日々ネタ粒

日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

  • Home
  • Login

日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

エントリー

カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

[クラスコ]その緋を辿って

  • 2018/07/08 21:10
  • カテゴリー:FF


テレビを見ている最中の事、背中が痒い、と言って苦々しい顔をするスコールに、見せてみろと言ってみれば、彼は案外と素直に背を向けた。
服の襟の後ろを軽く引っ張って覗き込んでみると、白い筈の肌に、沢山の赤い点と、引っ掻いたと判る筋が浮いていた。
クラウドが見ている傍から、スコールは背中に手を回して、赤い点のある場所を掻こうとする。
それが止むを得ない事であると同時に、基本的には我慢すべき事であるとクラウドにも判った為、回された手を掴んで制した。


「あまり掻かない方が良い。悪化するぞ」
「……痒い」
「気持ちは判るが、我慢しろ」


解放された手をもう一度背中に運ぼうとするスコールを、改めて制す。
スコールは判り易く唇を尖らせたが、掻けば掻くほど、症状が悪化するのは本人も判っている。
うずうずとする気持ちを抑えて、スコールは右手を下ろし、衝動を誤魔化すように手を握り開きした。


「汗疹か何かじゃないか」
「……多分そうだ。去年もなった」
「薬か何かないのか?」
「ある」


スコールはソファの傍に置いていた鞄を取り、中を探って小さなチューブを取り出した。
薬局で売っている皮膚薬で、汗疹やニキビに効くものだ。
持ち歩いていると言う事は、こう言った症状が出るのは初めてではなく、向上的な物になっているのだろう。

スコールはチューブの蓋を開け、中身を指先に絞りだして、首の後ろに手を回す。
塗り伸ばしていく様子をクラウドがなんとなく眺めていると、薬を塗るスコールの表情が益々苦いものになっていく。
しばらく眺めた後、肝心の患部に手が届いていないのだと言う事に気付いた。

クラウドがスコールの背中を覗き込んだ時、首の下、襟周りにも引っ掻いた後はあったが、それ以上に背中の中心から上半分が赤くなっているのが見えた。
人間の体と言うのは、出来得る限りの無理は出来るが、間接だけは可動域が決まっている。
首の後ろ、肩の後ろ、背中の中心にも腕を回せば手は届くが、背中の上半分となると難しい。
肩の稼働が広い者なら届かない事もないが、其処に薬を塗る、湿布を貼ると言う作業になると、自由には行かない。


「……俺が塗ろうか」
「……ん」


あれでは患部の痒みは抑えられまい、とクラウドが申し出ると、スコールは短い返事と共にチューブを差し出した。

クラウドがチューブの成分表をぼんやりと読んでいる間に、スコールは服を脱ぎ始めた。
基本的に服を着込み、日に焼ける事を嫌うスコールの肌は、少し病的にも思える程に白い。
その分、赤くなった汗疹が浮き上がって見えて、聊か痛々しくも映った。


「かなり範囲が広いな。全体に塗ればいいか?」
「ああ」
「…大分引っ掻いた痕があるぞ。薬、あまり塗っていないのか」
「……届かないんだ」


不服そうに答えたスコールに、そうだったな、とクラウドは言った。

指に絞りだした白いクリームを、赤らんだ背中に塗って、手のひらで肌に馴染むように撫でながら伸ばしていく。
汗疹と爪痕の所為で傷ついてはいるが、スコールの背中は滑らかなものだ。
その背に何度も腕を回し、抱き締めた事はあるが、こうしてまじまじと背中を眺める事は初めてかも知れない。

それにしても、とクラウドは手を動かしながら、背を預けている形になっているスコールを見る。
薬を塗る為とは言え、素直にそれを任せてくれると言うのは、何でも自分の力で完結させたがるスコールには珍しい事だ。
背中の症状の荒れ具合を見るに、相当我慢をしていたのだろう。
他人の手を借りたくない、と言う意地よりも、大人しく人の人にして貰おうと思う位には、辟易していたと言う事か。

目立って赤くなっている所には凡そ塗れたか、と言う所で、クラウドはチューブの蓋を締めた。
スコールは終わったとは気付いていないようで、クラウドに背中を向けたままじっとしていたが、


「クラウド?」


終わったのか、と尋ねるように名を呼ばれて、ああ、とクラウドは返事をしようとして、止まる。
ふと沸いた悪戯心に惹かれるまま、クラウドはスコールの背筋につぅっと指を滑らせた。


「っひ!?」


ビクッとスコールの肩が大仰に跳ねて、短い悲鳴が上がる。
スコールは背中を逃がすように振り返り、赤くなった顔でクラウドを睨み付けた。


「何してるんだ、あんた!」
「いや、ついな。随分無防備だったから」
「あんたが終わったって言わないからだろ!」


だから待っていたのに、と眦を吊り上げるスコールに、クラウドは両手を上げてホールドアップした。
怒るな、と言外に宥めるクラウドを、スコールはぎりぎりと忌々しげに睨む。
ちょっとした悪戯心なのに、とクラウドは思うが、委員長気質のスコールにはそう言う冗談は通じない。
況してや人に触れられる事に良くも悪くも敏感だから、驚いた事も含めて、この反応は無理もない事であった。

しばらく降参ポーズを取るクラウドを睨んでいたスコールだったが、じりじりと後退してクラウドから距離を取ると、薬の為に脱いだ服を着始めた。
なんなんだ、とブツブツと愚痴を零しながら、薄手のインナーに袖を通す。
そのままシャツも着ようとしていたスコールに、クラウドは徐に手を伸ばし、腕を掴んで引っ張った。


「!?クラウド────」


何を、と声を上げようとしている間に、スコールはクラウドの膝の上に背面で座らされた。
ぽすっと落ちてきた体を受け止めて、クラウドは目の前に晒された項に唇を寄せる。
ふ、と触れるだけで敏感なスコールの肩が跳ねたのが判った。

突発的な出来事に弱いスコールは、不意打ちを食らうと固まってしまう癖がある。
それを幸いと、クラウドはスコールの腹に腕を回して檻に閉じ込め、ぴったりと体を密着させて、スコールの項をちゅうっと吸った。


「っあ……!」


微かに甘露を孕んだ声が聞こえて、むくりとクラウドの欲望が頭を起こす。
その感触に気付いたのだろう、ようやく状況を理解したスコールが身を捩って逃げを試みた。
が、身長こそスコールに負けるクラウドだが、体格とウェイトは自分の方に分がある。
腕一本でスコールの抵抗を封じ込めて、クラウドは微かに紅潮した首筋にゆっくりと舌を這わせた。


「クラ、…や…あ……っ」


咎める声が聞こえたが、クラウドの悪戯は終わらない。
抱く腕でそっとスコールの薄い腹を撫でると、またスコールの体が震える。
足をばたつかせて逃げようとしているスコールだったが、その割には抵抗の仕方が甘い、とクラウドは思った。
とどのつまり、本気の抵抗ではないと言う事だ。

