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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

[レオン&子スコ]祝福のベル、幸福の夜

  • 2015/12/25 23:20
  • カテゴリー:FF
クリスマスと言う事で、レオンと子スコがサンタクロースなパラレルです。





しんしんと雪が降り積もる小さな町。
住民たちがすっかり寝静まり、庭に繋がれた犬も丸くなって眠った頃。
空から滑るように降りてきた影が、とある家の屋根に辿り着いた。

屋根に降りた影から、小さな影が分離して、ぴょこっぴょこっと家屋の窓へ近付く。
小さな影が何かを振り翳すように右手を揺らすと、りーん、りーん、と小さなベルの音が鳴った。
すると不思議な事に、窓の向こうの鍵が、音も立てずにくるりと周り、ロックを外す。
カラカラと車輪が回る音を鳴らしながら、部屋の窓は開けられた。


「…ん…しょ、…ん…しょ、」


胸の高さにある窓を乗り越えようと、小さな影が奮闘する。
両手を使って体を持ち上げ、窓を乗り越えようとするが、宙に浮いた足をぱたぱたと動かしても、体は前に進まない。
せぇの、と一つ勢いつけて、小さな影は精一杯に身を乗り出して、なんとか窓を乗り越えた。
勢いを過ぎたものだから、くるんと体が丸まって、ころんと部屋の中に転げ落ちる。

影は小さなお尻を摩りながら起き上がると、部屋の中が静まりかえっていることを確かめて、窓の外に置いていた、大きな白い袋に手を伸ばした。
影がそのまますっぽり入れてしまいそうな大きさの袋を、両手に持って、よいしょ、と持ち上げる。
丸々と膨らんだ袋には、果たして何が入っているのか。

影は袋を肩に担いで、ゆっくりと部屋の中を進んだ。
向かう先にはベッドがあり、この家で暮らす小さな子供が眠っている。
すやすやと眠る子供の枕元には大きな靴下が吊るされ、今日この時を待ち侘びていた事が判る。
影はベッドの傍らにしゃがむと、大きな袋の口を開けて、ごそごそと中を探り始めた。


「ん…と……これ、じゃなくって……えっと……」


袋の中には、沢山のプレゼントボックスが入っていた。
それを一つ一つ確かめて、影はようやく目的の箱を見付け、ほっと息を吐く。


「よい…しょっ、と」


プレゼントボックスと、吊るされた靴下の中に入れて、これで成すべき事は終わった。
影はもう一度大きな袋を肩に担いで、そろりそろりと窓へ向かう。


(そーっと…そーっと……)


物音を立てないように、身長に、ゆっくりと。

細心の注意を払いながら、ようやく窓に辿り着くと、影は入って来た時と同じように、んしょ、と窓を乗り越えた。
これまた入って来た時と同じように、ころんと屋根の上に転がって、体についた雪を嫌ってぷるぷると頭を振る。
ぱんぱんと身体を軽く払うと、部屋の中に残して来た大きな袋を、うんしょ、と持ち上げた。
引っ張るように袋を外に運び出し、カラカラと窓を閉め、腰に吊るしていた小さなベルを掲げる。
りーん、りーん、りーん、とベルの音が三回鳴ると、鍵がくるりと回って、窓は再びロックされた。

窓が開かない事を確認して、小さな影は窓を離れる。
てってってっ、と軽い足音を立てて影が駆け寄る先には、影の帰りを待っているものがいた。




真っ白な雪がしんしんと降り注ぐ街の上で、しゃんしゃんと心地良い鈴の音が響く。
音の発信源には、小さな子供と一人の男が、空を飛ぶソリに乗っていた。
男はソリを引くトナカイ達の手綱を握り、子供を膝に乗せている。
子供はミトンをはめた手に紙とペンを持ち、紙に書かれた沢山の名前に、一つ一つチェックを入れてた。
やがてチェックが全ての名前に行き渡ると、子供はぱぁっと破顔して顔を上げる。


