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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

[絆]受け止められるものには限りがある

  • 2012/01/14 21:33
  • カテゴリー:FF


任務を終えて報告書を提出しようとミッドガル社に戻ってきたレオンを迎えたのは、山積みされた沢山のプレゼントだった。



「……なんだ、これは……」



帰社するなり放送で呼び出しをかけられて、事務課に書類を提出した後、赴いた会議フロアの一室。
大人数でのミーティングの際に使用される大会議室に入ると、其処はファンシーな箱で埋められていた。

部屋の中には、大量の箱の他、仕分けに追われているスタッフが数名。
会社に送られる荷物が厳重なセキュリティにかけられるのは当然の事だが、暇を持て余していたSeeDも駆り出されており、宛先や差出人の確認は勿論、金属チェックにX線チェック、盗聴探知機なども持ち込まれ、かなり大掛かりな作業になっている。
そうしてチェックされている荷物は、どれもこれも、レオンに寄せられたプレゼントなのだと言う。



「さすが売れっ子SeeDだな。モテモテじゃん」
「………」



楽しそうにバシバシと背中を叩いて来るザックスに、レオンは額の傷に手を当てて溜息を吐く。



「これを俺にどうしろって言うんだ…」
「持って帰ればーって言いたいけど、まあ流石に量が多すぎるよなあ」



暢気に笑ってそんな事を言いながら、ザックスも仕分け作業に参加する。
そのついでに、伝票に記載された内容を読んで、おお、と声を上げた。



「すげーぞ、レオン。デリングシティで有名な一流シェフの店から、焼き菓子の詰め合わせ!これ一つ1000ギルする高い所だぞ」
「……そうか」



ラッピングに記載されたロゴマークを見せるザックスだが、レオンの反応は冷ややかなものである。
そんなレオンに、判ってねーなぁ、などとザックスが唇を尖らせるが、レオンにしてみればブランド品など大した意味を持たないのだ。

ロゴマークに記載されている社名から、先日、其処の社長令嬢の警護任務に当たった事を思い出した。
恐らくその礼で送られて来たのだろうが、レオンにとってはあれは単なる仕事の一つで、こうして謝礼を送られるような謂れはないと思う。
任務に当たっていたのはレオン一人ではなかったし、ミッドガル社宛に送られてくるなら判るのだが、個人当てに送られてくるものは、レオンにとって手に余る代物であった。


それに───レオンは元来、甘いものはあまり得意ではない。
トリュフケーキやマドレーヌなどを渡されても、送って来てくれた人には申し訳ないが、レオンは殆ど手を付けなかった。

だからこういう時、送られてきた物を食べるのは、レオンのパートナーである青年だった。



「レオン、レオン」
「……いいから、好きなもの持って行け」



つんつんと後ろからジャケットを引っ張るクラウドに、レオンは振り返らずに言った。
やった、と小さな声が聞こえて、金色のチョコボ頭がザックスの下に駆けて行く。



「ザックス、俺それ食べたい」
「おお、いいぜ。もうチェック終わったからな」
「ザックスも食うか?」
「貰う貰う。最近疲れてるみたいでさ、妙に甘いもの食べたくなるんだよ」



言いながら、ザックスは包装紙を取り去って箱を開けた。
念の為にと待機していたSeeDの一人にそれを渡し、毒物チェックを済ませる。
問題なしと判断が出て、早速クラウドがトリュフケーキを口へと放る。

クラウドの表情は常のものとそう変化を見せなかったが、心なしか碧眼が嬉しそうに輝いて見える。
ザックスも一つ失敬し、口の中に放り込んで、もごもごと咀嚼しながらチェックする手を再開させた。


───いつまでも此処で棒立ちしている訳には行くまい。
レオンは思考を切り替えて、自身もプレゼントの仕分け作業に加わる事にした。


チェックをしていると、手紙や菓子やブランド品装飾類の他に、妙なものが混じっているのを見付ける事がある。
それは殆どがプレゼントとは程遠い、嫌がらせや脅迫紛いものもであるのだが、時折それにすらカテゴリされないものもあった。

