日々ネタ粒

日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

  • Home
  • Login

日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

エントリー

カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

[ゴルスコ]扉の向こう

  • 2018/04/08 22:00
  • カテゴリー:FF


哀れと言えば、哀れだ。
そう思った後、口にすればあの不機嫌な顔で睨んで来るのだろうと思った。
此処にいるのが“本来の彼”ならば、であるが。

場所はアルティミシア城内にある、美術館のように広いホールの中。
吹き抜けになった一階にある、一際大きな絵画の下に、質の良いソファが据えられており、其処を己の住処であるかのようにしている少年が一人いる。

ゴルベーザの前には、少年───スコールが虚ろな表情で、ソファに座っている。
常に不機嫌な表情を浮かべていた顔には精気もなく、顔が整っている事もあって、人形めいて見えた。
本来なら、務めた無表情の内側で、雄弁な瞳を閃かせていたと言うのに、それも見付からない。

戦っていたのか、それとも何処かで行き倒れていたのか、そんな彼をアルティミシアが拾って来たのは、十日ほど前の事。
まるで捨てられた仔猫を拾って来るような気安さで、アルティミシアは彼を連れ帰った。
どうやらスコールは記憶喪失に陥っているらしく、自分の名前と、己が“魔女の騎士”と呼ばれる役割を自負していた事以外は、何も覚えていないと言う。
無論、此処が神々の闘争の世界である事も、アルティミシアが仇敵である事も、何一つ覚えておらず、精神的にもやや退行している所があるのか、アルティミシアの言葉を擦り込みのように吸収し、彼女の言葉のみを聞いている。

拾われて以来のスコールは、人気のない、物理法則を無視した造りが続く、歯車の音が鳴る城の中で、主以外の者の誰と逢う事もなく過ごしていた。
ガーランドやエクスデスと言った面々の警戒を何処吹く風と気にもせず、彼女は獅子を愛でている。
彼女はお気に入りの少年を外に出す事を厭い、まるで閉じ込めるように、行動範囲を城の中に限定していた。
魔法まで使ってスコールの外への干渉を遮断し、スコールのいる歪に他者が侵入すれば直ぐに感知できるようにトラップまで張り巡らせており、まるでスコールは深窓の姫のような扱いを受けている。

しかし、アルティミシアの作るトラップの殆どは、魔法を組み立てて作られたものだ。
心得のあるものならある程度は解除する事が出来、ゴルベーザも、酷く手の込んだトラップでなければ簡単に外せる。
その程度の事はアルティミシアも判っているだろうに、用心深いのかそうでないのか、いまいち判らない。
クジャにしてみれば、「あの子が自分で出て行かなければ良いと思ってるんじゃないの」と言う所らしい。
確かに魔法で作られたトラップならば、元々魔法の素養の薄いスコールならば解除する事は出来ないだろうし、彼を城の中に閉じ込めるだけなら、十分な効果を発揮するだろう。

しかし、そんな事までして閉じ込める必要があるのかと言われると、ゴルベーザは首を傾げる。
何せスコールは、目の前にゴルベーザがいるにも関わらず、ただぼんやりとソファに座っているだけなのだ。


(此方を見る事もない、か)


ソファに座るスコールは、意識があるのかも危うい表情で、ぼんやりと床を見詰めている。
いつも着ている黒のジャケットを肩に羽織り、トップスに着ているのは白のシャツのみで、広い襟首から覗く肌には、所々小さな鬱血が浮いていた。
ボトムはいつも通りかと思えば、ベルトは外され、足元も素足が見えており、靴の片方はソファの下に入ってしまっている。
スコールはそんな自分を認識していないのか、気にならないのか、服を整えようともしていない。
それだけ、彼の自意識が弱くなっていると言う事なのだろう。

ゴルベーザがゆっくりと近付いて行くと、ガチャリ、ガチャリ、と金属の音が鳴る。
それすら興味がないもののように、スコールは酷く鈍い動作で顔を上げ、ようやく音の発信源を見た。

亡羊とした蒼の瞳がゴルベーザを見上げ、つい、と外される。
其処にいるのがこの城の主でないのなら、どうでも良い、と言わんばかりだ。
どうやら、番犬として此処に留まっている、と言うつもりもないらしい。


(本当に、ただ飼われているだけのようだな)


何をしろと言われている訳でもなく、本人も何かをしようと言う様子もない。
此処まで無気力だと、この少年は、本当に混沌の戦士達が知る“スコール”なのだろうかと疑問に思えてくる。

じっと見詰めるゴルベーザの前で、スコールがすう、と息を吸う。
それから、細く長く息を吐いた。
溜息と言うよりも、体に溜まった緊張を意識的に抜こうとしているように見える。

ぐら、とスコールの体が傾いて、ソファに横倒しになった。
糸の切れた糸繰人形のような倒れ方に、それまで殆ど微動だにしていなかった事もあり、ゴルベーザは兜の奥で一瞬目を瞠る。


「おい────」
「………」


思わずソファの傍らに立って声をかける。
と、スコールの瞼が微かに持ち上がって、ちらり、と蒼が此方を見た。
煩い、と言わんばかりの表情を浮かべた後、スコールはついと視線を外して、目を閉じる。

スコールは、疲れ切っていた。
体を動かす事は愚か、起き上がる事も面倒であるかのように過ごしている。
うつらうつらとしているようにも見えるので、放って置けばこのまま眠り落ちてしまいそうだった────が、


「………」


ぽそ、と小さな声がスコールの唇から零れる。
誰に聞かせる訳でもない音量に、恐らく独り言だろうとゴルベーザは悟りつつ、


(───『退屈』、か)


彼の呟いた言葉を、ゴルベーザは正確に聞き取っていた。

退屈だ、とスコールは言った。
何をするでもなく、恐らく自ら行動を起こす気力もないのだろうが、それでも心まで全く停滞していると言う訳ではないらしい。
主のいない白の中で、何処に行く事もなく、ただ無為な時間を浪費するだけである状態は、ゆっくりとだが確かに動いている彼の心に、明らかな退屈感を齎している。

じっと見下ろしているゴルベーザを、何度目になるか、蒼い瞳が見上げる。
物言いたげな瞳のそれが、音に発せられるまでには、短くはない時間を要した。


「……アルティミシアは、まだ帰って来ないのか」
「さてな」
「いつ帰って来る?」
「あれの事ならば、お前の方がよく知っているだろう。私は、何も聞いてはいない」


元々が個人行動の連中ばかりの混沌の戦士に、仲間同志で予定を確認し合うような習慣はない。
牙城にいないアルティミシアが、何処にいて何をして、いつ帰って来るかなど、ゴルベーザには知り様もない話であった。

それをきっぱりと告げてやれば、スコールの眉間の皺が深くなる。


「……退屈だ」


呟くスコールの瞳には、判り易く不満の色が滲んでいる。
しかし、それを取り除く為に自らが行動を起こす気はないのか、細い体はソファに横たわったまま、動こうとしない。


「…退屈ならば、外に出てみてはどうだ」
「……アルティミシアが、勝手に外に出るなと言った」
「それを良しとしているならば、退屈も仕様のない事だな」
「………」


アルティミシアの言いつけを守るのであれば、スコールの退屈感はどうしようもない事だ。
ゴルベーザのその言葉に、スコールの唇が心なしか尖り、表情が幼くなる。


(感情が皆無と言う訳ではないか)