「お仕事できたよ、お兄ちゃん!」


そう言った子供は、濃茶色の髪の上に、赤い三角帽子を被っている。
上着も赤で、長袖の端と袖に白いもこもことした綿があり、丸く着膨れしている様子が可愛らしい。
けれどもボトムはと言うと、膝丈もないホットパンツのような短いズボンで、これも赤色に、裾に白い綿と言う仕様で、傷一つない、玉肌の膝小僧が眩しい。
足元は、トナカイの体毛と同じ色をした、ファー付のショートブーツを履いていた。
名前をスコールと言い、この街を担当するサンタクロース・ラグナの息子である。

スコールを膝に乗せ、トナカイを操っているのは、スコールの兄のレオンだった。
レオンも弟と同じように、もこもことした白い綿のある赤い服を着ており、ボトムは弟と違い長ズボンをブーツインにしている。
手元は黒い革の手袋をはめ、弟を空の上から落してしま輪わないように、腰のベルトで二人の体を繋げていた。

レオンは、無事に仕事を終えたとはしゃぐ弟に、よく出来ました、と頭を撫でた。


「もう周り忘れた所はないか?」
「うんっ」
「よし。初めての仕事は無事に完了だな。ご苦労様、スコール」


ご褒美に、ぎゅっと小さな体を抱き締めると、きゃらきゃらと嬉しそうな笑い声が響く。

この街を担当している父、サンタクロース・ラグナと、その息子であるスコールとレオン。
レオンは幼い頃にサンタクロースの試験を受けて合格し、今では父の手伝いをする傍ら、隣町への配達も担当する程、優秀である。
スコールはそんな兄と父に憧れ、毎年のように、二人の手伝いをしたいと言っていた。
今年になってようやく空飛ぶソリに乗る事が許されたスコールは、サンタクロース見習いとして、兄と一緒に初めての仕事に赴いた。
その仕事を無事に終える事が出来たのだから、喜びも一入と言うものだ。

初めての大役を終えた事、兄に褒められた事、そして家に帰れば父もきっと褒めてくれるだろうと、スコールは全てた嬉しくて堪らない。
丸い頬を赤くして、父に褒められる時の事を想像しながら、ふふふ、と幸せそうに笑う。
そんなスコールに、レオンは小さく笑みを漏らし、ソリの後ろに乗せていた袋に手を伸ばした。


「スコール」
「なぁに、お兄ちゃん」
「お仕事を手伝ってくれた良い子のスコールに、クリスマスプレゼントだ」


そう言ってレオンは、袋から取り出したものを、スコールの前に見せてやった。
赤い箱が緑のリボンで飾られ、『Merry Christmas!』とメッセージカードが添えられている、プレゼントボックス。
それを見たスコールから、ふわぁ、と喜色一杯の声が零れた。

期待と喜びに満ちた目が兄を見上げる。
いいの、いいの、と興奮し切った瞳で訊ねるスコールに、レオンは笑顔で頷いた。


「はわっ、はわ……ふわっ」


興奮が冷めない様子で、スコールはリボンを解き、ボックスの蓋を持ち上げた。
中に入っていたのは、スコールが愛して已まないライオンの絵本と、絵本の挿絵とそっくりの、ライオンのぬいぐるみだ。
ぬいぐるみは子供の顔程の大きさで、スコールの姉替わりであり、レオンの妹分であるエルオーネと言う少女が、弟の為にと手作りしたものだった。
クリスマスの雰囲気に合うように、ライオンの首にはリボンと鈴が縫い付けられ、ちりんちりん、と小さな音を鳴らしている。

スコールは箱から絵本とぬいぐるみを取り出して、空に掲げるように持ち上げた。
きらきらと輝く蒼灰色の宝石を見下ろして、レオンはほっと息を吐く。
幼い子供がこんなに喜んでくれるなら、皆で準備をした甲斐があった、と。