X線チェックを行っていた科学部スタッフに呼ばれて、レオンは其方に向かった。
モニター画面に映し出されたものを見て、眉根を寄せる。
暗がりのモニターの中に、プレゼントと思しき菓子のシルエットが映っているのだが、その中の一つに奇妙な白い影がある。



「なんだ…?」
「開けてみましょうか」
「俺が開ける。爆発物ではないんだよな?」



スタッフから箱を受け取って蓋を浮かせると、綺麗な形に飾られたチョコレートが並んでいる。
その中から真ん中にあったチョコレートを取って、科学部スタッフに渡した。

チョコレートの中に特殊な液体を流し込み、それが固まるのを待って、チョコレートを切り刻む。
刻んだチョコレートの一片───真ん中に白いモノが入っているそれを、スタッフが電子顕微鏡にかけて調べると、



「……人の爪のようですね」
「うわあ、怖ぇ」



スタッフの言葉に、いつの間にかレオンの隣に来ていたザックスが顔を引き攣らせた。
その傍らでクラウドが首を傾げる。



「爪って食えるのか」
「食べるなよ。試すなよ。腹壊すからな」
「判った。でも、じゃあなんで爪なんか入ってたんだ?」
「……俺が聞きたい」



何かの呪いか、まじないか、嫌がらせか、いずれにしても気分の良いものではない。
異物が混ざっていたのはこのチョコレート一つのようだったが、もう他のを食べる気にもならない。



「悪いが、適当に処分しておいてくれ……」
「って言われても、俺も食う気しねえぞ~」
「じゃあ俺」
「お前も駄目」



すーっと箱を受け取ろうと手を伸ばしたクラウドを、ザックスが襟を掴んで止める。
なんで、と言う顔で見上げてくるクラウドに、俺が嫌、とザックスは言った。

むーと拗ねた顔をするクラウドの髪をぐしゃぐしゃと撫でて宥めつつ、ザックスは頭痛を抱えるレオンに眉尻を下げて笑いかけた。



「そんな顔すんなって、レオン。あっちにコーヒークッキー届いてたぜ。それなら食えるよな?」
「まあ……」
「持って帰って、弟と一緒に食えよ。チェックももう俺達でやるからさ。疲れてんだろ」



任務を終えて、長時間の移動で帰って来たばかりなので、疲労が溜まっているのは確かだ。
移動中はずっと提出用の書類を書いていたので、食事も採っていない。
ぐ、と腹の奥が鳴るのを感じて、レオンはザックスの言葉に甘える事に決めた。

チェックの終えた山の中から、ザックスが行っていたコーヒークッキーの箱を探し出す。
ついでにガトースフレも二箱、大きなものを持って帰る事にする。
一つは隣家の少年へ、もう一つはトラビアガーデンに留学中の妹へ送るつもりだった。


会議室を出て、エレベーターへ向かう途中、




「うわっバカクラウド!そんなもん食うなよ!」




響き渡った同僚の声に、何があったのかは深く考えない事にした。





売れっ子SeeDは色々と大変です。
最後にクラウドが何食べたのかは考えてません(おい)。絆シリーズのクラウドは空気読まない子。保護者が大変。
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[スコール]夢さえも届かない

  • 2011/12/29 02:16
  • カテゴリー:FF




夢を見る位ならタダだろうって誰かが言ったけど、タダで見れる夢ほど酷いものはないと思った。




夢見るくらい良いだろうとか、夢でくらい逢いたいとか。
それで叶えられる願いなら、どれだけ気楽な夢なのかと思う。

死に物狂いで掴もうとして、足掻いて手を伸ばして、それでも結局手に入らない。
手に入ったと思ったら、それはほんの少し掠められた欠片が見せた幻で、直ぐに消えて見えなくなる。
夜に見る夢で叶えられる願いのそれの虚しさと言ったら。