項を甘く食みながら、クラウドは空いている手でスコールの背中を撫でた。
背筋の真ん中を上から下に、下から上にと辿る度に、スコールの短い吐息と音が漏れる。
シャツの裾から手を入れて、撫でながら裾を持ち上げていけば、今し方見たばかりの赤い背中が再び露わになった。

クラウドは態勢を変えて、スコールをソファへと俯せに寝かせた。
抵抗なく寝かされたスコールは、首元や耳を赤らめ、はっ、はっ、と呼気を喘がせている。
服を捲られ、晒された背中にはじっとりと汗が滲んでいるが、その発汗の原因は、単純な室温の高さではあるまい。
そもそも、部屋の空調はスコールの体感温度に合わせているので、彼がこの部屋で室温を理由に汗を掻く事はない筈だ。

ついさっき、薬を塗ってやった背中に掌を置くと、ピクッ、とスコールの体が震えた。


「また汗を掻いてるな。……薬、塗るか?」


言いながら、するり、と肌に手を滑らせる。
ソファの肘掛に乗せられたスコールの手が、ぎゅっと何かを我慢するように握り締められたのが見え、


「……薬で、治るものじゃ、ないだろ」


肩越しに寄越された青灰色の瞳には、じんわりと滲む熱。
口下手な代わりに、言葉以上にお喋りな瞳が求めるものを、クラウドは理解していた。

俯せになったまま動かないスコールの背中に、覆い被さるように体を重ねる。
暑いのは嫌がりそうだな、と思ったが、捲り上げた背中に軽くキスをしても、スコールは怒らなかった。
引っ掻いた爪痕のある場所は、刺激には敏感になっているだろうから、手のひらでそっとなぞるだけ。
それだけでもスコールには官能の刺激になるようで、はっ、と押し殺した吐息が漏れたのが聞こえた。



白い背中に、ぽつぽつと浮かぶ赤い点と、細い線。
点はともかく、線の方は、自分の背中にも同じものがあるのだろうか。

そんな事を思いながら、クラウドは薄らと赤らんだ背中に花を咲かせた。





78の日と言う事でクラスコ!
スコールの背中にムラっとしたクラウドが浮かんだ。

汗だくになってお風呂に入った後、またクラウドがスコールの背中に薬を塗って、またムラっとするんだと思います。以下繰り返し。
  • この記事のURL

[ウォルスコ]君が見ている世界の中で

  • 2018/06/30 15:17
  • カテゴリー:FF


カシ、カシ、カシ、と。
小さな物が擦れるような、小さな小さなその音が、静寂の中ではっきりと聞こえた。
それを耳にした事を切っ掛けに、意識が眠りの淵から浮上すると、閉じた瞼の裏側に眩しい光が通って来る。
ああ、もう朝なのか、と思うと同時に、またカシ、カシ、カシ、と言う音がした。

まだ幾分か重い感触の瞼をゆっくりと持ち上げると、腕に抱いていた筈の恋人の姿が其処になかった。
どうりで何かが物足りない筈だ、と思いながら目だけを動かすと、恋人は直ぐに見つかった。
恋人である年下の少年は、ベッドに横になっているウォーリアの隣に膝を曲げて背中を丸めて座っている。
下肢をシーツに包まりながら、曲げた足と体の間にはスケッチブックが広げられ、鉛筆を持った手がその上を忙しなく動いていた。

恋人────スコールは、ウォーリアが目を覚ました事にも気付かない様子で、鉛筆を動かす作業に没頭している。
その真剣な横顔はウォーリアには見慣れたもので、邪魔をしてはいけない、と覚らせるものだった。


(何を描いているのだろうか)


ウォーリアは身動ぎ一つせず、視線だけを向けてスコールを見詰めていた。
彼が何を描いているのか見てみたい、と言う衝動を抑えるのは難しいものがあったが、あの横顔をしている間は、彼の気を逸らすような事は御法度だ。
スコール自身が作業に納得して顔を上げるまで、ウォーリアは物音を立ててはならないと己を律した。

スコールは若干17歳にして、アートの世界で名を馳せる芸術家であった。
彼は幼い頃から芸術の才能を発揮し、中学生の頃から業界内でその名は知らない者はいない程となり、年若い事もあって今後の成長も期待が高く、現在注目の若手芸術家と呼ばれていた。
最も、彼自身は未だ学生である事もあり、己を“芸術家”と名乗る事はなく、良く言っても“駆け出しの絵描き”であると言っている。
スコールとしては、まだ絵画の世界で生きていくか否かも決め兼ねており、幼い頃より続けてきた自分のアイデンティティとも言える“絵を描く”事について、自分自身の可能性を探る意味もあって、プロの世界に踏み込んだ、と言う心中があった。

決して広くはなかったスコールの世界を、本格的に絵画の世界へと向けたのは、ウォーリアである。
ウォーリアは美術商を仕事としており、自身の持つスペースを利用して、芸術家の作品の展示・販売を行うギャラリストだ。
ギャラリストは作品の売買を行うだけではなく、自前のスペースを作家のアトリエとして提供し、作家の育成・プロモーションを行う事もあり、ウォーリアはその為にスコールに声をかけ、その後契約を交わした。
───これによりスコールは学業が長期休暇の時期に入ると、ウォーリアの持つアトリエを借りて、作品の制作作業を行っている。
必然的に短くはない時間を共に過ごす事となった二人は、紆余曲折の末、互いを心から信じ預け合う関係へと発展したのである。

スコールは、幼い頃から絵を描く事が好きで、それだけがずっと続けていられた事だったと言う。
だから彼にとって、絵を描く事は何よりも重要なファクターとなっていた。
スコールは繊細な性格で、彼の筆にはその性格とその時の情緒が顕著に表れる為、作業に集中している時は外部からの余計な刺激を極端に嫌う。
日々を共に過ごす中で、ウォーリアはそれをよく知っているから、スコールが絵を描いている際には───意図的に休息を促す等の目的でなければ───彼の集中力を途絶させないように努めている。

だが、中断はさせないが、スコールが何を描いているのかは気になった。
特に今日のように、朝早くからスコールが描いている時は、その時の絵を彼が絶対に見せてくれない事もあって、一層気になって仕方がない。


(……一度、見せて欲しいものだが、やはり駄目だと言われるのだろうな)


横になったままのウォーリアからは、彼の体で陰になって見えないスケッチブック。
その中身を見せて欲しい、と何度か頼んだ事があるのだが、スコールは頑なに拒否していた。
きちんと描いた奴じゃない、ラフしかないから見せられるものじゃない、と言うので本人の気持ちを汲んでウォーリアも可惜と頼む事はしなくなったが、かと言って諦めるのも難しい。
何せウォーリアは、誰よりもスコールの描いた絵に惹かれてやまないのだから。

カシ、カシ、カシ、と止まない黒鉛が紙面を擦る音。
しばらく良いテンポで続いていた音が次第に緩やかになり、止まる。
終わったのだろうか、とウォーリアの視線はスケッチブックから恋人の横顔へと動く。
スコールは軽く寝癖のついた横髪を手櫛で梳きながら、じっとスケッチブックの絵を見詰めていた。
悩んでいるような、考えているような表情を浮かべていたが、その瞳がちらりと此方を向いた瞬間、蒼灰色と薄藍色が交わって、スコールがはっとした顔になる。