「ライオンさん!」
「嬉しいか、スコール」
「うんっ!」


ぎゅうっと絵本とぬいぐるみを抱き締めるスコール。
赤らんだ頬をぬいぐるみに摺り寄せて、スコールはぱたぱたと足を遊ばせた。
全身で喜びを表現する弟に、レオンの胸も温かくなる。

スコールは一頻りぬいぐるみを抱き締め、絵本をぱらぱらと眺めた後、丁寧に箱の中に戻し始めた。


「絵本、読まないのか?」
「おうちに帰ってから、皆と一緒に読むの」
「ぬいぐるみも片付けてしまって」
「だって落としてなくちゃったらイヤだもん」


唇を尖らせて言うスコールに、確かに此処で落としたら大変だ、とレオンは苦笑する。

街を遥か下に見下ろす空の上で落し物なんてしてしまったら、探し出すのは難しい。
ソリやトナカイに乗っている間は、はサンタクロースの特別な力で、寒さや風から守られているが、離れてしまえばそうではない。
落し物は風に流され、何処へ運ばれてしまうか判らないだろう。
折角貰ったプレゼントとそんなお別れをするなんて、スコールは絶対に嫌だった。


「おうちに帰ってね、お仕事ちゃんと出来たよって、お父さんとお姉ちゃんに言うの」
「うん」
「それで、お姉ちゃんが作ってくれた晩ご飯食べて、ケーキ食べて」
「うん」
「それでね、絵本をね、お父さんにね、読んで貰うの」
「うん」
「それでね、それでね。今日は、皆で一緒に寝ようね。クリスマスだもん」


良いよね、とねだるスコールを、レオンは勿論だ、と言って抱き締めた。

向かう先に、温かい光を宿した家を見付けて、レオンはトナカイの手綱を引いた。
トナカイ達は走る速度を落として、高度を下げ、家に向かって近付いて行く。
玄関の前に立っていた二つの人影が、此方に向かって大きく手を振るのを見て、スコールも小さな手を目一杯大きく振って見せた。



しゃん、しゃん、しゃん……と鈴の音が小さくなって、空の彼方へ消えて行く。

ただいま、と元気に帰って来た幼子を、父と姉が抱き締める。
よく頑張りました、と頭を撫でられて、小さなサンタクロース見習いは、嬉しそうに笑った。
その笑顔が、家族に取って何よりのクリスマスプレゼントだと、彼は知らない。





メリークリスコマス!
ソリを操るレオンお兄ちゃんの膝に乗せて貰って、プレゼント配りをする子スコサンタ。うちにも来て欲しいものです←

子スコの服装は2012年のクリスマス絵のイメージ。
小さな子が大きな袋を一所懸命抱えてるのって可愛いですね。
部屋に入ろうと頑張ってる様子を、お兄ちゃんはハラハラしながら見守っていたと思います。
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[サイスコ]あんたがやれって言ったから

  • 2015/12/22 23:18
  • カテゴリー:FF


自分の誕生日は忘れても、サイファーの誕生日だけは忘れた事がない。
と言うよりも、忘れようがなかった。
何せ、当日が近付くと、必ず本人が自分の誕生日が近い事を主張しに来るからだ。
流石に今年は其処まで露骨な事はなかったが、いつの間にかスコールの部屋のカレンダーに、これ見よがしに二重丸が書かれていた所を見るに、暗に「忘れるな」と言われているのは間違いない。

カレンダーに二重丸が記された日から、スコールは彼の誕生祝の為のプレゼントを探していた。
しかし、これと言うものは中々見付からない。
元々、こうした行事事にスコールは疎いし、人との繋がりを避けてきたので、何を渡せば他人が喜ぶのかが判らなかった。
自分ならシルバーアクセサリーや、カードのパックを貰えたら嬉しいが、サイファーはそうではあるまい。
アクセサリーの類は嫌な顔はしないと思うものの、ああした部類は、選ぶ者と受け取る者のセンスが合わないと悲劇を起こす。
第一、落ち着きのないサイファーは、リングでもネックレスでも、ふとした時に落として失くしそうだ。
悩みに悩んで渡した物を、故意ではなくとも失くされるのは少々哀しいものがある。
況してサイファーとスコールの間柄だ、失くしたと知ったらスコールは憎まれ口の一つも出るだろうし、其処から口喧嘩になるのも想像できる。
身に付けるものは無しにして、消費することを前提のものにした方が良い、とスコールは思った。

