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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

[クラ×レオ&子スコ]なぞなぞわかるかな 1

  • 2013/02/02 01:16
  • カテゴリー:FF



「お兄ちゃん、お兄ちゃん」


くいくい、とズボンの端を引っ張られて、レオンは洗い物の手を止めた。
視線を下に向けてみれば、絵本を腕に抱えて、楽しそうな表情で兄を見上げるスコールがいる。


「あのね、あのね。ガムはガムでも、食べられないガムってなーんだ?」


わくわくとした表情で見上げる弟の瞳には、期待の色が爛々と光っている。
それを見て、レオンはうーん、と考える仕草を見せた後、


「食べられないガムか」
「うん」
「ガム…ガム…ガムテープ、かな?」
「当たり~!」


ぱちぱちと手を鳴らすスコールに、レオンはくすりと笑って、可愛いな、と思う。
最後の洗い物を終わらせて、水気を拭いた手でぽんぽんと柔らかいダークブラウンの髪を撫でる。


「じゃあね、じゃあね。えーっと……船は船でも、動かない船はなーんだ?」
「動かない船か……作っている途中の船とか?」
「はずれ~」
「うーん」


首を捻って考える仕草を考える兄に、スコールはくすくすと楽しそうに笑っている。
いつも色んな事を教えてくれる、沢山の事を知っている兄が、答えを探して悩んでいる様子が珍しくて面白いのだろう。

スコールは今、なぞなぞに嵌っている。
子供向け番組を見ている時に出てきた問題を、見事全て正解した時の喜びが忘れられなくなったらしく、昨日も本屋に連れて行った時、なぞなぞ遊びの絵本を強請った程である。
絵本には1ページに5問のなぞなぞが並べられていて、20ページ程のページ数なので、全部で約100問。
前半は小学生の低学年レベルのなぞなぞだが、後半に行くに連れて難易度が上がり、高学年向きの内容になっている。
スコールは今年で小学1年生になったばかりだが、頭の回転が速く、幼さ故に且つ柔軟で自由な発想が出来るスコールは、既に3年生のレベルのものをクリアしている。

昨日の夜から、今日の今まで、スコールはまたなぞなぞ遊びに耽っていた。
が、一人で解き遊ぶのに飽きたのだろうか。
身近な人にも問題を出してみよう、と思い至り、早速兄の下へやって来たと言う経緯であった。

小さな子供が解けるなぞなぞは、大人のレオンにとって、子供騙し程度の難易度だ。
しかし、だからと言ってさっさと解いてしまっては、問題を出す方が面白くないだろう。
だからレオンは、焦らすようにうんうんと唸って、じっくりと考えて見せてから、うずうずとしている弟を見て、


「ちょっと判らないな。答え、教えてくれないか?」
「答えはねー、湯船!お風呂の事だよ」
「成る程。確かに、湯船は動かないからな」


納得したようにレオンが言えば、「そうそう!」と言ってスコールがはしゃぐ。


「スコールは判ったのか?このなぞなぞの答えがお風呂だって」
「わかった!」
「スコールは頭が良いな」
「えへへ」


くしゃくしゃと兄に頭を撫でられて、スコールは嬉しそうに頬を赤らめた。
買って貰ったなぞなぞの絵本を、宝物のように抱き締める。

甘えん坊の弟を抱き上げて、レオンはリビングに戻った。
リビングではテレビの電源がついていて、ソファの肘掛けから金色の突起が見えている。
兄弟と同居しており、レオンの恋人であるクラウドが、ソファの上に寝転がっているのだ。


「クラウド、行儀が悪いから起きろ……何を不貞腐れているんだ、お前」


背凭れ越しに恋人の顔を覗き込んで、レオンは彼の表情を見て顔を顰めた。

クラウドは普段、滅多に感情を表に出さず、表情を崩す事も少ないので、覇気がないように見える。
しかし何故か、不満や不服と言った感情だけは素直に顔に出て来る事が多かった。
今が正にそれで、クラウドは表情こそ常と大した変化はないものの、不機嫌なオーラがじりじりと滲み出ている。