結局消えてなくなるんだ、何もかも。
夢の中で束の間に得た喜びなんて、目覚めた時の絶望感に比べたら、空っぽも同然だ。



ずっとずっと手を伸ばす。
其処にある光に向かって、手を伸ばす。

足元から何か冷たい物が這い上がってくるのが、怖くて怖くて仕方がなかった。
逃げても逃げても追い駆けてくるそれは、光が差し込むと途端にその速度を鈍らせる。
だから、あの光を掴む事が出来たら、きっとこの冷たくて怖い物は消えるんだと思って。


光に向かって走る。
光に向かって手を伸ばす。

遠く遠くにあった光が、少しずつ近くなって、あと少しだと、地面を蹴って。




空っぽの手が、白い天井に向かって伸びていて。





……夢を見る位ならタダだろうって誰かが言った。
夢見るくらい良いだろうとか、夢でくらい逢いたいとか。

けれど夢の中で束の間に得た喜びなんて、目覚めてしまえば空っぽになる。





空っぽの手を握り締めた。
空っぽの手で、溢れそうになる雫を握り締めて、消し潰す。




「……大丈夫」




もう少し、きっとあともう少しで、こんな弱い自分もいなくなる。
空っぽの手を見て、雫が溢れる事もなくなる。

そうしたら、そうしたらきっと。




(またあえるよね、“     ”)





呼ぶ名前さえ、判らないのだとしても。






ガーデンに入学してから数年経った頃のスコール。
思い出せなくなっちゃったけど、まだお姉ちゃんを追い駆けてる。

ジャンクションって何歳頃からやってたんだろ…?
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[子サイ&子スコ]閉じ行く世界の、とある隙間

  • 2011/12/22 20:16
  • カテゴリー:FF



「サイファー、誕生日おめでとう」



イデアの言葉を真似するように、沢山の声で同じ言葉がリピートされる。
それがサイファーにはむず痒くも嬉しくて堪らなかった。


石造りの家の外では、しんしんと雪が降り続けている。
締め切った窓は、部屋と外気の温度差の所為でほんのりと雲っていた。

荒涼としたセントラ大陸は、どの季節でも少し気温が低く、夜になると陽の光を失った為に冷え込みも一層進む。
冬の只中ともなれば尚の事そうで、石造りの部屋の中も、放って置けば冷蔵庫の中のように冷たくなる。
小さな子供ばかりがいる中で、そんな酷な環境を作る訳にはいくまいと、シドが作った小さな暖炉は、冬に入る前からフル活動されている。


温かくて柔らかくて、賑やかな、閉ざされた世界。
其処で迎えた、生まれてから五回目の誕生日。



「はい、サイファー!プレゼント!」



そう言って小さな箱を差し出したのは、セフィだ。
受け取って箱の蓋を開けてみると、真っ白な毛糸で編まれた、所々解れたマフラー。



「皆で編んだのよ」
「大事にしてね」



キスティとアービンの言葉に、判ってるよ、といつものように少しぶっきら棒に言う。
けれども、声は言葉ほど刺々しくはなかったから、キスティがいつものようにサイファーを窘める事はしなかった。

サイファーは箱からマフラーを取り出して広げて見る。
綺麗に編まれている所はママ先生、幅が一律になっているのがキスティ、気紛れに歪んでいるのがセフィ、その後のズレを直しているのがアービン、解れているけど案外と整っているのは多分ゼル。
見ただけで、誰が何処まで手をかけたのかがなんとなく判るのが、少し可笑しかった。

くすぐったさを隠しながら、サイファーはマフラーを首に巻く。



「うん、似合う似合う」
「サイファー、あったかそう」



アービンとゼルが嬉しそうに行った。
頑張って良かったねー、とセフィがキスティに笑いかけた。

それを見詰めて、サイファーはふと、この寒いのに玄関傍でじっと動かない子供の事を思い出す。



「皆でって、スコールも編んだのか?」



暗い茶色の髪に、少しくすんだ、けれど綺麗な青の瞳をした子供。
此処にいる子供達の中で、ゼルの次に背が低くて、ゼルと同じくらいに泣き虫な子供。
いつも姉の後ろをついて歩いていた、今はそのついて行く手をなくした、泣く事を忘れた泣き虫な子供。