が、それはそれで悩みが増える。
食べ物なら幾らあっても困らないとは言うが、誕生日プレゼントに相応しい食べ物とは何だろう。
ケーキはセルフィが用意すると言っていたし、売店で売っている物を渡すのは、幾らなんでもやっつけ感が強い気がする。
流石にそれはスコールも気が退けるので、デリングシティやエスタに赴いた時など、彼が喜びそうな食べ物を探してみたのだが、これも難しかった。
彼の趣向は知っているので、幾らかアンテナは立ったものの、これだと言うものが見付からない。

悩みに悩んだ結果、スコールは考える事を放棄した。
プレゼントをする事を止めた訳ではないが、サプライズのように隠れて準備するのを止めたのだ。
一応、当日までには用意して置きたかったので、一週間前に任務から帰って来たサイファーを捕まえ、来週の誕生日に欲しいものはあるかと訊ねた。
サイファーは、「特に欲しいモンはねえが、一つだけあるな」と言って、それを口にした。




サイファーから“欲しいもの”を聞いてから、スコールは悩んでいた。
悩む事を止めた筈なのに、悩んでいた。

サイファーへの誕生日プレゼントを何にするか、と言う点は、本人に訊ねる事で解決した。
しかし、それにより新たな悩みがスコールを襲う事になる。
悩んでいるのは、先ず、それを叶えるか、聞かなかった事にして別のプレゼントを用意するかと言う事。
後者については既にギブアップしていた為、選べるのは前者しかない(一応、後者も考えては見たが、結局は同じ結論に行き着いた)。
次に、どうやってサイファーの願いを叶えるか、と言う事だ。
彼が欲しいと言った物は、店で購入する事が出来ないもので、しかしスコールが一つ努力をすれば叶えられると言うもの。
だが、その努力が、スコールにとって相当のハードルとなる事を、サイファーは判っていた筈だ。
だからこそ、誕生日プレゼントにそれを寄越せ、と言ったのだろう。

結局、スコールが抵抗の壁を越えられないまま、サイファーの誕生日はやって来た。
日付が変わる直前から、二人は寮のサイファーの部屋にいたのだが、スコールはいつにない緊張感で体を強張らせている。
そんなスコールの気配を感じながら、サイファーはいつも通りに夜を過ごしていたのだが、


「お。12時越えたな」
「!」


ベッドヘッドに置いていた目覚まし時計の針が、頂上を過ぎている。
それを見たサイファーの言葉に、雑誌を読んでいたスコールの肩がビクッと跳ねた。

スコールの胸の中で、どくどくと心臓が早鐘を打つ。
まだ決心が固まっていないのに、と雑誌を握る手に力が篭った。
決して目を合わせようとしない恋人から醸し出される緊張感に、其処まで構えるもんじゃねえだろ、とサイファーは苦笑する。

サイファーはスコールの肩を掴むと、自分の下へと引き寄せた。
うわ、とスコールの口から引っ繰り返った声が聞こえて、サイファーはくつくつと笑う。


「おい、スコール。待ちに待った俺様の誕生日だぜ」
「…あんた、もうそんな年じゃないだろ」


自分の誕生日を、指折り数えて待ち遠しがるような年齢は、とっくの昔に過ぎている。
サイファーもその自覚はあったが、それでも今年は待ち遠しかったのだ。
腕の中の恋人が、顔を合わせる度、真っ赤になって睨んで来る位に、自分の誕生日プレゼントを考えていてくれたのだから。

