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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

[サイスコ]君の為の願い星

  • 2018/08/08 21:20
  • カテゴリー:FF


流れ星に願い事をすると、願い事が叶うのだと聞いた。
だから流れ星が見たい、と言ったスコールに、見せてやりたい、と思った。
彼の願い事が叶えば、彼がもう一度笑ってくれると思ったから。

一人、また一人と一緒に過ごした仲間達がいなくなっていく中で、自分達だけが取り残された。
二人きりになると、どうしても相手の事が気になって、意識するしないに関わらず、目で追う事が増えた。
そうして、ただでさえ泣き顔ばかりだった彼の顔が、本当にそれ一色しか残らなくなって行くのが嫌だった。
だって、スコールは確かに泣き虫だったけれど、笑う事もあったし、怒る事もあったのだ。
それなのに、姉がいなくなったその日から、スコールは姉を呼んで泣いているか、見付からないと言って泣いているか、まだ帰ってこないと泣いているばかり。
そんなスコールの泣き顔以外が見たくて、彼の願いを叶えてやりたくて、サイファーはスコールを夜の浜辺へと連れ出した。

夜の海は危ないから、子供達だけで行ってはいけないと言われていたけれど、その日はママ先生もシド先生もいなかった。
サイファーにとっては幸いだ、そうでなければ流れ星を見る前に家に連れ戻されてしまうに違いない。
良い子で寝ているのよ、と言ったママ先生の言いつけを破る事には少し抵抗があったけれど、それよりも、彼の笑った顔が見たかった。

その日は満点の星空で、とても綺麗な夜だった。
こんなに星が沢山あるなら、流れ星もきっと見れる筈だと思って、意気揚々とスコールを連れ出した。


けれど、流れ星は見付からなくて、幼い願いも叶わなかった。
そうして、そんな記憶も、いつの間にか海の底へと沈んで行った。



明日一日の休みが確保できた所で、スコールは仕事を切り上げた。
時刻は夜11時であったが、普段寝ないで仕事をするのが当たり前になりつつあるスコールにしては、早い終業だろう。
キスティスに言わせると、これでも遅い方らしいが。

丸一日が休みと言うのは久しぶりの事だったので、何をしようかと少し浮ついた気持ちで寮へと向かっていたのだが、その途中でサイファーに逢った。
逢ったと言うより、寮への渡り廊下で、サイファーがスコールを待ち伏せしていたのだ。
約束をしていた訳でもないのに「遅ぇ」と言ったサイファーに、スコールが知った事かと素通りしようとして、腕を掴まれた。
そのまま目的とは真逆の方向へとずるずると引き摺られ、抵抗している間に、スコールはガーデンの門を潜っていた。


(なんなんだ……)


カードリーダーを強制的に通された辺りから、スコールは抵抗を止めた。
ずんずんと進んでいくサイファーに腕を引かれるまま、校外に出てしまっている。
仕事から解放されたと言う気の緩みもあって、妙な体の重みを自覚しながら、だらだらとした足取りでサイファーについて行く。

問答無用に引き摺られてから、何処に行くんだ、何を考えているんだとは言ったのだが、サイファーは「良いからついて来い」の一点張りであった。
せめて説明責任は果たして欲しい、と思うのだが、時によりサイファーはそれを完全に放棄する事がある。
それはどう言う時なのか、スコールは何となく理解していた。


(また何かサプライズか?)


言うべき事を言わず、秘密にして驚かせようと言う時、サイファーの口は固い。
手を退く男の背中は、急くように忙しなくはあるけれど、足取りは何処か浮かれているようにも感じられる。
と言う事は、やっぱり何かサプライズなんだな、とスコールは結論付けた。

バラムガーデンを出てから、サイファーは真南へと向かって進んでいる。
舗装された道を外れて進んでいるので、外灯の類はなく、星明りだけが二人の道標となっていた。

足元の草土が途切れて、細かな砂の感触に変わる。
夜の浜辺に寄せては返す波の音が聞こえて、風に乗って潮の香りが届いた。
夜とあってか、この辺りに生息しているフォカロルの鳴き声もなく、波音だけが静かな夜の浜辺に響く。


「────よし。間に合ったな」
「……?」


サイファーの呟きに、何かを急いでいたのか、とスコールは察する。
しかし、何の為に急いでいたのかは判らない。


「……おい、サイファー」
「あん?」
「なんでこんな所に連れて来た?何かあるのか?」
「まあな。直に始まる筈だから、ちょっと待ってろ」


そう言って、サイファーは掴んでいたスコールの手を離し、その場に腰を下ろす。
砂浜の上で、お気に入りのコートの裾が砂だらけになるのも構わず、サイファーはその場に落ち着いてしまった。

結局大した説明はしないんだな、と半ば判っていた事と諦めつつ、スコールは辺りを見回す。
浜辺は勿論、海はいつも通りだし、他の幼馴染のメンバーがいると言う訳でもなさそうだ。
やれやれ、と溜息を吐いて、スコールもサイファーの隣に腰を下ろして、波音の響く海を眺める事にした。

今日の海は随分と暗く見える。
と言うのも、月が全くなく、星の光だけでは海を照らすほどの明かりにならないからだろう。
そのお陰か、星明りがちりばめられている天上の方が、今日はほんのりと明るく見える程だ。


(……こう言う景色を、前にも見たような気がするな)


スコールの脳裏に、霞がかった情景が浮かぶ。
何処までも延びる暗い海と、遠く遠くまで続く満天の星空と、寄せては返す波の音。
誰かが隣にいたけれど、それが誰だったのかは判らなくて、多分子供の頃の記憶なのだろうと思う。
恐らくは石の家にいた頃のもの、と言う事までは判ったが、それがその頃のいつの物なのかは判然としなかった。

ぼんやりと海を眺めながら、そう言えばあの時はどうして海を見ていたのだろう、とふと疑問に思う。
夜の海は危ないから、子供だけでは近付いてはいけないと口酸っぱく言われていた筈だ。
それなのに、朧な記憶の中には大人の姿はなくて、子供だけで夜の海辺で星を見ていたのだと言う事が判る。
スコール自身は、大人の言いつけを余り破る行動力がなかったと思うので、誰かに誘われて行ったのだと思うのだが、それは果たして誰だったのか。


(言いつけを破って、夜の海に行くような奴は────)


メンバーは限られている。
そう、例えば、今自分の隣にいる奴とか。

そう思った時に、サイファーが「お」と声を上げた。


「始まったぜ、スコール」
「は?一体何が────」


何が始まったんだ、と問う声は、空でちかりと光ったものに遮られる。
光の軌跡を追って蒼灰色の瞳が夜の空を見ると、其処には次々に降り注ぐ星の雨があった。

始めは一瞬の一本から。
その後を追うように、また一筋、また一筋と、星の海を流れて行く光がある。
消えたと思ったら違う場所から、同じ方向に向かって並行に流れ落ちて行く光の名を、スコールも知っている。


「……流星群?」
「ああ。丁度今夜が見頃だってニュースでやっててよ」
「………」
「知らなかっただろ。お前、テレビなんて見ないからな」


全く知らない情報に、スコールが目を丸くしている間に、サイファーがくつくつと笑って言った。

確かにサイファーの言う通り、普段のスコールは、情報収集の目的がなければテレビを見ない。
だからローカルニュースや、ニュースの体を借りた情報バラエティなんてチャンネルを点ける事もしないので、其処で発信される情報は全く入って来なかった。

また一閃、ひらり、ひらり、と星が流れて行く。
空に散りばめられた星よりも、一際明るい光の線は、星の命の最期の色だ。
それは刹那に燃え尽きるものだったが、何万光年と言う遠い地まで届く鮮明な光は、地に立つ生き物の心を引き付けて已まない。
勿論、ロマンティックを自負する男の心も、捉えて離さなかった。


「滅多に見れるもんじゃねえからな。良いもんだろう」
「……まあ、な」


確かに珍しいものだ。
いずれはまた起きる事だと言っても、それが己の目が確かな内に再来するとも限らない。
見ようと思えば見えるが、見ようと思わなければ見ずに終わり、そのまま機会も失われるものなのだ。

降り頻る星の雨をじっと見つめるスコールを、サイファーはちらりと見遣って、口元を緩める。


「……やっと見せてやれたな」
「……え?」


呟きにスコールが顔を向けると、碧眼とぶつかった。
何かを遣り遂げたような顔をしているサイファーに、こいつはこんな顔をする奴だったか、とスコールは首を傾げる。

サイファーは砂浜の上に倒れ込み、大の字になった。
見上げた満点の星空にも、海の向こう程の数ではないが、流星が通り過ぎて行くのが見える。
その光景を見詰めながら、サイファーは遠い記憶の出来事を語る。


「ガキの頃、お前を連れて海に行った事がある」
「……」
「流れ星に願い事をすると叶うって言うだろ。だから、お前の願い事、叶えてやろうと思ってよ」
「……」
「まあ、結局見せてやれなかったんだけどな。結構待ったけど、流れ星は一回も見付けられなかったし、結局途中で寝落ちちまってて、後でママ先生に二人揃ってこっぴどく叱られて」
「……そう、だったのか」


サイファーの言葉に、思い出したばかりの記憶が再び揺り起こされる。
相変わらず記憶はぼんやりと霞がかかっているが、サイファーの言葉を受けてか、記憶の一部が溶けたように続きが浮かんで来た。