「あんた、起きて────」
「…ああ」


気付かれたのならと、ウォーリアは起き上がった。
目覚めてから動かないようにと努めていた所為か、下敷きにしていた左肩が少し軋んだが、血が流れれば直ぐに治まった。

起き上がったウォーリアを見て、スコールは膝に乗せていたスケッチブックをぱたりと閉じる。
描き終わったと言う訳ではないようだが、作業は終わりと言う事だ。
隠すようにウォーリアから遠ざけてスケッチブックをベッドに置くスコールに、そんなに見られたくないと示されるのも寂しいものだが、仕方がない。
気を取り直して、ウォーリアはスコールの細い腰を抱き寄せ、前髪の隙間から覗く額にキスをする。


「おはよう、スコール」
「……おはよう」
「朝食は食べられるか?」
「……腹は減ってる」


スコールの返事に、良い事だ、とウォーリアの頬が緩む。

ウォーリアは裸身のスコールの体をシーツで包んで抱き上げた。
寝室を抜け、広いリビングダイニングに移動したウォーリアは、スコールをダイニングテーブルの一脚に降ろした。
体を重ねるようになって間もない頃、ウォーリアのこうした甲斐甲斐しい行動をスコールは随分と嫌がっていたが、次第に慣れてくれた────スコールにしてみると諦めた、と言うのが正しいが。

スコールは朝のじんわりとした冷えが滲む室内から隠れるように、緩んだシーツを手繰り寄せて、椅子の上に膝を乗せて丸くなる。
ウォーリアはそんなスコールの頬を撫でてから、ダイニング横のキッチンに移動した。

パンを入れたトースターにスイッチを入れ、昨晩スコールが作ったコーンスープの残りを鍋で温める。
急沸騰しないように弱火でとろとろと温めながら、冷蔵庫からラップで綴じたサラダボウルを取り出した。
これもスコールが昨晩の夕飯に作ったもので、ウォーリアが朝食を作る時は、必ずこれから朝食のサラダを用意する。
はっきりと家事が得意ではないウォーリアが、スコールと共に暮らす時間を得てから持つようになった習慣であった。

食事の用意を整えてウォーリアがダイニングに移動すると、スコールが椅子に座って舟を漕いでいる。
ことん、ことん、と首を揺らすスコールに、いつから起きていたのだろう、とスケッチブックに向かっていた横顔を思い出して、ウォーリアは目尻を下げた。


「…スコール」
「………あ……」


声をかけると、スコールは緩慢な仕草で顔を上げた。
ウォーリアが食事をテーブルに並べると、目を擦りながらスプーンを握った。

ゆっくりと食事を始めるスコールに続いて、ウォーリアも向かい合って椅子に座り、朝食を採る。
食事を進めている内に、腹が膨れるに従って、スコールの睡魔は少しずつ抜けていった。
それでも余り朝は強くない事、昨夜の熱で疲れも抜けきっていないスコールは、気怠い様子で朝を過ごす。

ウォーリアが朝食の片づけをしている間に、スコールはシーツを引き摺りながら寝室へと戻っていった。
着替えて出てくるだろうかと思ったが、結局、ウォーリアのその姿を見る前にウォーリアの食器洗いが終わる。
また眠っているかも知れないな、と思いつつウォーリアが寝室へ入ると、其処にはベッドの上に座り、スケッチブックを開いているスコールの姿があった。


(描いて───いる訳では、ないようだな)


邪魔をしないかと一瞬考えて、スコールの手に鉛筆が握られていないのを確認する。
どうやら、自分が描いていたものをじっと観察しているだけらしい。

寝室に入って扉を閉めると、キイ、と言う蝶番の音がした。
それがスコールの鼓膜に届き、はっとした顔が此方へと向けられる。
ウォーリアが来たと判ると、スコールは見ていたページを隠すように、スケッチブックを腹に抱える。
判り易い隠し方に、ウォーリアはゆっくりと近付きながら言った。


「そのスケッチブックの中身は、やはり見せては貰えないのだな」
「見せれるようなものじゃない。ラフばかりだし」


ラフでもスコールの絵は素晴らしいものだとウォーリアは思っている。
しかし、本人が見せるに堪えられないと言うのなら、無理強いは良くないだろう。
ただ、彼の絵に誰よりも魅せられて止まない身としては、やはり気にならないと言うのも難しく、


「何を描いているのか、それだけでも教えては貰えないか?」
「………嫌だ」


ウォーリアの言葉に、スコールはスケッチブックを腹と足の間に隠して言った。
梃子でも見せない、言わない、と判る反応だ。

警戒する猫のように睨むスコールに構わず、ウォーリアはその隣に腰を下ろした。
未だ着替えもせずに過ごしているスコールの肩に腕を回すと、発展途上の体が一瞬緊張したように強張る。
そっと身を寄せて、柔らかな濃茶色の髪を指で梳くと、固かった彼の体から力が抜けるのが判った。

とす、とウォーリアの肩にスコールの頭が乗る。


「……あんた、今日の仕事は?」
「コスモスが休暇をくれた。君がいるのだから、偶にはゆっくりと傍について過ごすべきだと言われた」
「……」


変な入れ知恵を、とスコールは呟くが、その顔は微かに赤い。
肩に乗せた頭が逃げる様子もなく、スコールはウォーリアの体に体重を預けていた。

青灰色の瞳が、近い距離からウォーリアを映す。
目を合わせるのが極端に苦手なスコールであるが、時折、こうしてじっとウォーリアの目を見て離さない時もあった。
何かを捉えようと、捕まえようとしている時のその眼差しは、絵を描いている時のものと同じだ。
────その貌が、描く絵以上に、ウォーリアの心を捉えて止まない事を、スコールは知らない。



吸い込まれるように、薄藍色と蒼灰色が近付いていく。
それに気付いてスコールが目を瞠るが、その時には既に、二人の唇は重なり合っていた。





ギャラリストWoL×駆け出しの画家スコールと言う設定。
スケッチブックに描いているのは、ウォーリアの寝顔だったり、いつも見ている顔だったり。見られたらスコールは恥ずか死ぬ。

オフ本で書いたパラレル本の設定を引き摺りつつ、その後の二人がこう言う風になれたら良いなと言う妄想。
過程を大分すっ飛ばしていますが、書いたらまた長くなりそうで、書きたい部分だけ書いて満足しております。
  • この記事のURL

[ジョン+スコ]不思議なパズル 1

  • 2018/06/08 22:00
  • カテゴリー:FF
6月8日と言う事で、ジョン+スコール。敢えての“ジョン”で通します。
と言うよりは朗読劇組の四人です。少し朗読劇のネタバレもあり。





