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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

[セシスコ]優しさよりも傷を与えて

  • 2017/08/08 20:40
  • カテゴリー:FF


遠くに名前を呼ぶ声が聞こえて、重い瞼を持ち上げる。
暗がりの視界に飛び込んできたのは、淡い月の光を思わせる、プラチナブロンドだった。
藤色の瞳が心配そうに此方を覗き込んでいるのを見て、どうしてそんな顔を、とスコールは首を傾げる。
その仕草を見た藤色が、ほっと安堵の色を灯した。


「ああ、良かった。すまない、無理をさせたみたいだね」


そう言って柔和に微笑むセシルに、スコールは自分が意識を飛ばしていた事を知った。

面立ちとは裏腹に、厚みのある戦士の手が、スコールの頬を撫でる。
ごめんよ、と詫びるセシルに、スコールはゆるゆると首を横に振った。

セシルと体を重ねる関係となってから、どれ程の時間が過ぎただろうか。
まだ両手では余るが、それでも片手が埋まる位には、同じ褥で夜を越えたように思う。
その中で、スコールはいつも、途中で意識を飛ばしていた。
スコールが気を失う度に、セシルは無茶をさせた、負担を強いたと謝るけれど、気を失う理由は本当はそれではない事をスコールは自覚している。

スコールの意識がはっきりと戻って来るまでの間、セシルは年下の恋人を宥め慰めるように、ずっと頬や頭を撫でていた。
子供をあやすように触れる手にスコールは些かの不満を覚えたりもするのだが、見下ろす瞳は確かに熱を持っていて、単に自分を甘やかしているだけではないのだと言う事が判るから、黙認する。


「落ち着いたかな」
「……ん。…悪い」
「いや、君が謝る事じゃないよ。僕が無理をさせたんだから」


いつもの言葉を口にするスコールに、スコールはそうじゃない、と言いたかった。
けれど、ではどうして、と聞かれる事を思うと、どうしても否定の言葉は出せない。

頭を撫でる手が離れると、セシルはスコールの首筋をそっと撫でて言った。


「今日は此処までにしようか」
「……嫌だ」


拗ねた顔で返したスコールに、セシルは眉尻を下げて困った顔をする。
でも、と言おうとするセシルを、スコールは自分の唇で塞いだ。

スコールの方からセシルの咥内へと侵入し、舌を絡ませ合う。
セシルの瞳が一瞬大きく見開かれたが、求める少年の声なき声を聞いて、直ぐに応え始めた。
先の熱の余韻も残る中、唾液の分泌は直ぐに始まり、ぴちゃ、ぴちゃ、と言う蜜音が耳の奥で響く。
重みのある筋肉が自分の上に覆い被さって来るのを感じて、スコールの足がシーツの海を引っ張った。

青白い月の色をした髪が、スコールの頬を掠める。
ふわふわとした髪質のそれが少しくすぐったくて、スコールの鼻先がひくひくと我慢するように震えていた。


「……んっ……」


セシルの手がスコールの胸をするりと撫でる。
火照りの残った体には、それだけで甘い刺激になった。

肌を重ねている時のセシルは、酷く優しい。
それこそ、スコールが一種の拷問と思う位に優しく、柔らかく、緩やかだ。
明日の戦闘や、日々の内に知らず蓄積されて行く疲労でスコールが潰されてしまわないよう、気遣ってくれているのだと言う事は判る。
しかし、若い躯に余りにも緩やかな刺激は、じわじわと効いて行く弱毒に似て、スコールを苛んでしまう。


「う…ん……っ!」
「大丈夫かい?」
「……っ」


まだ肌を滑り合わせているだけなのに、敏感に反応してしまうスコールに、セシルが囁く声で問う。
それもスコールを慮っての事なのだが、耳元で密やかに囁かれると、スコールはその声だけで高ぶってしまうのだ。

真っ赤な顔で、スコールは平気だ、と頷いた。
セシルはそんなスコールの眦に、羽根のようなキスをして、胸を撫でていた手を腰へと回す。

いつも鎧に覆われているセシルの腕は、嫋やかそうに見える外見に反して、とても筋肉質だ。
クラウドのような判り易い筋肉の盛り上がりは少ないが、鍛え抜かれた固さと厚みがある。
どうにも筋肉がつき難く、絞られる一方で戦士らしい体格が身に着かないスコールには、羨ましい事だ。
一時はそれがスコールのコンプレックスを刺激する事もあって、セシルの裸身を見る事に随分と抵抗を抱いた事もあったが、今となってはどうでも良い事────でもないのだが、目くじらを立てる話ではなくなった。
代わりに、騎士然としたその肉体に組み敷かれる事で、その体を持って世界の全てから隠されているような気がしてならない。

閉じ込められた腕の中で、スコールは未だ続く緩やかな刺激に身を捩った。
中心部が膨らんでいるのを自覚すると、頬の朱が走る。
暗闇の中でも、セシルはそれを見付けたのだろう、くすりと笑う気配があった。


「何処か痛むなら、無理をしないで言ってくれよ」
「……それ、は…ない……っ」
「そう?」


なら良いけど、と言って、セシルの手がスコールの下肢へと降りていく。
膨らみの足りない臀部を摩られるのを感じて、スコールはビクッと喉を逸らした。

緩慢に煽られる熱の中で、体はスコールの意志とは関係なく、此処から先の流れを期待している。
スコールはゆっくりと足を開いて、セシルに続きを促した。
気を失う前に一度繋がっていたから、改めての準備は必要ないだろう。
言外に、早く、と言うスコールの希望が体現されたのだが、


「……っは…あ……っ!」


セシルの手はスコールの太腿を滑り、足の付け根を辿る。
其処に触れられている時が、スコールは一番もどかしくて堪らなかった。
ほんの少し横に逸れれば、一番触れて欲しい所に触れて貰えるのに、辿り着かないのだから。

スコールは、時々、セシルが判っていてこんな触れ方をするのではないか、と思う事がある。
気遣うような触れ方は、スコールにとっては焦らされているも同然で、その間に嫌と言う程熱を蓄えさせられるのだ。
それから秘部に熱を貰うと、それまでの高ぶりが一気に限界まで膨張して、頭の芯まで溶かしてしまう。
まるで全身が性感帯にされたかのような熱の中で攻められれば、スコールはあっという間に前後不覚の状態になって、限界まで上り詰めて果てる。
これを繰り返されるから、いつも途中で意識が途切れてしまうのだ。

