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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

[クラ&子スコ]ある夏の日の風景 1

  • 2014/08/02 22:39
  • カテゴリー:FF


二人の出会いは、クラウドが中学三年生、スコールが生後三ヶ月だった頃まで遡る。
思春期真っ只中の、所謂疾風怒濤の時期にいたクラウドは、集団行動への違和感と、孤独と温もりへの相反する飢餓感に付き纏われていて、生来多くはない口数が一層少なくなっていた。
昨今、テレビアニメの影響か、少々意味が違って聞こえる場合もあるだろうが、思い返せばあれは俗に言われる“中二病”だったのではないだろうか。
世界にありふれている“普通”の中から、自分だけは“普通”の塊に加わるまいと、他者と違う事をしようとしたり、自分と言う存在には特別な意義がある筈だと思い悩んでみたり、と、クラウドはそう言った症状に長らく支配されていた。
平和だが、だからこそ堪る鬱屈した気持ちは、かと言って何処にぶつけられる訳もなく、クラウドの思考を更に面倒な方へ、面倒な方へと押し流して行く。
テレビアニメや漫画で見るような、大きな変化が突如降って湧いて来たらなあと妄想を膨らませつつ、それが現実になってもきっと自分は主人公にはなれなくて、天変地異が起きてもきっと何も知らされないまま光の塊に飲み込まれて、自分でも気付かない内に消滅してしまうんだろうな────と。

幼少時、どちらかと言えば内向的で、友達の輪の中に進んで入って行けないタイプであった事を、知っているのは最早幼馴染のティファだけだが、その頃の名残がいつまでも残っていた所為もあるだろう。
個の頃のクラウドは、何かが変わる事を望みながら、何処までも受動的であった。
だから、降って湧いてくる、奇蹟のような“何か”が現れるのを、平和で惰性に満ちた日常の中で、延々と待ち望んでいたのである。

そして、────かくて、それは、現れた。

母親と二人暮らしのクラウドは、母が勤めている会社の社宅である賃貸マンションで生活している。
その隣室には、仲の良い夫婦が住んでいたのだが、其処の妻らしき女性の腹が、少しずつ、少しずつ大きくなって行くのを、クラウドは見ていた。
初めは夫婦に対し、特に興味を持っていなかったクラウドだったが、夫のいない間に、スーパーで大きなお腹を抱え、よろよろと腹を庇いながら買い物をしている彼女を見て、流石に此処で放って置くのは気が引ける、と買い物籠を奪うように持ったのが、交流の切っ掛けとなった。
年若い母親になろうとしている───いや、既に彼女は母親だった。腹の中に既に彼女の子供はいたのだから───彼女は、隣家のクラウドの事をよく知っていた。
彼女の夫は、クラウドの母と同僚であるし、彼女もクラウドが登校下校する姿を折々に目撃していたからだ。
初めは、自分が知らない人が、自分を知っていると言う事に些か落ち着かなかったクラウドだが、スーパーでの交流を繰り返して行く内、それも気にならなくなった。

段々と、スーパーでの彼女との交流が日常化してきた頃、彼女はスーパーに現れなくなった。
彼女の夫がアパートから出勤する所はよく見るので、引っ越した訳でもないようだが、どうしたのだろう、と思った数週間後、答えが判った。
母から、彼女が子供を産んだと聞いて、クラウドは俄かに嬉しくなった、そして同時に寂しくなった。
嬉しそうに大きなお腹を撫でる彼女を見ていたから、出産が無事に終わった事は、本当に嬉しかった。
しかし、子供が生まれたと言う事は、もうスーパーで彼女とのんびり話をする時間もないのだろうと思うと、少し淋しかった。

が、そんな淋しさも、そんな自分の矮小さへの苛立ちも、秋の深まる頃には吹き飛んだ。

高校受験が直ぐ其処に控えている事もあって、この頃のクラウドは、図書館に通うようになっていた。
スーパーも家と図書館の帰り道にあるものを使うようになっていた為、彼女と交流していたスーパーからも足が遠退いていた。
そんなある日の夕方、クラウドはアパートの前で邂逅する。
母親になった彼女と、その細い腕に抱かれた、小さな小さな赤ん坊に。

赤ん坊ってこんなに可愛い生き物なのか、とクラウドは初めて知った。
母親になった彼女と距離が出来てしまう、と言う不安は、あっと言う間に忘れた。


この時から、クラウドの世界は色付いた。
緩く生温く思えていた日常の歯車が、一気に加速して、また穏やかになって行く。
その歯車を回しているのは、小さな小さな幼子だった。




クラウドがスコールの前でバイクに乗った事はなかった。

16歳になって直ぐ自動二輪の免許を、その2年後には大型自動二輪の免許を取得した。
元々バイクが好きだった事と、高校が歩いて通うには遠く、公共交通を使うよりは自転車かバイクの方が良い立地だったのだ。
流石に大型自動二輪は自分の趣味の範疇となるので、アルバイトをして、自費で教習所に通った。
とは言え、免許を持っていてもマシンは持っていない訳で、長らくペーパードライバー状態だったが、大学時代からアルバイトを貯蓄し、社会人にもなって得た収入で、ようやく念願の大型バイクを手に入れる事が出来た。
そのバイクは程無くクラウドの愛車となり、カスタムも重ね、唯一無二の相棒となっている。

そんな愛車であるが、スコールの前で乗らなかったのには、理由がある。
今年で7歳になったスコールは、大きな物音や、正体不明の音が苦手だった。
雷は勿論の事、ホラー映画の不意打ちのSEや悲鳴なんて死ぬほど嫌いだし、日常生活でも他人の大きな声や物音に敏感に反応する。
赤子の頃から、そうやって物音に対して泣きじゃくり、たすけておにいちゃん、と縋って来た子供の事を思うと、恐がらせてはなるまいと、排気音の大きなバイクを彼から遠ざけた。
サイレンサーは装着させたし、住宅街でエンジンをフルにさせる事なんて先ずないが、それでもアパートの付近では必ず押して歩くのが習慣になった位だ。

今日も今日とて、アパートまで角一つに差し掛かった所で、クラウドは愛車を降りた。
夏の真っ只中に、数十メートルとは言え、大型バイクを押して歩くのは、中々の重労働である。
それでも習慣となった行為は変わらず続けられ、帰ったら早く冷凍庫の中のアイスを食べよう、と思いながら、えっほえっほと歩いていた時、


「あら、クラウド君」
「……ああ。どうも」


呼ぶ声にクラウドが顔を上げると、スーパーの買い物袋を下げた女性が立っていた。
隣家に住んでいる件の女性───レインである。
その傍らには、小さな手で母の手を握っている、制服姿の小学生の男の子───スコールがいる。


「今、帰り?」
「はい。スコールも、帰りか?」
「………」


バイクを押しているので、いつものようには屈めない為、目線だけ下に向けて子供に訊ねる。
スコールは母の手を握って、逆の手には溶けかけのアイスキャンディーを握って、じぃ、とクラウドを見ていた。