眠っている所を起こされて、サイファーに手を引かれて、夜の浜辺に降りた。
流れ星って知ってるか、と言われ、流れ星に願い事をすると叶うんだ、とも言われた。
それを聞いて、あの頃ずっと願っていた事────お姉ちゃんが帰って来る事をお願いしたいと言ったら、サイファーは願い事が出来るまで一緒に流れ星を探すと言ってくれた。
その後の事は思い出せないが、多分サイファーの言った通りなのだろうな、と思う。
小さな子供が夜にいつまでも起きていられる訳もなく、言いつけを破った事がバレて、大人に叱られるまでも様式美か。

随分と古い事を、よくもまあ覚えているものだ。
存外と記憶力の良い幼馴染に呆れつていると、


「っつー訳だ、スコール。今度こそちゃんと願い事しときな」
「……はあ?」
「これだけ流れ星が見れたんだ。願い事の一つや二つ、今度はちゃんと叶えてくれるだろ」
「…そんな事……」


今更、願い事なんて。
そんな気持ちで、スコールは星の雨に目を向ける。

幼い頃に願っていたのは、大好きな姉が帰って来る事だけだった。
それ以上にスコールが欲しい物などなかったし、他の何かを求められる程、スコールの世界は広くなかった。
そう思うと、世界中の地を踏んだ今なら、幾らでも願い事が思い浮かぶような気がしたが、特にこれと言って浮かぶものはない。
記憶の彼方に置き去りにしていた姉とも再会し、埋もれていた記憶も取り戻し、守りたかった人も守る事が出来た。
流れ星に頼まなければ叶えられないような願い事は、今のスコールには思い付かない。

流れては消える光を見詰めながら、スコールは抱えた膝に顎を乗せた。


(願い事……)


星を見詰める蒼の瞳が、つい、と隣に寝転ぶ男へと向かう。
サイファーはしばらく星を見上げていたが、視線に気付くと「なんだよ?」と此方を見た。
別に言いたい事は特にないので、スコールはじっとサイファーを見詰めたまま、沈黙する。

今以上の何かを、スコールは求める気にはならない。
それは恐らく、今自分が欲しいと思うものが、当たり前に隣に存在しているからだろう。

じっと見つめるスコールに、サイファーが起き上がって問う。


「で?願い事は決まったのか?」
「……いや」
「さっさと決めろよ、終わっちまうぞ」
「別に、構わない。願い事も特にないし」
「勿体ねえな。折角見れた流れ星だぜ。連れてきてやったんだから、何でもいいから願っとけよ」
「……じゃあ、あんたが次の任務で余計なトラブルを起こしませんように、と」


しれっと告げられた願い事に、色気がねえ、可愛くねえ、と怒る声。
それを何処吹く風と聞き流しながら、スコールは最後の星が海の向こうに吸い込まれて行くのを見ていた。





『浜辺で星を見上げるサイスコ』のリクエストを頂きました。

子供の頃に二人並んで星を見上げて、成長してから同じ事をしてる二人って好きです。
変わらない所もありつつ、確かに何か変わっている二人とか。好き。
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[スコスコ]ホートスコピー・シェイプ・シフト

  • 2018/08/08 21:15
  • カテゴリー:FF
[スツール・エン・ダンス]の続き





殺してやる。
何度もそう繰り返すのを聞きながら、弄んだ。
忌々し気に、悔しそうに、睨んでくるのが面白かった。

その内に疲れか精神的な限界か、意識を飛ばしたのを見て、さてどうしようかと考える。

何も知らない彼は、此方の言っていた事など、惑わせる為の戯言としか思っていないだろう。
本物か偽物か、実際の所、この世界においてそれは然したる意味を持たない事だったが、まだ何も知らない彼には、大きな揺さぶりになったに違いない。
敵であるからと、その敵が言った事を、特に意味のない単語だとは片付けられない性格だから。
それを思うと、どうせなら言葉の意味を理解するまで、手元に置いて観察していたい、と言う欲が沸いた。

けれど、いつまでものんびりと観察している訳にも行かないだろう。
繰り返されるこの世界に、タイムリミット等と言うものは余り意味がなかったが、“次”が始まるまでの時間制限はあるのだ。
“次”が来れば今の記憶は恐らく彼には残っていないから、また初めからやり直しになる。
繰り返し植え付けて行けば何らかの変化も見られるかも知れないが、生憎、其処まで気が長くはない。
己の存在そのものさえ、ふとした瞬間に露と消えて、同じ形の違う入れ物に入って戻って来る事を思えば、やはり今の内にしか楽しめない。

意識のない体を担ぎ上げて、歪の入り口を開ける。
遠くから此方へ向かってくる気配があったので、銀色の刃を地面に突き立てて標にした。
これを見た彼等が何を感ずるかは知らないが、良くない予感に至るのは間違いないだろう。
それから先にどれ位に辿り着くか、それも含めて、スパイスにするのも悪くない。



散々な目に遭った。
痛いとか、苦しいとか、そう言うものは勿論だが、それ以上に吐き気がした。
それを押し付けてくるのが、自分の同じ顔をしていると言うのが、一層嫌悪に拍車をかける。
だが、スコールがそうして嫌悪している事すらも、あれにとってはきっと愉悦なのだろう。
それを証明するように、間近で見た嫌な笑顔ばかりが焼き付いて離れない。

好き勝手にされて、意識を飛ばして、目を覚ましたら、石壁で囲まれた部屋の中にいた。
両手は鎖で縛られ、首に巻かれた首輪と繋がっている所為で、碌な自由がない。
ボロボロにされた服はそのまま着せられているが、拡げられたシャツからひんやりとした冷気が入り込んで来るのが鬱陶しかった。
武器は手元にはなく───あってもこの状態では握れない───、酷く心許無いが、それは表に出してはならない。
下手な弱味を少しでも見せたら、奴は絶対に調子に乗る、とスコールは理解していた。

幸いなのは、奴が此処に現れる時間はごく限られていると言う事だろうか。
だから彼がいない内に此処を脱出する術を見付けたいのだが、それは口で言う程簡単な話ではなかった。
この空間が何処なのかはスコールには判らないが、魔力の気配が色濃い事から、恐らく魔女の手を借りて作り出した空間だろうと見当をつける。
となると、スコールの自力だけで脱出口を見付けるのは、いよいよ以て難しいと言う事になる。


(やはり、あいつが戻ってきた所を狙うしかない。だが、この状態では────)


冷たい床に鵜座って壁に寄りかかり、脱出の方法を探すスコールだが、その両手が拘束されているのが辛い。
鎖は首輪にも繋がっている為、両腕を真っ直ぐに伸ばす事も出来ず、肩から上の自由は殆ど無いようなものだった。

手首を捻り、捩じり、なんとか鎖を外せないかと試みる。
もう何度目になるか判らない挑戦は、やはり全くの徒労にしかならなかった。
悪足掻きに鎖に歯を立て、絡み付きを緩ませようともしてみるが、案の定、無駄な足掻きにしかならない。
口の中に残る鉄錆の味が、スコールの腹立たしさを増す。


(手が自由になれば。それさえ出来れば、後は何とでもなる)


実際にはそれ程楽観的な状況ではないのだが、逆に言えば、それすら儘ならなければ突破口は見出せないと言う事だ。
両手ないし片手だけでも自由がなければ、物を掴む事も探る事も出来ない。
だから何をするにも、先ずはこの手の自由を取り戻す事からだ、とスコールは何度目か知れない鎖に牙を立てる。

ぎり、ぢゃり、と金属の擦れ合う音がする。
唯一使える口が段々と疲れてきて、鉄味ばかりを味わう舌が嫌気を訴えて来た頃、暗闇の中でカツン、カツン、と言う固い踵の音が聞こえた。


「またやっているのか。飽きないな」


呆れたように、けれど何処か楽しそうに聞こえる声は、スコールの声そのものだ。
しかし愉悦を孕むような喋り方をスコールはした事がない。
それよりも、俺はこんな声で、こんな貌で喋るのか、と思うと、嫌悪が止まらなかった。

嘗てスコールが憧れ、それに袖を通す事を目標にしていた服────SeeD服。
それを身にまとい、スコールと同じ瞳の色で、薄らと笑うスコールとよく似た貌を持った、混沌の駒。
多くは鉱石を思わせる見た目をしている人形とは異なり、服は勿論、髪や肌質までスコールをそっくり再現したイミテーション。
初めて邂逅した時から、スコールの苛立ちを助長させるばかりだったそれが、笑みを浮かべて此方を見下ろしている。

見下ろす男から体を隠すように、スコールはじり、と後ろに下がる。
しかし、背にしている壁に既に行き止まってしまう為、両者の距離は幾らも開かなかった。
それ所から、ブーツの脚が此方に近付いてきて、スコールの足元を跨ぐように立って止まる。
殆ど垂直の位置から見下すように落ちてくる視線が気に入らなくて、スコールは眦を尖らせてそれを睨み返していた。


「……お前は、何がしたいんだ」
「うん?」


スコールの言葉に、イミテーションは意味を測りかねると首を傾げる。


「…こんな所に閉じ込めて、お前達カオスの連中は何を考えている?殺すならさっさと殺せば良いだろう」
「……ああ、そうか。確かに、それが普通だな」
「……白々しい。お前達は───お前は一体何がしたいんだ」
「……“何が”、か」