今もスコールは、先に貰った熱から続く欲望を煽られて、体の芯が熱くて堪らなかった。
今直ぐにでもそれに触れて解き放って欲しいのに、セシルの手は白い肌の上を滑るばかり。
重なり合った部分が高ぶっている事はお互いに判り切っている筈なのに、焦燥しているのが自分だけのようで、スコールはいつも恥ずかしかった。

だが、いつまでもこんな触れ方をされていては、スコールの躯が持たない。


「セシ、ル……」
「……うん?」


胸の頂に口付けされて、スコールの肩がピクッと跳ねる。
ふう、ふう、と零れる呼吸を噛みながら、スコールはシーツを突っ張っていた足を持ち上げて、セシルの腰へと絡み付かせた。


「も…早、く……!」
「でも」
「…いい、からぁ……っ!」


セシルの気遣いは判っている。
大事にしようとしてくれているのも、理解しているつもりだ。

けれど、それ以上に、彼の熱が欲しくて堪らない。
強く抱き締めて、一番奥に彼の存在を注ぎ込んで欲しい。
それでまた意識を飛ばしてしまうなら、それも良いだろう。
彼と言う存在が自分の中に種を残してくれるのを感じながら、溺れ死ぬのも悪くない。


「……判った。辛くなったら、無理をせずに言ってくれ」
「……無理、なんて…ない……」


このままじわじわと灼かれ続ける方が無理だ、とスコールは思う。
それをセシルが読み取ったかは判らないが、スコールの懇願だけは受け止めてくれた。

腰に絡み付かせていた足を掴まれ、大きく左右に開かれる。
全てを曝け出す格好になって、スコールは一気に羞恥心が蘇ったが、今更引き留めるのも都合の良い話だし、何より、見下ろす瞳に雄の匂いが浮かんでいるのが判って、息を飲む。



反射的に閉じようとした足の抵抗を捨てれば、形の良い唇が、良い子、と紡いだのが判った。





『セシスコでしっとり大人な雰囲気えっち』のリクエストを頂きました。
……しっとりってなんだっけ……

余裕がある訳ではないけど、自分の方が年上だから、無理させないようにしなくちゃって思ってるセシルと、そんなの良いから早く欲しいスコールでした。
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[バツスコ]銀に込めた願い

  • 2017/08/08 20:35
  • カテゴリー:FF


昔から妙に運は良い方で、縁日の出店でクジを引けば、少なくとも三等は当たっていた。
スーパーの出口で月に一度行われるクジ引き大会でも、ハズレクジを引いた事はなく、三等四等、時には一等やら特賞まで当たっていた。
余りに引きが良いものだから、ジタンから「実は裏で何か貰ってんじゃねえの」と言われた程だ(勿論、冗談ではあるが)。
残念賞のティッシュや菓子が欲しくて回す時もあるのだが、そんな時にこそ上位の当たりを引いてしまい、嬉しいやら悲しいやら、バッツ自身は複雑な気持ちになる事もあったりする。

そのクジ運を使って、映画のチケットを手に入れた。
駅前の大きな映画館で上映される、毎日のようにテレビCMも放映されている、流行りのファンタジー映画だ。
露骨なラブロマンスとかでなくて良かった、と思うのは、バッツがその手のものを苦手としているのもあるが、それ以上に、誘った人物がこのジャンルに全くと言って良い程興味がなさそうだったからだ。
愛だの恋だの浮ついたものを嫌う───とまでは言わないが、避ける傾向のある想い人を映画に誘うなら、そんなものはスパイス程度に振り掛けてある位のものが良い。
お陰で、映画でもどう、と誘った時には、いつもの渋い貌が浮かんだが、チケットに書かれたタイトルを見ると、彼は頬を赤らめて頷いた。
それもこれも、チケットに描かれた今回の映画のキーマンである、ライオンのお陰だ。

チケットに描かれた時間指定に則り、夕方に映画館前で待ち合わせをした。
待っている間に小腹が空いて、先に夕飯にしても良かったかな、と思ったが、時刻は五時前で、食事をするには少々早い。
上映前にポップコーンでも買おうか、と割高になるものと判っていながら、しかし映画館の醍醐味と言えばそうである訳で、と考えていると、


「……悪い、遅れた」
「いやいや。時間ピッタリだって」


反対側の横断歩道から駆けて来た少年────スコール。
彼がバッツが恋慕を寄せる人物であるが、彼自身はまだそれを知らない。

ビルの外にいても暑いばかりなので、早速二人で中に入る。
高層ビルを複合施設として利用している為、映画館はエレベーターに乗って上層まで行かねばならない。
休日になると、映画館に向かう客と、下層フロアで買い物をする客とで混雑してしまう為、映画館へは専用のエレベーターが設けられていた。
そのエレベーターは、映画の上映時間と前後するタイミングで乗ると非常に混むのだが、今は丁度上映の真っ最中である為か、利用する人の数は疎らだ。
今の内に、と言うバッツにスコールも頷いて、エレベーターに乗り込む。

映画館のロビーは広々としており、ポップコーンやジュースを売っている館内購買の他にも、ロビーに向かい合わせてファーストフード店も併設されている。
空き腹を思い出し、ちょっと何か食べて行けるかな、と思ったバッツだったが、上映までの時間を考えると微妙な所だった。
やっぱりポップコーンだな、と改めて時間との都合を思い直し、


「スコール、ポップコーン買わないか?おれ、腹減っちゃって」
「……俺は、別に……」


要らない、と言うスコールに、そっか、とだけ言って、バッツは購買へ向かった。

塩味のポップコーンをSサイズで買って、コーラをMサイズで買った。
自分の分だけと言うのも味気ない気がしたので、スコールの為にアイスコーヒーを注文する。
スコールはホットのコーヒーの方を好んで飲んでいるが、映画を見ている内に冷めてしまう事を考えると、アイスコーヒーの方が無難かなと思ったのだ。

紙トレイに乗せられた飲み物と、山盛りのポップコーンを零さないように気を付けながら、購買を離れる。
きょろきょろと辺りを見回し、スコールを探すと、彼はグッズ売り場に立っていた。


「スコール、お待たせ」
「あ……ああ」
「何か見てた?」
「……いや」


バッツの問に、スコールは僅かに間を置いてから、首を横に振った。
それでも存外とお喋りな蒼灰色の瞳は、吊るされたストラップへと向けられている。

スコールが見ていたのは、これから見る映画のグッズで、チケットにも描かれていたライオンがシンボルマークとなって彫刻されている。
ゴールド、シルバー、ブロンズと並んだ配色の中で、スコールが熱烈に見詰めているには、シルバーのものだ。
元々シルバーアクセサリーが好きな上に、ライオンの意匠となれば、スコールが食いつかない筈がない。