「ほら、スコール。聞かれたんだから、お返事は?」
「………」


母が促しても、スコールは答えず、動かない。
じぃ、とまん丸な蒼の瞳は、クラウドを────否、クラウドが押しているバイクに向けられている。


「おい、アイス溶けるぞ」
「………」
「スコール?」


母と隣家の兄代わりが繰り返し名を呼ぶ。
それから、また数秒の間を置いた後、スコールはアイスキャンディーを持った手でバイクを指差し、


「それ、なーに?」


ことん、と首を傾げて言った。
同時に、溶けたアイスキャンディーが、中程から折れて地面に落ちた。

アイスキャンディーが折れた事も気にせず、スコールは「なーに?」と問う。


「これか。これは、バイクだ」
「バイク?ちがうよ。バイクは、あっち」


そう言ってスコールが指差したのは、丁度角を曲がって来たスクーターだった。
まあ、あれもバイクと言えばバイクだな、とクラウドは思いつつ、


「これもバイクなんだ。色々あるんだよ」
「…ふぅん?」
「仮面ライダーが乗ってるだろう?あれもバイクだぞ」
「………?」


ことん、とまたスコールが首を傾げた。
仮面ライダーと言えば判ると思ったのだが、どうやらスコールは知らないらしい。
確か、彼の家のDVDラックには、古いものから最新のものまで、特撮ヒーロー番組のDVDが並べられていた筈なのだが……

判んない、と言う顔をする息子と、おや?と首を傾げるクラウド。
そんな二人を見て、レインがごめんねえ、と眉尻を下げて笑った。


「この子、あんまりヒーロー物とか見ないのよ。何度かラグナが見せたんだけど、怪人とか、悪者が怖いみたい」
「……成程」


DVDは父の私物、スコールが好んでそれを見る事はない。
では仮面ライダーを知らないのも無理はない、とクラウドは納得した。

スコールの視線は、またバイクへと向けられている。
スクーターに比べるとごつく、剥き出しのエンジンの銀メッキが照り返しを受けてギラギラと光る様は、幼い瞳にはどんな風に映っているのだろう。
クラウドは、幼い頃の自分なら、きっと格好良いとはしゃいだのだろうが、スコールはとても大人しい性格だ。
男の子なら喜びそうなものだが、スコールがバイクではしゃぐと言う図は、中々思い浮かばなかった。

それから数秒の後、べちゃ、と何かが地面に落ちた。
はた、と三人の視線が地面に落ちて、潰れて飛び散ったアイスキャンディーが目に飛び込んでくる。


「あ……」
「あーあ」
「……ふぇ……」
「今日は暑いから、早く食べないと溶けちゃうよって言ったでしょう?」
「えうぅうう~……」


えぐえぐと泣き出したスコールに、レインは呆れたように溜息を吐いた。

アイスキャンディーに刺さっていた棒切れ一本を握り締めて、スコールは泣きじゃくる。
そんなスコールを見ながら、悪い事をしたな、とクラウドは苦笑した。
父親がべたべたに甘い所為か、レインは優しくも厳しく、スコールにおねだりをされても簡単には許してやらない。
そんなレインに、きっと、ねだって粘って頑張って、ようやく買って貰えたアイスキャンディーだったのだ。
だと言うのに、半分も食べ切らない内に台無しになってしまったのでは、泣きたくもなるだろう。


「えっ、うぇっ、うえええええええん」
「スコール。もう、泣かないの。ほら、帰るわよ」
「あいす、あいすぅう…ひっく、えっく…わぁあああああん」


真夏のぎらぎらと痛い程の日差しの中、棒切れ一本を握り、立ち尽くしてわんわんと泣き出したスコール。
レインは「全くもう」と怒ったように呟いて、スコールを抱き上げた。
レインの手に持った買い物袋が、がさがさと邪魔そうに揺れる。


「それ、持ちます」
「ありがと。ごめんね」
「いえ。バイク置いて行くんで、先に上がってて下さい」
「うん。はいはい、スコール、泣かないの」
「ふえっ、えっ。えぇえ…えうぅ~っ」


背中をぽんぽんと叩く母に、スコールは目一杯しがみついて泣いた。
その手には小さな棒切れが握られたままだ。
恐らく、本人はそれの存在はとうに頭から抜け落ちているのだろうが、傍目に見ていると、余程アイスキャンディーに執着していたように見える───それも強ち外れてはいまい。

クラウドは駐輪場にバイクを押し入れると、のんびりとアパートの階段を上った。
隣家の家に行く前に、自分の家に入って、冷凍庫を開ける。
二組一つのアイスを取り出して、クラウドは改めて隣家にお邪魔するのだった。




≫


あいすぅう~!って泣きじゃくる子スコかわいい。
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[クラ&子スコ]ある夏の日の風景 2

  • 2014/08/02 22:35
  • カテゴリー:FF


世間で言われるような“バイク野郎”程ではないが、バイクのカスタムやメンテナンス作業はクラウドも好きだった。
友人のザックスが大型バイクのカスタムショップに勤めているので、知識も技術も道具もそれなりに揃えられた。
とは言え、素人仕事なので、大事な所や内部メンテナンスの際には、よく頼らせて貰っている。

夏の暑い日、クラウドは契約者の無い駐車場の1スペースを借りて、バイク洗車とオイル周りの点検をしていた。
アパートの駐車場には殆ど日影がないのが辛いが、水場は近いし、遠い洗車場まで乗って帰る気力はない。
そもそも、大型バイクが置ける駐輪場が備えられている時点で、このアパートはバイク乗りにかなり優遇していると言って良いのだ、これ以上の贅沢は言うまい。
水を使っていれば、その内心なしか涼しくもなるだろう(湿気がべとつくのは鬱陶しいが)。

目立つ汚れを水で落とし、ザックスから友人価格で売って貰った専用ワックスを使って、車体を磨く。
毎日の細かい砂埃でくすんでいた表面が、新品のように輝きを取り戻して行く様は、何度見ても嬉しいものだ。

────其処に、とてとてとて、と近付いて来る、軽い足音。


「クラウドお兄ちゃん」


呼ぶ声にクラウドが振り返ると、Tシャツと長袖のフード付きパーカー、ショートパンツ姿で、麦わら帽子を被った子供がいる。
アパートで隣室に住んでいる、スコールだった。

スコールは離れた所で、もじもじとしている。
クラウドはバイクに向けていた身体を反転させて、スコールと向き合った。


「どうした、スコール」
「……そっち、行っても、いい?」
「ああ」


クラウドが頷くと、スコールはぱあと表情を明るくさせ、クラウドの元まで走る。
ぽすん、と抱き着いて来たスコールに、クラウドはまだまだ小さいな、とこっそり笑った。
いつものように撫でようとした手は、オイル塗れだった事に気付いて、寸での所で止める。