クラウドは渋々と言う様子で起き上がると、レオンの腕に抱かれている子供をちらりと見遣り、


「俺に問題を出した時は、つまらないって言ったのに…なんでレオンだと楽しそうなんだ…」
「はあ?」


何を言っているんだ、と首を傾げるレオンに、スコールが言った。


「だってクラウド、つまんないんだもん」
「…何がどう詰まらなかったんだ?」
「なぞなぞ、僕が問題読んでるのに、直ぐ答え言っちゃうの。つまんない」


ぷく、と頬を膨らませたスコールの言葉に、ああ成る程、とレオンは納得した。

洗い物をしているレオンの所に行く前に、スコールはリビングで一緒に過ごしていたクラウドにも問題を出していた。
クラウドは快くそれに応じていたのだが、レオン同様、大人である彼に、小学生向きの問題は簡単すぎる。
問題や答えの出し方もパターン化しているものや、文中の単語から駄洒落をもじった答えになっている事が多く、大人は問題を一見(または問題を途中まで読む)しただけで答えを導き出す事も出来る。

だが、テレビ番組の早押しのようなクイズゲームならともかく、小さな子供の遊びに、大人の力を如何なく発揮させると言うのは、如何なものか。
子供は問題を読み、答えるまでの一連の流れ、その一つ一つ全てが楽しみなのだ。
最初は問題途中で正解を導き出す大人に、凄い凄いとはしゃいでくれるが、それが何度も何度も続いてしまうと、次第に飽いてしまう。
難しい問題を出して、相手が悩んでいる所も見てみたいのに、相手がその期待にちっとも応えてくれないとなると、良くも悪くも自分の思考で世界が一杯な子供は、答えてくれない相手に不満を持ってしまうものであった。


「……クラウド。お前が悪い」
「何故だ!?答えが判ったから答えただけだぞ、俺は。クイズはそういうものだろう!」


何が悪いのか、何が原因でスコールの機嫌を損ねたのか、彼は全く判っていないらしい。

レオンは一つ溜息を吐いて、拗ねた顔で抱き着いている弟の頭を撫でてやった。
スコールは兄の手に甘えながら、むーっと剥れた顔のままクラウドを見て、


「クラウドには、もうなぞなぞ出してあげない」
「え。ちょっと待て、スコール」
「つまんないもん」
「待て。リベンジだ。もう1問出してくれ、今度こそ」
「やだっ」


なぞなぞに嵌っているスコールが、「なぞなぞ出してあげない」と言う事は、「構ってあげない」と同じ意味と取って良い。
可愛がっている子供に冷たくされるのは、流石にクラウドも応えるらしく、ちょっと待ってくれとクラウドはスコールを抱き上げているレオンに縋り付いて来る。


「馬鹿、重い!邪魔だ!」
「スコール、もう1問。今度こそお前の期待に応えてみせる」
「やだっ」
「頼むスコール、俺を捨てないでくれ!」
「子供相手に何を寝惚けた事を言っているんだ、お前は!」


ごすっ!とクラウドの脳天にレオンの踵が直撃する。
躊躇のない一撃を喰らい、床の上で屍となった恋人を放置して、レオンは寝室へ向かうのだった。




なぞなぞわかるかな 2



クラウドに悪気はない。でもスコールにはつまんなかった。

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[クラ×レオ&子スコ]なぞなぞわかるかな 2

  • 2013/02/02 01:15
  • カテゴリー:FF



いつもなら眠くなる時間だろうに、今日はまだまだ元気らしい。
ベッドの上で、レオンへのなぞなぞを絵本の中から選ぶスコールの目は、ぱっちりと冴えている。


「料理に使うちょうちょってなーんだ」
「料理に使う……それはきっと、ちょうちょじゃないんだろう?ちょうちょは料理が出来ないからな」
「んー…うふふ」


レオンの指摘に、スコールはにこにこと笑っているばかり。
ヒントや答えを出し渋って見せる様子は、テレビのクイズ番組からの影響だろう。
正解か、不正解か、焦らしてドキドキさせる効果を演出しているつもりなのだ。

レオンは腕を組んで考える仕草をして見せた後、


「料理…ちょうちょ…ちょう、……判った、包丁だ」
「当たりー!」


ぱちぱちとスコールが嬉しそうに拍手する。

じゃあ次はね、とスコールが絵本のページを捲ろうとした時、がちゃり、と寝室のドアが開く音がした。
レオンが顔を上げると、頭を摩りながらクラウドが入ってくる。
そして、ベッドに並んで横になっている兄弟を見ると、さっさと自分もベッドに入り込み、レオンの背中にぴったりと密着する。


「……暑苦しい。離れろ」
「嫌だ。スコール、俺にもなぞなぞ」
「やっ」


ぷいっ、とそっぽを向いてしまうスコールに、レオンは背中の男ががっくりと落ち込むのを感じ取った。
スコールはいつも素直な性格だが、意外と頑固な所もあるので、一度ヘソを曲げてしまうと、中々許してくれない。