「買う?」
「……え?」


パッツの言葉に、スコールは目を丸くして振り返った。


「い、いや……」
「格好良いよな、このストラップ」
「あ……」
「これキラキラしてるの良いな」


バッツはゴールドのストラップに手を伸ばして、しげしげと眺める。
値段は普通に売っているストラップに比べると割高だが、映画グッズとしてはこんなものだろう。

眺める程に、ライオンの意匠はしっかりと作り込まれているのが判る。
金属特融の重みを感じないので、アルミか何かを箔や彩色しているのだろうが、材質なんて気にしていたら気楽に買える値段でなくなるのだから仕方がない。
その代わり、意匠が丁寧に細かい所まで作られている事を思えば、チープな映画グッズとしては上等な類だろう。
スコールもそれに関心しつつ、好きなライオン、シルバーとあって、買おうか買うまいか迷っていたに違いない。

スコールは人一倍人目を気にする性格で、他者から自分がどう見られているかと言う事に敏感だ。
幼い頃からそうだったのだが、最近は思春期特有の背伸びや虚栄心も相俟って、一層複雑化している所がある。
好きなものを好きと素直に言えない事や、流行りには興味がなくとも、周りがそれ一色になっていると気になって来るし、かと言って周りに流されるのも良しとは出来ない。
映画グッズのストラップなんて子供っぽい事、と思って、気になるけれど買う事に抵抗を覚えているのも、バッツは簡単に想像できた。

そんなスコールに対して、バッツは余り人目と言うものを気にしない。
自分の欲求を我慢する事も少ないし、自分の気持ちに正直に生きるのが、バッツであった。


「よし、おれこれにしよっと。スコール、ちょっとこれ持っといてくれ」
「あ、ああ…?」
「スコールはやっぱシルバーだよな」
「ああ……!ちょっと待て、あんた、」


スコールにトレイを押し付けるように渡して、バッツはゴールドとシルバーのストラップを手に、レジへと向かう。
慌ててスコールが追いかけて来た時には、ストラップは既にレジカウンターに置かれていた。


「おい、バッツ」
「ん?」
「別に俺は欲しいなんて」
「いらない?」
「…いや……」


真っ直ぐに目を見て問うバッツに、スコールは口籠る。
其処で、いらない、とはっきり言えない所が、素直だよな、とバッツはくすりと笑った。

それぞれ袋詰めされるストラップの中身が、どちらがどちらのものであるかを忘れないように注意して、支払いを済ませる。
バッツは手渡された袋の一つを上着の胸ポケットに入れて、もう一つをスコールに差し出した。
スコールの手に預けていたトレイを片手で受け取ると、スコールは空になった手で、おずおずとストラップ入りの袋を受け取る。


「……」
「多分そっちがシルバーの方だよ。間違ってたら後で交換しよう」
「……」


スコールはじっと袋を見詰めて、良いんだろうか、と言う表情を浮かべている。
バッツはそれに気付いていたが、構わずにっかりと笑った。
それを見て、突き返した所でバッツが受け取らない事を悟ったのだろう、スコールは小さな声で「……ありがとう」と言って、袋を鞄の中に入れた。

時計を見ると上映十分前となっており、入場が始まっていた。
バッツはスコールにチケットの一枚を渡し、受付へと向かう。
切られたチケットの版権をトレイの上に置いたまま、バッツは指定のスクリーンへと進んで行った。

やはり流行りの新作映画とあってか、一番大きなホールのスクリーンを使うらしい。
バッツ達の他にも続々と客が集まっており、並んだ椅子の前列はあっと言う間に埋まって行った。


「何処にする?」
「……ゆっくり出来る所が良い」
「んじゃ真ん中辺りに行こっか」


近過ぎると画面の全体が見えないし、後ろ過ぎれば人影が視界にチラつく。
画面全域が無理なく見える位置が良いな、と思ったバッツだったが、考える事は他の皆も同じようだ。
前列と同じく、中央部分もさっさと埋まってしまい、バッツは真ん中列から少し後ろに座る事にした。
スコールは選択は完全にバッツに委ねているようで、何も言わずに後をついていき、バッツの隣に腰を下ろす。


「ほい。これ、スコールのコーヒーな」
「……ん」
「ミルクも貰って来た」
「…ああ」


スコールはコーヒーを好んで飲むが、其処にはやや大人への背伸びがある。
人前で飲む時にはブラックを飲んでいるが、その実、まだコーヒーの苦味を苦手としている所があった。
それを知っているのは、彼の家族の他には、バッツのみである。

バッツがポップコーンを齧る傍ら、スコールはプラスチックカップの蓋を開けて、フレッシュミルクを流し入れた。
蓋を閉じて軽く揺らして撹拌し、ストローから一口飲む。
好みの味になったのか、ほっと息を吐くのが聞こえた。

客入りの時間が終わるまでは、まだ僅かながら時間がある。
パンフレットでも買っとけば良かったかな、と考えるバッツの傍らで、スコールが鞄を開けていた。
ちらりとバッツが其方を見遣れば、ストラップの入った袋を見詰めている。
控えた光量の間接照明の下、本人の自覚以上にお喋りな蒼灰色の瞳が、嬉しそうに輝いている。


(可愛いよなあ)


大人びた顔をしていても、落ち着いた表情を作っていても、彼はまだ17歳の少年だ。
見た目とのギャップもあってか、折々に見られる年齢相応の表情や仕草が、幼さを助長させる。

スコールがこのストラップを使ってくれるのかについて、バッツは余り期待していない。
中々凝ったストラップではあるが、スコールがこの手のものを使う所を見た事がないのだ。
元々流行り物に興味がある性格でもないし、可惜に持っていても煩わしく感じるらしく、好んで買ったアクセサリー以外をに身に着ける事はない。

けれども、身に着けないからと言って、直ぐに捨ててしまうような事はあるまい。
飽きるまででも良い、その内記憶に埋もれてしまうでも良い、少なくともそれまでは手許に持っていてくれる筈だ。
それでバッツは満足している。

館内に上映を報せるアナウンスが流れ、電気がぽつりぽつりと落ちて行く。
スコールが大事そうに袋を鞄に入れ直すのを横目に見て、バッツは緩む口元を気付かれないように引き締めた。