スコールはクラウドに抱き着いたまま、しゃがんでいても尚高い位置にあるクラウドを見上げる。


「クラウドお兄ちゃん、何してたの?」
「バイクを洗っていたんだ。綺麗にしてたんだよ」
「ふぅん」


スコールはクラウドの肩に顎を乗せて、バイクを見る。
じぃ、と見詰める蒼の瞳に、バイクの光がきらきらと映り込んでいた。


「ぴかぴかしてる」
「ああ」
「もっとキレイにする?」
「うーん……そうだな、もう少し…」


今の状態でも不満はないのだが、やはりもう一手間かけたい。
最後に使う仕上げ用のマット用のワックスがけもしなければ。
しかし、こんな暑い時間帯に、基本的に外遊びが好きではないスコールが出てきたと言う事は……と考えていると、つんつん、と服の端が引っ張られた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
「ん?」
「僕、お兄ちゃんのお手伝い、したい。だめ?」


それは、“遊んでほしい”と中々言えないスコールの、精一杯の“構って”の言葉。
クラウドは小さく笑みを漏らして、頷いた。

やった、と小さな声ではしゃぐスコールに、クラウドは乾拭き用の布を渡した。
まだ幼いスコールの手は、ぷにぷにと柔らかく、きめ細かい。
その手に、刺激のあるワックス類が沁み込んだ布を使わせるのは、少し抵抗があったからだ。
クラウドはバイクが倒れないように改めてスタンドの固定を確認し、ワックスがけも終わっていたカウル部分を拭いて貰う事にする。


「ん、しょ…んしょ」
「上手いな」
「ほんと?」


嬉しそうに問うスコールに頷いてやれば、スコールは頬を赤らめて笑う。
そのままスコールはカウルを拭く作業に戻った。


「お兄ちゃんのバイク、大きいね」
「大型バイクだからな」
「僕よりおっきい」


スコールの言葉に、クラウドが彼とバイクを見比べれば、確かに、ハンドルの高さまで含めれば、バイクの方が高さがあった。
シートはスコールの方が頭一つ抜いているが、それでもスコールには大きく見える事は変わりない。


「かめんらいだーのバイクより、大きい?」
「どうかな。仮面ライダー、見たのか?」
「見た」


お父さんと一緒に見た、とスコールは言った。
怪人や悪役は相変わらず怖かったが、バイクに跨って颯爽と走るヒーローの姿は格好良かった、と。


「お兄ちゃんも、バイク、乗る?」
「ああ」


持っているんだから乗るだろう、とは思ったが、クラウドは言わなかった。
スコールの前でバイクに乗ってる所を見せた事もないし、世の中には持っているだけで満足と言うコレクター気質の人間もいる。
第一、子供の質問と言うものには、基本的に前後も脈絡もないのだ。
一々目くじらを立てずに、聞かれた事に応えてやれば良い。

スコールは背伸びをしながら、カウルのフロント上部を拭いている。
幅のある大型バイクは、小柄で身長が足りないスコールの手では届かない場所が多いようだ。


「届かない所は、無理にしなくて良いぞ」
「う、んっ」


小さなスコールには、手順だの効率だのと言う考え方は、まだまだ足りない。
見付けた汚れ、目についた場所を拭こうと一所懸命になっている。

背伸びをして、首を伸ばしてバイクの上部を拭いているスコールの頭から、麦わら帽子が滑り落ちる。
ぎらぎらと熱い太陽がスコールの額に当たって、直ぐにじわりと珠の汗が浮いた。
クラウドはエンジン回りを拭く手を止めて、麦わら帽子を拾い、スコールの頭に乗せてやる。
すると、スコールは背伸びをしたまま、頭だけを後ろに反らせてクラウドを見上げた。
転ぶぞ、とクラウドが膝で背中を押してやりつつ、蒼の瞳を見下ろしていると、


「クラウドお兄ちゃん」
「ん?」
「……んと……」


もじ、と視線を逸らしたスコールに、クラウドは首を傾げた。

頭を反らせ、背伸びをするのを止めたスコール。
クラウドは膝を折って、スコールと目線の高さを合わせてやった。
スコールは、乾拭き布を背中に隠すように持って、俯き気味になってもじもじとしている。


「どうした」


ちらちらとクラウドの顔を見ながら、両肩を前後に揺らすスコールの仕草を、クラウドは見慣れている。
これは恥ずかしがり屋で消極的なスコールが、「おねがい」をする時のものだ。

スコールの頭から僅かに浮いている麦わら帽子を、軽く上から押さえて、きちんと被らせる。
解けていた首紐を結んでやろうと手を伸ばした所で、スコールが顔を上げた。


「あの、ね。僕ね」
「うん」
「ばいく……」
「うん」
「………ちょっと、…のって、みたい」


……だめ?と。
首を傾げてお願いする子供の仕草に、勝てる人間がいるなら、見てみたい。

くすりと笑って、クラウドは頷いた。


「いいぞ」
「ほんと?」
「どうせだから、走ってるのに乗るか?」


ちょっと怖いかな、と思いながら提案してみると、スコールの表情が輝いた。
これは決定、だろう。

だが、そうなると、今のバイクの状態では少し厳しいものがある。


「今日は夕方から俺の仕事があるから、ちょっと時間がないな。そうだな……明後日になるけど、それでもいいか?」
「うん!」
「それと、この事は後でお母さんに話すぞ。いいな?」


大型バイクと、まだ7歳になって間もない小さな子供と言う組み合わせだ。
事前の準備は必要だし、バイクは決して安全なだけの乗り物ではないから、両親にもきちんと説明をしておいた方が良い。
勿論、怪我をさせないつもりではあるが、万が一の時の為、反対される可能性も含め、ちゃんと話は通して置くべきだろう。

それでも良い、ともう一度スコールが頷いたので、クラウドは良い子だ、と言った。
スコールは嬉しそうに頬を赤らめ、いそいそとカウルを拭く作業に戻る。

それから十分程でクラウドがワックスがけを終えると、スコールもカウルの乾拭きを終わらせた。
スコールが細かな隙間───クラウドでは指が入らない程の隙間だ───まで丁寧に拭いてくれたお陰で、バイクは隅から隅まで綺麗になった。
クラウドはそれをぐるりと周りながら眺め、スコールはそんなクラウドをやや緊張した面持ちで見上げ、


「……よし。綺麗になったな。ありがとう、スコール」
「…!」


クラウドの言葉に、今日何度目になるか、ぱあああ、とスコールの表情が明るくなる。
嬉しそうに頬を赤らめるスコールに、クラウドも自然と頬が緩んだ。

いつものようにスコールの頭を撫でようとして、ああ、とクラウドは思い出して手を止める。
オイルやらワックスやら、そうでなくともクラウドの手はすっかり汚れている。
汗拭き用に使っていたタオルで手を拭いて、クラウドは改めてスコールの頭を撫でようとし、