「凄いって言ってたから答えてたのに…」と、ぶつぶつと呟くクラウドに、レオンは加減をしないからだと言った。
腰に回された腕が、ぎゅうう、としがみ付いて来るのを感じて、仕様のない奴だと溜息を吐く。


「スコール。クラウドも十分反省してるようだから、そろそろ許してやれ」
「……むぅ……」


頬を膨らませ、不満そうに見つめる蒼灰色を、クラウドが縋るように見詰める。

ガラス玉のような色合いをした碧眼が、スコールは好きだ。
だから、その綺麗な瞳が悲しそうにしているのは、見たくない。
なぞなぞの事だって、クラウドは答えが判ったから答えていただけだし…と考えて、


「うん。もう怒ってない」
「よし、いい子だ。ほらクラウド、お前もちゃんと謝れ」
「悪かった、スコール」


レオンに促されて詫びたクラウドに、スコールは起き上がって、レオンの肩口から顔を覗かせているクラウドに顔を寄せる。
仲直りの印、と頬を当ててすりすりと頬擦りする小さな子供に、レオンは密着した男が至福の絶頂を迎えているのを感じていた。

クラウドがスコールの頭を撫でると、スコールはくすぐったそうに笑う。
それを見て、クラウドは安堵したようにほっと息を吐き、


「スコール。お詫びに俺からなぞなぞを出そう」
「なぞなぞ?何?どんなの?」


破顔して食い付いたスコールに、クラウドはそうだな…としばし考えて、


「男の子と女の子がピッタリくっついてある事をして、さらに終わった後に、女の子が男の子に“大きい”と一言。さて、二人は何をしていたでしょう」
「……う?」
「クラウド!!!」


首を傾げるスコールの傍らで、跳ね起きたレオンの拳が、クラウドの頭頂部をあらん限りの力で殴りつける。
特大のタンコブを作ってベッドに沈むクラウドから、レオンはスコールを庇うように背に隠した。


「お前っ、子供になんて問題出してるんだ!」
「…何言ってるんだ、レオン。これは単なるなぞなぞだぞ?」
「内容が悪いと言ってるんだ!」


頭を摩りながら起き上り、弁明するように言ったクラウドに、レオンは怒鳴る。

スコールは、珍しく声を荒げる兄の姿に、きょとんとした表情を浮かべている。
スコールには、兄がどうしてこんなにも怒っているのか、まるで理由が判らないのだ。
今のなぞなぞに何か悪い所があるのか、思い返してみても、やはり判らなくて首を傾げるばかり。
ついでに、なぞなぞの答えも判らない。


「スコールもきっとした事があるぞ。ちなみに一文字目は“せ”で、三文字目は“く”だ」
「有る訳ないだろう!」
「うー…判んない。答え、何?」
「なんだ、判らないのか」
「判らなくて良い!」
「なんで?お兄ちゃん、答え判ったの?」


レオンの叫びに、スコールはことんと反対側に首を傾げた。
それを見て、レオンはぐっと言葉を詰まらせる。

言えない。
答えも、それを言えない理由も、言える訳がない。
だってスコールはまだ小学生になったばかりで、子供で、何も知らなくて、本当に純真なのだ。
そんな弟に、この問題の答えを教える訳には──────

真っ赤な顔で言葉を失ったレオンに、兄の心中を知らない弟は、不思議そうに首を傾げるばかり。
クラウドはそんなスコールと目を合わせ、


「答えは“背比べ”だ。やった事ないか?」
「ある!……僕、女の子よりちっちゃかった…」
「そうか。じゃあ、俺の問題の出し方が悪かったな」


眉尻を下げて言ったスコールに、クラウドは慰めるようにぽんぽんと頭を撫でてやる。
それから、赤い顔で呆然としているレオンを見て、


「レオンは、答え、なんだと思ってたんだ?」


にやにやと意地の悪い笑みを滲ませて言ったクラウドに、レオンの顔が沸騰したように耳まで赤くなった。
それを見たスコールが、また不思議そうに見つめて来るから、レオンは益々恥ずかしくなる。

なんでもない、と言って二人から目を逸らした兄に、スコールはどうしたんだろう、と首を傾げる。
お兄ちゃんどうしたの、と言っても、兄もクラウドも、何も教えてはくれなかった。
誤魔化すようにクラウドに頭を撫でられて、スコールは不満げに唇を尖らせたが、