────後日、スコールのクラスメイトが、彼のスクールバッグに光る銀色の獅子を見付ける事を、バッツは知らない。





『バッツ→スコールなバツスコ』のリクエストを頂きました。

バッツ→スコールで、実はスコールの方もバッツが好きで、両片思い。
ジタンとかティーダとかから、早く言えば良いのにって言われてる。
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[レオスコ]熱を伝えて

  • 2017/08/08 20:30
  • カテゴリー:FF


演技力には対して自信はないけれど、電話越しなら多少は相手も騙されてくれる。
普段は真面目に仕事をしていた事も功を奏して、ゆっくりと休んでくれと言われて、ほっとした。
ついでに溜まっている有給も消費しろと言われたので、遠慮なく使わせて貰う事にする。
元々、こんな時の為に使わずに残していたようなものだから、気兼ねする必要もない。

携帯電話の通話を切って、ズボンのポケットに押し込みながら、火にかけていた小さな土鍋の蓋を開ける。
ほこほこと温かな湯気が立ち上るのを確かめて、レオンはコンロの火を消した。
水分を多く含んで柔らかくなった白米の真ん中に、赤い梅干しが一つ。
味見をしてみると、梅干しの仄かな塩気の他は、米の控え目な味が残るのみ。
今の所はこれくらいで良いだろうと、トレイに鍋敷きを敷いて、その上に土鍋と匙を置いた。

トレイを持ってキッチンを出て、リビングを通り過ぎる。
寝室のドアを背中で開けれると、一つだけ置かれたベッドの上で、蹲っている少年がいる。


「スコール、粥が出来たぞ」
「……ん……」


もぞ、と少年が身動ぎして、被っていた布団の端を持ち挙げる。
頬を赤らめ、心持ちぼんやりとした蒼灰色が、レオンを見付けた。

ゆっくりと起き上がる少年────スコールは見るからに体が重そうだった。
それも無理のない話である。
彼は昨夜から熱を出し、深夜にはピークを迎えて、眠っている事も難しい程の高熱に魘されていた。
レオンの夜通しの看病の甲斐あって、明け方から熱は下がり始めたが、それでもまだ38度と言う熱に苛まれている。

レオンはサイドボードにトレイを置いて、起き上がったスコールが楽に座っていられるように、枕をベッドヘッドに立てかけた。
柔かな背凭れにスコールが体重を預けて、汗の滲んだ額を拭う。


「大丈夫か?」
「……なんとか。夜より大分楽になったから…」
「良かった。飯は食えそうか?」
「……多分」
「無理に全部は食べなくても良いからな」


昨夜の意識朦朧としたスコールの姿を思い出し、きちんと会話が出来る位に意識が明瞭としている弟の姿に安堵しつつ、レオンは土鍋の蓋を開ける。
まだまだ熱の残る粥と梅干しを、匙を使って軽く解す。
一口分を掬い取って、ふー、ふー、と息を吹きかけて軽く冷ましてから、レオンは粥をスコールへと差し出した。


「ほら、スコール」
「え……」


レオンが差し出したのは、匙の柄ではなく、先の方。
つまり、口を開けろとレオンは言っているのだと悟って、スコールの顔が赤くなった。


「い、良い。自分で食べるから」
「そう言うな。こんな時にしか甘やかしてやれないんだ。付き合ってくれ」


世話を焼きたいんだと言うレオンに、スコールは赤い顔を俯けた。
蒼の瞳が恥ずかしそうに右往左往した後、見詰める兄の視線に耐え切れなくなって、そろそろと口を開ける。

小さな口が開いたのを見て、レオンは其処に匙を運んだ。
はく、と匙の先をスコールが咥えたのを確認してから、レオンは匙を引く。
温かく柔らかい米は、顎をそれ程動かさずともほろほろと形が崩していき、とろみと一緒に飲み込む事が出来た。


「美味いか?」
「……ん…多分……」


レオンが作ってくれたのだから、美味くない訳がない、とスコールは思うのだが、どうにも味覚の働きが鈍い。
スコールのそんな様子にも気付いて、レオンは眉尻を下げ、くしゃくしゃとスコールの頭を撫でた。

二口目もレオンが掬い、冷ましてから、スコールに差し出す。
スコールは雛鳥になったような気分で、粥を食べていた。

レオンが作った粥は、いつも食が細いスコールの為に、一般的な一人前よりもずっと少なく作っていたのだが、それでも半分程度が残った。
折角作ってくれたのに、とスコールは思うが、余り食欲が湧かないのも事実。
食べれただけでも十分だ、と言ってくれるレオンの言葉に甘えて、スコールの朝食は終わった。
買い置きしていた風邪薬も飲んで、汗で失われた水分を取り戻す為、白湯をもう一杯飲んでおく。

レオンは中身の残った鍋に蓋をして、トレイを持って立ち上がりながら言った。


「夜の間に随分と汗を掻いただろう。身体を拭いて着替えた方が良いな」
「……ん」
「蒸しタオルと着替えを取ってくるから、少し待っていろ」


レオンの言葉に頷いて、待つ間にスコールは体の熱を逃がさないよう、布団に潜り込んだ。

レオンは残った粥を土鍋から茶碗に移し、ラップをかけて冷蔵庫に入れた。
洗い物は手早く済ませて、洗面所から持ち出したタオルをポットの湯に浸してしっかりと絞る。
着替えにするシャツも、リビングのクローゼットから探し出して、寝室へと戻った。

腹が膨れて眠気が来たのか、スコールは布団の中でうとうとと舟をこいでいた。
無防備な姿に、寝かせてやりたい気持ちはあるが、昨夜から続いた高熱で、夜通し汗を掻き続けていた事を思うと、清潔を保つ為にも、着替えは済ませておかなければならない。


「スコール、着替えよう。もう少しだけ起きていられるか」
「んぅ……」


スコールは眉根を寄せて、むずがる様に布団を手繰り寄せて隠れようとする。
昨晩は決して安眠できた状態ではなく、苦しむばかりの一夜となった為、落ち着いた今になって改めて眠いのだろう。
早く休ませてやりたい気持ちを堪えつつ、レオンはスコールの身体を抱き起した。