「スコール。鼻、ついてるぞ」
「ふぇ」


きゅっ、と小さな鼻を摘まんでやる。
そこには、乾拭きに夢中になっている内にいつの間にかついたのだろう、黒ずんだ汚れがあった。

クラウドが摘んだ指を離すと、スコールは腕でごしごしと鼻頭を擦った。
が、腕が離れてみると、汚れは伸びただけで取れていない。
くつくつと笑うクラウドに、スコールは眉尻を下げる。


「とれた?だめ?」
「くく……」
「んぅ…んゆ、んっ、んっ」


ごしごし、ごしごしとスコールは何度も顔を擦った。
指で引っ掻いて拭おうともしたが、指先も汚れていたので、また汚れが酷くなる。
やれやれ、とクラウドは眉尻を下げて笑いながら、タオルでスコールの顔を拭いてやった。
このタオルも汗やらオイルやらで汚れているが、手で拭うよりは良いだろうし、後できちんと綺麗な水で洗ってやれば良いだろう。

タオルが離れると、スコールは顔の汚れを確かめたかったのだろう、また手で鼻に触ろうとする。
それをクラウドの大きな手がやんわりと捕まえて、


「手、汚れてるんだ。家に帰って、ちゃんと石鹸で洗おう」
「バイクのおせんたく、終わり?」
「ああ。バイクを戻してから行くから、先に行けるな?」
「お兄ちゃんち?」
「ああ」
「行けるよ」
「これ、カギな。開けておいていいから」


クラウドがポケットから差し出した鍵を、スコールは大事そうにぎゅっと握りしめる。
小さなコンパスで玄関まで駆けて行く背を見送って、クラウドは子供用のヘルメットって売ってたかな、と友人に訪ねるべく携帯電話を取り出した。




 ≫


麦わら帽子を被った子スコはかわいい。
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[クラ&子スコ]ある夏の日の風景 3

  • 2014/08/02 22:30
  • カテゴリー:FF


先ずは、いつものようにザックスが働いているカスタムショップに行き、バイクをタンデム仕様にカスタマイズ。
普通のタンデムではなく、親子タンデムとなる事を説明し、出来るだけ子供の安全を配慮した仕様に出来るようにと依頼した。
作業は店に任せ、その間に子供用のバイクヘルメットを購入。
安全性と快適性のどちらかを重要視するかで悩んだが、一先ずは快適性を優先し、ハーフジェットタイプのヘルメットに決まった。
サイズは調整が可能で、着脱はワンタッチで出来るし、重量も軽い───これはこれで強度に不安があったのだが、子供用だ。重くては子供の方が辛いので仕方がない───。
ついでに、「ステッカーとかつけると、自分専用だって思うから、大事にしてくれるぜ」と言うザックスのアドバイスを受けて、ライオンをモチーフにしたステッカーも購入した。
他にも、タンデム用のセーフティベルト、ヘルメットに仕込む無線通信機、キッズサイズの上着とズボンの一式を揃えておいた。

レインには、スコールをバイクに乗せてやると約束した後、直ぐに説明した。
やはり母親としては心配は尽きないようだが、クラウドを信じてる、と言って、彼女からは許可が下りた。
父ラグナの方も、案の定心配していたが、クラウドの事は彼もよく知っているし、スコールが赤子の頃から面倒を見ていた事も知っている。
無闇に怪我をさせるような事はしないだろう、と信じて、彼もスコールのバイクデビューを許してくれた。

そして当日、クラウドはスコールを連れて、バイクを手押ししながら、近所の河川敷に赴いた。
その河川敷には真っ直ぐに伸びた舗装道路が備えられており、朝夕にはランニングに励む人の姿が見られる。
其処なら街の道路のように行き交う人や車を気にしなくて良いし、直進ストレートなので、カーブなど重心が変わる時にスコールが振り落とされる事もない。

今日も今日とて暑い日だが、河川敷は川からの風のお陰で涼しかった。
バイクを舗装道路の傍まで運び、スタンドを立てていると、スコールは草葉の陰から覗く花に意識を浚われていた。
広い河川敷の中、ちょこんと蹲ってじっと花を見詰める麦わら帽子の後ろ姿に、可愛いな、と思いつつ、クラウドは彼を呼んだ。


「スコール、おいで」
「!」


呼ばれた事で、なんの為に此処に来たのか思い出したのだろう。
スコールはやや上気した顔で、駆け足でクラウドの下に急ぐ。

クラウドはトップケースの蓋を開けて、昨日購入したばかりの上着を取り出す。


「先ずはきちんと準備しないとな。バイクは肌を出していると危ないから、これを着るんだ」
「あつそ……」
「まぁな。でも、スピードを出すと寒くもなるから、着ておいた方が良いぞ」
「うん」


ぎらぎらと照り付ける太陽の下で、長袖の上着。
嫌がれるかもな、と思ったが、スコールは素直に袖を通した。
普段から日焼けを嫌って(黒くなる前に真っ赤になって痛くなるらしい)長袖でいる事が多いお陰だろうか。

ズボンは事前説明をしたお陰か、レインがきちんとジーンズの長ズボンを履かせている。
これで服装の問題は、一応のクリアだ。

クラウドはスコールに水を飲ませてから、トップケースからヘルメットを取り出す。
大人のクラウドでは到底入るまい大きさのヘルメットに、スコールの瞳が俄かに輝いた。


「ほら、スコール。これがお前のヘルメットだ」
「ふあ……!」


サイドに貼ったステッカーが見えるように渡してやれば、益々スコールの瞳が輝く。
らいおんさん、と呟いて、小さな手が伸ばされる。

ヘルメットは全体が黒塗りで、表面にマット加工が施されている。
どちらかと言えば地味で固い印象のあるチョイスに、ザックスからは「もっと可愛いのあるぞ?」と言われたが、ライオンのステッカーが映えるのはこれだと思ったのだ。
実際、スコールは、黒の中で雄々しく吼えるプラチナカラーのライオンに夢中になっている。

クラウドはスコールの頭から麦わら帽子を取り、トップケースの中に入れた。
自分のヘルメットとセーフティベルトは、ハンドルに引っ掛けておく。


「ヘルメット、被れるか?」
「ん、ん……」
「サイズがちゃんと合うと良いんだけどな…」


もぞもぞと格闘するスコールに手を貸し、小さな頭をヘルメットの中に入れる。
幸いサイズを調整する事はなく、締め付けられる程苦しい事もないと言う。

クラウドはスコールの小さな体を抱き上げて、バイクのシート後部シートに乗せた。
目線の高さがいつもと全く違う事に驚いているのだろう、スコールはきょろきょろと不思議そうに周りを見回している。
クラウドはそんなスコールのヘルメットを、コンコン、と叩いて振り向かせる。