睨み付けて再度問うスコールに、イミテーションは見下ろしていた視線を外し、天井を見上げる。
隙だらけのその姿に、スコールは益々腹が立った。
そんな姿を見せられる程に、相手に余裕がある、それをさせてしまう程に自分に余裕がない事が明白だからだ。

イミテーションは沈黙の末に、再びスコールを見下ろして言った。


「別に。特に何もないな」
「……っ…!!」


他のどんな返答よりも、腹立たしい答えが返ってきた。
瞬間、スコールの頭は一気に沸点へ上る。


「あんな事をしておいて……!」
「……あんな事、か」


忌々しいと言わんばかりの眼光で睨むスコールの言葉に、イミテーションが膝を追って、目線の高さを合わせる。
覗き込んでくる蒼灰色に、本当に俺はこんな顔をしているのか、とスコールは疑問に思う。
暗く淀んだ光を携えた眼も、薄く笑みを浮かべた唇も、まるで自分を模した物だとは思えない程、目の前の貌が憎い。

すい、と延びた手が、スコールの頬を撫でた。
その感触が、体に未だに残る記憶と重なって、スコールの背中に悪寒が走る。


「あんな事と言うのは、これか?」
「触るな!」


つう、と鎖骨の狭間を辿る指を、拘束された手で打ち払えば、イミテーションは払われた手を一瞥して、また伸ばす。
延びてくるその手を見るだけで、スコールの貌が引き攣った。
弱味を見せてはならないと歯を食い縛れば、イミテーションは薄ら笑いを浮かべて、スコールの鎖に縛られた手を掴む。


「思い出した。少し面白い話をしてやろうと思ったんだ」
「……興味ない」
「ついさっき、秩序の聖域に行ってきた」
「!?」


反応を無視して告げられた言葉に、スコールは目を瞠る。

混沌の駒であるイミテーションが、秩序の聖域に。
襲撃したのか、とスコールが睨むと、イミテーションは歪んだ表情を変えずに続ける。


「お前の仲間が、必死にお前を探していた。お前のガンブレードはあそこに置いて来たから、それを見て、お前に何かあったと探し回っていたんだろう。……其処に、今のお前と同じ格好をした俺が現れたら、どうなると思う?」
「……な……」


今スコールの目の前にいるのは、SeeD服を着ている事以外は、全く自分と変わらない見た目をした人間だ。
イミテーションだと言われても、鉱石地味た見た目の他の者とは違い、一見するとスコール本人との差異も見付けられない程にそっくりだった。
声も仕草も、何もかもがスコールと鏡映しにしたような井出達に、仲間達が混乱していたのは、まだ遠くない話だ。
口を開けば雰囲気が違う事や、何よりも服装が違うからまだ判るけど、と言うレベルだった。
もしもスコールがSeeD服を着て相対したら、どちらがどちらなのか、仲間達にも見分けが着かないかも知れない。

スコールがこのイミテーションに拉致されてから、どれ程時間が経ったのかは判らないが、スコールが獲物を置き去りに消える事などある筈がないから、“何か”が起きた事は皆判るだろう。
そう言う時の“何か”と言うのは、混沌の戦士の姦計が絡んでいる場合が多い。
だから慎重に、且つ早期に、スコールを見付け助けなければならない、と彼らは思っている筈だ。

そんな彼等の下に、何食わぬ顔をした“スコール”が現れたらどうなるか。
SeeD服ではなく、黒のジャケットを着た、いつもの姿の“スコール”が戻ってきたら。
秩序の戦士達は、それが“スコール”なのか“スコールとよく似た別物”なのか、判るのか。

その答えを、イミテーションは滔々と語る。


「ジタンもバッツも、何処に行っていたんだと言ってきた。囚われたから脱出して来たと言ったら、安心したように飛び付いて来た。ウォーリアから説教を食らったな。面倒なので黙っていたら、クラウドとセシルが入ってきて、ウォーリアを宥めた。傷はないかと聞かれたから、魔法で治したと言ったら、それで終わりだ。皆俺が“お前”だと思って疑わない」


スコールとそっくりのイミテーションがいると知っていて、誰一人として、目の前の“スコール”を疑わない。
相対している時、必ずイミテーションがSeeD服を着ている事もあり、それを着ていればイミテーション、そうでなければ“スコール”だと言う先入観もあるだろう。
後はイミテーションが努めて“スコール”と同じ言動をなぞってしまえば、彼等にはもう見抜けない。

イミテーションの言葉を、スコールは愕然とした表情で聞いていた。
仲間達が偽物を見抜けなかった事も、裏切られたようで腹立たしいが、それ以上に、目の前の人形がそっくりそのまま“自分”として摩り替われている事がショックだった。

そんなスコールの頬を、イミテーションの両手が包み込む。
覗き込んでくる蒼の瞳が、薄暗い笑みを浮かべて、自分と同じ顔をした少年を見詰めていた。


「俺がお前に成り代わるのは簡単だ。お前が考えているように行動して、お前がしそうな顔をすれば、俺は直ぐにお前になれる」
「……こ…の……っ」
「偽物と本物なんてそんなものだ。お前は俺を偽物だと言うが、お前がその場にいなければ、誰も俺がお前の偽物だなんて思わない。俺とお前の違いなんて、その程度のものしかない」
「違う。お前なんかと一緒にするな」
「同じだ。お前は俺で、俺はお前だ。だからお前の仲間達も、俺をお前だと思ったんだろう」
「お前が俺の振りをしているだけだろう。どうせその内ボロが出る」
「さて、どうだろうな」


スコールの反論すら、イミテーションは意に介さない口調を崩さない。
肌の上をゆっくりと滑る手が悍ましい。
その手はスコールの腹を辿り、刻まれた感覚を呼び起こそうとするように、緩やかに皮膚を撫でる。


「俺はお前として、秩序の聖域に踏み込んだ。どう言う事か判るか?」
「……」
「もう秩序の聖域に、お前の為に用意された席はないと言う事だ」
「………っ!!」


目の前の偽物が、本物のスコールの振りをして、秩序の戦士の中にいる。
戦闘ともなればどうせボロが出るだろうと言うのは、スコールの希望的観測だ。
そして、本当にそれによって偽物と本物の差が出るのか言えば、判らない。

何故なら、目の前の偽物は、まるで本物そっくりのように思考回路も行動理論も持っているからだ。
スコールならばどう行動するのか、何を言うのか、本物のスコールと肉薄した戦闘中さえも、まるでシミュレーターを具現化したかのように、そっくりスコールの行動に沿って来る。
そんなイミテーションを一度でも信じた彼らが、“スコール”と信じている偽物を、疑う事が出来るだろうか。


「スコール。逃げたいなら逃げれば良い。戻りたいなら戻れば良い。だが、もうお前の居場所は其処にはない」
「……ふざけるな……!お前なんかに、そんな事────」
「奴らにとって、もう“俺”は“お前”だ。“お前”が今更自分を“お前”だと主張した所で、“俺”が“俺”を“お前”だと言えば、偽物はどちらになるか、判るだろう」


今まで当たり前にスコールが存在していた、秩序の戦士達の輪の中に、侵入する異物。
異物は、不在となっている椅子の持ち主と同じ顔をして、何食わぬ顔で其処に座り、誰もそれを疑わない。
本来の主が戻ってきても、席は既に奪われて、スコールが座る場所はなくなっている。
それ所か、“偽物”が“本物”になって、”本物”が“偽物”になって、“仲間”は“敵”になる。
スコールが元の居場所を取り戻すには、“本物になった偽物”と入れ替わらなければならなかった。

だが、スコールは囚われたまま、目の前にいる“偽物”に噛みつく事も出来ない。
暗い笑みを浮かべた蒼灰色は、その事を判っている。
視線で殺せるのなら殺してやりたい、と言わんばかりの眼光を向けるスコールに、イミテーションは薄い胸板を撫でながら囁いた。


「殺しはしない、スコール。“俺”が“俺”でいる為に、“お前”の存在は必要だ」
「意味の…分からない事を……っ!」
「でも、そうだな。このまま何もないのは、お前も詰まらないだろうな」


スコールの肌を撫でる手が、するり、と胸へと滑る。
ぞわ、と悪寒が背中を走るのを感じて、スコールはその手から逃れようと身を捩った。
しかし、イミテーションはスコールの頭を掴んで引き摺り倒すと、その上に跨って体重をかけて押さえ付ける。


「ぐ……っ!」
「もう少し楽しませて貰おうか、“スコール”」
「……っ…!」
「“俺”と“お前”が違うと言うなら、“お前”がそれを証明しろ。“俺”とは違う、その体で」


刻まれたばかりの痕を抉るように、イミテーションが嗤う。



別の固体として存在しているのだから、確かにその存在は別物だ。
それが“本物”と“偽物”の区別と言えば、そうなのかも知れない。
けれど、何が“本物”で、何が“偽物”なのか、その証となる物は何処にもないのだ。

それでも自分は“本物”だと、だから“偽物”に飲み込まれる訳にはいかない。
揺らぐ心を煽るように、体の奥がじくじくとした痛みを発している気がして、スコールは歯を食い縛った。





『アナスコorスコールのイミテーション×スコールで[スツール・エン・ダンス]の続き』のリクエストを頂きました。
糖度も何もない、ギスギスしたアナスコ×スコと言う仕上がりに。