ほんの少し前まで、揶揄ってやると直ぐに泣いていたその子供は、近頃、めっきり泣く事をしなくなった。
サイファーが何を言っても、ほんの少し視線を向けて来るだけで、直ぐにそっぽを向いてしまう。
サイファーは姉を追い駆けてばかりの子供も好きではなかったけれど、今の、誰も何も見ていない青はもっと嫌いだった。
子供達はそれを知っているから、サイファーの言葉に、キスティとアービン、ゼルが言い難そうに顔を見合わせた。

────その傍らで、



「そうだよ~。マフラーのポンポンつけたの、スコールなんだよ」



にこにこと楽しそうに、嬉しそうに言ったのはセフィだ。
隣ではイデアもまた、いつもの優しくて温かな笑みを浮かべて、「ええ、そうよ」と言った。


サイファーは、マフラーの先端についている、丸いポンポンを見る。
縫い付け方はとても綺麗になっていて、正直、あの不器用な子供がこれをこなしたとは思えなかった。
けれど、にこにこと笑うイデアもセフィも、嘘をついている訳ではないだろう。
きっとスコールの下にこれを持って行って、針を毛糸に一度だけ通しさせたとか、そんな所に違いない。

子供らしからぬ顰め面でポンポンを見るサイファーに、イデアは小さく笑みを零す。
金色の髪を優しく撫でると、サイファーの緑の瞳がイデアを見上げた。



「とても綺麗につけられているでしょう。スコール、とても頑張ってくれたのよ」
「……うん」



真相がどうであれ、ママ先生がそう言うのなら、サイファーからは何も言わない。
素直に頷いたサイファーに、イデアは笑みを深めた。


カチリ、と部屋のドアが鳴る音がして、イデアが其方を振り返る。
子供達は次のメインであるケーキに夢中になっていたが、サイファーはなんとなく、椅子を立ったイデアを目で追っていた。

部屋の中に入って来たのはスコールで、イデアは小さな彼の体を抱き上げた。
スコールは肩を震わせてイデアに縋り付き、イデアはそんな子供の背中を優しく撫でてやっている。
子供が繋ぐ手を失った日から、何度も何度も繰り返された光景だった。


スコールを抱いたイデアが、寝室の方へと消えて行く傍で、キスティがカットされたケーキを皿に移し終えた。
ケーキは全部で8個にカットされていて、その内一つは冷蔵庫の中にある───多分シドの分だろう。
サイファーの前にも、特別にメッセージの添えられたチョコレートと一緒に、ケーキが運ばれた。
他のケーキに比べるとほんのちょっと大きい部分が渡されたのは、今日の主役がサイファーだからだ。
そんなサイファーのケーキを、セフィが少し羨ましそうに見てるのを見て、アービンが自分のを半分あげる、と言った。

ケーキなんてものは、此処にいる子供達にとって、特別な時にだけ食べられる、特別な御馳走だった。
だから皆、目の前に来ると直ぐに食べてしまう。
────けれども、この時のサイファーは、中々ケーキに手を付けなかった。



「あれ、サイファー、何処行くの?」



椅子から降りたサイファーに、ゼルが言った。
サイファーはちらりとゼルを見ただけで、ぷいっと無視する。

寝室からイデアが出て来たのを入れ違いで、サイファーはドアの隙間を潜った。



「サイファー?」



部屋を出たばかりのイデアが、ドアを開けて呼びかけたが、サイファーは応えなかった。
寝室に並んだベッドの一番奥で、シーツに包まっている子供の下へ向かう。

ベッドの住人────スコールは、ダンゴムシのように小さく丸まっていた。
今は一人きりで使っているそのベッドに、ほんの少し前まで、他の誰かが一緒に丸くなっていたのをサイファーは知っている。