碧と蒼が真っ直ぐに交差して、クラウドはふう、と一つ息を吐き、昨日も言い聞かせた言葉を反芻させた。


「いいか、スコール。バイクは早い乗り物だ。車と同じ位の、それよりもっと早く走る事もある。車だと判らないスピード感とか、そう言うものが全部ぶつかって来る。判るか?」
「うん」
「それでもって、今回は俺が前に乗って運転してる。だから、お前は前が見えない。これは、結構怖い事なんだ。それでも大丈夫か?」
「うん」


迷わず、スコールは頷いた。
昨日と同じ反応だ。

何事にも恐がりで消極的なスコールが、これだけ脅し染みた事を言っても引かないのだ。
これはもう、スコールの中で覚悟が決まっていることなのだろう。

クラウドは小さく笑って、スタンドを倒し、バイクに跨った。
ハンドルに引っ掛けていたセーフティベルトを腰に回し、後ろに乗っているスコールにもそれを差し出す。


「スコール、これを腰につけろ。落ちなくなるから」
「うん」
「でも、ちゃんと俺に掴まれよ。放すんじゃないぞ」
「うん」


かちん、と後ろで装着完了の音がする。
念の為、クラウドは自分の手でベルトを引っ張り、きちんとスコールが其処に繋がれている事を確認した。

クラウドもヘルメットを被り、仕込んでおいた無線機をONにする。
ジジ、ジジ、と言う雑音が聞こえた後、「…ふわ」「…わぁ」「あはっ」と小さな声が聞こえてきた。
興奮を隠せない子供の声に、クラウドはくすりと笑い、


「スコール」
「!」


名を呼ぶと、びくん、と背中で跳ねる気配がした。
ヘルメットを被ってから、聞こえていない訳ではないが遠くなっていたクラウドの声が、突然耳元が聞こえたものだから、きっと驚いたに違いない。

脇の下から其処にいる子供を見れば、ガード越しに見上げて来る蒼の瞳とぶつかる。


「ちゃんと聞こえるな?」


こくこく、とスコールが頷く。
よし、とクラウドも頷いて、前に向き直る。


「最初はゆっくり走る。少しずつ速度を上げるから、怖くなったら遠慮なく言え」
「ん、うんっ」
「じゃあエンジンをかけるぞ。しっかり掴まっていろ」
「うんっ」


ぎゅっ、と背中にしがみつく温もりを感じながら、クラウドはバイクのキーを差した。
クラッチレバーとスタートボタンを押すと、一拍の間を置いてから、低い音が響いてエンジンがかかる。
大きな音に、ビクッ、と背中で小さな身体が強張るのが判った。

ドッ、ドッ、ドッ、と言う低温と、シートから伝わる振動に、スコールのしがみ付く力が強くなる。


「怖いか」


無線越しにクラウドは言った。

恐くなった、止めたくなったと思うのなら、それでも構わなかった。
小さな子供に怖い思いをさせてまで乗せたい訳ではないし、今の状況が怖いのなら、速度が出ればもっと怖いかも知れない。
自分で運転するのと違って、同乗者と言うのは、自分の意思と関係なく身体が進むのだ────それもかなりのスピードで。
クラウドも何度かタンデムを経験した事があるが、自分が運転している経験があっても、運転手が信頼している人間でも、やはり慣れるまでは顔が引き攣る事があった。
小さな子供で、バイクに跨るのも初体験で、それが特に車体の大きな大型バイクともなれば、尚更だろう。

しかし、背中にくっついた小さな子供は、


「……こわくない」


隙間なく密着して、スコールは言った。
無線越しに聞こえた声に、クラウドがもう一度後ろを見れば、蒼の瞳が見上げている。


「運転するの、クラウドおにいちゃんだもん。こわくない」


真っ直ぐに見上げて告げた言葉に、クラウドは目を瞠る。
そんなに信じてくれているのか、と。

我慢している様子も、強がっている様子もない。
背中を握り締める小さな手には、不安に震える様子もなく、ただクラウドに言われた通りにしっかり掴まっているいるだけ。
信じている人に、そうしていろと言われたから、その通りにしているだけだ。

なんだか無性にくすぐったい。
そんな事を考えながら、クラウドはハンドルを握った。



初めはゆっくり、そして少しずつ。
スピードが上がって行くにつれ、背中に縋る力も強くなる。
はしゃぐような高い声も聞こえず、かと言って泣き出している様子もなく。
やっぱり少し怖かったか、と思ってブレーキを踏んで、振り返る。

恐かったかと聞けば、怖くなかったと言う。
どうだったと聞けば、すごかったと言う。

また乗ってみるか、と聞けば、子供は嬉しそうに笑った。





大型バイクに子供がちょこんと乗ってるの可愛い。
と思いながら書いたら、子スコにメロメロなクラウド(多分CC仕様)になってしまった。

こんな子スコですが、遊園地の絶叫マシーンとかは大嫌い。
大好きなクラウドお兄ちゃんが運転してるから、安心して乗ってたんです。

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[絆]明日への祈り

  • 2014/07/07 22:56
  • カテゴリー:FF


ただいまー、と幼馴染の声がした。

スコールが顔を上げて窓の外を見ると、橙色に染まったバラムの海が見える。
一日の陽が長くなるこの時期、空も海も全くの夕暮れ色になる時間となると、そこそこ遅い時間と言える。
しまった、夕飯、とスコールは今し方まで読んでいた本を閉じて溜息を吐いた。

鍵をかけていた玄関の扉が、しばしガチャガチャと格闘する音を続けた後、ガチャリと開かれる。
蜂蜜色の髪に夕暮れをひらひらと反射させて、ひょこっと顔を現したのは、部活帰りのティーダだった。


「ただいま、スコール!」
「ああ」
「晩飯は?」
「まだ。これから作る」


スコールの解答に、えー、とティーダが眉尻を下げる。
判り易く残念がる顔をしながら、空腹の腹を撫でて慰めるティーダを横目に、スコールは本をソファに投げて腰を上げる。

スコールがキッチンに入った後、数秒を置いてティーダもやって来る。
彼が持っていた鞄が手元にないので、適当に投げて来たようだ。


「なあ、晩飯、何?」
「スズキが安かった」
「マヨ焼き食いたいっス~」
「芥子は?」
「入れて!」


スコールはフライパンを用意し、少し熱してから油を入れる。
冷蔵庫から買ったばかりのスズキの切り身を取り出し、大きめの切り身が二つだけ入っているそれをフライパンに並べた。
火が通るのを待つ間に、スコールはもう一度冷蔵庫を開けて、マヨネーズとチューブの練り芥子、すり胡麻、キャベツを取り出す。