拘束したノーマルスコールを可愛がる(意味深)アナザースコールと言う構図が好きなようです。
SeeD服なアナザースコールは、色々と知恵が回って立ち回りが上手いと良いなぁと言う妄想。
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[クラスコ]渚の幻

  • 2018/08/08 21:10
  • カテゴリー:FF


遠くに行きたい、と言ったスコールに、何かあったのだろうな、と思った。

色々と気になる事はあるものの、恐らくは聞かない方が良いのだろう。
その選択が正解かどうかは判らないが、少なくとも、スコールは踏み込んで欲しくないと望んでいる筈だ。
だから何も聞かずに、偶然にも丁度眺めていたバイク雑誌のツーリングコースを見せて、何処に行く?と言った。
スコールはそんな反応が返って来るとは思っていなかったようで、驚いた顔で此方を見ていた。

スコールの家庭環境は複雑だ。
幼少の頃、スコールは孤児院にいて、高校生に上がる前になって、父親が現れた。
父親は傍目に見ても優しい男で、子煩悩で、とても家族を捨てるようには見えない。
スコールが生まれた当時、彼が傍にいなかった事は、様々な不幸が重なっての事であり、恐らく彼自身にも何か事情があったのだろうと想像させるのは簡単だったが、だからと言って、15年近くも顔すら知らなかった父親が突然現れても、受け入れるのは難しいだろう。
しかし、そう言う想像をかなぐり捨ててまで父親を拒否する程スコールも子供ではなくなっていて、折角会えたのだからと言う周りからの奨め───勿論、強制ではなく、スコール自身にきちんと選択させる形で───で父親との生活が始まった。
が、突然現れた父親との距離感はどうにもぎこちない。
どうして良いか判らない、と言う気持ちと、思春期特有の大人への反発心も重なって、二人の仲は荒れてはいないが穏やかとも言い難いそうだ。

クラウドがスコールと出逢ったのは、二年前の事だった。
スコールが父親に引き取られ、今の生活が始まってから、三ヵ月と言った所らしい。
気難しい自分と違い、明るく人懐こい父親を、スコールはどう扱えば良いのか、彼の言葉の一つ一つをどう捉えれば良いのか判らず、家出気味の日々を送っていた。
放課後、夕方の街をふらふらと歩き、性質の悪い連中に絡まれた所を、偶然通りかかったクラウドが見兼ねて助けたのが切っ掛けだ。
それから、何処か危なっかしい印象の抜けないスコールをクラウドが放っておけなくなり、世話を焼いた。
始めこそ反発の強かったスコールだったが、雛が懐くように段々とクラウドに心を開き、今では恋人同士と呼ぶ間柄になっている。

出逢った頃に比べると、スコールと父との蟠りは和らいでいる。
だが、一緒にいるとスコールが息苦しさを感じる事は儘あるようだった。
父親が自分を愛していると判っても、それを受け入れる余裕が少し出来たと言っても、思春期真っ盛りの少年には、それもまたむず痒くて落ち着かない。
何かと声をかけてくる父に対し、彼が期待しているような反応をしなければ───と言うプレッシャーを感じてしまう事もあるようで、彼がそれを強要している訳ではないとしても、息苦しさを感じてしまう事もあるのだろう。
そんな時、スコールは、決まってクラウドの家へと逃げ込んでいた。

遠くに行きたい、と言うスコールの言葉も、きっとそう言った感情から降ってきたものなのだろう。
スコールの家の事情を知っており、スコールの気持ちも汲んでくれる相手と言うのは、少ない。
元々人とのコミュニケーションにやや難のあるきらいのあるスコールは、交友関係と言うものが非常に狭く限定されていた。
だから自分の気持ちを吐露する相手も、慮ってくれる人も少ない。
全くいない訳ではないようだが、同調を求める訳でもなく、理解者と呼ぶ程の共感が欲しい訳でもなく、真っ向から否定されるのも嫌で、と言う複雑な心の在り様を受け止めてくれる相手、と言うのは難しいだろう。
そう言う点に置いて、有体な同調をせず、判った振りをして理解者ぶる事をせず、正面からの否定もしない、寄り添う事を選ぶクラウドの存在は、スコールにとって決して小さくなかった。



世間は夏のバカンスシーズンで、学生は夏休みである。
となれば、出不精なスコールは一日中を家で過ごしているのが常である。
そんなスコールにとって、一日で行って帰れるような道程でも、旅行と言えば確かに旅行と言えた。

クラウドは愛用のバイクにスコールを乗せて、海岸線を走っていた。
日差しは夏真っ盛りと暑いものだったが、都会の真ん中と比べれば、海辺は少し位は涼しく感じるだろう。
ガードレールの向こうに広がる水平線を見るだけでも、気持ちは水分とすっきりするのではないだろうか。

バイクを走らせながら、クラウドは背中に触れる体温を感じていた。
外気の熱と、背中の熱とが合わさって、暑いと言えば暑いのだが、恋人に抱き着かれていると言うのはやはり嬉しい。
始めの頃は、安全の為に確りと捕まる事さえ躊躇っていたスコールが、今は乗ると直ぐに腰に腕を回してくる。
他者との接触を好まないスコールが、こうした事に慣れてくれただけでも、自分への信頼の深さが見えるようで、クラウドは嬉しかった。
生活費から捻出した金で、バイクを単座から複座に替えた甲斐があったと言うものだ。

海岸線を走って行くと、海側にパーキングエリアがあった。
其処から浜辺に降りる事が出来るようだが、遊泳エリアから少しずれている所為か、利用客は少ない。
停まっている車も、釣り客が置いているものばかりのようだ。


「スコール」
「ん」
「其処のパーキングに留めるぞ。休憩にしよう」
「判った」


短い返事を聞いて、クラウドはウィンカーを出す。
一時停止の標識に従った後、角を曲がってパーキングエリアに入った。

二輪用の屋根付きの場所があったが、使っている者は誰もいない。
これなら大型バイクを置いておいても邪魔にはなるまい、とクラウドは其処に滑り込んだ。
バイクのエンジンを切って、「降りて良いぞ」と言うと、スコールがバイクを降りてヘルメットを脱ぐ。


「っふう……これ、やっぱり暑いな」


頭を左右に振って、ぱさぱさと濃茶色の髪を揺らしながら、スコールが言った。


「一応、夏用に通気のあるものでなんだが、お前はヘルメット自体被り慣れてはいないから、やっぱり苦しいか」
「……少し」
「バイクは車と違って日に当たりっぱなしだしな。ああ、自販機があるから、何か買って来よう。水分の補給も大事だぞ」
「水が良い」
「炭酸水もあるようだが」
「……普通の水が良い」


遠慮ではなく、純粋に単純に水が欲しい、と言うスコールに、クラウドは「判った」と頷いた。

自販機で水を二本買って戻ると、スコールは海を眺めていた。
浜辺の向こうにある海を、まるで初めて見たかのように見詰めているスコールに、クラウドの唇が緩む。
少しは気が晴れていると良いが、と思いつつ近付いて、買ったばかりのペットボトルをスコールの頬に当てた。


「冷た……っ」
「よく冷えてる。遊泳エリアじゃなくて良かったな。ああ言う所だと、補給と冷却が追い付かなくて、生温いのが出てきたりするし」
「……確かに、そうだな」
「海の家のものを買っても良いが、割高だしな」


スコールがペットボトルを受け取り、口を開ける。
小さな口でこくこくと水を飲むのを見て、クラウドも喉の渇きを自覚した。
冷たい水を飲みながら、クラウドはジャケットの前を開けながら訪ねる。


「此処からどうする。海に行ってみるか?」
「……行く」


此処まで来たなら、とスコールは頷いた。

パーキングエリアの脇に設置されている階段を使って浜辺に降りると、海との距離が一層近付いた。
空から降り注ぐ太陽の光が、寄せては返す波に反射して、ひらひらと眩しい。
浜一面も白く輝いて、スコールは眩しさに目を細めていた。

海沿いに点々と、釣りを楽しんでいる人の姿がある。
この暑いのによくやる、とスコールが呟いて、俺達もその暑い中をツーリングして来たんだがな、とクラウドは胸中で呟いた。
が、今日の小旅行はスコールにとってイレギュラーだし、ツーリングをして来たからこそ、暑い最中に外でじっと過ごせる事が不思議に見えるのかも知れない。


「スコール。折角だから少し海に入るか?」
「水着なんてないだろ」
「泳ぐとは言っていない。少し足を浸す位だ」
「………」


いつもなら、ズボンが濡れそうだから嫌だ、と言うだろう所を、スコールは熟考した。

波打ち際とは言え海に入るのなら、裸足になって、ズボンは捲らなければいけない。
捲っても裾は濡れるかも知れないし、足が濡れれば浜の砂がついて、後が面倒臭い。
……でも、海に来たのは随分と久しぶりだし、次にいつ来るかは全く見当がつかなかった。
泳ぐのが好きな友人が、プールに行こう、海に行こうと誘ってきたので、割と近い内に行く事になるかも知れないが、その時はこんな風に静かに過ごすのは無理だろう。
嫌だと言っても海へ引っ張られるのが想像できて、ゆっくりと楽しむなら、きっと今しかない。