眠っているのか起きているのか、判らなかったような先刻と違い、スコールの表情には露骨な感情が滲んでいる。
それは拗ねた子供のようなものだったが、無感動よりは見ていて心地が良いとゴルベーザは思った。

スコールはのそ、と起き上がって、ホールと廊下を繋ぐ扉を見た。
同じような出入口は、一階にも二階にも存在する。
が、スコールはそれをしばらく見詰めた後、興味を失ったようについと視線を逸らし、


「……どうせ出れない」


そう呟いて、またスコールはソファに倒れた。

出れない、と言うスコールに、そうだろうな、とゴルベーザは口に出さずに呟く。
城中に張り巡らされた魔法のトラップは、スコールを閉じ込める為の結界だ。
脱出する方法と言うものは、きっと既に自分で何度も試し、その末に無為な行為であると悟り、諦念で過ごすようになったのだろう。

自分の力で出れないから、アルティミシアが帰って来て、結界を解くのを待つしかない。
スコールはそう言っているようだったが、しかし魔女が帰ってきた所で、この少年が外の世界へ出る事が出来るのかと言われると、否である。
アルティミシアはスコールを外に出す事を厭い、徹底的に避け、この歯車の城の中に閉じ込め続けているのだから。
そして自分が帰って来た時に、スコールを己の思うように可愛がり、逃げる事は愚か、拒否する事すら考える事が出来ない少年を、歪み調律して行くのだ。

ゴルベーザの脳裏に、嘗て獣の如く研ぎ澄まされた蒼の眼光が蘇る。
それは目の前にあるものと全く同じ色をしている筈なのに、灯る光の強さが違うだけで、まるで別人のように見えた。


(哀れだな)


この部屋に来て、初めにスコールを見た時にも思った事が、するりと再度心に落ちた。

誰に従う事を良しとせず、己が貫く孤高の道を歩こうとしていた、一人の傭兵。
頑なに引き結ばれた唇の裏側で、様々な感情を飲み込み、前へ進む一歩を死に物狂いで踏んでいた。
一歩、あと一歩、怯めば遅れるその一歩を誰よりも早く踏み出そうと、握った剣を振り被って先陣を切った風は、今は淀んだ空気の中に落ちて、自らの足で地面を踏んで歩き出す事も忘れている。
忘れるように、魔女が仕込んでいるのだろう。

このまま魔女の造った籠の中にいれば、スコールは遠からず、外への興味も解けて消えて行くのだろう。
「魔女に捕まった子供は、いつか食べられてしまうんだ」と言ったクジャの言葉は、決して比喩には留まるまい。
アルティミシアもそのつもりだからこそ、スコールをこの狭い世界へ閉じ込めているのだから。

────だが、スコールはまだ、外への興味を失くしてはいない。
開かない扉を見詰めた彼の瞳には、その向こうへと繋がる世界への、羨望に似た感情が交じっていた。


「退屈を厭と言うのなら、外へ出ると良い」
「……あんた、話聞いてなかったのか」


ゴルベーザの言葉に、スコールは胡乱な目を寄越して行った。
出られないって言っただろう、とスコールは言ったが、


「確かに、今のお前一人では、外に出る事は出来ないだろう」
「だったら────」
「だが、扉ならば開けてやる」
「……?」


遮って続けられたゴルベーザの言葉に、スコールはことん、と首を傾げた。
どう言う事だ、と見上げる幼い瞳に、ゴルベーザは曲げていた膝をゆっくりと伸ばして、立ち上がる。

重苦しい鎧を身にまとった男に高い位置から見下ろされ、スコールはようやく、見下ろされる威圧感と言うものを感じていた。
のろのろと起き上がって、それだけでも酷く疲れる作業であったが、なんとか背凭れに伸ばした背中を預けるまで体を起こす事が出来た。
ふう、とため息交じりの息を吐いてゴルベーザを見上げると、兜の下から覗く眸のような単眼の光が、微かに笑ったように見え、また首を傾げる。

首を右へ左へと揺らすスコールを気に留めず、ゴルベーザはマントを翻した。
カシャン、カシャン、と具足の足音を立てながら、最寄りの扉へと近付く。

扉には鍵穴はなかったが、魔法で鍵がかけられていた。
腕を伸ばして扉の表面に触れると、ちりちりとした熱が手甲の掌を焼こうとする。
これでは、元より魔法に対して強い抵抗力を持たず、身を護る為のグローブも取り上げられた今のスコールでは、押し開ける為に扉に触れる事すら儘ならない。

扉も壁もまとめて吹き飛ばすのは簡単だった。
が、其処まで大仰な事をする必要もない、とゴルベーザは扉にかかった魔法のみに干渉し、解除する。
パキン、と小さくガラスが割れるような音がしたのが、解除の合図だった。


「これで開く」
「……」


ゴルベーザがそう呟くと、少年が小さく息を飲んだのが聞こえた。

そのまま、五分か、十分か、将又三十秒かと言う時間が流れて行く。
動かない少年をゴルベーザが肩越しに見遣れば、じっとりと汗を滲ませたスコールがいる。
まるで、悪い事をしようとして、親に叱られる事を考えている子供のような表情だった。


「行かないのか」
「……」
「アルティミシアが戻れば、此処はまた閉ざされる」
「……」
「それで良いと言うのであれば、それも良い」


ゴルベーザに、スコールに何かを強制する権利はない。
同時にそんな権利は、アルティミシアも持ち得てはいないのだ。
例え記憶を失ったスコールを、最初に拾い連れ帰ったのが彼女であるとしても。

ソファの上に乗っていた細い足が、ひたり、と冷たい床を踏んだ。
裸足の足音はぺたぺたと頼りなく、まるで小さな子供が歩いているようで、薄暗い荘厳を滲ませる城の景色とは随分と不釣り合いだった。

スコールは、ゴルベーザの傍らまで来ると、扉を前にして立ち止まった。
無気力、無関心ばかりであった蒼の瞳がゆらゆらと揺れ、彷徨い、迷いを露わにしている。
本当に良いのか、と言いたげにスコールの目がゴルベーザを見上げたが、ゴルベーザは何も言わなかった。
背を押すような言葉も、此処に来て押し留めるような事もせず、ただじっと見下ろすのみ。



恐々と伸びた手が、扉を押した。
キイ、と蝶番の音が鳴って、扉に隙間が生まれた瞬間、スコールは零れんばかりに目を見開いた。




城の外へと続く道を、スコールは知っているらしい。
ひたひたと歩く背中を、ゴルベーザは何も言わずに追い歩く。

────魔女が抱く執着と言うものは、得てして恐ろしいものだ。
魔女の気に入った玩具を他人が悪戯をして、どんな怒りに触れるか判ったものではない。
それでも、外へ出た瞬間、蒼の瞳が何を映すのかを見てみたいと思った。






ゴルベーザ×スコールだと言い張る。
このスコールは記憶喪失からの刷り込みですが、ほぼほぼ洗脳みたいなものか。
DFFのゴルベーザは4ED後なので、スコールが秩序側だという事も含めて、このまま放って置く事はしないと良いなあと妄想。