「どうだ、俺のなぞなぞ。まだ一杯あるんだが」
「一杯?」
「ああ。やるか?」
「やる!」


正に今、なぞなぞブーム真っ只中のスコールにとって、この誘惑は魅力的だった。
兄もそっぽを向いたままこっちを見てくれそうにないし、なんだか赤い顔をしているから、ひょっとしたら少し気分が悪いのかも知れない。
あんまり構って構ってと言うのも良くないだろうと思って、スコールはクラウドに飛び付いた。

─────その無邪気さが、この夜、長くに渡って兄を苦しめる事になるのだが、幼い子供には判る筈もない話であった。




なぞなぞわかるかな 3



子供の純粋さを見て、自分が汚れているような気がしたレオンさん。
クラウドは確信犯。

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[クラ×レオ&子スコ]なぞなぞわかるかな 3

  • 2013/02/02 01:14
  • カテゴリー:FF



「好きな人と一緒にいると、たってしまうものは?」
「んぅ……?」
「答えは時間だ」
「あーっ、言っちゃダメ!まだ考えてたのに!」
「……すまん」

「毛むくじゃらで、バナナから連想できて、“チ”で始まるものは?」
「クラウド!お前、また…!」
「バナナ……あっ、チンパンジー!お猿さん!」
「正解だ」

「女の子が大人になるまで、どれぐらいの時間がかかる?」
「おとな…?おとなって、何歳からおとな?」
「成人を大人で区切るなら、20歳だな」
「じゃあ…20年?」
「外れ。答えは一月」
「なんでそんなに早いの?」
「答えは一月、ひとつき、一突き……つまり突いたら」
「黙れ!!!」

「黒くて硬くて、先っぽからチョロっと液を出すものなんだ?」
「……?」
「これだ、こう。こうすると出て来る」
「こう?」
「おい、子供に何をやらせてる?!」
「?お兄ちゃん、どうしたの?」
「ちなみに答えは万年筆だ」
「まんねんしつってなに?」
「ボールペンみたいなものだと思えば良いか」
「…知らないもん」
「俺の問題の選び方が悪かった。だから怒るな、頼む。所でレオン、お前はなんで怒ってるんだ?」
「………」


クラウドが出したなぞなぞを幾つか解いた後、スコールはふと、ベッド縁に座って俯いたまま動かない兄を見た。
なぞなぞの答えを考えている時、何度か怒ったように声を荒げる事はあったけれど、答えを聞くとまた黙り込んでしまう。
そんな事が繰り返される度、レオンは顔を真っ赤にしていて、クラウドがくつくつと楽しそうに笑っていた。

じゃあ次の問題は、と考えるクラウドから離れ、スコールはレオンの背中にぴたりとくっつく。
驚いたように兄の背中が跳ねたが、振り返って、其処にいるのがスコールだと気付くと、レオンは小さく笑みを浮かべて見せた。
が、彼の顔はまだ赤い名残を残している。


「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ん…ああ、いや。大丈夫」
「顔、赤いよ。お熱ある?」
「ありがとう。何ともないよ。本当に大丈夫だから」


スコールを抱き上げ、膝の上に乗せて、ぎゅっと抱き締めるレオン。
スコールは全身で感じられる兄の温もりと、大丈夫と言う言葉に安堵して、えへへ、と笑った。
レオンがじろりと隣の男を睨んでいる事には気付かずに。
無論、そんなレオンを見て、クラウドがにやにやと笑っている事など、知る訳もない。


「じゃあ次は、そうだな……Hになる程固くなるものは?って痛いな、なんで殴るんだ」
「露骨過ぎる!」
「そうか?じゃあHじゃなくなると柔らかくなるも────だからなんで殴るんだ」


射殺さんばかりの眼光でクラウドを睨むレオンだが、耳まで赤くなった顔では、迫力も何もあったものではない。
そんなレオンの膝上で、スコールは首を捻って問題の答えを考えている。