「レオン…ねむい……」
「ああ。だから、着替えが終わるまでの辛抱だ」


終わったらゆっくり寝ていいから、と言うレオンに、スコールは拗ねた唇を見せつつ、小さく頷く。

万歳、とレオンが促すと、スコールは素直に両手を上にあげた。
幼い頃を彷彿とさせる仕草に笑みを零しつつ、レオンはシャツを持ち上げて、すぽんと脱がせてやる。
脱がせた服を畳むのは後回しにして、レオンは蒸しタオルでスコールの身体をゆっくりと拭き始めた。
服の中で籠っていた空気や、汗のベタつきがなくなり、すっきりとした感覚に洗われて行くのを感じながら、スコールは消えない眠気の中で、ゆらゆらと頭を揺らしている。

レオンはスコールの正面から抱き寄せて、自分へと寄り掛からせた。
体重を預けるスコールを受け止めたまま、スコールの背中を拭いていると、スコールが甘えるように肩口に頬を摺り寄せたのが判った。


「ん……」
「気持ち良いか?」
「……うん…」


力の入らない手が、レオンの服の端を握る。
ちょっと弱っているな、と甘える仕草を隠さないスコールに、レオンは眦を緩めた。

身体を拭き終わり、冷えない内にと着替えのシャツを広げるレオンに、スコールが小さな声で尋ねる。


「…そう言えば、レオン。仕事は……」
「ああ。休みにさせて貰った」


さらりと言ったレオンに、スコールは目を丸くして顔を上げる。
それから、気まずそうに俯いて、


「あの……俺、もう平気だから、今からでも……」
「そんなにフラフラしているのに、平気な訳がないだろう?」
「だ、大丈夫だ……後は寝てれば、その内治る……」


寄り掛からせていた身体を離し、平気だと言うスコール。
しかし、レオンはその体をもう一度抱き寄せて、まだ熱の残る細い体を慰めるように撫でる。


「良いんだ、俺が勝手に休んでるんだからな。今から仕事に言った所で、どうせ手につかないし」
「……」
「お前の傍にいたいんだよ。こんな時でもないと、一日中一緒にいるって事も出来ないからな」


平日はレオンは仕事、スコールは学校がある。
レオンが仕事を終えて帰った時には、スコールは明日に備えて眠っている事も多かった。
レオンはあまり家に仕事を持ち帰らないから、土日になれば少しは時間の空きも作れるが、それも毎回と言う訳ではない。
誰かの手伝い、或いは尻拭いで折角の休日を返上する事も少なくないし、スコールもスコールで、誰かと遊ぶ約束をしていたり、食事の準備に買い物に行ったりと、暇とは言い切れない日々である。

だから、こうして朝から家で一緒に過ごせると言うのは、滅多にない事だった。
それを思うと、体調不良でレオンの手を煩わせている後ろめたさの傍ら、兄が傍にいてくれる事を嬉しく思うのも確かであった。

赤くなるスコールの胸中を察しつつ、レオンは広げたシャツを彼に着せて、


「ほら、ズボンを脱いで。下着も替えてしまおう」
「ちょ……ま、待て。自分で脱ぐから……うあっ」


レオンの手がズボンの端を引っ張って、スコールは慌てて前を掴んで抵抗する。
が、レオンの方が一枚上手で、ゴム紐のズボンはあっさり脱げ落ちてしまった。


「レオン!」
「怒るな。判った、向こうを向いててやるから」


真っ赤になって声を荒げるスコールに、レオンは降参と両手を挙げて離れる。
背中を向ける兄を睨みつつ、スコールは上がった体温の所為でくらくらとする頭を叱咤して、自分の手で下着を履きかえた。

脱いだ服をレオンが洗面所へと持って行き、洗濯機の中に入れて、スイッチを押す。
洗濯機を回したまま、レオンはまた寝室へと戻って、ベッドの端に腰を下ろした。
きしりと小さく軋んだベッドの上で、スコールは枕元に座っている兄を見上げる。


「……仕事、本当に大丈夫なのか?」
「ああ。有給も溜まっていたしな。問題ない」
「……そうか」
「だから、今日はずっと一緒にいられる」


そう言ったレオンは、双眸を柔らかく細め、嬉しそうだった。
新しく汗が滲み始めた額を撫でる手は、スコールの体温が上がっている所為だろう、少しひんやりと冷たく感じられる。
その掌の感触が心地良くて、スコールは心臓の鼓動が落ち着いていくのが判った。

食事も終わり、薬も飲んで、着替えも済んだ。
病人であるスコールがやる事を済ませると、また体は休息を求めて、睡魔がやって来る。
意識がうつらうつらとし始めるのを感じて、スコールは目を擦った。
と、擦る手がやんわりと捕まえられて、視線を上げれば、自分と同じチョコレートブラウンの髪が頬をくすぐる。
唇に柔らかいものが触れたのを感じ、スコールは眉を潜めて、目の前の男を見詰め、


「……伝染る……」
「構わない」


伝染ったら、今度はお前に看病して貰うから。
そう言ってもう一度重なる唇に、それならもう一日一緒にいられるかな、とスコールは思った。





『サラリーマンレオン×学生スコールで、風邪ひきスコールを看病するレオン』のリクエストを頂きました。

スコールが体調不良になったら、迷わず仕事を休んで看病するのがうちのレオン。
どうせ仕事に行っても、気になって仕方がないんだろうな。
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[サイスコ]一方通行不可

  • 2017/08/08 20:25
  • カテゴリー:FF


好き、と言う感情が、よく判らない。

誰かを好きと思う事と、犬や猫を好きと思う事の違いは、なんとなく判る。
判るが、それを理性的に理屈で説明しろと言われると、非常に面倒臭い事になる。
それでもカテゴリで区別すれば全く違う箱に入れられるのは、判る。

判るが、判らない。
スコールにとって、誰かを“好き”と思う事は、そう言う事だった。

何かと強く繋がりを持つことで、その対象に傾倒し依存して行く事を、スコールは良しとしない。
他者がそうであるならば、自分に火の粉さえかからなければ好きにすれば良いと思うが、自分自身がそうした傾向を持つ事を、彼は決して許す事が出来なかった。
それは、埋もれてしまった記憶の中で、幼い時分に自分が姉に対して強く依存していた事と、それでいて彼女を失った事によるショックが大きかった所為に他ならない。
自分が泣き虫で何も出来ないから、姉は自分の事が嫌いになっていなくなったのだと、だから弱い自分から脱却する為にも、“自分一人の力で生きて行ける”───“何者にも頼る必要のない強い自分”を求めた。
だから、誰かに依存する事を少なからず含む、他者を“好き”と思う感情を、彼は自身の中に有する許容を持つことが出来なかったのだ。
その内に年齢を重ね、記憶は埋もれ、感情のみが残り、そこから枝を生やした極端な排他意識ばかりが値を増やして行いき、今に至る。