「アルティミシアに拾われて飼い殺しにされている記憶喪失のスコールを他の混沌の戦士が連れ去る」と言う流れが超個人的に楽しい。
  • この記事のURL

[雲スコ]それは掴み処もなく

  • 2018/03/08 21:23
  • カテゴリー:FF


浮遊大陸と言う場所を模した歪の中で、暗闇の雲と遭遇した。

混沌の戦士の多くは、姦計に飛んでいるか、思考が常人とは大きく離れているかのどちらかである事が多い。
ゴルベーザやジェクトはそれらともまた違うが、ともかく、そう言う者が多いのだ。
暗闇の雲はと言うと、恐らく一計を案じようと思えば出来るのだろうし、気儘に破壊を愉しむ事も出来るのだろう。
過去の戦いではケフカと共に行動し、彼の奔放振りを傍にしながらも、自身は己の目的を遂行するのみに動いていた。
しかしその目的と言うものが、他者には到底予想のつかないものであった事や、その目的すらも時にはついと後回しにしてしまうような自由振りもあり、ケフカとは別の意味で思考の読めない人物として周囲に認識されている。
その事すら本人はどうでも良いようで、その場その場で己の目的を優先し、その為ならば相手が秩序の戦士だろうと、混沌の戦士であろうと、問わずに攻撃する。
かと思えば、一時の共闘のような流れにも彼女自身は厭う理由はないらしい。

そう言う者を相手にする事を、スコールは苦手としている。
バッツのような自由奔放振りですら、スコールにとっては手を焼くのだから、思考の読めない敵の相手など、尚更厄介としか思えない。
ケフカが使う軌道の読めない魔法と同じで、いつ何処から襲い掛かって来るか判らない。
スコールが培った戦場の理論、理屈と言ったものを、根本から無視するような敵は、いつ爆発するか判らない爆弾のようなものだった。

だからスコールは、出来るだけ相手に攻撃の手を与えないよう、接近して戦った。
人間や魔物とは違う、妖魔と呼ばれる性質を持つ暗闇の雲は、強力な破壊魔法を得意とする。
アルティミシアや皇帝とは違い、複雑な構成を持った魔法ではなく、その多くが単純に膨大な量の魔力に圧力をかけて放出、と言う形で言えばシンプルなタイプの攻撃方法なのだが、これが恐ろしく厄介だ。
例えるなら、超大量の水を圧力を与えながら一気にぶつけて来る訳だから、一発でも喰らうと大ダメージを貰う羽目になる。
一応、魔力と言う性質もあってか、シェルやリフレクによる防御は可能だが、それでも相当な圧に襲われるそうだ。
魔法障壁による防御と言う手段を持たないスコールとしては、彼女と戦う際には、この攻撃を喰らわない事が大前提となる。
扱うものが多量の魔力である為、彼女が力を放つには、少なからず準備時間が必要だ。
その間に、スコールは相手を仕留めなければならないのだが────


「────っ!」


背後を取って、その背中に刃を振り下ろそうとした瞬間、スコールの顔面に向かって牙が迫る。
咄嗟に腕を盾に顔を庇うと、がぶりと牙が突き立てられたのが判った。
痛みに眉根を寄せながら、スコールはグリップを握る片手を離す。
残った腕でガンブレードを横に払い、腕に噛み付いているものから伸びている、細い管を切った。

右足で暗闇の雲の背中を蹴って、スコールは一足に距離を取った。
が、飛んだ先にあった岩に着地すると、バウンドするように空中へと飛び出す。
スコールが蹴った岩が闇色の光線に飲み込まれ、闇が消えると後は抉られた大地だけが残った。

土色が剥き出しになった地面に着地し、乱れそうになる息を押し殺して、前へと走る。
距離を取ろうとしている妖魔に肉薄すると、彼女を護衛するかのように、彼女の体から生えた蛇が噛み付いて来た。
肩に食い込む牙に構わず、スコールは暗闇の雲の首を狙ってガンブレードを振り被った。

真っ黒な闇が、スコールの体を飲み込んだ。
しまった、と歯を噛む暇もなく、細身の体は強い衝撃と共に吹き飛ばされ、─────ザブン!!と水飛沫を上げ、川の底へと沈んだ。


(くそ……っ!)


距離を詰める事を意識し過ぎて、相手が溜めた魔力の残滓を読めていなかった。
競り負けた理由をそう判じながら、スコールは水の中で苦い表情を浮かべる。

再接近の前、スコールが避けた波動砲は、暗闇の雲が最大まで貯めた魔力の一部。
あれが最大出力で放たれたのであれば、次の攻撃までに時間があったと見れるが、彼女は力を残していた。
スコールが再接近した時に放たれたものが、残していた魔力のものだろう。
お陰で間近で彼女の強力な魔法を丸ごと食らう事はなかったが、それでも体に残るダメージは軽いものではない。

スコールは水の底に這うように掴って、浮かぶタイミングを伺っていた。
酸素の碌な確保がない状態で沈んだ為、出来れば早く浮上したいが、そんな事をすれば的になるだけだ。


(少し移動しよう。浅い所は見付かるから、深さのある場所に……)


出来るだけ水面に波が浮かばないように、スコールはゆっくりと、川底を這うように進んだ。
波動砲を食らった体の前面と、触手に噛み付かれた肩が痛む。
ちらりと肩を見ると、ジャケットの穴から細く赤い筋が浮き、水の中に溶けて行くのが見えた。
僅かな量ではあったが、匂いでも悟られれば厄介だと、スコールは血を流す肩を片手で押さえる。

切り立った崖の下になる場所で、スコールはじっと時間の経過を待つ。
崖は上に行くに従って外へと飛び出すように伸びているので、崖の上から直接川面を覗き込むと、足元を見る事が出来ない。
此処なら、いきなり頭上から魔法を落とされる事もない───筈だ。


(でも……いつまでこうしてる?ティーダじゃないんだ。そんなに長くは持たない……っ)


水の中で、十分も二十分も息を止めていられるティーダなら、幾らでも待っていられるだろう。
しかしスコールにそんな芸当は出来ないし、酸素の確保も不十分なので、今から一分と保てるかも怪しかった。
出来れば直ぐに顔を出して呼吸がしたい位に、肺は限界を訴えている。

途端にスコールは、ぞくん、としたものを背筋に感じた。
反射反応で水中を蹴って、揚力だけで水の向こうにある壁へと辿り着き、水面に顔を出す。


「───っはぁ!はっ、はっ…!げほっ……!」


最後の行動が、スコールの体の限界だった。
水の中から顔を出したスコールは、目の前の川岸に縋るように掴って、咳込みながら新鮮な空気を取り込もうとする。
その背後に、すぅー……と音もなく近付く影があった。


「なんだ、生きているではないか。殺してしまったかと思ったぞ」
「…っは……く……!」


呼吸の乱れも納まらないまま、スコールが背後を睨めば、暗闇の雲が川面の上に浮いていた。
見下ろす赤い瞳は、きっとスコールが最後の移動をする直前から、追って来ていたに違いない。

直ぐに体勢を整えなければ、とスコールはガンブレードを握るが、川に沈んだ体は岸上まで持ち上がらない。
少しでも力を入れようとすると、喉の奥から要らない空気が押し出されて、噎せ返ってしまう。
水も冷たく、体が冷えて行く一方で、こんな状態で攻撃されたら避ける事も出来ない、と思っていると、しゅるりと何かがスコールの肩に絡み付き、ぐいっと体を持ち上げた。


「なっ……」
「ほれ。これで良いか」
「……!?」


突然の浮遊感に目を瞠っている間に、スコールの体は水から引き揚げられた。

両の足を立てて岸に下ろされたスコールだったが、先の戦闘のダメージも残っている為、碌に力は入らなかった。
ふらりと膝が崩れると、肩に絡み付いたままの触手が体の重みを持ち支えつつ、ゆっくりとその場に座らせる。