ベッドの傍まで行ってみると、スコールはまだ起きていた。



「おい、スコール」
「………!」



びくっ、とシーツに丸まったスコールが小さく跳ねた。



「ケーキ、食べないのかよ」
「………」
「オレが食べるぞ、余ったケーキ」



滅多に食べられないケーキが好きなのは、スコールも他の子供達も一緒だ。
少し前なら、こう言ってやれば、「いや!」と言って跳ね起きて来た。

……けれどスコールは何も言わず、ダンゴムシになったまま。



「本当に食べるぞ」



実際は、それをしようとしたら、きっとキスティに見付かって取り上げられるに決まっている。
お菓子もご飯も、きちんと人数分あるのだから、誰かのものを勝手に取ったりするのは駄目だ。

けれど、此処でスコールがサイファーに「食べて良い」と言ってしまうか、「食べちゃダメ」と主張しない限りは、必ずしもサイファーが余ったスコール分のケーキを食べてはいけない、と言う事にはならなくなってしまう。
サイファーはちゃんとスコールに言ったのだから。


何も言わないスコールに、サイファーはむーっと唇を尖らせる。



「折角ママ先生が作ってくれたんだぞ」



誰かの誕生日の時にだけ食べられる、ママ先生の手作りケーキ。
今日はサイファーの誕生日で、だから主役もサイファーなのだけれど、ケーキは皆の為にも作られた。

それを食べないなんて。
折角作ってくれたのに。


語尾が少し強くなった所為で、またスコールがびくっと体を震わせた。
そのお陰と言って良いかは判らないが、スコールがそろそろとシーツから顔を覗かせる。

頼りない光を宿した青灰色が、窓から差し込む雪明りに照らされて、暗闇の中にぼんやり浮かぶ。
瞳に映り込んだサイファーの顔は、少し機嫌の悪そうなもので、再三スコールがびくっと体を竦ませた。
────が、サイファーの首を覆う白を見て、ぱちり、と瞬きを一つ。



「……サイファー、それ」



ベッドに横になったままのスコールの言葉に、サイファーはああ、と自分がマフラーを巻いたままにしていた事を思い出す。



「……これ、お前がつけたってセフィが言ってた」



マフラーの先についている、丸いポンポンを弄りながら、サイファーは言った。
うん、とスコールが小さく頷く。



「ママ先生に、教えて貰ったんだよ」



教えて貰って、僕がつけた。
僕が頑張ったら、サイファーもきっと喜ぶからって。

そう言ったスコールに、サイファーは少し意外に思った。
姉の事しか見えてない、ずっと姉だけを待ち続けているスコールが、サイファーが喜ぶかも知れない事に手を動かすなんて。
綺麗な青い宝石が、ほんの僅かでも、サイファーを想う事があるなんて。


寝室は、暖炉のあるリビングに比べると少し冷えていたが、凍える程ではない。
マフラーも必要ない程度だったので、解こうかと思ったサイファーだったが、



「サイファー…それ、あったかい?」



口元をシーツに埋めて聞いてきたスコール。
サイファーも、スコールと同じように、マフラーの波に口元を隠して言った。



「ああ」
「……そう」



良かった。

そう呟いて、スコールが小さく笑う。
サイファーが何ヶ月か振りに見た、スコールの笑顔だった。





サイファー誕生日と言う事で、サイスコ……?
自分の中でサイファー像が固まってなかった。駄作偽キャラすみません。

うちの子スコはエル姉ちゃん一番で、世界も殆どそれで埋まってますが、決してエル姉以外の事が見えていない訳ではなくて、ただそれを認識して「自分が一人ぼっちじゃない」事に気付くほどの心の余裕がなかった、と言うイメージ。
サイファーは幼馴染組の中では年上だし、なんだかんだで面倒見が良さそうな気がします。ジャイアン気質でもあるけど。
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[589]好きじゃない≠嫌い