隕石の衝突のような現象の後、神々の闘争を代行する戦士達の前に現れた、記憶喪失の青年───ジョン。

記憶喪失であるが為に、自分自身がどう言う人間なのかも判らないまま、訳の判らない世界で過ごす事になった彼は、最初に彼を見付けたと言う縁も重ねてか、クラウド、スコール、ティーダの三人が当面の面倒を任された。
彼にこの世界のあらましを説明する傍ら、記憶喪失と言う本人の言も含めて怪しむスコールと、彼と援けたいと思うティーダの間で少なからず衝突が繰り返されたが、何度かの衝突の後のジョンの行動から、スコールの疑心も解けた。
その後、ジョンを狙うセフィロスの乱入により、一行が危機に陥る場面もあったものの、ジョンが所持していた召喚獣の力を使い、その場もなんとか納められた形となった。
直後にティーダは、ジョンが元の世界に戻る為、何やら急がねばならないと言ったのだが、どうやらそれ程急がなければならない、と言う事もなかったらしい。
本人曰く、ジョンは「死にかけていたが召喚獣のお陰で助かった」状態らしく、ティーダが言う“魔列車”と言うメ冥府行の急行列車に乗る必要はないそうだ。
それを聞いたスコールが、まさか本当に“John Doe”≠身元不明の死体になりかけていたとは、とひっそりと自分がつけた名前が強ち外れていなかった事に複雑な顔をしていた事は、誰も知らない。

ともかく、そのお陰でジョンは魔列車とやらに急ぐ必要もなく、元の世界に戻る為の安定した別の手段が見つかるまで、もう暫し一行の厄介になる事となったのである。

闘争の世界で過ごす内、マーテリアの陣営に与する者の中で、ジョンの事を知らない者はいない。
成行き的に参戦する事になった経緯や、彼が持っていた召喚獣フェニックス等、判明した事が増える度にクラウド達はジョンを連れて本陣へと帰還し、報告を行っている為、その度にマーテリア陣営の戦士と顔を合わせているのだ。
元々マーテリアに召喚された訳ではないジョンは、他の面々よりも一足先に帰る事が半ば確定されているようなもので、それを羨ましがる者の姿もいるのだが、それはそれとして、マーテリア陣営の戦士は概ねジョンに対して好意的だ。
以前のスコール同様、怪しんで警戒する者もいない訳ではなかったが、セフィロスとの衝突の経緯を説明すれば、少なくともジョンがセフィロスと同じ側───スピリタス陣営に与している訳ではない事は確かと言えた。
そんな面々に対しても、ジョンは「事故みたいな形で此処にいるんだから、怪しまれるのは仕方がない」と存外と大人な反応をしている。
元々、スコールが警戒を剥き出しにし、厳しい当たりをしていた時でも、そう言った反応をしていた人物である。
何処か飄々としながら、達観した物言いも垣間見える事、ジタンと並べる程の身軽さや気配を殺す実力等、相当な修羅場を潜ってきたであろう事は確かだ。
何より、先のセフィロスの戦闘の折、この世界に落ちてきた時に失われてしまった記憶も取り戻す事が出来たようで、自分自身の立ち位置やアイデンティティが確りと保てているのが、ジョンに余裕を齎しているのだろう。

記憶喪失の間は、自分がどうすれば良いのかも判らなかった為、基本的には受動であるようにと行動していたジョン。
クラウド達が彼の面倒を任されたのも、そう言った経緯があっての事だ。
ジョンの方も、刷り込みではないが、初めに自分を見付け、他の者よりも早く会話を交えた面々と一緒にいる方が、比較的気が楽と思っていた。
しかし、ジョンは案外と社交的な性格で、自分のテリトリーに踏み込まれる事にもそれ程強い抵抗を感じないようで、今ではクラウド達以外の戦士ともよく会話を交わしている。
が、現在に至るまでの経緯もあってか、散策に出かける時には、大抵クラウド、スコール、ティーダと言ったメンバーと一緒にいる事が多かった。

今日も例に漏れず、ジョンはクラウド、スコール、ティーダの三名と共に散策に出かけた。
神々の闘争の世界は、日に日に世界が拡張されており、その副産物であるのか、地形の変化等も少なからず起きていた。
イミテーションの出現も各地に確認され、陣営同士の戦闘の際に乱入して来ると言った邪魔も起きる為、定期的に掃除が行われている。

出発してから二つ目の歪を開放し、移動ルートの安全を確保して、一行は歪を脱出する。
歪の出入口は、前日に確認した時よりも僅かに位置を変えていたが、ポイントで言えば誤差程度だ。
地形の変化と照らし合わせつつ、今後も使って行ける事を確かめて、次の歪の場所まで移動する。
散策の過程は、大体がこうしたものとなっていた。

次の目的地まで向かう道すがら、ジョンは前を歩くチョコレートと蜂蜜の色をじっと観察していた。
昨日の出来事、その前の出来事、今の目の前にある物の話と、蜂蜜色───ティーダの話は尽きない。
喋っていないと間が持たないと感じる性格の彼は、常に雑談を提供してくれる。
チョコレート色───スコールはそれを面倒臭そうな顔をしながら聞き流しており、時折、「どう思う?」等と食いついてくるティーダに、適当な返事を返していた。
その返事が見るからに適当なものだから、ティーダは剥れて「真面目に聞いてるんだってー!」と抗議するように言った。
それをスコールが、煩い、と言うように片手をひらひらと払って見せたりするから、ティーダは益々ムキになる。
もう何度見たか判らない二人のそんな遣り取りを、ジョンがじっと観察していると、隣を歩く男───クラウドに声をかけられた。


「随分熱心に見ているが、面白い話でもあったか?」
「ん?いやいや、そう言う訳じゃないんだけどな」


進む足を止めず動かしながら、ジョンはバンダナを巻いた頭をぽりぽりと掻いて、


「あれだけ素っ気なくされてるのに、よく話しかけられるもんだと思ってさ」
「ふむ。俺達はもう見慣れてしまったが、言われてみれば、そうかも知れないな」


ジョンの言葉に、クラウドは前を歩く二人を見て、認識を再確認するように呟いた。


「だが、あれでも丸くなった方なんだ。前の闘争の時は、もっとピリピリしていたし」
「そうなのか?……あれで丸くなってるのか……」


ジョンの前には、いよいよ本気でティーダを無視し始めたスコールの姿がある。
すたすたと歩く速度を上げ、ティーダを置いていく気の歩調だ。
ティーダはそんなスコールの背中に突進宜しく抱き着いて、なあなあなあ、とまるで遊んで貰いたがる大型犬のようである。
スコールはそんなティーダに、相手にしたら負けだと言わんばかりに、彼を腰に巻きつかせたまま、ずるずると引き摺って歩いていた。
歩き難くないんだろうか、とジョンは眺めつつ思う。


「なんて言うか、余り人と馴れ合わないって言うか……そう言う感じがするんだ。割と熱くもなるみたいだから、クールなばかりでもないって言う感じもするけど」
「まあ、初めて逢った人間には、あいつはかなり取っ付き難く見えるだろうな。だがそれはスコールから見ても同じなんだ。あんたも見た通り、かなり警戒心が強い性格だから」
「ああ……はは、確かにかなり疑われてたな。無理もないけど」