スコールは白い頬を林檎のように紅潮させ、間近から覗き込んでくるサイファーから目を逸らす。
サイファーはそんなスコールの顎を捉えて、色の薄い唇に指を当てる。


「で、してくれねぇの?」
「……」
「簡単な事だろ」
「……あんたにとってはそうでも、俺はそうじゃない」


唇に触れるサイファーの指を振り払って、スコールは碧眼を睨んだ。
サイファーは猫のように尖った恋人の眦を、緩んだ目で見下ろしている。


「良いじゃねえか。いつもやってる事だし」
「……」
「ま、やってるのは俺からであって、お前からは滅多にねえけど」


だから嫌なんだ、とスコールは苦い物を噛むように、顔を顰める。

サイファーとスコールの仲と言うものは、普段、専らサイファーが能動的である。
訓練と称した手合わせを除けば、コールは受動的なタイプであるから、無理もないだろう。
デートに誘うのは勿論、その後のプランも殆どサイファーが決め、スコールはそれについて行く。
スコールも自分の意見がない訳ではないので、寛容できない事は遠慮なく言うが、それ以外はサイファー任せにしている事が多かった。
その方がスコールも悩まなくて済むし、サイファーも自分について来るスコールを見るのは、決して悪い気はしない。

が、これだけは、偶にはスコールの方からして欲しい、と思うのだ。
そしてスコールも、時には自分の方からした方が良いのではないか、と思う事もある。
だから、サイファーから“欲しい物”を告げられた時、馬鹿を言うなと拒否出来なかったのだ。

サイファーはスコールを後ろから抱き、腕の中に閉じ込める。
厚みのある胸板に背中を預け、スコールは、自分の口元をくすぐって遊ぶサイファーの指を摘む。
指の関節の皮膚に爪を立てて、鬱陶しい、と言外に叱るが、サイファーは全く意に介さない。


「……サイファー、止めろ」
「良いじゃねえか」
「鬱陶しいんだ」
「だったらどうすりゃ良いか、判ってんだろ?」


にやにやと笑う男を見上げて、スコールは眉間に皺を寄せる。

仕方ねえな、とサイファーは、傷の奔るスコールの眉間にキスを落とした。
柔らかく触れた感触に、スコールの眉間の皺は更に深くなる。
可愛げのねえ、と胸中で呟くサイファーであったが、それとは裏腹に、サイファーの口元は緩んでいた。

スコールの額に、瞼に、鼻先に、キスの雨が降る。
厳つい見た目をしている癖に、触れ方はとても優しい。
くすぐったさを感じさせる感触に、スコールはむず痒さを感じて、逃げるように顔を背けた。
しかしそれは駄目だと言わんばかりに、サイファーはスコールの両頬を捕えて固定すると、またキスの雨を降らせていく。


「…サイファー」
「ん?」
「……犬みたいだ」


サイファーが嫌う言葉だと判っていながら言ってやれば、案の定、サイファーの眉間に皺が寄る。
てめぇな、と睨むサイファーだが、だって似ているんだとスコールは思った。
サイファーにしてみれば、少しでもスコールの方からやり易い空気に持って行ってるつもりなのだろうが、スコールにはそんなサイファーが、遊びたがってじゃれてくる犬に見えてならない。
この前、アンジェロに同じように顔を舐められたと言ったら、一体どんな顔をするだろう。

犬にするものと思えば、少しは抵抗感も消える。
自分のそう言い聞かせながら、スコールはサイファーの顔へと手を伸ばす。
白い指がするりとサイファーの頬を撫でると、碧眼が驚いたように丸く見開かれた。
スコールはその貌を見ないように目を閉じて、首を逸らし、サイファーの唇に己のそれを押し付ける。

時間にして、それはほんの一瞬だった。
筈なのに、酷く長い時間のように感じられたのは、煩く鳴る鼓動の所為だろうか。



ゆっくりと離れて、目を開けた時に見たのは、酷く赤くなった男の顔。
自分から言って置いてその反応はなんだ、と顔を顰めるスコールの頬も、伝染したように真っ赤に染まっていた。





サイファー誕生日おめでとう!