クラウドは二連続で叩かれた頭を摩りながら、にやにやと意地の悪い笑みを浮かべて、怒りともう一つ別の理由で赤くなっているレオンに顔を近付ける。


「なんだ。レオンはもう答えが判ったのか?」
「な……あ…違、」


息がかかる程、唇が触れ合う程に近い距離で囁くクラウドに、レオンが身を反らしていると、


「あ、判った!えんぴつ!」


スコールの明るい声が響いて、レオンが固まる。
呆然とした表情でフリーズした兄に気付かず、スコールはクラウドの服の袖を引っ張る。


「ねえ、あってる?正解?」
「正解だ。よく判ったな」
「えんぴつのね、こっちの方。お尻の方に書いてあるの。HとBって。Hの方が硬くてね、黒が薄くなるんだよ」
「そう。固い鉛筆はH、柔らかくて黒が濃いのはBだ。よく知ってたな」
「えへへ。……あれ?お兄ちゃん?」


頭を撫でて褒められ、嬉しそうに目を細めたスコールだったが、自分を抱き締める兄が不自然に固まっている事に気付くと、きょとんとしてレオンを見上げる。
レオンは弟の視線から逃げるように、明後日の方向を向いてしまい、クラウドからも目を逸らす。
どうしたの、と問う弟に、兄は何も言わなかった────言えなかった。




なぞなぞわかるかな 4


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[レオン&子スコ]まってる

  • 2013/01/20 00:07
  • カテゴリー:FF

サラリーマンなレオンさんと子スコ(とちょっとクラウドも)。
[サンタさんへ おねがいします]、[はるのななくさ]と同じ設定です。

長くなったので3つに分割。

まってる 1
まってる 2
まってる 3



サラリーマンって大変だ。
ちっちゃい子供のお留守番も大変だ。

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[レオン&子スコ]まってる 1

  • 2013/01/19 23:51
  • カテゴリー:FF



普段、レオンは殆ど飲みの類に参加しない。
女性社員からは勿論、仲の良い同僚が多い彼は、いつでも引く手数多なのだが、彼はそれらの誘いをいつも丁重に断っている。
理由は、まだ6歳になったばかりの幼い弟が、家で一人、彼の帰りを待っているからだ。

大都市の真ん中で、小さな子供を一人で留守番させていると言うのは、なんとも危ない話である。
昨今は、セキュリティ対策を施されたマンションでも、何が起こるか判らないと言うのが実際の所。
託児所などに預ければ良いのではないか、と言う声もあるだろうが、就学年齢に達した子供を預かってくれる場所は少ない為、家で一人留守番をしなければならない、と言うのが現状なのだとレオンは言った。
ならば致し方がない、と多くの同僚は理解を示しているのだが、


「レオン、今日の二次会、お前も絶対に来いよ!」


と言う者は、必ずいるもので。
それが親しい同僚の、冗談めかした言葉であれば、レオンも笑って「考えておくよ」と返すだけで良いのだが、世の中そんな風に話を簡単に済ませてくれる人ばかりではない。
特に厄介なのが上司で、この人の直接の誘いとなれば、流石にレオンも適当に流す事は出来ない。

今日の仕事を終えた後、レオンを強引に飲みに連れて来たのも、この上司であった。
レオンは傍目には眉尻を下げて笑顔を浮かべていたものの、彼の頭の中が愛する弟一色であった事は、同僚達にとって用意に想像できた。
しかし、どうにも空気を読むと言う術に芳しくない上司は、レオンの心情を知る事なく、常に彼を自分の隣に座らせて、酒を進めていた。


「なんだ、レオン。ちっとも減ってないじゃないか。飲んでないのか?」
「飲んでますよ。これ、三杯目なんです」


座敷席の上座に座り、隣席のレオンに絡んでいる上司は、すっかり出来上がっている。
対してレオンは平静とした表情で、のんびりとビールを飲んでいた。


「三杯目ぇ?本当か?」
「本当です」
「じゃあこれも飲め!ほら!」


どん、とレオンの前に焼酎瓶が置かれる。
ああ始まった、と誰かが呟いたのがレオンの耳に届いた。

上司の絡み酒は、社内では有名だ。
仕事では部下思いの良い人なので、慕う者も多いのだが、酒の席だけは隣になりたくないと皆が口を揃えて言う。
飲みの席での彼の隣は、一種の罰ゲームだと嘯く者もおり、これも強ち外れではなかった。