和解に至るまでの一連の経緯を改めて思い出し、ジョンは苦笑いする。
色々と刺さるような事を言われたが、しかしそれも言われて当然の事であったとは思う。
ティーダが自分を庇い、クラウドが間に立ってくれていなければ、ジョンの心が折れていた事も想像に難くない。
それ程、あの頃のスコールは警戒心を剥き出しにしていたのだ。


「悪いが、あの時点では俺もあんたを全面信用はしていなかった。あんたが“どっち側”なのかも判らなかったからな」
「神様の闘争って奴か。俺はあまりその戦いってのにも参加させて貰ってないからまだよく判らないんだけど、そんなに癖の強い奴がいるのか?こっち側にはそんな感じの奴はいない気がするんだけど」
「ああ。今回こっち側にいるのは、良くも悪くも素直なのが多いな。だからスコールは余計に警戒したんだろう。誰かが疑わなければ、いざと言う時に甚大な被害が出る。それは避けるべき事だったから、スコールがその為に嫌われ役になった。……少し損な役回りをさせたな。あいつもそう言う役割が得意な訳じゃないのに」


悪い事をした、と呟くクラウドに、ジョンはそうだったのか、と一人ごちた。
同時に、セフィロスとの戦闘の際、意識を失っていた自分を背負っていた時に聞いた言葉を思い出す。


「……なあ。お前、“リノア”って知ってるか?」
「いや。初めて聞くが、人名か?」
「多分。スコールが前にその名前を言ってたのを聞いただけなんだけどさ」


それは、セフィロスとの戦闘の直前、ジョンが激しい頭痛を感じて気を失った後の事。
ティーダは何処かへと走り、セフィロスとの戦闘はクラウドに任せ、一先ずスコールがジョンを背負い戦線離脱していた時、スコールはその名を口にした。
あの時、ジョンの意識は現実に帰ってきており、独り言だったのであろうスコールの呟きを聞いてしまった。
抱き締めるように零れた言の葉の詳細を、ジョンは聞いていないが、それでも感じる事はあった。
きっとあの名前は、スコールにとって、酷く大切なものだったのだろう────と。

あの時にジョンがスコールに対して感じたのは、それ以前の頑なさや堅苦しさとは違う、青臭さだ。
目覚めていたのにそれを言わず、きっと誰にも聞かれたくなかったのだろう呟きを聞き留めて笑ったジョンに、スコールは顔を赤くして怒って見せた。
その時のスコールの表情は、それまでの刺々しい言動とは裏腹に、随分と幼く見えたものだ。

それを思い出して、ティーダを引き摺るスコールを眺めるジョンの双眸が細められる。


「なんて言うか……スコールって、見た目の割に少し子供っぽい所があるな」
「見た目の割には、か」


ジョンの呟きに、クラウドがくつくつと喉を震わせながら言った。



≫
  • この記事のURL

[ジョン+スコ]不思議なパズル 2

  • 2018/06/08 22:00
  • カテゴリー:FF


「俺からすれば、スコールは年相応だ」
「そうなのか?」


目を丸くするジョンに、クラウドは前を歩く二人を見るように促した。

二人────スコールとティーダは、いつの間にかまた二人並んで歩いている。
いつまでもティーダをしがみつかせている事にスコールが疲れたのか、ティーダの方が観念したのか。
スコールが面倒臭そうな顔をしながらティーダの話に相槌を打っている所を見ると、前者だろうか。
あれだけ素っ気なくしていたのに、こうなるとスコールは付き合いが良く、ティーダの振る話題に少ない言で答えている。
そんなスコールに、ティーダがまた楽しそうに話をするので、後ろで見ていると随分と微笑ましい光景だ。

身振り手振りに話すティーダと、体は歩くことに終始しているスコールの背中を眺めながら、クラウドが言う。


「警戒心がやたらと強いのは、本人の性格もあるだろうが、育った過程も大きいだろうな。あいつは子供の頃から傭兵になる事を前提とした教育を受けてきたようだから」
「傭兵、か。あいつの世界も殺伐としてるもんだな」
「さて、其処までは。何れにしろ、曲りなりにも戦闘をする人間として育てられた訳だから、危機意識やそれに対する防御意識は強いだろう。何でも最初に疑うのは、その所為もあると思う。ただ、精神の方は未熟な所が多い。それこそティーダと変わらないさ」


感情のベクトルが違うだけで、とクラウドは付け足す。

ティーダは自分自身を奮い立たせる為に、可能な限り目の前にある物事を前向きに考えている。
それでもどうにもならない事や、自分が納得のいかない事には、落ち込んでしまう事も少なくなかった。
彼の場合は感情が正直に表に出易く、素直な性格なので、感情を発散させる事で落ち着きを図る事が出来る。

スコールの場合は、危険を回避する為に、事前に悪いパターンを幾つも考え、防衛策を考えるタイプだ。
この為、想定の範囲内の事ならば素早く対応できるが、突発的な出来事や、自分が考えていた以上の出来事が起こると、思考停止に陥り易い。
案外と感情的になり易い反面、強い理性と理屈で自縄自縛になり、自分の思考をまとめる所か、発散させる事も苦手な節がある。
本陣である秩序の塔にいる際、自分の部屋に閉じこもって出てこない時があるが、その時のスコールは、その日一日の納得できなかった事など、処理が追い付かなかった事を黙々と考えている事が多く、それが済むまでは人との接触を拒む傾向があった。

────二人を並べて語るクラウドの言葉に、確かに正反対だが似ている、とジョンは思う。
脳裏に、自分を挟んで何度となく口論していたスコールとティーダの姿が浮かんだ。
徹底して疑っていたスコールと、最初から信じる、と言って憚らなかったティーダ。
しかし根底にあるのは、どちらもジョンの事を“敵だと思いたくない”と言う気持ちであったから、ジョンが自ら別行動を進言した事により、スコールはようやく疑心を拭う事が出来、“仲間”としてジョンを迎えに行くに至ったのだろう。


「スコールは、理屈と感情で挟まれ易いんだ。優先すべき事は取捨選択できるのは良いんだが、自分の行動と感情が別々の方向を向いている時に、感情の処理が出来ない。引き摺り続けたまま、無理やり理屈に行動を合わせるから、息苦しくもなる」
「複雑な奴だな」
「仕方がないさ。幾ら普段は大人びて見せた振りをしても、中身は学生だからな」
「学生?」


クラウドから零れた思いもよらなかった単語に、ジョンの琴線が引っ掛かる。
目を丸くしているジョンを見て、クラウドはくつりと笑って続けた。


「あんたの世界ではどうかは判らないが、俺やあいつらの世界では、17歳はまだ学生だ。本来、大人から庇護されて然るべき立場なんだよ」
「あー、それで……へ?17?」


納得したと言う表情で頷いた後、ジョンはもう一度目を丸くした。
隣に立って歩く男を見て、また前を歩く二人を見る。
交互に自分と仲間に視線を移すジョンに、クラウドは予想していた通りと言わんばかりに口角を上げ、