プレゼントは「お前からキスしてくれ」でした。
でもスコールの事だから、努力はしても無理なんだろうなーと思ってたサイファー。
まさかの展開に思わず赤くなって、なんであんたが照れるんだ、ってスコールも赤くなったようです。
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[ヴァンスコ]非睡眠学習法

  • 2015/12/09 00:56
  • カテゴリー:FF
ヴァン×スコールで現代パロ。





ヴァンは授業中は殆ど寝ている。
隣に座っているスコールが、いっそ清々しくなる程、すやすやと寝ている。
それでいてテストは無難な点数を取っているのだから、スコールは色々と腑に落ちない気分だった。

勉強しなくてもある程度出来る、と言う人間はいるものだ。
何をするにも自然と要領の良い判断が出来ていて、課題を卒なく熟せる。
ヴァンは正にそのタイプで、スコールは逆にてんで要領の悪いタイプだった。
必要なる情報を自然と取捨選択しているヴァンに対し、スコールは大量の情報を一つ一つ理解し、整理する事で理解に至る。
どちらが良いとは言い切れない───何せ、ヴァンは半分は本能的な部分で物事を判断しているので、理詰めの計算となるとショートを起こすのだ。
その為、ヴァンは応用問題や引っ掛け問題と言った類を苦手としており、テストが終わると、必ずスコールの下に来て「教えて」とねだっていた。

ヴァンは決して馬鹿ではない、とスコールは思っている。
得意分野と苦手分野が真っ二つになっているので、テストは問題の作り方によって点にバラつきが出るが、大抵の事はきちんと説明すれば理解する。
だからスコールは、授業中も起きていれば良いのに、と思う事は少なくなかった。
しかし、それを言っても暖簾に腕押しで、授業が始まるとヴァンは寝ている。


(……それで、なんでこう言う点が取れるんだ?)


スコールの前に並べられているのは、ヴァンのテストの答案用紙だ。

ヴァンのテストの答案は、得意分野と苦手分野が点数を折半したようになっている。
一番点数の悪いものでも赤点には届いていないので、成績としては問題ないのだが、スコールにはやはり腑に落ちなかった。
授業中の殆どを寝て過ごし、提出物も忘れ物が多いヴァンが、どうしてこんな点数を維持できるのかと言う事が。


(…赤点なら良いのかって訳じゃないが……)


それはそれで憂慮すべき事となるので、ヴァンのこの成績には文句を言うつもりはない。
寧ろ、この点数を維持できている事は、よくやっていると褒めるべきなのだろう。

───そんなスコールの胸中など知らず、ヴァンは「此処なんだけどさ」と数学のテストを取り出して、設問の一つを指差した。


「この問題って、このやり方じゃなかったっけ?スコールに教えて貰った通りにやったと思うんだけど」
「……此処から解き方が違う」


問題の基礎的な部分は出来ていたヴァンだが、発展させた数式に間違いがあった。
此処までは教えていなかった、と思いつつ、スコールはノートを出して問題を解く為に必要な情報を書き抜いて行く。
ヴァンが間違えた式と照らし合わせながら、スコールは努めて判り易いように問題を解説した。

一つの問題が終わると、ヴァンは次の問題を指差す。
これは、これは、とヴァンが示す問題は、殆どが応用や引っ掻けを使った問題で、彼の苦手としている所だった。
スコール自身も決して得意ではない為、判り易く説明する事に苦労する。
そもそも、スコールは決して口が回る性分ではないので、解説にしろ説明にしろ、自分には不向きな事だと思っている。
だからヴァンにも、訊くのなら教師や他の奴に頼め、と言っているのだが、ヴァンは聞かなかった。
スコールに教えて貰うのが一番判り易い、と言って、彼は必ずスコールに聞いて来るのである。


(なんで俺なんだ……)