魚に絡める芥子マヨネーズを作っているスコールの横で、ティーダがそわそわとしている。
そんなに腹が減っているのか、とスコールは思ったが、ブリッツボールは水中格闘技とも呼び名わされるスポーツである。
普通に水泳をするだけでも相当カロリーを消費するのに、十分以上も潜水状態のまま、タックルしたりされたり、あちこちに飛び交うボールを追ったりすれば、昼に大量に詰め込んだ食事もカラッポになろうと言うものだろう。

待ち切れなくなって来たのか、ティーダは魚を引っ繰り返しているスコールに言った。


「なぁ、なんか手伝おうか?」
「……いい。それより、シャワー浴びて来たらどうだ」


汗臭い、とスコールが眉根を寄せて言うと、はーい、とティーダは素直にキッチンを出て行った。

夏休み中にスピラ大陸のルカで行われる、ブリッツボール学生大会に向けて、ティーダの部は強化トレーニングの真っ最中だ。
ブリッツボールの練習は、水の中で行われるものは勿論あるが、陸上でもランニングやパス練習が行われる。
ティーダはスピードはあるが、スタミナの燃費に不安要素があるので、徹底的に体力強化のメニューが執られているらしい。
メニューには泳ぎ込みもあるが、陸上での走り込みも取り入れられているようで、走り込みが主なメニューの時は、ティーダはよく汗だくになって帰って来る。
一応、バラムガーデンには生徒が自由に使えるシャワールームも設けられているのだが、女子程ではないにしろ、男子も毎日のように混雑している。
少なくともスコールは、余程汗だくになっている時か、訓練施設でグラッドの粘液を被った時でなければ、あそこは利用したくない。
ティーダも部活の後にはなるべく利用しようとするのだが、芋洗い宜しく大混雑している時は、大人しくUターンしていた。
ガーデンから家まではバスで二十分弱、タオルと制汗スプレーをフル活用して、自宅で悠々とバスタイムを満喫した方が、何倍も楽なのだから。

今日はスコールが湯船の用意をしていなかったから、ティーダはシャワーを浴びるだけだ。
それでも、決して広くはない───いや、設置されている施設自体は決して狭くはないのだが、如何せん利用人数が多い───ガーデンのシャワールームに比べれば、遥かに快適な一時だろう。
ティーダがそれを満喫している間に、スコールは魚を仕上げ、キャベツを切って更に盛り、昨日の残り物のコンソメスープを温めた。

炊けた米を盛り、夕飯を全て食卓に並べた所で、タイミング良くティーダがリビングに戻って来た。


「あー、さっぱりしたっス!」
「水」
「ありがと」


スコールが差し出したグラスを受け取って、ティーダは一気に煽る。
飲み干したティーダが「ぷはーっ!」と景気の良い声を上げるのを見て、ジェクトと同じだ、とスコールはこっそり双眸を細めて思った。


「さてと、飯飯っ……あ、そうだ」
「?」


テーブルに着こうとしたティーダは、はたっと思い出したようにもう一度席を立つ。
スコールがその動向を見守ると、彼はソファの足下に投げていた、自分の鞄に駆け寄った。

ティーダはごそごそとしばらく何かを探がした後、手に細長いものを持ってスコールに掲げて見せた。


「じゃーん!笹の葉!」


効果音付で見せるティーダは、わくわくと楽しそうな顔をしている。
が、スコールの方は、呆れたように目を細め、


「ゴミを持って帰るな」
「酷っ!ゴミじゃないっスよ!」


溜息込みで言ったスコールに、ティーダは直ぐに抗議した。

ほら、これ、これ、とティーダはスコールに笹の葉を突き出す。
存外と硬い葉先が、ちくちくと頬を刺すのが鬱陶しくて、スコールは手で払おうとした。
が、その前に、新緑色の葉の中で、目に映える黄色を見付けて手を止める。


「……それは……」
「そう、短冊っス。今日は七夕だからって、ママ先生から貰ったんだ」


ママ先生こと、イデア・クレイマー。
バラムガーデン学園長であるシド・クレイマーの妻であり、スコールにとっては母親代わり、またティーダにとっても同様の存在。
彼女から貰ったものだと聞けば、スコールももう“ゴミ”等とは言えない。

それを先に言え、と口の中で呟くスコールに、ティーダは笹とは逆の手に持っていたものを差し出す。


「ほい、こっちスコールの分な」


そう言ってスコールが受け取ったのは、長細い長方形に、小さな金粉を散りばめ、頭にサテンリボンを結んだ青い厚紙。
笹には黄色の同様の厚紙が吊るされており、癖のあるティーダの字が書かれていた。

ティーダは笹を窓辺に寝かせて、「いただきまーす!」と元気の良い声を上げ、夕飯に在り付いた。
ぱくぱくと景気よく皿の上を平らげて行くティーダの傍ら、スコールはしばしの間、短冊をじっと睨む。


「もうこんなの、信じるような歳でもないだろ……」


空の彼方で、一年に一度だけの逢瀬を許された恋人達。
その幸せに肖って、お星様にお願いすると、そのお願いが叶うのよ、と言った姉の言葉を、未だに無邪気に信じられる程、スコール達は既に幼くない。

今日何度目か、呆れたように呟いて、スコールは短冊を窓辺に置いた。
ティーダは口の中の魚をむぐむぐと噛んで飲み込んでから、


「そりゃそうだけど。良いじゃないっスか、願い事する位。叶う叶わないは別としてさ」
「………」
「それに、折角ママ先生がくれたんだし」


ティーダの言葉に、スコールの眉間に皺が寄せられる。
示しているのは不満ではなく、だからこそ余計に困るのだ、と言うもの。

自分の母の事を殆ど知らないスコールにとっては、育ての親たるイデアこそが母と言っても過言ではない。
スコールがレオンの独り立ちに伴い、エルオーネと共に彼女の直接的な手を離れてから十余年───未だに彼女は、スコールの事も、成人した兄姉の事も気にかけてくれていた。
そんな彼女から贈られたものは、例え笹一本とて無碍する気にはなれない(笹を見ての最初の一言はなかった事にして)。

しかしスコールは、育ての母が渡してくれた短冊を、少々持て余していた。


「……………」


食事をしながら、ちら、とスコールの目が窓辺を見遣る。
ティーダの短冊をつけた笹と、スコールの為にと用意された、何も書かれていない青の短冊。

……何を、書けば良いのだろう。
それがとんと判らないから、スコールは渋い表情を浮かべてしまう。

そんな幼馴染の様子を、顔は見ずとも、付き合いの長い幼馴染は察していた。


「なんでも良いんスよ」


コンソメスープをスプーンで掬いながら、ティーダは言った。
軽い一言に、スコールの眉間の皺が更に深くなる。


「……そう言うのが一番困る」
「難しく考えるからだろ」
「………」
「別に何願っちゃいけないって言う訳じゃないし。誰かに見られる事もないし。あ、俺は見るけど」
「おい」
「いーじゃないっスか、スコールが何お願いするのか気になるし!」