「雰囲気に騙される奴は多いんだ」


暗にスコールの年齢を指しての台詞だろう。
同時に、「そうだと思えば判るだろう?」と言うニュアンスも滲んでいる。


(……なる、ほど。成程)


道理で────とジョンの中で、散らばっていたピースがぱちぱちと嵌っていく。
冷静沈着に、当たり前の事だと言わんばかりに、厳しい物言いでざくざくと切り込んでいくかと思えば、何かを堪えるように黙り込んでしまう事もあるスコール。
言葉数が少ないかと思えば、投げ当てられたボールは全力で打ち返さねば気が済まないと言わんばかりの熱し易さ。

17歳と言えば、ジョンの記憶の中でも、微妙な年齢だ。
既に自立した者もいれば、大人の庇護の中にいる者もいるし、環境や立場と言ったものも影響するが、何れにしろ、“大人”とはっきりと括れない事は確かである。
加えてその年齢は、良くも悪くも不安定になり勝ちで、それを無理やり自制しようとしている人物がいた事も、ジョンの記憶には浮かんでいる。

はは、とジョンの喉から笑いが漏れた。
観察している内に、印象とは違う表情を見る事が多く、不思議に思っていた事が、一気に納得に向かう。
その様子を見たクラウドが、「驚いただろう」と何故か自慢げな顔をしているのが可笑しくて、ジョンは余計に笑いを堪えられなくなった。


「はは。あははは!あー、そっかそっか。成程な!」
「そういう事だ」


笑うジョンに、クラウドは肩を竦めて言った。

そのジョンの笑い声に、前を歩いていた二人が怪訝な顔で振り返る。
そうして、後続二人との距離がいつの間にか随分と離れていた事に気付いた。


「おーい!二人とも何やってるんスかー!?」
「置いていくぞ、あんた達」


手を振って早く早くと急かすティーダと、不機嫌そうに睨むスコール。
それを見ながら、ジョンは声を大きくして返した。


「悪い悪い!ちょっと話が盛り上がってさ!」
「話?」
「えー!?何々、何の話?」


眉根を寄せるスコールを置いて、ティーダが自分も混ぜてとばかりに駆け戻ってくる。
それを待たずに、ジョンは言った。


「スコールが意外と可愛い奴だなって話!」
「………はあ!?」


ジョンの言葉に、スコールが目を丸くして声を大きくする。
数瞬の空白の後、スコールの眉が一気に釣り上がり、ふざけているのか───と口が開きかけるが、


「そう、スコールは可愛い奴なんだ」
「なっ……あんたまで何言い出すんだ!?揶揄ってるのか」
「いや、本気で可愛いと思ってる」
「うんうん」


便乗するように言ったクラウドに、スコールの顔に益々血が上っていく。
揶揄なのかと言う言葉をクラウドは真っ直ぐに否定したが、スコールにしてみれば悪ふざけ以外の何物でもないだろう。
ヒクヒクと顔を引き攣らせるスコールを他所に、クラウドは間に挟まれた形できょろきょろと首を巡らせているティーダに声をかけた。


「ティーダもそう思わないか」
「へっ?俺?」
「ああ。スコールは可愛い奴だって。思った事はないか?」
「一杯あるっス!」
「な……」


話を振られて、悩む間もなく即答したティーダに、スコールはいよいよ言葉を失った。
よろりと足をふらつかせ、今にも倒れそうだが、流石に意識は現実に留まったらしく、よろめいただけで済んだ。
が、可愛い、可愛い、と何度も繰り返す三人の仲間に、スコールは状況への理解が追い付かなくなっていた。


「ば……馬鹿な事を言っていないで、足を動かせ!さっさと次の歪に行くぞ!」
「あー!置いてっちゃ嫌っスよ、スコール!」
「煩い!寄るな!近付くな!」
「顔が赤いな~、ひょっとして照れてるのか?」
「そう言う所も可愛いぞ、スコール」
「………!!!」


黙れ、とすら言うのも恥ずかしくなったのか、スコールは逃げるように走り出した。
直ぐにティーダが追い駆け、スタートダッシュ速度の違いであっという間に追いついて背中に飛び付く。
退け離せと怒るスコールだったが、真っ赤な顔で幾ら言った所で、ティーダに効果はない。

ジョンはクラウドと目を合わせ、可愛いよなあ、と言って笑った。



その日のその後、拗ねたスコールは、ジョンとクラウドとの会話を一切拒否した。
そうしてムキになってしまう所も可愛いよなあ、と彼等が和んでいた事は終ぞ知らない。





一回書きたかった朗読劇組の話。
と言うかジョンとスコールの話(会話してるのはほぼクラウドだけど)。
スコールの年齢ネタは何番煎じでパターンみたいなものと化してますが、やはりこう言う反応があると私が楽しい。
そんで帰る前にほんの少しだけこう言う時間があったらなーと。アケディアも参戦しましたし、後に再会したりとかしたら面白い。私が。

このメンバーで行くと、スコール・ティーダが17歳、クラウドが23歳、ジョンが25歳なんだよなーと思うと色々滾る。
  • この記事のURL

[バツスコ]熱に溺れる

  • 2018/05/08 21:30
  • カテゴリー:FF
ほんのりとR15の雰囲気。





久しぶりに泊まりに来た少年を、ベッドに引き摺り込んでから、濃厚な夜を過ごした。
もうちょっと、もう一回、を何度繰り返した事だろう。
終わった頃にはスコールはすっかり疲れ果て、まだバッツを中に残した状態のまま、意識を飛ばしてしまった。
それからバッツもしばし寝落ち、目が覚めたのは十分後の事だったが、そのお陰で茹っていた頭は少し落ち着いてくれた。
眠るスコールの中から自身を抜いて、情事の痕をそのまま残すベッドからスコールを運び出し、風呂へ入る事にした。

敏感なスコールの体は、眠っていても触れると反応が返る。
色々と残したままは良くないだろうと掻き出している間も、スコールは吐息混じりに声を漏らしていた。
それがバッツの雄をまたも刺激してくれるのだが、流石に意識のない相手に手を出すのは宜しくないとブレーキが働いてくれた。
汗と蜜でぐっしょりと濡れていた其処を綺麗にするまで暴走しなかった自分を、誰かに褒めて欲しい位だ。

スコールをバスタブの中に入れて、緩めの湯を溜めている間に、バッツは自分の体はシャワーで簡単に洗い流した。
別に洗わなくても気にしないと言えば気にしないのだが、やはり一風呂浴びるとさっぱりとして心地が良い。
それから直ぐにベッドに戻っても良かったのだが、長い情交で疲労しているのはバッツも同じだ。
少しだけ風呂でゆっくりと温まる事にして、スコールを膝に抱きながら、バッツも湯船に入った。