そんな事を頭の隅で考えながら、スコールは最後の問題の説明を終えた。


「それで……今回は数学だけか?」
「古文も。いまいち訳判んないんだよなぁ、古文って」


言いながら、ヴァンは答案用紙の山の中から、古文のテストを取り出した。
国語科目はスコールにとっても苦手分野である。
ただでさえ、言葉と言うものに対して、その多様性による伝わり辛さに辟易しているスコールにとって、国語科目は鬼門である。
スコールは判り易く顔を顰めて、持っていたシャーペンを転がした。


「古文と現国は、他の奴に聞いてくれ。俺も苦手なんだ」
「じゃあ一緒に勉強しようぜ」
「判らない奴が二人で勉強したって、意味ないだろ」
「ない事ないって。1足す1は2も3にもなるんだから」
「……意味不明だ」
「ラグナがそう言ってたぞ」
「……あいつの言う事を額面通りに受け取るな」


突然出てきた父の名に、スコールは深々と溜息を吐いた。
ヴァンはそんなスコールを気にする事なく、見付けた古文の答案用紙を広げる。

完全にやる気を失くしているスコールだったが、ヴァンは勉強する気があるようだった。
動かないスコールの代わりに、自分の鞄から古文の教科書とノートを取り出して広げる。
ノートに書かれている内容は、スコールが授業中に板書したものと全く同じだ。
彼は古文の授業も殆ど寝ており、起きていても余り板書をしないので、ノート提出が促される直前になって、スコールからノートを借りるのがお決まりになっている。

勉強を教えて貰う時と同様に、ヴァンはいつもスコールのノートを借りていた。
スコールは出来れば早い内に提出してしまいたいのだが、決まってヴァンが「貸して欲しい」と言うので、いつも二人揃ってギリギリに提出する羽目になっている。
何度か「他の奴のを借りろ」と言った事があるのだが、これもヴァンは嫌だと言った。
スコールのノートは、板書した内容と、教師の話した内容とが、それぞれ綺麗にまとめられている。
一番見易くて判り易いんだと言われると、褒められ慣れていないスコールは、むず痒くなりながらノートを貸してしまうのであった。

スコールは仕方なく、ヴァンの広げたノートを見た。
が、其処に書かれた謎の呪文の数々に、直ぐに見るのを止め、自分のノートを取り出す。


「あんた、もう少し読める字で書けよ……」
「読めるぞ?」
「……」


はあ、とスコールは深々と溜息を吐いた。

ヴァンの字は汚い。
酷い癖字で、特徴を捉えていなければ読めない程で、テスト採点の際に教員が何人泣いたか知れない。
平時でさえそんな有様だと言うのに、提出前に大急ぎで書き移したノートは、尚の事見れたものではなかった。
それでも本人は読めると言うので、ヴァン自身が癖字を改善させる気はなく、これからも教員は泣き続ける事だろう。

苦手な科目に気が重いスコールだったが、そんなスコールの前で、ヴァンはうんうん唸りながら答案用紙を睨んでいる。
それだけ真剣に取り組めるのなら、どうして授業中に眠ってしまえるのか、スコールには不思議で仕方がなかった。


「スコール、此処の問題さぁ……」
「………」
「ん?俺の顔、なんかついてる?」


じっと見詰めるスコールの視線を感じ取って、ヴァンがきょとんとした顔で訊ねた。
スコールはいつものように「別に」と言いかけたが、


「……あんた、どうして授業中に寝ていられるんだ」
「眠くなるから」
「………」


躊躇も遠慮もなく答えたヴァンに、スコールは今日何度目かの溜息を吐いた。
少しは悪びれたらどうだ、と思うのだが、ヴァンはだって仕方ないんだよ、と宣う。


「先生たちの授業って、皆退屈でさ」
(そんなものだろ、授業って)
「面白い話をする先生もいるけど、そう言うのってあんまり勉強には関係ないみたいだし」
(大体が脱線した内容だからな)
「あと、体育の後は眠いし。昼飯の後も眠いし」
(あんたいつでも眠いじゃないか……)