だと言うのに、突然、好きだったんだと言われても、困るのだ。
それを終生のライバルである筈の男から言われたら、尚更。

その言葉を聞いて以来、スコールはサイファーから逃げている。
彼を避ける事は、挑まれた勝負から逃げているようで業腹であったが、逢う度に何処か熱の籠った瞳で見られているような気がして、どうすれば良いのか判らず、踵を返してしまう。
その都度、逃げるな、と声を大きくされて、逃げるんじゃない、忙しいんだと言い返した。
実際スコールが忙しいのも確かであり、サイファーばかりを相手にしていられない事も事実。
だが、いつまでもそんな言い訳が通じる相手ではない事は、判っていた。

サイファーは短気に見えて存外と気が長い所がある。
他者の都合によって自分が待たされるのは嫌いだが、待つと決めれば腰を据える事が出来た。
今回は、スコールが自分を避ける原因に、自分の行動がある事は判っていたのだろう。
そしてスコールが混乱して逃げ回る事も、概ね予想していたに違いない。
だからスコールが向き合う事を避け、忙しさに感けて自分を無視する事も、当面は許容していたのだ───当面は。

しかし、そろそろ限界が来たのだろう。
魔女戦争後、指揮官用の執務室として誂えられた部屋の隅で、サイファーはスコールを追い詰めていた。


「そろそろ返事聞かせてくれても良いんじゃねえか?」
「……任務に関する質問なら、さっき答えただろ」


そうじゃねえよ、とサイファーは眉間の皺を深くして言った。
だろうな、とスコールは胸中で返す。

スコールは、壁とサイファーの躯に挟まれ、身動きが出来なくなっていた。
体を押し退けようとした腕は、その前に両手首とも捕まえられてしまい、壁に縫い付けられている。
腹を蹴ってみたが、びくともしなかったのが実に腹立たしい。
純粋な力勝負となると、この男に適わない事実も、また悔しかった。
力にアルテマをジャンクションしようか、と少々物騒な事を考える。

傍目に見て、この状況はどういう理由の末に成り立った物に見えるのだろう。
指揮官を壁際に追い詰め、拘束している、指揮官補佐代理。
その指揮官補佐代理は、魔女戦争の折にはスコールと繰り返し対決しており、命を削り合った相手である。
幼馴染の面々から見れば、それはそれで今は今、と言う認識であるのだが、サイファーの事をよく知らない───傍若無人の風紀委員であるとか、魔女の尖兵であるとか───者から見れば、非常に不穏な光景に見えるに違いない。
其処から妙な噂話でも立てられたら、折角シドやイデアが苦心してもぎ取った“更生期間”が無駄になってしまう。

その辺りの事は判っているのだろうな、とスコールが無言で睨んでいると、サイファーがずいっと顔を近付けて来た。
鼻先が触れそうな程の距離に、スコールは思わず頭を後ろへ持って行くが、直ぐに壁に当たって行き止まる。


「おい、近い。暑苦しい」
「ご挨拶だな。こうでもしないと、お前、こっち見ねえだろ」
「…こんな事してまで、あんたを見なきゃいけない理由がない」
「ない事ねえだろ」


判っているだろう、と翡翠の瞳が言外に告げている。
それを読み取ってしまう自分が面倒で、スコールは知らない振りをした。

視線を執務机の方へ向けて、溜まっている書類を気にしていると、


「おいコラ。無視すんな」
「……」
「キスするぞ」
「は!?」


思いも寄らぬサイファーの言葉に、スコールは思わず大きな声を上げた。
となれば、「聞こえてんじゃねえか」としたり顔をされて、くそ、と反応してしまった自分に毒吐く。
こう言う時は、何もかも聞こえない見えない振りをして流すのが得策だったと言うのに。


「まあ、無視してるつもりなら、それでも良いけどな。キスするから」
「するな!離せ!ふざけるのもいい加減にしろ!」
「ふざけて野郎にキスなんかするかよ」
「嫌がらせにしそうだ、あんたは」
「馬鹿。キスってのはロマンティックなもんなんだぜ。それで嫌がらせなんざ、それこそふざけてんだろ」


至極真面目な顔で、キスの特別性を語るサイファーに、だったら尚更嫌だ、とスコールは思う。

サイファーにとってキスが特別なものなら、それをする相手、したいと思う相手は、当然特別なものになる。
粗暴な見た目や言動に反して、ロマンチストな彼だから、その重要性は一入と言うものだろう。
同時に、サイファーがそれを“したい”と思う相手がどういう意味を持つのかも、判ると言うもの。

スコールは腕に力を入れ、身体を捩って、拘束する手に抵抗を示す。
歯を噛んで鬼気迫る表情を浮かべるスコールを、サイファーは捕まえる手の力は一切緩めないまま、じっと見詰めていた。


「お前な。そんなに嫌か」
「当たり前だ。誰があんたなんかとキスしたいと思うんだ」


剣を向け、命を殺ぎ合い、こいつにだけは負けたくないと思う事はあっても、口付け合いたいなんて思う訳がない。
スコールはきっぱりとそう言ったが、


「だったら、本気で抵抗すりゃ良いだろ」
「してる。あんたがバカ力なだけで────」
「ほーお?」


ずい、とまたサイファーが顔を近付けてくる。
鼻先どころか、唇が触れ合いそうな程の距離で、お互いの呼吸が微かに唇の縁をくすぐった。
スコールは、触れていないと思っているのは自分だけで、実は既に重なっているのではないか、とそんな錯覚を感じる程に距離が近い。

間近に迫った碧眼が、にやにやと楽しそうに笑っているのが判る。
その顔は、勝負をしている時、己の勝ちを確信してスコールを挑発して来る時に見せるものと同じだった。
それを見ると、スコールの内に秘める、対サイファーに過度に反応する負けず嫌いが疼く。