────スコールが靴を脱ぎ始めたのを見て、クラウドもブーツを脱ぐ。
今日の遠出は所謂デートであったから、少し格好を決めたブーツを履いていたので手間がかかったが、無事に裸足になった。
炎天で熱くなった浜辺を急ぐように歩き、靴は波の届かない場所に置いて、波を踏む。


「冷たい」
「ああ。気持ち良いな」


スコールが零した言葉に、クラウドは頷いて言った。

寄せては返す波に足を浚われないように意識しながら、スコールが波間を歩く。
何処に行く気があるではないのだろう。
彼はただ、波の冷たい感触を楽しみながら、気の向くままに歩いているようだった。


「余り行くと、バイクに戻る時に時間がかかるぞ」
「判ってる」
「クラゲに気を付けろよ。今年は多いらしいから」
「ん」


スコールはきちんと返事をしたが、気もそぞろなのが判る。
ぱしゃ、ぱしゃ、と水を蹴るようにして歩く足元が、彼の心が弾んでいる事を滲ませていた。
そう言う所を見付けると、どんなに大人びた雰囲気を出していても、まだ17歳の少年なのだと判る。

今朝、スコールは父に何も言わずに、こっそりと家を出て来たと言う。
スコールの父は、愛した女性が子供を産んで亡くなった事すら、知り得ない環境にいたらしく、その為に息子の存在も長らく知らなかったそうだ。
そう言った事実からの罪悪感もあるのか、どうしても息子に過保護にしてしまうようで、スコールにはそれも息苦しさの原因となっているのだろう。
何をしてはいけないとか、門限等が定められている訳ではないけれど、真面目な気質のスコールは、どうしても父の反応が気になってしまうらしい。
だが、気にし続けてしまう事も癪に障るようで、反抗するように、家出同然の行動を取ってしまうようだった。
クラウドがスコールと出逢った時も似たような状態で、心配から過干渉になってしまう父と一緒にいるのが嫌で、ふらふらと街を彷徨っていたのだ。
あれから父の方もスコールの気持ちを慮って、過剰な接触は控えるように努めているそうだが、どうやら元々スキンシップが好きで触れ合う事も好きな性質らしく、抑えてもまだまだスコールには多く感じるらしい。
何処かに出掛ける時にも、何処に行くのか、いつ頃帰るのか、と仕切りに訊かれるのが鬱陶しくて、父が起きてくる前に家を出たそうだ。
それでも、父の為の一日分の食事は用意してきたそうなので、邪見に扱うばかりではなくなっているのは確かだろう。

クラウドは携帯電話を取り出して、カメラを起動させた。
波を楽しむスコールの後ろ姿を映して、撮影スイッチを押す。
カシャ、と言う音が鳴って、スコールが振り返った。


「……あんた、撮ったな?」
「ああ。一枚だけ」
「消せ!」
「それは出来ない相談だ」


駆け寄って携帯電話を取り上げようとするスコールに、クラウドは体を捻って避けた。
確認画面が出ている画面をタッチして、メール画面を起動させ、添付をそのままにして送信する。
宛先はスコールの父親だ。

寄越せ、消せ、と追い回すスコールから逃げていると、早々にメールの返事が返ってきた。
追われているので中身は確認できないが、きっと息子の不在を心配し、けれど自分から連絡を取ればまたぎくしゃくしてしまうからと、どうして良いか判らずにいた父にとって、あの写真は色んな意味で安心したのではないだろうか。
一人息子の居場所が分かった事、信頼できる人間と一緒にいる事、海を楽しんでいる事。
それらが伝わっていれば、今夜スコールが家に帰った時、気まずくなる事もないのではないだろうか。

しかし、スコールにとって、周りのこうした気遣いも、見えてしまうと苦しいのだろう。
だからクラウドはメールを送信した事は言わず、「写真の一枚くらい良いだろう」と言ってやった。
そう言われるとスコールは、ムッとした顔でクラウドを睨み、


「俺を撮るなって言ってるんだ。俺じゃなきゃ別に撮ったって良い」
「それじゃ意味がない。俺はお前の写真が欲しい」
「自分の顔でも撮ってろ!」
「ああ、それもアリだな。しかし一人じゃ詰まらないし、」


言いながら、クラウドはスコールの腕を掴んだ。
ぐっと引っ張って、蹈鞴を踏むスコールを引き寄せて、肩を抱いて携帯電話のカメラを起動させる。


「!ちょ、」
「撮るぞ」
「だから、」


俺を撮るな、と言うスコールに構わず、クラウドは撮影ボタンを押した。
カシャッ、とシャッター音が鳴り、液晶画面にプレビュー画面が表示される。
抜けるような青空と海を背景に、二人の顔がしっかりと記録されている。


「うん、中々良いな」
「良くない。消せ」
「そう言うな。お前との思い出が欲しいんだ」


保存ボタンを押しながら言うクラウドに、スコールが顔の顔が赤くなった。
視界の端で捉えたそれに、可愛いものだな、と思いつつ、もう一度カメラを起動させる。


「スコール、もう一枚」
「な……もう良いだろ。一枚あれば十分じゃないか」
「ピンボケしていた。撮り直しだ」
「……もう好きにしろ」


当たり前に肩に回される腕に、スコールは抵抗を止めて身を預けた。
抵抗を止めてくれたので、幸いとクラウドは先よりも肩を強く抱いて体を寄せる。

ピントをしっかり合わせる為に、撮影ボタンを長押しすると、ピピピ、と電子音が鳴った。
指を離す瞬間に、隣を見て少し赤らんだ頬にキスをする。
え、とスコールが目を丸くすると同時に、液晶画面から指を離して、カシャッ、とシャッターが響く。
プレビュー画面に表示された、キスの瞬間の写真を見て、スコールの顔が沸騰した。



流石にこの写真は、彼の父親には見せられない。
真っ赤になって怒る恋人を宥めつつ、クラウドはそんな事を考えていた。





『クラスコ』でリクエストを頂きました。
特にシチュエーションの指定がなかったので、夏!海!バカップル!を目指してみました。

しばらくスコールは怒ってて、バイクに乗る時もブツブツ言ってるけど、くっついて移動している間に段々どうでも良くなって来る。
誰にも見せるなよって釘だけ差して、撮られた事はもう良いかってなるんだと思う。
そんでクラウドは一人で見て楽しんでるけど、その内見ている所をザックスとかに見付かるまでがテンプレートです。
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[クラスコ]ただいまチュートリアル中につき

  • 2018/08/08 21:05
  • カテゴリー:FF


いつから好きだったのかと言われると、正確には判らない。
けれど、自覚するよりも前からだったのだろう、とは思う。

そんな恋が実ったのだから、嬉しくない筈がない。
同時に、望みが薄いとも思っていた反動から、触れたい気持ちを長らく抑制していた事も確かだった。
となれば、実った瞬間から、その抑制は箍が外れて、これから沢山触れる事が出来る、と言う希望も湧いた。

────が、現実は中々冷たい。

好きだ、と言われて、好きだ、と言って、涙が溢れそうな程に嬉しかった。
まさか彼の方から告白して貰えるなんて思っていなかったし、彼が自分にそんな気持ちを抱いてくれているとも思っていなかったから、喜ぶと同時に、怖がりな彼に踏み越える切っ掛けを作らせてしまった事に、少しだけ申し訳なく思った。
だからこそ、これからは此方が目一杯彼を愛してやらなければ、とも思った。

想いが実った瞬間、喜びのままに、彼を強く抱き締めた。
触れ合う事を苦手としている彼が、それを受け入れ、背中に腕を回してくれたのも嬉しかった。
回された腕が少しぎこちなく震えていたが、彼が一所懸命に応えようとしてくれているのだと判ったから、そんな所も愛おしい。

そして、そのままもっと触れたいと言う衝動のままに、唇を重ねようとして、


「……ちょ、っと…待て……っ!」


両手のガードに遮られたのが、今から一ヵ月前の事。



スコールは元々、接触嫌悪に近い程、他者と触れ合う事を苦手としている。
幼い頃から傍でそれを見ている限り、原因らしい原因と言うのは主立って見当たらないので、恐らく生まれついての性格なのだろう。
ごく限られた安心できる人物を除いて、スコールは手を繋ぐのも嫌がる位に、人との触れ合いが苦手だった。
しかし幼い頃は、それでも誰かの温もりを求めている事は他の子供と同じで、家族にはとかくスキンシップ───と言うよりも抱っこをねだる事は多かったそうだ。
隣の家で暮らしていた頃から、近所付き合いで距離が近かったクラウドにも、彼はよく手を繋ぎたがっていた。
だから、全くの赤の他人と比べれば、近い距離である事を許される立場にはいた筈だ、とクラウドは思っている。

しかし、“幼馴染”や“隣に住んでるお兄ちゃん”としての距離には慣れていても、それ以上に近くなるのは、やはり慣れが必要だったらしい。
スコールと恋人関係になって以来、その微妙な距離感と言うものに、クラウドは少し寂しさを覚えていた。


(いや、別に不満な訳じゃないんだ。恋人同士になって、スコールの意識がそう言う風に変化したから、とも思えるし……)


スーパーで今日の夕飯の材料を買い終わったのが、つい先程の事。
その家路で、クラウドはスコールとほんの少し手を繋いでみようとしたのだが、どうにも上手く出来なかった。
と言うのも、クラウドの指先が手に触れただけで、スコールが手を引っ込めてしまうのだ。
判り易く逃げてしまうので、無理に追って掴む訳にも行かず、クラウドの手は何度目か知れず力なく垂れるしかなかった。