  • 2011/12/15 00:06
  • カテゴリー:FF





早く大人になりたかった。
そうすれば、一人で生きていけるようになると思ったから。

けれど。








「どりゃー!」
「うりゃー!」




雄叫びの如く響いた声。
スコールはそれに眉根を寄せる暇もなく、背中に覆い被さる重みによって押し倒された。

わははは、と暢気な笑い声が木霊して、スコールは潰されたカエルの如く地面に俯せにされて動けない。
それをあらん限りの腕の力をフル活用させ、上半身を跳ね起こす事で、背に乗った重量物を振り落とす。
それすら楽しげな笑い声が重なるものだから、スコールの案外と低い沸点はあっと言う間に上り詰め、



「あんた達、いい加減にしろ!」
「スコール大明神様のお怒りだー!」
「逃っげろー!」



けらけら笑いながら、右へ左へ散るのは、バッツとジタンのお調子者二人組。

どういう理由か知らないが、彼らは何かにつけてスコールに構いつけてくる。
遊び相手が欲しいのなら、同じように騒げるティーダなり、付き合いの良いフリオニールやクラウドなりいる筈なのに、彼らの標的は決まってスコールだった。
騒がしいのが嫌いなスコールにしてみれば、全く迷惑極まりない。


左右に散った二人のどちらかを追い駆ける────等と言う労力の無駄遣いを、スコールはしなかった。
追えば追うだけ彼らは調子に乗って逃げ回り、捕まえて苦言を呈した所で大した効果はない。
一つ二つ苦情を言って改善するのなら、あるならとっくの昔にこの関係は終わっている筈だ。



(なんなんだ。どうして俺の周りはいつも……)



逃げて行く賑やかな二人を見送る形で立ち尽くし、スコールは胸中で呟いた。
呟いてから、思考が宙を舞う。



(……いつも、)



いつもって、いつの事で、なんの事だろう。
記憶の欠損が激しいこの世界では、度々こうした感覚に見舞われる。


記憶は、自分自身の欠片。
それが不確かなままで、スコールはこの世界で戦い続けている。
それはスコールに限った話ではない。

けれど、そんな仲間達の中で、スコールの記憶の欠損は著しいものがあった。
最初は誰でも(個人差はあるようだが)そうだと言うが、それでも皆、大なり小なり記憶の破片を取り戻していると言う。
スコールも一番最初───それが何時であったかは判然としないのだが───に比べれば、記憶は戻っていると言える。
しかし、身近に誰がいたとか、どんな生活を送っていたとか、元の世界がどんな風景であったのかとか、そう言う事はからきし思い出せないままだった。

それなのに頻繁に思考の中に現れる、“いつも”と言う言葉。
何を示して、何と比べてそう思うのかも判らないのに、当たり前に出てくる、この感覚。



(煩かった。静かな方が好きなのに。いつも俺の回りは騒がしい)



いつも騒がしくて、いつも忙しなくて。
ゆっくり考える時間も与えられないまま、周りの勢いにどんどん飲まれて押し流される。
流されている内に、知らない間に、沢山の荷物が増えて行く。

他人の荷物を持つのは嫌だった。
自分の事で精一杯だったから、自分一人で生きて行こうと決めたから、人の荷物は重いだけのものだったから。


────それなのに、何故だろう。



(いつも騒がしくて、それが鬱陶しいと思ってたのに)




ぽつんと立ちつくし、俯いたスコールを、離れた場所で合流したバッツとジタンが見つけた。
二人は顔を合わせて、踵を返す。

とんと二人同時に地面を蹴って、立ち尽くす大人びた顔の少年に跳び付いた。




「何ぼーっとしてんだぁ、スコール!」
「悩み事ならおにーさんに相談しろよっ」
「……あんたにだけは絶対御免だ」




素っ気ない言葉を返すスコールに、バッツがひでえと笑いながら言った。
バッツが駄目でも、オレには言えよ!と胸を張るジタンに、気が向いたらな、とだけ返す。





早く大人になりたかった。
一人で生きていけるようになりたくて。

けれど、何故だろう。


いつも周りは煩くて、それを決して、嫌いだとは思えないんだ。







仲良し589。
この三人のイメージは、59が8を一方的に振り回してるようで、8が59に精神的に甘えてる感じ。
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