けほ、けほ、と咳を零しつつ、これはどう言う事だ、とスコールは頭を混乱させていた。
戦っていた敵に助けられて、その敵が横から此方を見下ろしている。
油断させて攻撃するつもりか───とも思ったが、暗闇の雲は、ただただそこに佇んでいるだけだった。


(なんだよ、これ……)


ジェクトのように、単純に見兼ねて助けた、と言う訳ではないだろう。
ゴルベーザであれば、これもまた身内を持つ敵として、捨て置く事を厭ったとも考えられる。
後は卑怯な戦法を嫌う───と言っても、命を懸けた戦いであればそれも厭わないが───ガーランドも、こうした行動は考えられなくもない。

しかし、暗闇の雲である。
他の混沌の戦士のように、何某かの狙いを持って行動しているとも、いないとも、判断の付かない相手。
呼吸を整える事に集中するスコールを見詰める暗闇の雲は、じいと様子を眺めているだけで、さっきまでスコールに何度も噛み付いて来た触手すら、退屈そうにふわふわと浮かんでいるのみ。
きっとスコールが攻撃の意思を見せれば、直ぐに噛み付いて来るのだろうが、そうでなければ大人しいものであった。

胸の奥の息苦しさがなくなって、スコールはふう、と一つ息を吐く。
それからスコールは、傍らに佇んでいる妖魔を見上げ、


「あんた……戦闘はもう良いのか」


律儀に此方の戦闘態勢を整うのを待つタイプとも思えなかったが、一応、確認の為に訊ねてみる。
すると暗闇の雲は、「ふむ……」と顎に白い指を当てて思案するように沈黙し、


「そうじゃな。もう十分じゃろう」
(……何が十分なんだ?十分遊んだって事か?)


問いに対する答えに、スコールは勘繰るようにそう考えて、眉根を寄せる。
遊びだと思って相手をされていたのなら腹が立つ───が、これ以上戦闘が長引かないのはスコールにとって幸いだった。
波動砲を食らったダメージ然り、水の中で冷えてしまった体然り、これ以上の戦闘はスコールにとって悪手でしかない。

暗闇の雲は好んで姦計を計る事は少ないが、その可能性は皆無ではない。
だからスコールは警戒は解かなかったが、もう戦わないのなら、と気持ちだけは切り替える事にした。

ぐっしょりと濡れたジャケットを脱いで、ぎゅうっと絞る。
ぼたぼたと溢れ出した水が地面を濡らすのを見て、スコールは舌打ちした。
額に張り付く前髪を掻き揚げながら、スコールは立ち上がり、僅かにふらつく足で日当たりの良い場所を探す。
幸い、浮遊大陸は、文字通り雲の上に存在する場所であるらしく、余り天気の移り変わりと言うものはない。
適当に見付けた岩の上にジャケットを放って、スコールは白いシャツを脱いで強く絞る。


「難儀だな」


聞こえた声に振り返ると、ふわふわと浮かびながらついて来ていた暗闇の雲がいる。
こいつは何処までついて来る気なんだろう、と思いつつ、スコールは溜息を吐き、


「誰の所為だと思ってるんだ」
「儂か?」
「他にいないだろう。あんたに吹っ飛ばされたんだ」
「そうだったな」


睨むスコールの言葉に、暗闇の雲はあっさりと頷いた。
それで反省でもあるのかと見れば、彼女の表情はいつものものと全く変わらない。
無駄な期待だった、と何度目になるか判らない溜息を吐いて、スコールは水気を絞ったシャツを着直す。

正直に言うと、ズボンも下着も脱いで干したいが、この状況で流石にそれは出来ない。
戦場で無防備な格好になる事への危惧は勿論、他人がいる状況で、スコールが裸になれる訳がないのだ。
せめて少しでも早く乾いてくれれば、と日当たりの良い位置を確保して、傍らの岩に寄り掛かる。

掻き上げていたスコールの髪が、滑り落ちるように流れて、また額に頬に張り付く。
鬱陶しい、とスコールが何度もそれを手櫛で持ち上げていると、ふっと視界に影が落ちた。
日向を確保していたいのに、と影を作る人物を睨むように見上げると、思っていた以上に近い距離に、妖魔の整った顔があった。


「……!」
「ふむ……」


赤い唇が目の前にあるのを見て、スコールは息を飲んだ。
じい、と見詰める眼は、スコールの顔をじっくりと眺め、観察している。

其処にいるのが“敵”であると、ようやくスコールは思い出す。
離れなければ、と足元に力を入れて飛ぼうとして、細長いものがしゅるりと其処に絡み付いて来た。
しまった、と足元を見ると、暗闇の雲が常にまとわりつかせている触手の一匹が、スコールの太腿に巻き付いている。
切り捨てなければ、と咄嗟に手がガンブレードを求めようとするが、


「待て。見ているだけだ」
「は……!?」
「ふむ……」
「!おい、ちょっと、こいつ……!」


まじまじと顔を覗き込んでくる暗闇の雲。
それに釣られるように、もう一匹の触手がスコールの肩に絡み付き、丸い頭をスコールの顔に寄せて来る。
触手はスコールの喉さえ一噛み出来る距離にいて、スコールは迂闊に攻撃体勢に入れなくなっていた。

身動きできないスコールを、暗闇の雲はじっくりと具に観察している。
触手の頭は、犬のようにふんふんと鼻───あるのか微妙だが───を鳴らし、スコールの肌を嗅ぎ回っていた。


(なんだよ、これ……)


混乱が許容値を越えて、スコールの体はいつの間にかぐったりと力を失っていた。
寄り掛かっていた岩に、乗るように背中を預けて、這い回る触手の好きにさせている。
この状況から波動砲を食らったら、間抜け以外の何物でもない。
かと言って、振り払うには目の前の敵の様子が余りにも奇妙で、スコールは戦う為の気力をごっそりと削がれた気分だった。

暗闇の雲の顔が離れると、触手も満足したように、スコールの体から管を解いて離れた。
やっと終わった、とスコールが体を起こすと、暗闇の雲はふわりと浮いて、


「以前、お前とよく似た顔を見た気がするな」
「……俺と……似た?」
「ふむ……興味深い。また次にじっくり見せて貰うとしよう」
「またって────」


暗闇の雲の言葉に、どういう意味だ、次ってまたこんな事するのか、とスコールが問う前に、彼女の姿は既に消えていた。

一人取り残されたスコールは、白雲に包まれた世界を見詰めた後、ぱたりと岩の上に横たわる。
もう勝手にしてくれ、と体を投げ出したスコールに、燦々と暖かな陽光が降り注いでいた。





3月8日と言う事で、思い付いたので書いてみた暗闇の雲×スコールと言う代物。

DdFFで雲さんはラグナとちょっと絡んでいたので、薄ぼんやりとでも覚えていたら面白いなって。
あと自由に行動する雲さんに振り回されているスコールが見たかった。
暗闇の雲の触手に懐かれているスコールとかも見てみたかった。
  • この記事のURL

[獣人レオン&獣人スコール]けものびと

  • 2018/02/23 21:21
  • カテゴリー:FF
2月22日で猫の日(遅刻)と言う事で、獣人レオンと獣人スコール。
主な設定と今までの話は此処と此処。
ネタ粒格納庫にもあります。