子供の頃は何度も手を繋いだ二人だが、今やクラウドは21歳、スコールは17歳だ。
男二人が当たり前に手を繋ぐような年齢ではないし、人目を気にするスコールが繋ぐのを嫌がるのも判る。
しかし、恋人となって以来、触れたいのに中々触れられない日々を送るクラウドとしては、少しでも早くスコールに“恋人として”のスキンシップに慣れて欲しいと言う願望がある。

スコールの逃げていた手が元の位置に戻ったのを見て、クラウドはもう一度チャレンジした。
隣を歩くスコールの手に、手の甲を当てると、スコールの肩がビクッと跳ねる。
赤い顔で蒼い瞳が右往左往するのを横目に見ながら、小指に人差し指を絡めると、スコールの手は判り易く強張るが、今度は逃げなかった。
その事に少し安堵して、辿るようにゆっくりとした動きで、クラウドはスコールの手を握る。


「……おい……っ」
「少しだけだ」
「……っ」


クラウドの言葉に、スコールははくはくと唇を震わせた後、俯いた。
繋いだ手に緩く握り返される感触があって、クラウドの胸がぽかぽかと温かくなる。

堂々と手を繋げない間柄である事は、悲しいが今は致し方のない事だ。
それなのに繋ぐことを許されること、人一倍他人の目を気にするスコールが振り払わない事に、クラウドは感謝する。
だからスコールには余り無理をさせないように、クラウドは10秒きっかりを数えて、そっと繋いでいた手を離した。
離した瞬間にスコールの唇から漏れた息が、安堵の溜息なのか、寂しさなのかは、まだ判らない。

クラウドが一人暮らしをしているアパートに着くと、スコールは早速夕飯の準備を始めた。
いつの間にか持ち込んで置いていくようになったエプロンを身に着けて、手際よく肉野菜炒めを作る。
その間クラウドは特にする事もなく、キッチンに立つスコールの後ろを姿をじっと眺めていた。

程なく出来上がった二人分の食事を、小さな卓上テーブルに乗せて、テレビを眺めながら食べて行く。
スコールが家に来るようになるまでは、カップラーメンばかりで毎日を凌いでいたのが嘘のような、健康的且つボリューミーな夕食に舌鼓を打った。
食べ終わると片付けもスコールが行い、その間にクラウドは風呂に入る。
毎日の習慣で言えば早すぎる入浴時間だが、今日はスコールが泊まる日で、彼は明日は学校があるからと早めに就寝しなければならないので、何事も前倒しになっている。
本当は土日にスコールを泊まらせてやりたかったのだが、色々な都合が重なって平日の今日になったのだ。

クラウドと入れ替わりにスコールが風呂に入っている間に、クラウドは押し入れから予備の布団を出した。
スコールが泊まりに来た時にだけ使われる予備の布団を、自分のベッドの横に並べて敷く。


(さて……)


敷き終わった布団の上に腰を下ろして、クラウドはスコールが戻って来るのを待った。

五分を過ぎ、そろそろ十分になるかと言う所で、風呂のドアが開く音がする。
ぺたぺた、と裸足の足音がして、スコールが寝室に入り、布団の上に座っているクラウドを見てぴたっと固まった。
もう初めての事ではないのに、と思いつつ、クラウドはスコールに手を伸ばし、


「スコール」


おいで、と言うように名を呼べば、スコールは赤い顔を俯けた後、のろのろと歩き出した。
湯に温まって火照った手が、ゆっくりとクラウドの下へと伸ばされる。
指先が触れ合っただけで固まってしまう手を捕まえて、クラウドはスコールの体を自分の方へと引っ張った。


「わ……!」
「おっと」


倒れ込んできた体を受け止めて、クラウドはスコールを自分の膝の上に乗せた。
余りに近い距離に気付いたスコールが顔を真っ赤にして、反射反応のように逃げようとするのを、腰を抱いて捕まえる。


「クラウド……!」
「うん」
「……っ……!」


咎めるように名を呼ぶスコール。
それに短い返事だけを返して、クラウドはスコールの頬に手を当てた。
途端にスコールは耳まで真っ赤になって、耐え切れないと言うように目を閉じる。

膝の上で縮こまって固くなっているスコールに、可愛いな、とクラウドの唇が緩む。
しっとりと水分を含んで額に張り付いている前髪を撫で上げて、露わになった額にキスをした。
すると、スコールはその感触を恥ずかしがって、ぶんぶんと頭を振ってしまう。


(本当に、初心だな)


何をするにも一度は強張ってしまうスコールを見る度、クラウドはそう思わずにはいられない。
時折、可哀想な程に赤くなってしまう事もあり、早く慣れてくれると良いんだが、とクラウドは独り言ちる。

恋人同士となってから、クラウドがほんの少しでも触れる度に、スコールは真っ赤になって恥ずかしがる。
しかしクラウドとしては、やはり好きだからこそ触れたい。
手を繋ぐのは勿論、肩を抱いたり、キスをしたり、もっと先の事もしたかった。
だがスコールを傷つけるのは本意ではないから、こうやって少しずつ少しずつ触れて、スコールに恋人としてのスキンシップに慣れて貰おうとしているのだ。

一ヵ月のクラウドの努力を経て、未だに恥ずかしがってばかりのスコールだが、これでも初めに比べれば随分とマシになった。
手を繋いでも振り払われないし、肩を抱いても逃げないし、キスをするのも拒まない。
触れるだけの柔らかいキスを頬に貰うのなら、段々と気持ち良くなってきたようで、繰り返し口づけている内に、ぼんやりとした瞳を浮かべるようにもなった────丁度、今のように。


「……スコール」
「……ん……っ」


腰を抱いて、手を握って、耳元に触れるだけのキスをする。
かかる吐息がくすぐったいのか、ピクッ、とスコールの体が小さく震えたのが判った。

いつかもっと触れ合いたいからと、慣れて欲しいと言ったのはクラウドだ。
スコールも望んでいない訳ではなかったから、少しずつなら、と頷いた。
それ以来、こうしてささやか過ぎる恋人同士の触れ合いを繰り返している。

腰を抱いていた手を少し滑らせて、背中を撫でた。
と、スコールの体が判り易く強張って、ふるふると頭を振る。
やだ、と言葉なく訴えるスコールに、やはりまだ早いか、と寂しく思いつつもクラウドは手の位置を元に戻した。
詫びの代わりに、スコールが嫌がらないと判っている額、瞼、頬にキスを重ねて行く。


「あ…んん……っ」
(…声が少し…辛いんだが。自覚はないよな)


キスをされる心地良さで、スコールの唇から漏れる声。
クラウドには中々に刺激的な声なのだが、言えばきっと慣れてしまったキスの事までリセットされてしまうので、クラウドは努めて知らない振りをする。

一頻りキスをして、クラウドは───物足りなさには蓋をして───満足した。
ぼんやりとしているスコールの頭を撫でて、抱き上げてベッドへと運んでやる。


「今日は此処までだな」
「……ん……」
「ありがとう、スコール」
「……別に……」


感謝の言葉を告げるクラウドに、スコールは目を逸らしつつ、赤い顔で俯いた。

スコールが泊まる時、ベッドはいつもスコールに譲っている。
明日はスコールの学校の為に早めに起きないといけないな、と思いつつ、クラウドは布団へと戻ろうとしたが、くん、と服を引っ張られる感覚に引き留められた。


「スコール?」
「………」


振り返ると、スコールがクラウドの服の端を掴んでいる。
視線は俯いたままベッドシーツを見詰めていたが、唇が何度か開閉を繰り返した後、蒼灰色がクラウドへと向けられた。


「クラウ、ド」
「なんだ?」
「……あ、……」


意を決した表情をしていたスコールだったが、また直ぐに俯いた。
掴んだ手は離れていないので、何かを言おうとしているのは確かだろう。
クラウドは急かす事なく、スコールの次の反応を待った。

ぎゅ、と服端を握る手に力が込められて、再度スコールが顔を上げる。


「俺も……キス、して…良いか……?」
「……!」


スコールの言葉に、クラウドは目を瞠る。
蒼の瞳が、緊張と不安の混ざった瞳で、それを見返していた。

────クラウドがしてくれるキスは、最初こそスコールを緊張させるばかりだったが、繰り返される内に段々とそれは解けていった。
それから最初に感じたのは、こんな事をしてクラウドは楽しいんだろうか、と言う疑問。
口に出さない疑問に答えは出ないまま、クラウドとのスキンシップは繰り返され、次第に彼に触れられると仄かな安心を感じるようになった。
キスをされるのもそれと同じで、クラウドの唇が触れた所が、ほんのりと温かい。
何度も与えられている内に、次第にその温もりが愛しくなって、心地良くなって、好きになった。
同じものを、クラウドにも与えられたら良いのに、と思う位に。

だからスコールは思い切って、キスをしてみようと思ったのだ。
いつも与えられているばかりのものを、ほんの少しでも良いから、クラウドに返したい。
触れ合う事が苦手な自分に根気強く付き合ってくれる事へ、感謝も込めて。

