「…すまない。君には感謝している…みっともないところを見せてしまった」
ベッドに腰掛け、頭からタオルを被り、うつむいている彼は、シャワーを浴びる前よりも更にしおれて見える。
ツインのもう片方に座ったロックオンは苦笑いしながらぱたぱた手を振った。
「あー、いいっていいって。アンタの家の近くまで送ってくからさ、
アンタの名前も聞かない。俺の名前も言わない。お互い何も見なかったことにしようぜ。
ただ、小うるさいのと教育上あんまりバレたくないお子様がいるもんでね。悪いが連中が寝付くまで待ってくれ」
ついでにロックオンの人目を忍ぶ立場としては、人通りは少ないほどいい。となると数時間は待つことになる。
コーヒーを入れて、暖房を利かせて、TVを付けて。間は持たないが、何も聞かない方がいいだろう。
よほどの目にあったことはさっきの服の上からでも充分見てとれた。
無言の時間がどれだけ過ぎたか。聞こえるか聞こえないかの声で、彼が呟いた
「こんな男など、捨て置けば良かっただろうに。何故助けた?」
さっぱり頭に入ってこないTVの画面を眺めていたロックオンは胡乱げに青年に向き直った。
「何でって…拾うだろ、そんだけボロボロになってりゃ。今にも死にそうで…顔色なんて真っ白だったぞ」
「そうか」
うつむきっぱなしの顔が上がって、ロックオンの方を向いた。タオルが肩に落ちる。
子供のように大きな目に見つめられて、ロックオンは何故か落ち着かない気持ちになった。
改めて見ると、綺麗な顔をしている。下衆な男達が欲望をぶつけるのもおかしくは…
「…いい男なのだな、君は」
(あ、笑った)
何とはなしに良かった、と思ったのもつかの間。
「自業自得なんだ。自分でが望んだ結果がこれだから」
「…は?」
「私は男娼だよ。…客の相手も満足にできない出来損ないの。おかげでこの有様だ」
さっきとは違う、自嘲の笑みが浮かんだ。
男娼?そんな訳がない。生真面目な口調といかにも毛並みの良さそうな風体。
ボロボロにされたスーツだってビジネスマン然とした、それなりに値の張りそうなものだ。
「嘘だろ、そんなの」
詮索しないと決めた筈なのに、つい詰るような口調になってしまう。
答えは予想もつかないものだった。
「じゃあ、確かめてみればいい」
立ち上がった青年は、バスローブの帯を解いた。そのままロックオン近づき、に圧し掛かる。
「何してんだあんた!」
しかし抵抗はできなかった。ついさっきレイプされた相手だと思うと何をしても傷付けてしまいそうで、それが恐ろしかった。
「ささやかな謝礼、というべきかな。満足してもらえないかも知れないが、努力はするよ」
「そんなことしなくていい!」
口とは裏腹に、妙な疼きを覚えていた。間近にある白い肌。大人びた表情が似合わない童顔。これを、好きにできるとしたら。
「へまをしたものだから持ち合わせがなくてな…今はこれぐらいしか君に捧げられるものはない」
「待て、俺はそんなつもりで助けたわけでもないし、そういう趣味だって」
浮かんだ考えをかき消すように言い訳じみた言葉を吐き出す。
「…気持ち悪いか?…私に触れられるのもおぞましい?」
そういう言い方はずるい。
「そういう意味じゃない!大体アンタだって嫌だろ、こんな…」
「いいや?」
そっとロックオンの首に腕を回し、耳元で彼は囁いた。表情は見えない。
「君の優しさに漬け込ませてもらいたい…私が哀れなら、抱いてくれ」
ベッドに腰掛け、頭からタオルを被り、うつむいている彼は、シャワーを浴びる前よりも更にしおれて見える。
ツインのもう片方に座ったロックオンは苦笑いしながらぱたぱた手を振った。
「あー、いいっていいって。アンタの家の近くまで送ってくからさ、
アンタの名前も聞かない。俺の名前も言わない。お互い何も見なかったことにしようぜ。
ただ、小うるさいのと教育上あんまりバレたくないお子様がいるもんでね。悪いが連中が寝付くまで待ってくれ」
ついでにロックオンの人目を忍ぶ立場としては、人通りは少ないほどいい。となると数時間は待つことになる。
コーヒーを入れて、暖房を利かせて、TVを付けて。間は持たないが、何も聞かない方がいいだろう。
よほどの目にあったことはさっきの服の上からでも充分見てとれた。
無言の時間がどれだけ過ぎたか。聞こえるか聞こえないかの声で、彼が呟いた
「こんな男など、捨て置けば良かっただろうに。何故助けた?」
さっぱり頭に入ってこないTVの画面を眺めていたロックオンは胡乱げに青年に向き直った。
「何でって…拾うだろ、そんだけボロボロになってりゃ。今にも死にそうで…顔色なんて真っ白だったぞ」
「そうか」
うつむきっぱなしの顔が上がって、ロックオンの方を向いた。タオルが肩に落ちる。
子供のように大きな目に見つめられて、ロックオンは何故か落ち着かない気持ちになった。
改めて見ると、綺麗な顔をしている。下衆な男達が欲望をぶつけるのもおかしくは…
「…いい男なのだな、君は」
(あ、笑った)
何とはなしに良かった、と思ったのもつかの間。
「自業自得なんだ。自分でが望んだ結果がこれだから」
「…は?」
「私は男娼だよ。…客の相手も満足にできない出来損ないの。おかげでこの有様だ」
さっきとは違う、自嘲の笑みが浮かんだ。
男娼?そんな訳がない。生真面目な口調といかにも毛並みの良さそうな風体。
ボロボロにされたスーツだってビジネスマン然とした、それなりに値の張りそうなものだ。
「嘘だろ、そんなの」
詮索しないと決めた筈なのに、つい詰るような口調になってしまう。
答えは予想もつかないものだった。
「じゃあ、確かめてみればいい」
立ち上がった青年は、バスローブの帯を解いた。そのままロックオン近づき、に圧し掛かる。
「何してんだあんた!」
しかし抵抗はできなかった。ついさっきレイプされた相手だと思うと何をしても傷付けてしまいそうで、それが恐ろしかった。
「ささやかな謝礼、というべきかな。満足してもらえないかも知れないが、努力はするよ」
「そんなことしなくていい!」
口とは裏腹に、妙な疼きを覚えていた。間近にある白い肌。大人びた表情が似合わない童顔。これを、好きにできるとしたら。
「へまをしたものだから持ち合わせがなくてな…今はこれぐらいしか君に捧げられるものはない」
「待て、俺はそんなつもりで助けたわけでもないし、そういう趣味だって」
浮かんだ考えをかき消すように言い訳じみた言葉を吐き出す。
「…気持ち悪いか?…私に触れられるのもおぞましい?」
そういう言い方はずるい。
「そういう意味じゃない!大体アンタだって嫌だろ、こんな…」
「いいや?」
そっとロックオンの首に腕を回し、耳元で彼は囁いた。表情は見えない。
「君の優しさに漬け込ませてもらいたい…私が哀れなら、抱いてくれ」
| 分岐モノ::1:売春リンカーン | 2008,02,22, Friday 07:13 AM