[いつもとちがうひ]
[このにおいのそばがいい]


大分生活に慣れたレオンとスコールですが、何か起きるとやはり緊張したり警戒したり。
そう言う時は、自分の安心できる場所に行きたいし、自分を守ってくれる人の近くにいたい。
同時に、守ってくれる人が何か様子が可笑しいなら、なんとかしなくちゃとも思っています。

  • この記事のURL

[けものびと]このにおいのそばがいい

  • 2018/02/23 21:03
  • カテゴリー:FF


キロスが作った粥を昼食に採り、薬を飲んだ後のラグナは、只管寝て過ごした。
レオンとスコールと一緒に暮らすようになってから引っ越して来たこのマンションは、子供二人との三人暮らしと考えても、十分に広い。
寝室もそれだけ広いスペースが取られており、一人で眠っていると、少し寂しさを感じる程だ。
彼等が一緒にベッドで過ごす事を許してくれてからは、余程暑い時でもなければ、一つのベッドで揃って眠る事も増えていたから、尚更寂しさが募る。
けれども、せめて熱が下がるまでは、彼等と離れて過ごさなければならない、とラグナは考えていた。

浅い眠りと現実の隙間でうとうととしていた時、何度かドアの方から音がした。
ちらりと見ると、ドアノブががちゃがちゃと音を立てたり、カリカリとドアが引っ掛かれる音がする。
直ぐにやんわりと咎める声が聞こえ、ぎゃうぎゃうと抗議宜しく吼える声が遠退くのが聞こえて、ラグナはその度に微笑ましくなった。
自分の昼寝床に入りたいのかもな、とラグナは思ったが、今日だけはベッドの住人を譲る事は出来ない。
ソファで寝る事も考えない訳ではなかったが、それで悪化させてしまっては、益々レオンとスコールに不自由を与え、キロスとウォードにも迷惑をかける事になる。
せめて今日だけ、と言う気持ちで、ラグナは早く熱が下がってくれる事を祈っていた。

その甲斐あってか、夕方頃には熱は引き、起き上がっても支障のない程度に回復した。
とは言え、治りかけと言うのは大事な所で、無理を推しては元も子もない。
キロスとウォードは、三人の夕食も作り、食べ終わってラグナが薬を飲むまで、彼等の世話をしていた。

ラグナはベッドから起き上がる事は出来たが、まだ寝室で過ごしている。
暇潰しにと携帯電話に撮り貯めていたレオンとスコールの写真を眺めていると、食器洗いを終えたキロスが寝室にやって来た。


「調子はどうだ、ラグナ」
「おう。お陰様で元気になったよ」
「それは良かった。此方は洗い物が終わった所でね。私達はそろそろお暇させて貰おうかと話していたんだ」
「そっかそっか。今日一日、ありがとな」


ベッドから抜け出すラグナを、キロスは止めなかった。
急なヘルプに応えてくれた友人達に、せめて見送りだけでも、と言うラグナの気持ちを汲んだのだろう。

揃って寝室を出ると、直ぐに足元に何かが飛びついて来た。
どんっと勢いよく突進して来たそれに、おっと、とふらつく体をなんとか支えて見下ろしてみれば、房付きの細い尻尾がゆらゆらと揺れている。


「がぁう」
「レオンか。まだあんまり俺に近付いちゃ駄目だぞ」


半日振りに見た顔に、ラグナの顔がすっかり緩む。
いつものように抱き上げたい気持ちを堪えて、ラグナは濃茶色の鬣を撫でるに留めた。

もう一人は、と見回すと、ソファの上に置いたクッションで丸くなっている。
隣でウォードが「ラグナが来たぞ」と声をかけると、スコールは少しだけ顔を上げ、じっと此方を見詰めた後、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
尻尾がぱしっ、ぱしっ、と何かを払うようにソファの肘掛を叩いている。
ウォードがやれやれ、と言った表情で、スコールの耳の裏を擽った。


「ラグナも大分回復したようだし、ウォード、我々は帰るとしよう」
「そうだな。スコール、レオン、今日は良い子にしてるんだぞ」
「どっちもいつも良い子だよ」
「君の前では、ね」


悪戯好きの子供に念押しするようなウォードの言葉に、ラグナが大丈夫だよと言えば、キロスがくつくつと笑って含みのある言い方をした。
キロスの言葉に、どう言う意味かとラグナが問う前に、友人二人は玄関へと向かう。
その後ろをラグナが追って行くと、足元にうろうろと動き回る気配があった。
うっかり蹴り飛ばしてしまわないように、ラグナは摺り足で、時折足元を見ながら進む。

玄関で靴を履く二人を待っている間、レオンはラグナの足に身を寄せて離れなかった。
すりすりと頭を擦り付けるように寄せて、爪を引っ込めた手がラグナの膝を掴んでいる。
ウォードは膝を曲げて、そんなレオンと目を合わせ、


「レオン。ラグナはまだ風邪を引いているからな。無理をさせてはいけないぞ」
「……がぅ」


ウォードの言葉に返事らしきものを返しつつ、レオンはラグナの膝にしっかりとしがみついた。
尻尾がラグナの足先に絡まって、全身で離れまいと主張しているように見える。
ラグナが体を屈めて手を出し出すと、蒼の瞳が零れんばかりに大きくなって、肉球のある手がそれを捕まえつようにタッチした。


「がぁう」
「あーもー。しょーがねーなー」


ラグナはくしゃくしゃに顔を崩して、レオンを抱き上げた。
するとレオンは、ラグナの胸にぽすっと頭を乗せて、すっぽりと其処に落ち着いた。


「今だけだぞ、レオン。風邪、伝染っちまうかも知れないからな」
「さて……判ってくれるかな。あちらの方も」
「あっち?」


レオンを腕に抱き、首を傾げるラグナに、キロスが後ろを指差す。
ラグナが振り返ってみると、其処にはリビングのドアの隙間から覗き込んでいるスコールがいた。
ぱちっと二人の目が合うと、スコールはぱっと奥に引っ込んでしまう。
しかし、すぐ其処に蹲っている事は、隙間から見える尻尾が証明していた。


「今日は二人とも、君と一緒にいられなくて、酷く不安だったようでね」
「宥めるのが大変だったぞ。レオンはまあ、大人しい方ではあったが」
「昼と夜と、食事もそれ程食べていない。きっと腹を空かせるだろうから、寝る前に君から何か食べさせてやると良い」
「えっ、そうなのか?お前達、飯食ってないのか?」


ラグナがレオンに尋ねると、レオンはきょとんとした表情で「ぐぅ?」と首を傾げる。
ラグナはもう一度、先とは違うトーンで「しょーがねーなー…」と呟いて、レオンの頭を撫でた。

それじゃあ、と手を振って、キロスとウォードは玄関を出て行った。
ラグナは二人を見送った後、閉じた玄関扉に鍵をかけ、レオンを抱いたままリビングへと戻る。
ドアを開ける前に、其処に蹲っていた気配が慌てて逃げたのが判った。
キィ、と蝶番を鳴らしてリビングに入ると、スコールはソファに戻っていて、此方に背を向けて丸くなっている。
ぴくぴくと丸い耳を此方に向けつつも、決して振り返ろうとはしないスコールに、ラグナは苦笑しながら彼の下へと近付いた。