スコールのそんな気持ちをクラウドが全て読み取る事はなかったが、それでも、思わぬタイミングでの恋人からの言葉に、嬉しくない訳もなく。


「……良いぞ」


それだけ答えて、クラウドはベッド端に腰を下ろした。
少しの間をおいて、ぎし、とベッドの軋む音が鳴り、スコールがクラウドへと近付いていく。

緊張を誤魔化したいのだろう、縋るものを求めるように、スコールの手がクラウドの肩に乗せられる。
僅かに震えているのが判ったが、クラウドは敢えて何もせずにスコールのタイミングを待った。
スコールは小さく息を飲んで、深呼吸をなぞって細く長く息を吐いてから、ゆっくりとクラウドの横顔に自分の顔を近付ける。

─────ふ、と。

本当にほんの一瞬、触れるだけのキスが、クラウドの頬を掠めた。
今したのだろうか、と尋ねたくなるようなバードキスが、今のスコールの精一杯だ。


「……ク、ラ…ウド……」
「……ああ」


反応が気になって、名を呼ぶスコールの声が震えていた。
それを安心させてやる為に、クラウドはスコールの肩を抱き寄せて、耳朶にキスをする。


「ありがとう、スコール」
「……っ……!!」


クラウドの囁く声を聴いて、スコールは完全に沸騰した。
勢いよくクラウドの体を押し退けて、シーツを引っ掴んで包まって、布団の中に逃げ込む。

ミノムシのように真っ白なシーツに包まった恋人に、クラウドはくすりと笑みを漏らした。





『クラスコで恋仲になったばかりでまだキスやら何やら慣れないスコール』でリクエストを頂きました。

鋼の理性でスコールが慣れるまで無理はするまいと頑張ってるクラウド。
でも時々スコールの方から自覚なく理性崩壊させようとして来る。
頑張れクラウド。きっといつか報われる。その時は一杯触れば良いと思います。
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[フリスコ]雨盗人

  • 2018/08/08 20:55
  • カテゴリー:FF
現代パロディで、フリオニール×スコール→誰か、と言う設定。






どうして、と思わずにいられない。
どうして、そんなに苦しい事を続けているんだろう、と。
自分も同じ事をしていると判っていて、それでも、どうして、と思う。


スコールが彼に好意を寄せている事は明らかだった。
けれど、本人がそれに気付いていない。
元々人と関係を構築する事について、酷く消極的な性格である彼の事だ、自分にそんな感情があるとも思っていないのだろう。
更に言えば、幼い頃から自分に自信が持てない所があるから、自分の好意なんてものは他人にとって迷惑でしかない、と考えていても可笑しくない。
フリオニールにしてみれば、そんな事はないのに、お前に好きだって言われたらきっと誰でも嬉しくて堪らないだろうに、と思う。

けれど、そんなスコールだからこそ、フリオニールは心の何処かで安心していた。
他者と余り密接な関係を持ちたがらないスコールが、幼馴染だからと言う理由で、フリオニールとは距離が近い。
家族以外で、家族と近い、ひょっとしたらそれ以上に距離がないかも知れないポジションを、フリオニールは唯一許されていた。
その事に気付いた時、本当ならもっと沢山の人に愛されている事に気付かないスコールに、勿体ないと思う反面、彼と一番近い場所にいられるのが自分だけだと言う事に、密かな喜びを感じてもいた。

しかし、変化は突然やって来る。
ふらりと現れた人物に、スコールの心は奪われた。

ある意味で、“彼”はスコールの自分自身の理想像に近かったのだろう。
最初は恐らく憧れや羨望から始まったそれは、“彼”との距離が少しずつ近付くにつれ、形を変えて行った。
憧れの気持ちから、近くに行きたいけれど怖い、と言う気持ちで二の足を踏むスコールを、フリオニールは何度も背を押した。
それは純粋な厚意からで、少しでもスコールの喜んだ顔が見たかったからだ。
挨拶どころか、目も合わせられない程の距離から始まった“彼”とスコールの関係は、フリオニールの後押しを受けて、徐々に縮まった。
個人的に連絡を取り合う事も増え、フリオニールが間に入らなくても、会話が成立するようになった。
“彼”から送られてくるメールや電話、逢おうと約束した日が近付くと、そわそわとするスコールは、まるで遠足を前にした子供のように素直で判り易く、フリオニールの笑みを誘う。

スコールは他者との関係を強く求めない気質もあって、スコールの交友関係と言うものは極々限定されていた。
子供の頃からそれは発揮されており、沢山の子供達が遊ぶ公園に行っても、フリオニール一人の傍から離れない。
それも、フリオニールが他の子供達と遊んでいると、自分からフリオニールの下に駆け寄って行く事も出来ない消極さで、二人きりになれる時でなければ、自ら幼馴染に声をかける事さえ出来なかった。
輪に入れて、とも言えず、フリオニールと一緒に遊ぶ、と言う事も人数が多ければ言い出せないスコールに、フリオニールが先回りしてスコールと接触を保つようにしたのは、一体いつからだっただろう。
結構早い内だった、とフリオニールは記憶している。
それ以来、フリオニールは何をするにもスコールの気持ちを確認し、余程の事でなければ彼を優先するようになった。
そうする事でスコールは安心してフリオニールの傍にいる事が出来、フリオニールを介して自分の世界を拡げて行った。
スコールの世界は、隣に必ずフリオニールがいる事で、始まっていたのである。

だが、スコールももう高校生だ。
いつまでもフリオニールばかりにべったりしていられる訳ではないし、学校では同級生と話をしている場面も増えた。
フリオニールが傍にいなくても、彼の世界は確かに外と繋がっているのだ。
それを思えば、スコールが突然現れた“彼”に恋をしたのも、彼の世界がまた一つ広がる切っ掛けになったと言えるだろう。
だからフリオニールは、そんなスコールを見て喜んだ。
彼が夢中になる人が出来た事、恋をしている事、その関係を少しでも良い方向へと向けたいと、少しずつ、自ら動き出している事。
何をするにも、フリオニールの後押しがなければ出来なかった時の事を思えば、これは良い変化だ。
フリオニールとて直に大学に進み、今以上にスコールと過ごせる時間が減るのだから、いつまでも幼馴染同士だけで過ごせる訳ではない。
だから、これは良い事だ。
良い事なのだ。


────そう自分に言い聞かせているけれど、ふとした瞬間に涙を流すスコールを見る度に、胸が痛くて苦しくなる。



嵐でも来るのだろうか、と思うような悪天候の中、バイト終わりの家路を歩くフリオニールは、その途中で公園のベンチに座っているスコールを見付けた。
直に更に雨が激しくなると予報で言っていたのに、スコールは傘も差さずに、ぼんやりと空を見上げている。

そのまま曇天の向こうへ吸い込まれていきそうなスコールを、フリオニールは思わず立ち尽くして見詰めていた。
空を見詰めていた蒼の瞳が、ゆっくりと瞬きをして、頬に雫が伝い落ちる。
それが雨なのか、それ以外のものなのかは判らなかったが、フリオニールを正気に戻すには十分だった。


「スコール!」


水溜まりを跳ねさせて駆け寄り、名前を呼んだ。
降りしきる雨に掻き消されないように大きな声で呼んだお陰で、声は彼に届いたらしい。
スコールは酷く緩慢な動きで、ゆっくりと、茫洋とした瞳を此方へ向けた。


「……フリオ?」


ことん、と首を傾げて、スコールは幼馴染の名を呼んだ。
それきり動く様子のないスコールを、フリオニールは自分の傘の中へと入れる。


「何してるんだ、こんな所で。びしょ濡れじゃないか!」
「……あ」


フリオニールの言葉で、スコールは自分の体を見下ろした。
雨水を吸ってすっかり重くなった服を見て、ようやく自分の状態を認識したような声を漏らす。

これは放っておいてはいけない、とフリオニールは直ぐに判断した。
フリオニールはスコールの手を引き、少し強引に彼を公園から連れ出した。
スコールは特に抵抗する気配もなかったが、歩く事自体が億劫なようで、足取りが重い。

いつもの歩調で行けば、五分とかからない道程を、スコールに合わせてゆっくりと歩いた。
背負った方が早いとは思ったし、何度かそれを伝えて背負うから、と言ったが、スコールは反応しなかった。
フリオニールがしゃがんで促しても、立ち尽くしたまま、動こうとしないのだ。
手を引かれて、雛のように歩く事だけが、今のスコールに出来る事だった。

両親がいないフリオニールは、幼い頃は養護施設で育ち、高校入学と同時期に独り暮らしを始めた。
日々のアルバイトは学費と生活費を賄う為に必要不可欠なもので、これも高校入学以来、スコールと逢える時間が減った理由にもなっている。
それでも、フリオニールの家の鍵はスコールも持っているから、アルバイトから帰ってきたらスコールが家で勉強していた、夕飯を作っていた、と言うのはよくある事だ。
特に最近は、思春期になって過保護な父にスコールが複雑な気持ちを抱いている事や、密かに思う“彼”の話を聞く事もあって、幼い頃程ではないが、逢う時間は頻繁に設けられていた。

築三十年と言うアパートは、壁も薄く、屋根はトタンになっていて、雨が降ると音がよく響く。
しかし、五年前に全部屋の風呂がシステムバスへとリフォームされたお陰で、風呂場だけは綺麗でしっかりしていた。
スコールを連れ帰ったフリオニールは、真っ先にスコールの服を脱がせて、風呂場に入れる。
服を脱がせる時に嫌がるかと思えばそうではなく、スコールは大人しくフリオニールにされるがまま裸になり、湯を貯めている最中のバスタブへと入れられた。
それからフリオニールは、バスタブ横に膝をついて、小さな湯桶で掬った湯をスコールの肩からかけてやる。