じろりと睨んでやっても、ティーダは全く堪えない。
幼い頃からずっと一緒に、スコールが泣き虫を卒業する過程も、した後も、彼はスコールと共に過ごしていたのだ。
スコールと言う人間をよく知っているからこそ、ティーダにスコールの睨みは通用しない。

ぱくぱくと夕飯を平らげて行くティーダに、スコールは睨むのを止めて、笹に目を向けた。
黄色の短冊は、其処に書かれたマジックペンの文字を浮き上がらせる。
其処には『親父が急性アルコールで倒れませんように』と、書きなぐったような走り書きがあった。
半ばヤケを思わせる字だが、其処にティーダがいつも口にしている父への文句や対抗心がない理由を、スコールはなんとなく察していた。
負けたくないとか勝ちたいとかは、実力で頑張るから、願い事にはしたくない───そんな所だろう。
字の汚さは、きっとそんな願い事を書いている自分が恥ずかしくて堪らなくなったのだ。
突っ込んでやれば、願い事にした理由について、「勝つまでに倒れられたり引退なんかされると困るから」と言うのだろうが、裏を返せば、それまでずっと元気でいて欲しい、と言う素直になれない気持ちの表れにも見える。
全く以て、素直になれない親子だ。

ティーダが最後の魚を口の中に入れた。
スコールはドレッシングをかけたキャベツを齧りながら、まだ眉間に皺を刻んでいる。
もごもごと顎を動かしたティーダが、ごくん、と喉を鳴らしてから、言った。


「じゃあ、ほら。レオンが怪我しませんようにとか、エル姉が元気でいますようにとか。それで良いんじゃないっスか?」


その願いの半分は、どうしたって叶えられない事を、スコールは否応なく知っていた。
常に危険に身を置く事を仕事にしているような兄に、怪我をしないでくれと言うのは、無理な話だ。
トラビアガーデンに留学中の姉は、余程の事でなければ大怪我をする事はないだろうが、時に体調を崩す事もあるだろう。
それはティーダも判っている────だが、判っているからこそ、“願い事”なのだ。
大切だから、大好きだから、怪我はして欲しくないし、無茶も無謀もして欲しくないと、“願う”のだ。

スコールは溜息を一つ吐いて、空になった皿を重ねた。
それをキッチンの流し台に運ぶ前に、窓辺の短冊を取って、テーブルの隅に置いてあるメモ用紙のペンを取る。



短冊に書かれた文字を見て、年寄り臭い、と言う幼馴染の頬を、スコールは無言で抓った。

─────其処に書かれたものが、嘗て兄が書いていたものと同じだと、彼等は知らない。





知らず知らず、引き継がれて行く願い。
だって大切な人達だもの。

「嘗て」については此方→[未来への祈り]
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[ティナスコ]リーディング・ライフ

  • 2014/06/30 21:54
  • カテゴリー:FF
6月8日にティナスコ書けなかったので、滑り込みリベンジ!





図書館でレポートに必要な資料を探していたら、高い本棚の一番上に置かれていた。
ティナはきょろきょろと辺りを見回し、踏台になるものを探したが、見当たらない。
少し歩き回れば踏台は見付かるだろうが、この図書館に置いてある踏台は、婦女子が持って移動させるには易しくない、重い木製のものになっている。
古い図書館だから無理もないのかも知れないが、小さな子供が使う事もあるのだから、最近よく見るプラスチックの軽いものも備えて置いてくれても良いのに、と思う事もしばしばだ。

ティナは結局、踏台を探す事を諦めて、背伸びをする事にした。
目線の高さの棚に指を引っ掛け、精一杯足元の爪先を伸ばし、上に伸ばした右手も爪先までピンと張る。
そうすると、辛うじて一番上の棚に指先が届いたのだが、目当ての本を取るには足りない。

ティナはしばしの間、うんしょ、よいしょ、と小さな声で自分を奮い立たせながら、目当ての本に向かって手を伸ばしていた。
しかし、そうまで頑張っても、本は相変わらず棚の一番上に鎮座したまま、動かない。
やっぱり踏台を探して来よう、と諦めて手を引っ込めた────その時だった。

すっ、とティナの隣に影が落ちて、長い手が本棚の上に伸びた。
その手は、ティナが頑張っても頑張っても届かなかった本に届き、ひょい、と取り上げる。
ティナはその様子をぽかんとして見上げていたのだが、


「……これで良いのか」


低く耳に心地の良い声と共に、欲しかった本が差し出される。
ぱちり、と瞬き一つをして顔を上げると、同じ学校に通っている後輩が立っていた。

ダークチョコレートのような濃茶色の髪、深く澄んだ蒼灰色の瞳。
ティナが書記として所属している生徒会で、次の生徒会長にと推されている、スコール・レオンハートだった。


「…あ…ありが、とう」
「………」


ややどぎまぎとしながら謝意を述べて本を受け取ると、スコールは何も言わず、くるりと踵を返した。
長い脚の広い歩幅でティナから離れた彼は、二列向こうの本棚で足を止め、分厚い本を取り出している。

ティナは確保していた席に戻ると、本を開いた。
必要な記述をノートに書き出していると、ティナから二席空けた所の椅子が引かれる。
何となく其方を伺ったティナは、思わず「あ」と言いそうになって、慌てて手で口を塞いだ。

席に座ったのはスコールで、彼は分厚い本を三冊と辞書をテーブルに置いた。
其処にシンプルな鞄から取り出したノートを広げ、本と辞書を交互に見ながら、黙々と筆記作業に没頭する。
その横顔は、硬い表情と優等生然とした冷たい雰囲気が漂い、近付き難さを感じさせる。
ティナが学校で彼を見かける時も似たようなもので、年下なのに遥かに大人びた佇まいをしている彼に、ティナはひっそりと苦手意識を持っていた。

しかし、今のティナには、その苦手意識は働いていない。
彼女の脳裏には、つい先程、手元の本を取ってくれた彼の顔が浮かんでいた。


(……お話したの、初めて、よね)


会話と言う程の遣り取りはなかった。
だが、今までは生徒会室で顔を合わせても、事務的な挨拶位しか交わしていない。
会議の他、「お先に失礼します」「また来週」等と言った言葉以外で、彼の言葉を聞いたのは、きっとこれが初めてだ。

なんだか妙に胸の奥がとくとくと逸っている気がして、ティナはいけない、と小さく頭を振った。
今はレポートの為に必要な資料を揃えて、明々後日の提出に備えなければいけないのだ。
慌てて本とノートに視線を戻すティナの隣では、相変わらずスコールが黙々とノートを取り続けている。
あの集中力を見習って、自分もやるべき事を済ませなければ、先輩として示しがつかない。
……そんな事を思う程、彼と接点がある訳ではないのだが、自分を奮い立たせる為にも、ティナは自分自身に言い聞かせ続けた。