ラグナがソファに座ると、スコールはもぞもぞと向きを動かして、完全にラグナに背を向ける。
いつもならそんな弟にレオンが近付いて、毛繕いをして宥めるのだが、当のレオンはスコールの様子は気にしているものの、ラグナの膝から降りようとしない。


「レオン、ちょっと降りてくれるか?」
「がぁう」
「…ダメかー」


ラグナの頼みに、レオンは一鳴きしたのみ。
梃子でも動く様子のないレオンに、仕方ないなあと眉尻を下げて笑みつつ、ラグナは隣で丸くなっているスコールの背に手を伸ばした。

まだ小さな背中をそっと撫でると、ピクッ、とスコールの耳と尻尾が立つ。
ゆら、ゆら、と尻尾が左右に揺れた後、ラグナの手にするりと絡み付いた。


「今日はごめんなー、スコール。レオンも」
「……」
「んぐぅ」


ラグナはスコールの背中を撫でながら、レオンの首を擽った。
レオンが眩しそうに目を細め、うるうると喉を鳴らす。

しばらくじっとしていたスコールが、のそ、と体を起こす。
スコールは体の向きを変えると、ラグナの傍らに身を寄せて、また蹲った。
ぽすん、と丸い顎がラグナの太腿に乗せられ、ぴく、ぴく、と丸い耳が動く。
その耳の裏側を、ラグナが軽く擽ってやれば、「んぐぅ……」と兄とよく似た鳴き声が漏れた。


「お前達、あんまり飯食ってないんだって?駄目だぞ、ご飯はちゃんと食べなくちゃ」
「……ぐぁう」
「がう……」
「腹が減って目が覚めちまうぞ。何か温めてやるから、それだけ食べて────」


食べて寝ような、と言おうとして、ラグナの声は止まった。
膝上で目を細めていた二人から、くふぅ、くふぅ、と規則正しい寝息が聞こえる。
ありゃあ、とラグナは困り眉で苦笑した。

起こすべきか、寝かせてやるべきか。
キロスやウォードが言ったように、余り食事をしていないのなら、夜中に空腹で目を覚ましてしまうだろう。
しかし、二人はこの短い時間で随分と深い眠りに落ちてしまったようで、ラグナが少々声をかけた位では、目を開けようとはしなかった。
何処か穏やかな寝顔をしている所を見ると、起こしてしまう事も少々気が引ける。


(……そういや、今日は昼寝したのかな?)


昼寝はレオンとスコールの日課のようなものだった。
食後の運動に少し遊んだ後は、ベッドで揃って丸くなって眠っているのだが、今日はラグナがずっとベッドで寝ていた。
リビングでも窓辺の日向や暖房の傍など、暖の取れる所で眠っているが、キロスとウォードがいる状態で、果たして落ち着いて眠れたのだろうか。
保護された時から何度も顔を合わせているので、二人が彼等に威嚇する事はないが、気を許せているかと言えば、また別の話になる。

やはり今は起こすまい、と決めて、ラグナは二人をそっと抱き上げた。
揺れの所為で二人は微かに唸ったが、目を開ける事はなく、そのまますぅすぅと眠り続けている。

ラグナは寝室に入ると、ベッドの壁際に二人を並べて寝かせた。
毛布で小さな体を一緒に包み、寒くないようにと念入りに寝床を整えてやる。
自身は、ベッドの逆端に身を寄せ、二人から可能な限り距離を取って横になった。
ベッドから落ちないと良いなあ、と平時の自分の寝相の悪さに不安を覚えつつ、ラグナは寝る態勢になる。


(明日には治さなくちゃな。大分寂しい思いをさせたみたいだし)


隙間を開けた向こう側で眠っている、レオンとスコール。
本当は彼等を抱き締めて眠りたいけれど、今日だけは我慢する。

薬のお陰か、睡魔は程無くやって来た。
今朝は感じた寒気もないので、きっと朝には治っている筈だと、ラグナは素直に目を閉じた。
治りさえすれば、明日にはまた彼等に沢山触れる事が出来るのだから、と。



翌日、目を覚ましたラグナが見たのは、ラグナに暖を与えるように密着して眠る、レオンとスコールの姿だった。





遅刻しましたが、2月22日は猫の日と言う事で、けものびとの三人で!

レオンもスコールも、ラグナの事が心配だし、一緒にいられないと不安。
そんな二人に寂しい思いをさせた罪悪感半分、嬉しくもあるラグナでした。
  • この記事のURL

[けものびと]いつもとちがうひ

  • 2018/02/23 21:00
  • カテゴリー:FF


風邪を引いてしまった。

昨晩、眠る以前から、その兆候はあったのだ。
夕飯を作っている頃に少し頭が痛み初め、芯がぼんやりとしている感覚に襲われた。
最近の寒暖の差の激しさにやられたのかも知れない。
サバンナ地帯や砂漠に近い場所で仕事をしていた時には、そうした気温の極端な変化にも慣れていたので、季節の変わり目の気温の変化にも然して堪える事はなかったのだが、やはりそうした第一線を退いて過ごすと、体は鈍って行くものらしい。
年もあるのかなあ、と些か虚しい事を思いつつ、取り敢えずは早期に対処するべしと、常備している風邪薬を飲んで、布団に入った。
目を覚ました時にはすっかり回復していますように、と祈りつつ。

しかし祈りは虚しく成就されず、目覚めた時にはすっかり熱が上がってしまった。
体を起こしただけで、頭がくらくらとしてしまう。
これは駄目だ、と判断したラグナであったが、同居している幼い獣人達には、ラグナのそんな様子が判らない。
がう、がう、と甘えてはお腹が空いたとねだる二人に、ラグナはこれだけは準備しなければと、どうにか床を抜け出した。
茹った頭で彼等の食事を揃えた後、その食事風景を見守りつつ、ラグナは旧友達に連絡を取った。

旧友達───キロスとウォードは、正午になる前に駆け付けてくれた。
ラグナが獣人達と同居するようになって以来、彼の抜けた穴を埋めるべく、獣人保護機関で忙しくしている彼等にしては、早い到着である。
ラグナは二人をリビングに通し、足元をじゃれついて離れない獣人達───レオンとスコールを、それぞれの腕へと預けた。


「キロスもウォードも、ありがとうな。俺、どうも今日はダメっぽくてさあ」
「そのようだ。早くベッドに戻った方が良い」
「薬は飲んだのか?」
「一応、昨日の夜に。朝も飲もうかと思ったんだけど、飯食う気力がなくて…」


言いながら寝室へ向かうラグナに、それは宜しくないな、とキロスが言った。
しかし、空元気を振る舞う余力もない後姿に、無理もないとも判る。
それでも、面倒を見ているレオンとスコールの食事だけは準備したのだから、頑張ったものだ。

ウォードの腕の中で、ごそごそ、ごそごそと動いているのはスコールだ。
がう、がう、と離せ、と言いたげに声を上げているが、ウォードはそんなスコールの頭を撫でて宥めている。
レオンはと言うと、此方はキロスの腕に抱かれ、スコールに比べれば大人しくしているものの、鼻頭に中々険しい皺が寄っている。
尻尾がぷんっ、ぷんっ、と揺れ、気持ちが落ち着いていないのは明らかであった。

ラグナは寝室のドアを開けると、ちらりと友人達───その腕に抱かれている獣人達を見た。
目が合ったレオンが、子供にしては大きな手を伸ばし、にぎにぎと肉球の手を握り開きして見せる。