「こんなもんがお前の本気の抵抗か?」
「……何が言いたい?」
「判ってんだろ?」


含みばかりのサイファーの言葉に、スコールの眉間の皺が深くなる。

笑みを孕んでいた男の顔が、ふと消えて、強い意志を宿した瞳が、真っ直ぐにスコールを射抜く。
その瞬間、どくん、と心臓が跳ねたのをスコールは聞いた。


「教師相手みてえに、いい子ぶる必要なんかねえんだ。嫌なら嫌って言えば良い」
「……」
「それも言わねえで、だらだら逃げ回ってんのは、どう言う訳だ?」


指摘する言葉に、スコールはひっそりと奥歯を噛んだ。
蒼灰色の瞳が逸らされ、何もない床を睨むように見詰める。

────サイファーの言う事は最もだ。
相手がリノアやセルフィ、キスティスや、名前を憶えているかどうかも怪しい女子生徒ならいざ知らず、スコールが何某かの答えと、それを適切に表現する事が出来る言葉を探すまで、ずるずると引き伸ばしていても可笑しくない。
仮に相手が教師や目上の人間なら、面倒を嫌い、角を立てない方法を探して、早い内に決着を着けようとするだろう。
こういう事は、変に返事を引き伸ばし、期待を持たせるような期間を作る方が、反って面倒を起こすものなのだから。
しかし今回のスコールの相手はサイファーであり、話を長引かせるような必要もなければ、相手を慮って言葉を探すような期間も必要ない。
何せサイファーなのだから、切って捨てるのは簡単だ。
それでサイファーが激昂するようなら、剣の勝負にでも雪崩れ込んで、実力で黙らせる事だって出来るだろう。
遠慮も気兼ねもいらない相手だと判っているから、スコールが結論を出し、それを口にする事について、こうまで時間を必要とする事はない。

それなのにスコールがいつまでも逃げ回るのみで、明確な答えを避け続けていると言う事は、


「お前も俺に気があるんだろ」
「!?」


スコールの感情を代弁するかのようなサイファーの台詞に、スコールは目を丸くする。
バカな事を、と言いかけた唇に、サイファーのそれがやや強引に重ねられた。

蒼の瞳が零れんばかりに見開かれるのを、サイファーは至近距離で見ていた。
捕まえていた腕が、思い出したように抵抗を示す。
うーうーと唸る声も無視して、サイファーはスコールが静かになるまで、キスを続けた。

段々と酸素不足で抗う力を失うスコールに、サイファーはこっそりと笑みに目を細める。
ゆっくりと唇を開放すれば、はあっ、と不足した酸素を思い切り吸い込みながら、スコールはずるずるとその場に座り込む。


「ほら見ろ」
「……何が…」
「嫌じゃなかったんだろ」
「………」


サイファーの言葉に、スコールはまた眼を逸らす。
触れた感触の消えない唇に手の甲を当てて、スコールはぎりぎりと歯を噛んだ。

噛みつこうと思えば噛みつけた。
振り払おうと思えば出来た。
拘束する腕の力は強かったけれど、ジャンクションをすれば意外と簡単に逃げられたのだと言う事を、スコールはわかっている。

スコールの腕を掴んでいた手が離れ、くしゃくしゃと濃茶色の髪が掻き回すように撫でられる。
蹲って立てた膝に顔を伏せるスコールは、隠しきれない耳まで赤くなっていた。



何が理由で、そんなにも自分の気持ちを否定しようとしていたのかは判らない。
戸惑いと、混乱と、記憶の淵に埋もれた怯える感情と、どれが一番大きかったのかも判らない。
こんな感情が、いつから自分の中にあったのかも、何も。

目の前の男は、いつからこんな感情を抱いていたのだろう。
聞けばあっさり答えてくれそうなのが、自分との対比になるようで、それも酷く悔しい気がした。





『サイスコで好きだと自覚してからお付き合いするまでの話』のリクエストを頂きました。

こいつが好きだなんて認めたくない!って自覚してからひたすら否定の為に逃げ回るスコールが浮かんだ。
最終的に捕まって逃げ場を失くして、否応なく認めさせられる(嫌ではない)。
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[セフィレオ]重ねる、溶ける、零れ落ちる

  • 2017/08/08 20:20
  • カテゴリー:FF
クラレオ前提のセフィレオ。




微かに浮上した意識を、更に上へと押し上げるように、差し込む光。
重い体はまだ睡眠を欲していたが、理性は目覚めなければならないと言う。

結局、理性が勝って、レオンはのろのろと瞼を開けた。
起き上がって散らばった髪を手櫛で掻きながら、閉めたカーテンの隙間を見遣る。
目を開ける前に感じていたよりも、光はそれ程強くはなく、陽光と言うには足りない外光が零れている。
伸ばした腕で一番近い位置にある窓のカーテンを開けると、曇天が空を覆っている。


「……雨か……」


光の弱さの理由を知って、レオンは納得し、興味を失った。
カーテンを摘んでいた手を離せば、腕はぱたりと落ちる。

起き上がった時にシーツが体から剥がれ落ちたので、レオンは裸身を空気に晒していた。
雨で気温が下がっているのだろう、微かに冷えた隙間風がレオンの肌を撫でる。
ふる、と冷気を嫌った躯が震えて、レオンは熱を蓄えられるものを探して寝返りを打った。

────そうして目の前にあった背中を見て、眉根を寄せる。

起き上がって見れば、その背中の向こうに広がっていた情景が見える。
脱ぎ散らかした服が床に散らばっているのを見て、溜息が漏れる。
重い体の理由も、気分にまで及ぶ気怠さも、理由は全て判っている事であったが、それを具現化させたような部屋の有様は、レオンの落ちた気分に更に追い打ちをかけるには十分であった。

部屋の惨状に助長されたように、レオンは服を着るのも面倒になっていた。
裸のまま、レオンは傍の窓にもう一度手を伸ばし、カーテンの隙間から鍵に手をかけた。
カチン、と音を立ててロックが外れ、カラカラと車輪の音を立てて、軋んだ窓が開けられる。


(……激しくはないが……止みそうには、ないな)


空から落ちる雫粒は、大きさこそないものの、復興途中の街全体を余すところなく濡らしている。
この分では、今日は復興作業など出来ないだろう。
街の人々が外を出歩く事も減るので、ハートレスによる被害を防ぐ為のパトロールも、しなくて良い。
それでも何も起こらないとは言い切れないので、寝倒している訳には行かないが、慌てて城に向かう必要がないのも確かであった。

開けた窓の桟に腕を乗せて、その上に頭を乗せる。
風はないので、降る雨が部屋の中に吹き込んでくる事はなかった。

目が覚めたのだから、朝飯を食べなければ。
そう思いながら、レオンは自分が空腹を感じていない事を自覚していた。
昨日の夜はきちんと食べたから、今は食べなくても良いか、とぼんやりと雨雲に覆われた空を見ていると、


「どうした」


背中にかけられた声に、レオンはちらりと瞳を動かしたが、直ぐに視線は空へと帰る。
声の主もレオンの反応を予測していたのか、咎める声はなく、代わりにするりと腰骨を撫でられる。