本の内容を書き出した後、次の本を探して、またノートに書き抜いて行く。
そんな作業を一時間、二時間と続けながら、時折、勉強とは関係のない本を探して息抜きをする。
そうして新しい本を探す合間に、ティナの視線はつい、と近い席に座る彼を探した。
彼は分厚い本をとっかえひっかえ開き、辞書と見比べる作業を繰り返し、数時間に渡って一度も───ティナが偶々見ていなかっただけかも知れないが───席を立たずに作業に集中していた。

昼食後に図書館に入ってから、六時間と言う短くはない時間、ティナは資料集めに精を出した。
其処まで粘ればもう良いだろう、とティナはノートを閉じて、椅子に座ったまま背筋を伸ばす。
うーん、と小さく唸るティナの傍らで、彼女と同じく勉強時間を終えたのだろうスコールが、テーブルに広げていた本を棚に戻すべく席を立つ。
ティナも背筋の塊が多少解れたのを確かめて、持ち出していた本を持って立ち上がった。

資料に使った本を元の棚に戻した後、ティナは一般書のコーナーに向かい、休憩中に読んでいた本を探した。
続きが気になる所で読むのを止めたので、借りて帰ろうと思ったのだ。
ハードカバーに文字のみと言うシンプルな背表紙を見付け、あった、と手を伸ばし、


「あっ」
「……」


ティナの指が触れるよりも早く、自分のものではない指が、背表紙を捉える。
それを見て思わず声を上げたティナを、蒼灰色の瞳が振り返った────スコールだ。

スコールは自分を見詰めるティナを見て、動かなくなった。
数秒の間を置いてから、スコールはティナの視線が自分の手元に向かっている事に気付く。


「………」
「あ、あの…えっと……」


本とティナを交互に見るスコール。
ティナは、そんなスコールを見て、自分が声を上げた所為で彼を困らせている、と思った。
どうしよう、困らせた、とティナがおろおろと視線を彷徨わせていると、スコールは手にしていた本を取り出して、ティナの前に差し出した。


「あ……え…?」
「……違ったのか?」
「えっ」


見ていたのはこれじゃないのか、と問うスコールに、ティナは慌てて首を横に振る。
するとスコールは、無言で本を差し出したまま動かなくなった。
スコールの言わんとする所が判らず、ティナがまたおろおろと視線を彷徨わせていると、


「…読みたいんだろ。あんたが持って行けば良い」
「え……で、でも、」
「俺は、もう何回も読んだから。借りるのは、また今度で良い」


そう言って、スコールは本を差し出し続けている。

ティナは、おずおずと両手で本を受け取った。
スコールは空になった手を下ろし、くるりと踵を返して、広い歩幅で本棚の向こうへ消えてしまう。
良かったのかな、と思いつつ、好意を無碍にする訳にも行かないだろうと、ティナは受付に向かって貸出手続きを済ませた。

玄関口まで来ると、じっとりとした湿気が肌にまとわりつくのが判った。
ガラス扉の外を見ると、しとしとと雨が降っている。
ティナは玄関を出ると、鞄の中に入れっぱなしにしていた折り畳み傘を取り出して、広げようとした────其処で、玄関横の柱横に立ち尽くしている少年を見付ける。


「……スコール?」


ティナが恐る恐る声をかけると、思った通り、蒼が振り返る。

スコールは自分を見上げるティナを見て、一瞬驚いたように目を瞠った後、溜息を吐いて雨が降りしきる軒外を見た。
土砂降りと言う程でもないが、雨粒はそこそこ大きいようで、無視して走って行くのは厳しそうだ。


「……失敗だ」


どうやら、傘を持っていないらしい。
無理もあるまい、天気予報では今日は雨が降るなんて言わなかったし、昼も快晴だった。
図書館は大きな窓を設けているが、二人が座っていたのは図書館の中央に集められた読書スペースだったから、外の天候の変化に気付けなかったのだ。

空は一面の曇天で、雨はしばらく止みそうにない。
時刻が六時を過ぎている事もあり、季節柄、日が長い方であるとは言え、陽光が遮られれば暗くなるのも早い。
雨が止むのを待っていたら───そもそも止む見込みがあるのか───、夜になってしまうかも知れない。


「……遅くなると煩いんだよな……」


スコールの小さな呟きに、ティナはことんと首を傾げた後、そう言えば、と思い出す。
生徒会の会議の前後だったか、誰かが「スコールの父親は心配性」だと言っていた。
何やら、色々な事情があって、幼い頃に碌に一緒に過ごす事が出来なかった反動で、十七歳になった息子を今も溺愛しているらしい。
スコールはそんな父親に辟易しているようだが、幼少の頃の事は仕方がないと半ば諦めている事、父なりに責任を感じての今の過保護振りも仕方がないと思っているのか、出来るだけ父に心配をかけないように気を配っているようだった。
今日も恐らく、帰宅時間を約束して、家を出て来たのだろう。
それがこの雨に見舞われて、濡れて帰るか、遅くなるのを覚悟で雨が止むのを待つか、迷っているようだ。

はた、とティナは自分の手に握られているものを思い出した。
ついでに、以前、クラスメイトのバッツから「此処がスコールの家なんだぜ」と教えて貰った住所を思い出す。
確か、此処からティナの住むアパートへの途中に、それはあった筈。


「あの……スコール。良かったら、一緒に帰らない?」
「……は?」


思いも寄らない申し出だったのだろう、ティナの言葉にスコールは目を丸くした。
ぽかんとした表情で見下ろす長身の後輩を見て、結構可愛い顔してる、とティナはこっそり思う。


「遅くなったら大変なんでしょう。私、小さいけど傘もあるし」
「……いや……」
「本、譲ってくれたお礼」
「あんなの、別に、」
「よい…しょっ」


ぽんっ、と爛漫の花が咲いて、ティナは腕を伸ばした。
長身のスコールを庇わなければならないので、いつものように傘を差すだけでは、スコールの頭に傘の骨が当たってしまう。

ティナは、可愛らしい傘を背にして此方を見下ろす少年を見上げた。
まだ呆気に取られているのか、スコールは蒼い瞳を丸くして、きょとんとした貌をしている。
図書館や、学校で見ていた、眉間の皺がないだけで、スコールが随分と幼い顔になる事を、ティナは初めて知った。


「遅くなったら、もっと雨が酷くなるかも知れないわ。行きましょう」


そう言って促すティナが歩き出すと、やや迷った素振りを見せた後、スコールも歩き出す。

図書館の玄関を離れ、石畳が敷かれた道を、数歩。
すい、と伸びて来た手が、傘を持つティナの手に重なり、


「……俺が持つ」


その申し出は、身長差だったり、自分が男でティナが女で、と言う理由もあるのだろう。
それでもティナは、ほんの一時、彼が自分と一緒に歩く事を許してくれたような気がして、嬉しかった。





多分、苦手意識はお互い様だった。
この日を切っ掛けに、お薦めの本とか話し合うようになったらいい。
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