に入ってこないTVの画面を眺めていたロックオンは胡乱げに青年に向き直った。
「何でって…拾うだろ、そんだけボロボロになってりゃ。今にも死にそうで…顔色なんて真っ白だったぞ」
「そうか」
うつむきっぱなしの顔が上がって、ロックオンの方を向いた。タオルが肩に落ちる。
子供のように大きな目に見つめられて、ロックオンは何故か落ち着かない気持ちになった。
改めて見ると、綺麗な顔をしている。下衆な男達が欲望をぶつけるのもおかしくは…
「…いい男なのだな、君は」
(あ、笑った)
何とはなしに良かった、と思ったのもつかの間。

「自業自得なんだ。自分でが望んだ結果がこれだから」
「…は?」
「私は男娼だよ。…客の相手も満足にできない出来損ないの。おかげでこの有様だ」
さっきとは違う、自嘲の笑みが浮かんだ。
男娼?そんな訳がない。生真面目な口調といかにも毛並みの良さそうな風体。
ボロボロにされたスーツだってビジネスマン然とした、それなりに値の張りそうなものだ。

「嘘だろ、そんなの」
詮索しないと決めた筈なのに、つい詰るような口調になってしまう。
答えは予想もつかないものだった。
「じゃあ、確かめてみればいい」
立ち上がった青年は、バスローブの帯を解いた。そのままロックオン近づき、に圧し掛かる。
「何してんだあんた!」
しかし抵抗はできなかった。ついさっきレイプされた相手だと思うと何をしても傷付けてしまいそうで、それが恐ろしかった。
「ささやかな謝礼、というべきかな。満足してもらえないかも知れないが、努力はするよ」
「そんなことしなくていい!」
口とは裏腹に、妙な疼きを覚えていた。間近にある白い肌。大人びた表情が似合わない童顔。これを、好きにできるとしたら。

「へまをしたものだから持ち合わせがなくてな…今はこれぐらいしか君に捧げられるものはない」
「待て、俺はそんなつもりで助けたわけでもないし、そういう趣味だって」
浮かんだ考えをかき消すように言い訳じみた言葉を吐き出す。
「…気持ち悪いか?…私に触れられるのもおぞましい?」
そういう言い方はずるい。
「そういう意味じゃない!大体アンタだって嫌だろ、こんな…」
「いいや?」
そっとロックオンの首に腕を回し、耳元で彼は囁いた。表情は見えない。
「君の優しさに漬け込ませてもらいたい…私が哀れなら、抱いてくれ」

| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 07:13 AM

売春リンカーン→分岐1-c-1-1:カタギリ未遂→刹那ルート(part4 541,542,548-550)
「…お前は……」

誰かの名前を呼んでいたが、それが誰かまではわからない。
ただ、意識を失うさいに縋るように凭れた体を支えきる事が出来ずに刹那は雪の中倒れこんだ。
弱っている人間——しかも少なからず、嫌いではない、興味をひかれている人間を支える事も出来ずに
グラハムの背に腕を回し抱えながらも拳を握り締める。

バイクに乗りながらも彼を見つけられたのは僥倖だった。
アイリス社付近で落とされた紛い物の腕を拾いに向かう間だったのだから会っても不思議ではなかったのかもしれない。

しかし、彼の変わり果てた姿と彼との行為で覚えのある寒い中でも鼻につく匂いは悔しさしか沸き立たない。

「…おい、起きろ…」

揺さぶっても目を開く事はなく、体は火のように熱をもっている。
ユニオンのエースである彼が素面で無理に強姦されるとは考え辛い。
ならば……

刹那は舌打ちして携帯を取り出し、面倒見のいい、ロックオンに電話をかける。
こういう事は彼と彼によくついてくるアレルヤに頼るのが最適だ。人も良いし見捨てる事もしないだろう。
一人でグラハムを支える事も運ぶ事もいまだ出来ない成長の遅い自分が疎ましい。

「…ああ、俺だ。…力がいる。貸してくれ。」

いつもどこか大人ぶっている、大きいと思っていた男が、酷くはかなく頼りなげて小さく見えた。
電話口で場所をロックオンに告げながらコートとマフラーをグラハムにかけて抱きしめて温める。
コートも腕も、温めるには小さすぎる事実に苛立ちと焦りだけが募っていく。
自分と彼の立場では常に側にいる事も、辛い時に支える事も出来ない。
自分は、彼から奪う側の人間だ。

グラハムの唇が微かに動いて、また新たに涙が零れる。

刹那はそれに口付けて涙を啜った。

続き▽

| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 03:28 AM

売春リンカーン→分岐1-c-1:カタギリルート未遂(part4 540)
スーツの内ポケットに残された支給品の電話を鳴らす。

「…カタギリ…私は…」

体中が痛む、特に殴られた頬も、腰も…口淫を強いられつづけていた口は上手く言葉を発する事も出来ない。
スーツに入っていた財布は無くなっていた。
車のキーも消えていたから車も盗られたのだろう。
ユニオンは広い。モーテルから軍に戻るとしても車かタクシーに乗る金が無ければ帰る事は不可能だ。

鳴らし続ける電話。
しかし、電話の向こうの主は取る事をしてはくれなかった。
それもその筈だ。

「クジョウ…か、当然だな。」

持ち上げるのも億劫な手でグラハムは額に手をあて目を隠した。
今日はクジョウと合っているはずなのだから。

まだハワードもジョシュアも生きていた頃にカタギリはクジョウと再会を果たし、それから何度か会っている。
自分は男でクジョウとは違う。
いつか写真を見せてもらったがスタイルの良い美しい女性だった。
クジョウと再会を果たした時のカタギリの顔を思い出せば想いを寄せているのは一目瞭然だ。
所詮、男の自分など遊びにすぎなかったという事だろう。
わかっていた筈だ。

「…ハワード、ジョシュア…」

二人の顔を思い出すとまた新たに涙が頬を伝った。

「おまけに、私は…こんな事をする男ときている。」

シャワーをあびる気にはなれなかった。
青臭い精液だらけの体にスーツを適当に着て、ふらつきながら雪の中、モーテルを後にする。

このまま寒さに命運を果てるか、運良く自室に帰り着くか。
そんな賭けをするのも悪くないと思えた。

———ハワードとジョシュアに会えるなら…

視界は激しく舞う雪で幸い青臭い匂いも白い精液の固まりも目立たなくしてくれる。
空から舞う白い清浄な氷はセンチメンタリズムにもこの世のものとは思えない世界にいるように錯覚させる。

——二人に会えたら、謝って、ハワードはきっとジョーク混じりに咎めてジョシュアは皮肉りながら高慢な言葉をはいて

ふらついた足取りで寒さから帰路を急ぐ車が多く走る通りの端を歩いていく。
勢いを強める雪は激しい無理矢理な行為で体力を失った体から通常よりも早く体温を奪っていく。
コートも着ていない。その姿の異様さは高か不幸か車のみの人通りのない道路では誰も気にも止めなかった。

どこまでも白い世界が続くと思える中で、ふと前が陰りグラハムは顔をあげた。

「…ハワード…?いや…ジョシュア…か?」

喘がされつづけて枯れ果てた喉では相手に声が聞こえていたかどうか。
それも気にせずにグラハムは微笑んだ。
やっと…やっと、二人に会えるのだと。

| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 03:16 AM

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