レオンは焼酎の瓶を持つと、空になっていた上司のグラスを見て、


「私も頂きますが、その前に、どうぞ一杯」
「おお、すまんな。おーっとっと」


こぽこぽと注がれていく透明な聖水。
半ばまで注がれたそれを、上司はぐっと一気に飲み干した。


「ぷはー!美味い!ほら、お前も飲め」
「ありがとうございます」
「────…なんだ、それだけしか飲まないのか?もっと景気良く行け、景気良く!」


上司から注がれた酒を、レオンは一口飲んだだけでテーブルに置いた。
それが不満だった上司は、飲め飲めと然して減ってもいないグラスに、更に酒を注ぐ。

さあ飲め!と言わんばかりに隣から注がれる熱烈な視線に、レオンは困ったように苦笑いを浮かべた。
あまり酒に強い体質ではないレオンを心配するように、無理しなくて良いんだぞ、と誰かが言ったが、かと言って上司の酒は非常に断り辛いものである。
特に相手が酔っ払い、絡み酒を全力で発揮しているとなれば、此処で断れば「俺の酒が飲めんのか!」と言う、酔っ払いにありがちな台詞も飛び出し兼ねず、更に面倒な絡まれ方をされるのも想像に難くない。
レオンは頂きます、と言って、グラスを持ち上げた。

流石に一気に飲み干す事は出来ないので、半分で留めて置く。
それでも、アルコール濃度の高い酒は、レオンに軽い眩暈を覚えさせる。
そんなレオンに気付かず、レオンが自分の目の前で、自分の注いだ酒を飲んだのが余程嬉しかったのか、上司はにこにことご機嫌になっていた。


「なんだ、そこそこ飲めるじゃないか」
「いえ、それ程でもありません。それより、貴方もどうぞ」


レオンはテーブルに置かれていた瓶を取って、上司の前のグラスに注ぐ。
上司が機嫌よくグラスを傾け、底を空けると、またレオンが酒を注いだ。


「美味しそうに飲まれますね」
「ん?そうか?」
「そう見えます。見てると、私も飲みたくなって来ますよ」
「そうかそうか。じゃあ、ほら。お前もどんどん飲め。俺もどんどん飲むからな」
「はい。ああ、摘まみがなくなってますね」


こっちに枝豆がありますよ、と言う声を聞いて、レオンはそれを貰う事にした。
上司の前に枝豆を置いて、焼酎瓶は自分の脇に置いておく。


「そう言えば、お前、飯もあまり食ってないんじゃないか?」
「食べてますよ」
「見てない気がするんだがなぁ…」
「偶然でしょう。チーズ揚げ、美味しかったですよ。どうですか?」
「んじゃ、それも食うかな」


レオンは大皿に乗っているチーズ揚げを小皿に取って、枝豆の隣に置いた。

上司は枝豆を食みながら、レオンに寄り掛かってからからと笑う。


「今日は良い気分だ。仕事も景気の良い話が続いたし、飯も美味いし、酒も美味い。何より、お前がいるからな!」


ばしばしと背中を叩かれて、レオンは飲んでいた酒を噴き出しかける。
寸での所で留めたが、咽返って咳き込むレオンに、上司は「なんだもう酔ったか?」等と笑った。


「レオン。俺はなぁ、お前と飲んでみたかったんだよ。お前以外の奴らとは、皆一度は飲み交わしたって言うのに、お前と来たら、仕事が終わるといつもさっさと帰るだろう。捕まえるのも一苦労だ」
「それは、すみません。早く家に帰らないとと思っているので…」
「ああ、聞いてる聞いてる。歳の離れた弟がいるんだってな。そりゃあ心配だろうな。でもな、今日はそういう事は忘れろ!忘れてたまにはパーッと弾けろ!な!」


それが出来ないから、レオンはいつも直ぐに帰宅しているのだが、アルコールの回った上司は、その辺りの細かい事情は綺麗に抜け落ちているらしい。
レオンは曖昧に笑みを浮かべた後、空になっていた上司のグラスに酒を注いだ。


「焼酎、そろそろなくなりますね」
「なんだ、随分早いな」
「また頼みますか?」
「いや、別の奴を注文しよう。お前も飲むよな。俺と同じもので良いか」
「はい。お任せします」


メニュー表を眺めて、あれにするか、こっちにするかと悩む上司の隣で、レオンはこっそりと嘆息を吐く。
その嘆息の意味を、その場にいる社員の殆どが気付いているのだが、一番気付かなければならないであろう当人は、まだまだレオンを解放する気はないようだ。

レオンが腕に嵌めている時計を見ると、時刻は午後8時を過ぎた所。
仕事を終え、飲みが始まったのは午後7時だったから、まだまだ宴は終わりそうにない。
何処かで抜け出すタイミングがあれば良いんだが、とレオンは寄り掛かったまま離れようとしない上司を一瞥した。




まってる 2



サラリーマンだもの。お付き合いで行かなきゃいけない時もありますよ。

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