「がぁう。がうぅ」
「……うん、ごめんな。今日はダメなんだ」
「があううぅ!」
「スコールも、ごめんな。近くにいたら伝染っちゃうかも知れないから、今日はそっちで良い子しててくれな」


不安げな表情を浮かべるレオンと、じたばたと暴れるスコールに、ラグナは眉尻を下げて微笑みかけて宥める。
そうしている内に、ぞわっと寒気がラグナを襲った。
レオンとスコールの事は気になるが、このまま起き上がっていては、風邪が悪化してしまう。
早く寝なさい、とキロスに視線で促され、ラグナは後ろ髪を引かれながら、寝室へと入って行った。

その姿がドアの向こうに見えなくなる所で、スコールがウォードの腕を飛び出した。
四つ足で駆けていく小さな体が辿り着く前に、ドアはぱたんと閉じてしまう。
スコールは通れる隙間を探すように、ドアの前でうろうろと歩き回った後、ぐるぐると喉を鳴らし、扉を突破せんと物言わぬ板壁に飛びついた。


「がう。がうぅっ!ぐぅーっ!」
「こらこら。ドアを引っ掻いてはいけないぞ」


“ライオン”モデルに相応しく、幼いながらに確りとした爪を携えた手で、スコールはドアをがりがりと殴り引っ掻いた。
ウォードが直ぐに捕まえて抱き上げると、スコールは「ぎゃぅううう!」と全身で暴れ始める。
人に対して爪を立ててはいけない、と躾をされたお陰で、彼の爪がウォードを傷付ける事はなかった。
ウォードは体格で以てスコールを確りと抱え持ち、喉を擽って気持ちが逸れるようにとあやしてやる。

そんなスコールと対照的に、レオンはやはり大人しかった。
元々、弟に比べると、聞き分けの良い兄である。
しかし、いつも傍にいる筈のラグナから離れると、不安になる気持ちは誤魔化せないのだろう。
彼はキロスの腕に抱かれたまま、緊張したように体を強張らせており、ひくひくと鼻を鳴らしている。

二人は一先ず、獣人の子供達をソファへと移動させた。
クッションに下ろしてやると、共に寝室の方へ向かおうとするので、背中を撫で当たり、喉をくすぐったりとあやして引き留めておく。


「やはり、こう言う時は難儀なものだな。一人ではゆっくり休んでいる訳にも行かない」
「ああ。二人がもう少し成長していれば、感じ取ってくれたのかも知れないが……いや、人間で考えても、幼い内は無理か」
「たらればの話だからな、どう考えても仕方のない事だ。それよりも、時間を考えれば、そろそろ昼飯か。何か作った方が良いな」


キロスが時計を見ると、長針は12時を少し過ぎており、平時を考えれば昼飯の真っ最中か。
ラグナに呼ばれてやって来た二人も、そろそろ腹が減っている。
ラグナは朝食も採っていないと言うし、病気を治す為のエネルギーも足りていないだろうから、何か食べさせて、薬も飲ませてやらねば。

キロスは大人しいレオンの頭を撫でて、「良い子にしていてくれ」と言った。
レオンはことんと首を傾げるも、キロスの手が離れても、其処から移動しようとはしなかった。
蒼い瞳は寝室を見詰め、そのままレオンはクッションの上に丸くなった。


「ウォード、君の食事も作ろうと思うが、何が良い?」
「俺はなんでも良いぞ」
「私もどうとでもなるな。ラグナには粥を作るとして……二人の食べる物は、と」
「冷蔵庫に何かあるんじゃないか?」
「ふむ……昨晩の残り物がある。一応、ラグナに食べさせて大丈夫なものか確認しておくか」


キロスは冷蔵庫の中に入っていた料理を取り出した。
タッパーに入った煮物は作り置き、皿に並べられラップで綴じた卵焼きは残り物だろうか。
他にも、冷凍庫に下処理済みの魚、野菜室も半分ほど埋まっており、昔に比べて随分と生活感が増したな、とキロスは思う。

タッパーを片手に寝室に向かうと、ドアを開けた瞬間、「ああ、こら!」と言う声が後ろから聞こえた。
足元に気配を感じて視線を落とせば、二対の蒼がじいっと此方を見上げている。
其処に入るのならば自分達も入れろ、と無言の訴えに、キロスは眉尻を下げるしかない。


「気持ちは判るが、やはり駄目だよ」
「そう言う事だ。ほら、戻るぞ」
「ぎゃうっ」
「がううう!」


ウォードに両腕でそれぞれ抱え上げられ、レオンとスコールはじたばたと暴れる。
保護された頃に比べると、少しずつ成長している二人だが、やはり二メートル弱の体格を持つウォードにはまだまだ叶わない。
小さな体で一所懸命に抜け出そうとする二人を抱えて、ウォードはソファへと戻って行った。

ウォードが捕まえてくれている間に、とキロスは寝室へ入った。
いつもならば、二人の養い子が昼寝に使っていると言うベッドに、今はラグナが寝ている。
ずぴ、と鼻を啜る音が聞こえたので、キロスはデスクテーブル上にあったティッシュ箱を取って、ベッドに近付いた。


「大丈夫か、ラグナ」
「んん…?お、キロスか。何かあったか?」


赤らんだ鼻を啜りながらラグナが寝返りを打つ。
ティッシュを差し出すと、さんきゅ、と言ってラグナはそれを手に取り、鼻を噛んだ。


「あー、鼻詰まっちゃって……んで、何?」
「食事を作ろうと思ったのだが、彼等に何を食べさせれば良いかと思って。一応、冷蔵庫の中に煮物の残りを見付けたんだが」


これだ、と言ってキロスはタッパーを見せる。
ラグナは少し体を起こし、キロスの持っているタッパーの中身を確かめて、


「それ、うん。芋の煮物だな。大丈夫、それちょっと温めて食わせてやって」
「了解した。これだけでは足りないかな。ベーコンもあったが、添えても良いか」
「うん。あと、温めのミルク。マグカップあるから、それに入れてレンジで温めて。んー、それだけあれば大丈夫かな……」
「判った。君の食事も作ったら持って来るから、それまで寝ていると良い」
「悪ぃなあ。いつかちゃんと恩返しするよ」
「それ程大袈裟な事でもないさ。良いから、君はしっかり休んで、早く風邪を治すと良い。彼等の為にもね」


彼等───勿論、ラグナが溺愛するレオンとスコールの事だ。
なんとかしてラグナのいる寝室に入ろうとしている二人の姿を思い出し、健気なものだ、とキロスの唇に笑みが零れる。


「どうやら二人とも、君の姿が見れない事が不安で堪らないらしい」
「そうなのか?」
「何度も此処に入って来ようとしているからな。だから、風邪を長引かせる訳には行かないぞ」
「そうだなぁ……いつまでも寝込んで、二人を不安にさせるのも良くないし、伝染したら嫌だし。しっかり食って、しっかり寝て治すよ」
「そうしたまえ。では、これで失礼するよ」
「んー」


ベッドに寝転んだまま、ラグナはひらひらと手を振って見せた。
布団を手繰り寄せて丸くなるラグナは、完全に寝る態勢に入っている。
出来るだけエネルギーを消耗しないように、回復に回せるように努める気なのだろう。

キロスが寝室を出ようとすると、開けた扉がごつん、と何かにぶつかった。
重い影が扉の向こうにある事を見付け、隙間から覗き込んでみると、ウォードの背中が其処にある。
その足元で、うろうろと落ち着きなく動き回っている尻尾を見付け、キロスはくすりと笑う。