触れる手を好きにさせていると、きしり、とベッドの軋む音がした。
背中を大きなものに覆われ、腹に回された腕が、閉じ込めるように力を籠める。
さらりと長い銀糸がレオンの肩をくすぐりながら流れ落ちて行った。


「雨か」
「……ああ」
「それなら、今日は急く事もないな」


低く通りの良い声が、レオンの耳元で囁くように紡がれる。
その声に、ねっとりと絡み付くような何かを感じるのは、果たしてレオンの思い過ごしだろうか。

腹を抱いていた腕が、滑らかな肌を撫でるように探る。
耳朶の裏側に吐息が掛かるのを感じて、レオンは頭を振ってそれを嫌った。
すると、肌を撫でていた手が上がって来て、レオンの顎を捕らえて後ろへと振り向かせる。
抵抗が面倒で従ってやれば、よく知る色とは微妙に違う光彩を宿した瞳が間近にあって、呼吸が塞がれた。

初めの頃こそ、何も言わずとも抵抗を感じていた口付けであったが、何度も繰り返されている内に、拒否する事が面倒になった。
そうして受け入れてしまってからは、段々と抵抗感も消えて行き、今では重ねられても何も思う事はない。


「ん……」
「……ふ、」
「んんっ……!」


顎にかけられた指に力が入って、口を開けるように促された。
されるがままに唇を割れば、熱い肉の塊が滑り込んできて、レオンのそれを絡め取る。

昨夜の熱を思い起こさせんとするように、男の舌は執拗にレオンの咥内を舐る。
それを受ける事に抵抗は辞めたが、眉間の皺だけは無意識に寄るようで、レオンの表情は毎回厳しいものになった。
だが、男はそんなレオンの表情すらも愉しむような表情を浮かべて、瞬きすらせずに、嬲られるレオンの顔を至近距離で眺めている。

舌を外へと導き出しながら、口付けから解放されると、レオンははぁっと熱を孕んだ呼気を漏らした。
唾液の落ちる顎を手の甲で拭っている間に、腰を抱かれて強い力で引き寄せられる。
窓に寄り掛かっていた体が離れて、代わりに背後にいる男の胸に体を預けた。


「そう恨めしい顔を向けてくれるな」
「……」
「…また泣かせてやりたくなる」


薄い笑みを浮かべて囁く男の言葉に、レオンははっきりと顔を顰めた。
覗き込んでくる男の顔が腹立たしくて、肩にかかる長い銀糸すら鬱陶しく、レオンは手で払う仕草をして見せた。
先の言葉に対し、お断りだ、と無言で示すレオンに、男はくつくつと笑う。


「そうは言うが、お前の躯は感じ易いからな。昨日もよく泣いたのを覚えているぞ」
「……っ」


厚みのある胸を、節の長い指が這う。
それだけで躯が震えてしまう程、自分が背後の男に侵入されている事を自覚して、レオンの顔に朱が走った。

唇を噛んで悔しげに眉を顰めるレオンに、男は宥めるように赤らんだ頬を撫でて言った。


「お前の所為ではない。その体は一人では持て余すものだからな」
「……そうさせたのは、あんただろう」
「ああ、俺にも責任はある。だが、そもそも、お前にそんな想いをさせたのは────」


其処から先の男の言葉はなかった。
射殺さんばかりに睨む蒼灰色が、それ以上の言葉を禁じている。

銀糸の男は、睨むレオンの表情を見て、益々愉快そうに哂った。
独特の仄昏い光を宿した碧眼は、まるで魂の檻のようで、それに見詰められていると、心の奥底に隠したものが暴かれてしまう気がする。
だからレオンはその目を見るのが嫌いなのだが、よく似た色と長らく向き合っていない事を思うと、どうしても目が離せなくなる瞬間があった。
……それを見抜かれてしまったから、この爛れた関係は始まった。

抱き締める腕を解かせ、レオンは男の腕から抜け出した。
しかし、ベッドを下りようと背を向けた所をまた捕まえられ、シーツの波へと引き倒される。
レオンの体重を受け止めたベッドが抗議の音を上げた後、レオンの上に大きな影が覆い被さった。


「おい」
「なんだ?」
「もうしない」
「飽きたか」
「疲れてるんだ」
「激しくしたからな」


何を、と男は言わなかったが、昨夜の事を指しているのは明らかだ。
お前が泣くから、と囁く男に、レオンは触れたもの───枕を掴んで、目の前の男の顔面に叩き投げてやった。

くつくつと喉を震わせる声がする。
枕を奪われ、ベッドの下へと放り投げられて、レオンの気分はまた下がった。
開かされた足の間に男の躯が割り込めば、レオンは馬乗りになった男から逃げる事も、彼を蹴り飛ばす事も出来ない。


「しないと言ってる」
「どうせする事もないんだろう。あれも来る気配はない」
「……言うなと言った」
「誰とは言っていない」
「言ったようなものだろう」


レオンが何を言っても、目の前の男には暖簾に腕押しであった。
最初からこうなのだ。
レオンが何を思うと、何を考えようと、この男は自分のしたいようにしか行動しない。

だから本当にレオンが今の関係を否定する気があるのであれば、レオンが本気で抵抗する以外に方法はない。
ガンブレードでも魔法でも───この男に通用するのかは甚だ謎だが───使って、殺すつもりの意思でも示さない限り、男はレオンを抱く腕を離そうとはするまい。
レオン自身が、預か一片でも、この歪な温もりを求める心がある限り、二人の関係が終わる事はない。

顎に指が掛かり、見ろ、と無言で命令された。
従うつもりはなかったが、抗うのもやはり面倒で、顔を上げてやれば、唇が重ねられる。
視界の端に見えるのは、ちらちらと光る銀色ばかりで、レオンの世界は銀一色に閉じ込められていた。


(俺は、)
(俺は、いつまで、)


こんな事を続けているのか。
こんな関係を、続けていれば良いのか。

問うてみた所で、レオンが望む答えを返してくれる者は此処にはなく、目の前にいるのは、爪を失った猫を薄笑いを浮かべながら可愛がっている狂人だけ。



……帰って来ないお前が悪い。

もう長く見ていない金糸の翳に、レオンはそれだけを吐き捨てて、目を閉じた。






『セフィレオで寝取られてる感じ』のリクエストを頂きました。
クラレオを前提に。

ぼんやりと諦めの混じったレオンは、投げ槍感と危うい雰囲気がありそうで好き。
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