「熱くないか?」
「……ん……」


全身を雨に晒していたスコールの体は、かなり冷え切っている。
寒い時期ではないとは言え、あれだけ濡れていたのだから当然だ。
フリオニールは、スコールが心地良く過ごせるよう、熱過ぎず温過ぎずと言う温度で湯を貯めて行く。

フリオニールはタオルを持ってきて湯舟に浸し、絞って余分な水気を切って、スコールの前に差し出した。


「顔、拭いた方が良いぞ」
「……ん……」
「頭も後で洗おう」
「……うん……」


フリオニールに渡されたタオルを、スコールは自分の顔へと押し付けた。
タオルを握りしめるように掴んで、顔を埋めて息を殺している。


「…スコール」
「……っ……」
「スコール。良いから。我慢するなよ」


くしゃ、と濃茶色の髪を撫でると、ひく、と喉が引き攣る音が聞こえた。
本当は声を上げたいのだろうに、上げたくないとも思っていて、押し殺そうとしているのが判る。
きっと自分が此処にいるから泣けないのだ、とフリオニールも判っていたが、今のスコールと一人にする事は出来なかった。


(……“あいつ”と何かあったのか?)


声に出さずに訪ねても、スコールからの返事はない。
しかし、声に出したとしても、きっとスコールは「何もない」と首を横に振るだろう。

そう、何もないのだ。
スコールと“彼”の間に、特別な事は何もない。
スコールが“彼”を特別に思っているだけで、二人の関係は、“彼”がスコール以外のその他大勢と繋がっている事と大差ない。
傍目に見れば、“彼”もまたスコールを少し特別に見ているかも知れないけれど、それはスコールが抱いている感情と同じではないのだ。
それが時折、スコールを酷く苦しめる。

ざぷん、と言う音が鳴って、スコールがたっぷりと溜まった湯の中に頭を沈めていた。
そのまましばらく顔を上げないスコールに、おい、とフリオニールが肩を掴んで引っ張り起こす。


「っぷは……!はっ、は…けほっ、げほっ……!」
「スコール、危ない事するな!」
「…はっ…は……、ふ……っ」


咳き込むスコールを叱り宥めると、スコールはふるふると頭を振る。
いやだ、と駄々をこねているような仕草だったが、何に対して“嫌”と主張したのかはよく判らない。
今は干渉しないでくれ、と言う事だろうか。
恐らくはスコールを落ち着かせるにはそれが一番なのだろうとは思うのだが、余りに不安定な様子のスコールを見た所為か、目を離した瞬間に溺死でも試みそうで、フリオニールは傍を離れてはいけないと思っていた。

湯に沈んでいたタオルを取って絞り、スコールの顔を拭いてやる。
いやいやと逃げようとするスコールの頬を捕まえて、前髪を掻き上げてやった。
湯の熱でほんのりと赤らんだ顔に、珠粒の雫が伝い落ちて、スコールの頬を流れて行く。
涙に似た軌跡を辿るそれを見て、フリオニールは息を詰まらせた。


「……は…う……っ、……ふぅ……っ」


ひっく、ひっく、としゃっくりの音が聞こえる。
スコールは、眦に浮かんだ涙を零すまいと、必死で目を開けていた。
けれども堪え切れずに瞬きをすれば、大粒の雫が溢れ出す。


「ス、」
「見るな……!」


伸ばされたフリオニールの手を、スコールは打ち払った。
顔を背けて涙を隠そうとするスコールの姿に、フリオニールの胸の奥で、ぎりぎりとした痛みが走る。


(なんで、また)
(また泣いてるのに)
(俺じゃ駄目なんだ)


“彼”との関係について、スコールは多くを望んでいない。
自分が“彼”の傍にいても、“彼”の重荷にしかならないと思っているからだ。

しかし、スコールは少なからず、他者に依存してしまう性質を持っている。
幼馴染のフリオニールと言う存在に長らく寄りかかっていた事が当たり前だったように、スコールは自分の身を安心して預けられる存在が欲しいのだ。
好意を持った相手に対しても、そうした感情は芽生えており、出来る事なら自分と一緒にいて欲しいと思っている。
だが、それを望めば相手を自分に縛り付けてしまうから、それは嫌だ、と言うジレンマがあった。

フリオニールがスコールの事を其処まで理解できているのは、スコール自身が“彼”との関係についてフリオニールに相談したから、と言うのも理由の一つだ。
人との付き合い方が判らないスコールは、何をするにもフリオニールに相談していた経験がある。
それと同じ流れで、スコールは“彼”と親しくなりたいと言う気持ちを、フリオニールに吐露していた。
フリオニールもその気持ちを汲み、スコールが喜んでくれるならと、二人の間に立って仲立ちをしていた時期もあった。

けれど、親しくなるにつれ、スコールはもっと“彼”と近付きたいと思うようになった。
しかし、スコールがどんなに望んでも、“彼”はスコールを今以上に特別視はしないだろう。
“彼”にとって特別な人物と言うのは、既に存在しているのだから、スコールがその場所を奪おうとしない限り、現状が変わる事はない。
そしてスコール自身も、これ以上の大きな変化を望める程、強くもなかった。
今の距離感だから“彼”に嫌われる事もなく、逢った時に邪見にされる事もなく、そして今以上に距離が離れる事を怯える必要もない。
今の“彼”との距離感が、スコールが耐えられる───と思っている───距離なのだ。

だが、結局は“耐えている”だけだ。
折々に見てしまう、“彼”と特別な関係を持つ人物との光景を見ては、募る羨望と嫉妬に焦がされる。


「う……うぅ……っ、うぁあ……っ」


堪え切れなくなったのだろう、スコールの喉から痛々しい声が漏れている。
こうして声を上げて泣くスコールを見るのは、フリオニールも久しぶりだった。

幼い頃は泣き虫だったスコールは、成長していくに連れ、感情を素直に吐き出さなくなった。
半分は自分で意識しての事だが、もう半分は、意識して抑え込んでいた事による弊害だろう。
吐き出すべき感情すら、スコールは溜め込んでしまうようになったのだ。

その姿が、フリオニ─ルは痛々しくて苦しくて仕方がない。
スコールをこんなにも涙させる存在を、決して厭ってはいけないと思いながらも、憎まずにはいられない程に。


「……スコール」
「……っ!」


名前を呼んで、フリオニールはスコールの体を抱き寄せた。
濡れたスコールの背中が、フリオニールの胸に触れて、服のじっとりと染みを作って行く。

スコールを腕の中に閉じ込めて、フリオニールはピアスを刺した耳元で囁いた。


「スコール、もう止めよう」
「……は…?」
「あいつを見るのは、もう止めよう。スコール、ずっと苦しそうだ」


見てられない、と言うフリオニールに、スコールの顔がかぁっと紅くなる。
自分のみっともない姿を見られている、と言う事への恥ずかしさもあったが、それ以上に、全てを知っていて「やめろ」と言った幼馴染の言葉が許せなかった。


「あんたに…っ、あんたに何が判るって、」
「判る」
「!」


言葉を遮るように告げられたフリオニールの声に、スコールの動きが止まる。
抱き締める腕の力が強くなるのを感じて、ビクッとスコールの体が震えた。
背中から滲む、常にない雰囲気に、ゆっくりと振り返ってみれば、真っ赤に燃える紅に射貫かれた。


「あいつじゃなくて、俺を見てくれ」
「な……」
「俺は全部判ってる。スコールの事、全部」
「……」
「だから俺なら、スコールを泣かせたりしない」


見開いた瞳に、フリオニールの顔が映り込んでいる。
その目を真っ直ぐに見詰めながら、狡い事をしている、とフリオニールは自覚していた。

スコールは縋れる人が欲しいのだ。
寄りかかっても良いと自分が思える人が欲しくて、それは幼い頃からフリオニールへと向けられていた。
フリオニールなら怒らない、嫌がらない、きっと一緒にいてくれる────培われた経験から、スコールはその対象を無意識に選び、フリオニールへと定めていた。
家路へと向かう路で、スコールがフリオニールの手を振り払う事なく大人しくついて来たのも、フリオニールならどんな自分でも拒否される事はないと思っているからだろう。
情けない姿を晒しても、幻滅される事もなく、無理な発破をかけられる事もない。
弱いままの自分を嫌わずに、見捨てずに、傍にいてくれる人を、スコールはずっと欲している。

────だから、スコールがフリオニールを拒む事はない。
────出来ない。



待て、と言う声が聞こえたけれど、フリオニールは無視する。
重ねた唇が拒否される事は、なかった。





『珍しく嫉妬したフリオなフリスコ』のリクを頂きました。
珍しくと言うか大分拗れた嫉妬話に……あれ……!?

スコールが恋したのは年上の誰かですが、“憧れの人”と“傍にいたい人”は別かも知れない。
憧れの人には近付けないし、一緒にいると自分の劣等感が増すので、多分スコールは見ている位が丁度良い距離感。
でも自分を特別視して欲しい気持ちも少なからずあって、拗らせた。
↑と言うスコールをずっと見ていたので、フリオニールも大分拗らせている。
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