「ん~……気持ち良いなー…」


いつもの熱々の風呂ではないが、汗を掻いた体を休ませるには丁度良い。
スコールもいるし、と眠る恋人を腕に抱き、濡れた項に目を奪われながら、良い景色、と呟いた。

バッツの家は、そこそこの築年数が経ったアパートの一室で、完全に一人暮らしの為の間取りになっている。
風呂とトイレは別に設けられているが、どちらも大した広さはなく、しかしどういう訳かバスタブだけはやや大きなものが設置されていた。
この所為でただでさえ狭い風呂がより狭くなっており、シャワーを使えば飛沫が殆ど湯船に飛び散る事になるのだが、それでもバスタブが広いとゆったりと風呂に入れるので助かっている。
特にスコールが泊まりに来た時、彼と一緒に風呂に入れるのは、バスタブに余裕があるお陰に他ならない。

ちゃぷん、と小さな水音が鳴って、スコールの頭が前に傾く。
ゆっくりと前傾になって行くスコールに気付き、バッツは彼の肩を捕まえて、自分の方へと引き倒した。
スコールはバッツの肩に後頭部を預け、胸に身を預けるように寄り掛かる。
濡れた後ろ髪がバッツの肩口をくすぐった。


(今夜はもう起きないかな?)


寄り掛かるスコールの貌を眺めながら、激しかった情交を思い出す。
もう無理、眠い、やだ、と訴えていたスコールを半ば無視して繰り返し抱いたので、明日の彼はきっと起き上がる事も出来ないだろう。
となると明日には確実にスコールの雷を喰らう訳だが、其処はバッツも慣れたもので、先ずは朝御飯にスコールの好きな目玉焼きを作って、と機嫌を取る算段を考えていた。

と、腕の中でスコールが小さく身動ぎして、んん、と小さく唸る声が漏れる。
バッツが注視していると、スコールの長い睫毛がふるりと震えて、ゆっくりと持ち上がった。


「……ん…ぅ……?」
「お。目が覚めちゃったか?」


ゆらゆらと揺れる瞳が、ぼんやりとした様子で天井の照明を見詰めている。
バッツが声をかけると、瞳はゆっくりと動いて、バッツの顔を映した。


「……ばっつ……?」
「うん」


寝起きで寝惚けているのだろう、スコールは恋人の名を確かめるように呼んだ。
バッツが頷いて、スコールの目許にかかる前髪を指で退けてやると、スコールはゆっくりとした瞬きを一回、二回として、


「……バッツ……」
「お」


夢心地にいるような声で、スコールはバッツを呼び、すり、と頬を寄せて来た。
甘えたがりの猫を思わせる仕草は、スコールが寝起きの時にだけ見せてくれるものだ。

すり、すり、とバッツの首筋に頬を寄せて来るスコールに、くすぐったいな、とバッツは笑う。
くすくすと笑いながら頭を撫でると、スコールはうっとりと目を細めて、はあ、と熱の籠った息を吐く。
濡れた髪が張り付いた頬が、湯の温度でほんのりと赤らんでいる所為で、色っぽさが助長されているような気がする。
まずいなあ、と思いつつ、バッツはスコールの首筋に、つぅ、と指を滑らせた。


「んっ……」


ひくん、とスコールの体が微かに震えて、小さな音が喉奥から零れ出る。

スコールは細めていた目を薄く開き、まだ少し焦点の合わない瞳でバッツを見た。
湯の中で沈んでいた腕が持ち上がり、バッツの頬をそっと撫でる。
指先が皮膚の感触の一つ一つを確かめるように、其処を辿る水滴の筋を追うように滑って行った。
やがてその手指はバッツの口元へと辿り着き、スコールの長い指が、バッツの下唇を摘むように軽く挟む。

かさついた自分の唇を撫でるスコールに誘われるように、バッツもスコールの唇に指を宛がった。
噤んだ唇の割れ目に指を滑らせると、スコールはふるりと肩を震わせて、薄らと口元の力を抜く。
緩く開いた其処に指を押し当ててやれば、微かに覗いた赤い舌が、バッツの指先に触れた。


「……スコール」
「…ん……?」
「なんか、凄くエッチだぞ」
「………」


誘われているみたいだ、とバッツが顔を赤くしながら言うと、スコールはことんと首を傾げる。
無意識なのか、わざとなのか────多分無意識、だとバッツは思う。
であればこそ、尚の事性質が悪いのだが、寝惚けているスコールはそんなバッツに気付く様子はなく、バッツの唇を指先で遊んでいる。


(自覚がないから、こんなにエッチな貌してるんだよな)


バッツの腕の中で、スコールは情事の最中と変わらない貌を見せていた。
触れられる事への恐怖や、自分が乱れる事への羞恥心も忘れて、バッツが与える快感に溺れ切っている時のスコールは、とても淫らで艶やかだ。
それを見る度、バッツは己の欲望がまた膨らんで、もっとこの顔が見たい、とスコールを啼かせたい衝動に駆られる。

しかし、今はスコールは勿論、バッツも先までの情交で疲れている。
明日はスコールの学校は休み、バッツもアルバイトがないので、昼過ぎまで寝倒しても問題はないのだが、これ以上はスコールの体に余計な負担をかけてしまう。
既に明日は立てない事が決定事項のようなものなのに、これ以上はちょっと────とバッツも思うのだが、


「……バッツ」
「ん?」
「……キスしたい」


自分からは到底言い出す事のないおねだりに、バッツはスコールの思考が正常ではない事を察した。
情交の茹った意識と熱が、まだ彼の中に残っているのかも知れない。
そうでなければ、こんな貌で、こんなお願いを、すんなりと口に出す筈がないのだ。


「…スコール、寝惚けてるだろ」
「……だめなのか?」
「駄目じゃないけど。でも、寝惚けてるよな?」
「……わからない。それより、キス」


してくれ、とバッツの耳元でスコールが囁く。
微かにかかる吐息のくすぐったさに、バッツは首の後ろにそわそわとしたものが這うのを感じた。
あー、良くない奴、と思いつつ、バッツはスコールのリクエストに応えて、濡れた頬にキスをする。


「もっと……」
「甘えんぼだなあ、スコールは」
「ん……」


平時なら、言えば絶対に怒る台詞を言ってみる。
思った通り、スコールは怒りだす事もなく、また甘えるように身を擦り寄せた。

頬に、耳元にキスをして、首筋に唇を押し当てると、あ、と小さく声が漏れたのが聞こえた。
スコールは嫌がる様子はなく、首筋を差し出すように天井を仰ぐ。
バッツはスコールの腰を抱いて、首に、肩口にキスをし、また上に戻って頬にキスをする。


「バ、ッツ、……」
「スコール。声がエッチになって来てる」
「…っあ……ん……っ」


声の変化を言い当てながら、バッツはキスの雨を止めなかった。
スコールはその雨を全て、心地良さそうな貌を浮かべて受け止めている。
濡れた唇からは、はあ、はっ…、と熱を孕んだ吐息が漏れて、バッツの欲望を刺激した。