「ウォード、終わったよ。退いてくれ」
「ああ、すまない」


キロスの声に、ウォードが少し体の位置をずらす。
ドアの隙間を僅かに広げて、キロスは其処を潜ってリビングに出た。
その隙に寝室へと突入しようとするスコールを捕まえてやる。


「やれやれ、中々にしぶとい子達だ」
「がう、がうぅ!ぎゃうぅっ!」


抱き上げたスコールを、レオンを抱えたウォードに預けつつ、キロスは呟く。
スコールはぎゃうぎゃうと吼えて抗議していたが、やはりウォードは気にしなかった。

兄弟揃って太い腕に抱かれると、レオンが不満げな顔をする弟の顔を舐めて宥める。
スコールは鼻先に皺を寄せつつ、剥れた顔でレオンに頬を寄せた。
そんな二人をソファに下ろすと、スコールが丸くなり、その隣でレオンも身を寄せて縮こまる。
ウォードは二人の濃茶色の鬣を撫で梳きながら、初めて彼等と相対した頃の事を思い出していた。


「あんなに俺達の事を警戒していた二人が、今はラグナの事をこんなにも信頼している。本当に凄い男だな、ラグナは」
「ああ。他人なら、きっとこうはいかないだろう」


旧知の友人の人柄が成せる業に、キロスもウォードも感心するしかない。

さて、とキロスは気持ちを切り替え、キッチンに立った。
ラグナと離した通り、タッパーの芋の煮物を温めて、ベーコンを少し焼いて一緒に添える。
温めのミルクも作れば、レオンとスコールの食事は揃った。
それらをトレイに置いて、二人が丸くなっているソファの前にあるローテーブルへと運ぶ。


「さあ、腹が減っているだろう」
「……ぐぅ…?」
「煮物はラグナの作ったものだからな。君達の好きな味ではないか?」


食べられない事はないだろう、と言う気持ちで、キロスは二人に食事を促す。
しかし、レオンは顔を上げたものの、丸くなった姿勢から動かず、スコールに至っては反応すらしなかった。
ラグナ以外が用意した食事は食べる気にならないのかも知れない。
彼等が保護された時から、少なからずその様子を見ている立場としては些か寂しいが、レオンとスコールにとっては最も信じるに値する人間は未だラグナ一人なのだろうから仕方がないだろう。

それでも、腹が減っていれば、気が向けば食べるかも知れない。
お腹が空いたらいつでも食べな、とウォードが頭を撫でると、レオンが少しだけ興味のある顔で皿を見詰めていた。

彼等がきちんと食事を採るのかは気になるが、キロスにはまだやる事がある。
不安そうな表情が消えない獣人の子供達の為にも、保護者には早く元気になって貰わなければと、粥作りへと取り掛かった。




≫[このにおいのそばがいい]
  • この記事のURL

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ
  • ページ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 32
  • 33
  • 34
  • 35
  • 36
  • 37
  • 38
  • 39
  • 40
  • 41
  • 42
  • 43
  • 44
  • 45
  • 46
  • 47
  • 48
  • 49
  • 50
  • 51
  • 52
  • 53
  • 54
  • 55
  • 56
  • 57
  • 58
  • 59
  • 60
  • 61
  • 62
  • 63
  • 64
  • 65
  • 66
  • 67
  • 68
  • 69
  • 70
  • 71
  • 72
  • 73
  • 74
  • 75
  • 76
  • 77
  • 78
  • 79

ユーティリティ

2025年07月

日 月 火 水 木 金 土
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
  • 前の月
  • 次の月

カテゴリー

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

新着エントリー

[ヴァンスコ]インモラル・スモールワールド
2020/12/08 22:00
[シャンスコ]振替授業について
2020/11/08 22:00
[ジェクレオ]貴方と過ごす衣衣の
2020/10/09 21:00
[ティスコ]君と過ごす毎朝の
2020/10/08 21:00
[ジタスコ]朝の一時
2020/09/08 22:00

過去ログ

  • 2020年12月(1)
  • 2020年11月(1)
  • 2020年10月(2)
  • 2020年09月(1)
  • 2020年08月(18)
  • 2020年07月(2)
  • 2020年06月(3)
  • 2020年05月(1)
  • 2020年04月(1)
  • 2020年03月(1)
  • 2020年02月(2)
  • 2020年01月(1)
  • 2019年12月(1)
  • 2019年11月(1)
  • 2019年10月(3)
  • 2019年09月(1)
  • 2019年08月(23)
  • 2019年07月(1)
  • 2019年06月(2)
  • 2019年05月(1)
  • 2019年04月(1)
  • 2019年03月(1)
  • 2019年02月(2)
  • 2019年01月(1)
  • 2018年12月(1)
  • 2018年11月(2)
  • 2018年10月(3)
  • 2018年09月(1)
  • 2018年08月(24)
  • 2018年07月(1)
  • 2018年06月(3)
  • 2018年05月(1)
  • 2018年04月(1)
  • 2018年03月(1)
  • 2018年02月(6)
  • 2018年01月(3)
  • 2017年12月(5)
  • 2017年11月(1)
  • 2017年10月(4)
  • 2017年09月(2)
  • 2017年08月(18)
  • 2017年07月(5)
  • 2017年06月(1)
  • 2017年05月(1)
  • 2017年04月(1)
  • 2017年03月(5)
  • 2017年02月(2)
  • 2017年01月(2)
  • 2016年12月(2)
  • 2016年11月(1)
  • 2016年10月(4)
  • 2016年09月(1)
  • 2016年08月(12)
  • 2016年07月(12)
  • 2016年06月(1)
  • 2016年05月(2)
  • 2016年04月(1)
  • 2016年03月(3)
  • 2016年02月(14)
  • 2016年01月(2)
  • 2015年12月(4)
  • 2015年11月(1)
  • 2015年10月(3)
  • 2015年09月(1)
  • 2015年08月(7)
  • 2015年07月(3)
  • 2015年06月(1)
  • 2015年05月(3)
  • 2015年04月(2)
  • 2015年03月(2)
  • 2015年02月(2)
  • 2015年01月(2)
  • 2014年12月(6)
  • 2014年11月(1)
  • 2014年10月(3)
  • 2014年09月(3)
  • 2014年08月(16)
  • 2014年07月(2)
  • 2014年06月(3)
  • 2014年05月(1)
  • 2014年04月(3)
  • 2014年03月(9)
  • 2014年02月(9)
  • 2014年01月(4)
  • 2013年12月(7)
  • 2013年11月(3)
  • 2013年10月(9)
  • 2013年09月(1)
  • 2013年08月(11)
  • 2013年07月(6)
  • 2013年06月(8)
  • 2013年05月(1)
  • 2013年04月(1)
  • 2013年03月(7)
  • 2013年02月(12)
  • 2013年01月(10)
  • 2012年12月(10)
  • 2012年11月(3)
  • 2012年10月(13)
  • 2012年09月(10)
  • 2012年08月(8)
  • 2012年07月(7)
  • 2012年06月(9)
  • 2012年05月(28)
  • 2012年04月(27)
  • 2012年03月(13)
  • 2012年02月(21)
  • 2012年01月(23)
  • 2011年12月(20)

Feed

  • RSS1.0
  • RSS2.0
  • pagetop
  • 日々ネタ粒
  • login
  • Created by freo.
  • Template designed by wmks.