そろそろ止めないと、風呂も出ないと逆上せるかも────とバッツは頭の隅で思ってはいるのだが、頬に触れるスコールの手が、もっと、と強請っている。
此処から先をスコールに強請られたら、本当に止まらなくなりそうで、どうしようかな、と真面目に考えていると、


「……バッツ……」
「ん?」


呼ぶ声に返事をすると、スコールが体を起こして、バッツの胸から背を離す。
ちょっと目が覚めて来たのかな、と思っていると、スコールは振り向いてバッツと正面から向き合った。

柔らかな光と、熱の籠った瞳が、じっとバッツを見詰めている。
形の良い手がバッツの頬を逃がすまいとするように包み込んで、スコールはゆっくりと顔を近付けた。
これは、とバッツが思っている隙に、二人の唇が重なり合い、濡れた舌がバッツの唇をなぞる。
促すように何度も唇を撫でる舌に、バッツがそっと唇を割れば、嬉しそうにスコールはバッツの舌を捕らえに行った。

バッツの腕がスコールの背中に回され、後頭部に手を添えて、口付けが深くなる。
ん、ん、とくぐもった声を漏らしながら、スコールはバッツの舌を舐め、バッツもまたスコールを捉えてたっぷりと舐ってやった。
スコールの主導で始まった筈のそれは、次第にバッツがリードする形へと変化して行き、終わる頃にはスコールはバッツのされるがままとなっていた。

───ちゅぱ、と音を立てて唇を離すと、スコールの体がくたっとバッツに寄り掛かる。


「っは……はぁ……っ、」
「スコール、大丈夫か?」
「…ん……」


バッツが声をかけると、スコールは小さく頷いた。
顔を上げたスコールの瞳には、熱と一緒に雄を宿した男の顔が映っている。


「寝かせなきゃって思ってたんだけどな」
「……あ……」
「スコールの所為だからな」


おれはちゃんと我慢してたんだから、と言って、バッツはスコールの喉に食らい付いた。
甘く歯を立てるバッツに、スコールの肩がビクッと跳ねる。

逆上せないように、それだけは気を付けよう。
そんな事を考えながら、バッツの手は細い背中を滑って行った。





5月8日でバツスコの日!
お風呂でいちゃいちゃしてる二人が書きたくなった。

バッツがスコールの為にと思って色々我慢したのに、全部ぶち壊しにするスコールでした。
翌日、スコールが何処まで何を覚えているのかは微妙な所。部分的に覚えていたら恥ずか死ぬ。覚えてなくてもバッツが全部言うので恥ずか死ぬ。
  • この記事のURL

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ
  • ページ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 32
  • 33
  • 34
  • 35
  • 36
  • 37
  • 38
  • 39
  • 40
  • 41
  • 42
  • 43
  • 44
  • 45
  • 46
  • 47
  • 48
  • 49
  • 50
  • 51
  • 52
  • 53
  • 54
  • 55
  • 56
  • 57
  • 58
  • 59
  • 60
  • 61
  • 62
  • 63
  • 64
  • 65
  • 66
  • 67
  • 68
  • 69
  • 70
  • 71
  • 72
  • 73
  • 74
  • 75
  • 76
  • 77
  • 78
  • 79

ユーティリティ

2025年06月

日 月 火 水 木 金 土
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
  • 前の月
  • 次の月

カテゴリー

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

新着エントリー

[ヴァンスコ]インモラル・スモールワールド
2020/12/08 22:00
[シャンスコ]振替授業について
2020/11/08 22:00
[ジェクレオ]貴方と過ごす衣衣の
2020/10/09 21:00
[ティスコ]君と過ごす毎朝の
2020/10/08 21:00
[ジタスコ]朝の一時
2020/09/08 22:00

過去ログ

  • 2020年12月(1)
  • 2020年11月(1)
  • 2020年10月(2)
  • 2020年09月(1)
  • 2020年08月(18)
  • 2020年07月(2)
  • 2020年06月(3)
  • 2020年05月(1)
  • 2020年04月(1)
  • 2020年03月(1)
  • 2020年02月(2)
  • 2020年01月(1)
  • 2019年12月(1)
  • 2019年11月(1)
  • 2019年10月(3)
  • 2019年09月(1)
  • 2019年08月(23)
  • 2019年07月(1)
  • 2019年06月(2)
  • 2019年05月(1)
  • 2019年04月(1)
  • 2019年03月(1)
  • 2019年02月(2)
  • 2019年01月(1)
  • 2018年12月(1)
  • 2018年11月(2)
  • 2018年10月(3)
  • 2018年09月(1)
  • 2018年08月(24)
  • 2018年07月(1)
  • 2018年06月(3)
  • 2018年05月(1)
  • 2018年04月(1)
  • 2018年03月(1)
  • 2018年02月(6)
  • 2018年01月(3)
  • 2017年12月(5)
  • 2017年11月(1)
  • 2017年10月(4)
  • 2017年09月(2)
  • 2017年08月(18)
  • 2017年07月(5)
  • 2017年06月(1)
  • 2017年05月(1)
  • 2017年04月(1)
  • 2017年03月(5)
  • 2017年02月(2)
  • 2017年01月(2)
  • 2016年12月(2)
  • 2016年11月(1)
  • 2016年10月(4)
  • 2016年09月(1)
  • 2016年08月(12)
  • 2016年07月(12)
  • 2016年06月(1)
  • 2016年05月(2)
  • 2016年04月(1)
  • 2016年03月(3)
  • 2016年02月(14)
  • 2016年01月(2)
  • 2015年12月(4)
  • 2015年11月(1)
  • 2015年10月(3)
  • 2015年09月(1)
  • 2015年08月(7)
  • 2015年07月(3)
  • 2015年06月(1)
  • 2015年05月(3)
  • 2015年04月(2)
  • 2015年03月(2)
  • 2015年02月(2)
  • 2015年01月(2)
  • 2014年12月(6)
  • 2014年11月(1)
  • 2014年10月(3)
  • 2014年09月(3)
  • 2014年08月(16)
  • 2014年07月(2)
  • 2014年06月(3)
  • 2014年05月(1)
  • 2014年04月(3)
  • 2014年03月(9)
  • 2014年02月(9)
  • 2014年01月(4)
  • 2013年12月(7)
  • 2013年11月(3)
  • 2013年10月(9)
  • 2013年09月(1)
  • 2013年08月(11)
  • 2013年07月(6)
  • 2013年06月(8)
  • 2013年05月(1)
  • 2013年04月(1)
  • 2013年03月(7)
  • 2013年02月(12)
  • 2013年01月(10)
  • 2012年12月(10)
  • 2012年11月(3)
  • 2012年10月(13)
  • 2012年09月(10)
  • 2012年08月(8)
  • 2012年07月(7)
  • 2012年06月(9)
  • 2012年05月(28)
  • 2012年04月(27)
  • 2012年03月(13)
  • 2012年02月(21)
  • 2012年01月(23)
  • 2011年12月(20)

Feed

  • RSS1.0
  • RSS2.0
  • pagetop
  • 日々ネタ粒
  • login
  • Created by freo.
  • Template designed by wmks.