一時間目は朝が早くて眠いと言い、体育の授業の後に眠いと言い、昼食を終えた午後の授業も眠いと言う。
これが日によってバラバラに起こる事なら良いのだが───いや、決して良くはないのだが───、ヴァンは一日中こんな調子で過ごしている事が多い。
此処まで来ると、実は本当に睡魔に捕まっている事は少なく、単に口癖になっているだけではないだろうかとも思えてくる。
眠い眠いと言う割に、存外としぶとく起きている事もあるので、スコールのその考えも強ち間違いではないのだろう。

授業中、条件反射のように睡魔に襲われる者はいる。
隣クラスの友人であるティーダも、数学や化学、物理の授業の時は、決まって眠くなると言う。
黒板に並べられた沢山の数字や、教員がつらつらと並べる意味不明の単語、数式の羅列が、催眠術みたいなんだと言っていた。

ヴァンもそうなのだろうか。
ティーダのように理数系の分野に限らず、授業全般に対して催眠術効果が働くのか。
しかし、彼はティーダと違い、補習授業やテスト前後の自主勉強を嫌がる事は少ない。
面倒とは思っているようだが、熟さなければならない課題から目を反らす事はしなかった。
現に、今スコールの前にいる彼も、居眠り症状を発症させる事もなく、真面目な顔でテスト問題を睨んでいる。


(そう言えば……俺と勉強している時に、寝た事はないような)


気の所為かも知れない。
しかし、スコールが思い出せる限りで、彼と二人で勉強をしている時、ヴァンが寝落ちた事はなかったと思う。

暗号みたいなんだよなぁ、とぼやきながら、単語の意味を一つ一つ書き出しているヴァンに、スコールはふと訊ねてみた。


「……あんた」
「んー?」
「…今は眠くないのか?」
「ん?」


スコールの問いに、ヴァンが顔を上げる。

丸みのある鳶色の瞳が、真っ直ぐにスコールを見た。
邪気の類を全く感じさせることのない正直な瞳に見詰められ、スコールは厭うように視線を外す。
変な事を聞いた、と思いながら、今の自分の発言をなかった事にするべく、転がしてたシャーペンを握った時、


「全然眠くないぞ」
「……そうか」
「スコールと一緒に勉強してるのに寝るなんて、勿体ないからな」


そう言って、ヴァンは再びノートに視線を落とした。

黙々と書き出し作業を続けるヴァンの前で、スコールは呆れる。
自分に教わる時間に寝るのが勿体ないのなら、授業中に寝る事だって勿体なくはないだろうか。
教員とて決して適当に授業をしている訳ではなく、生徒に判り易く伝わるようにと工夫を凝らしたりしているのだから。

─────とは思いながらも、自分が特別視されているような気がするのは、決して悪い気ばかりはなく。


「…あんた、次の授業も寝るなよ」
「んー」


生返事をするヴァンが、これからの午後の授業を眠らないとは思えない。
眠らなかったら、放課後にヴァンお気に入りのコロッケ屋で奢ってやろうか。
眠ってしまったら、次のテストの後も、またこうして二人で答案を囲むのだろう。

悪くはない、と思いながら、スコールは昼休憩終了のチャイムの音を聞いていた。





12月8日(微妙に遅刻…!)と言う事でヴァンスコー!
マイペースなヴァンに振り回されつつ、なんだかんだと付き合ってあげるスコール。
ティスコとはまた違った青春の匂いがする。

ティーダは赤点で補習常連になりそうですが、ヴァンはテストの点数よりも遅刻・居眠り・忘れ物の減点で補習を食らいそうなイメージ。
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[シャンスコ]特別講義延長申込み

  • 2015/11/08 21:37
  • カテゴリー:FF
11月8日なので、シャントット×スコールです。
昨年書いた[特別講義申込み]の続きみたいな感じです。







自分の周囲にたゆたう空気が、重く厚くなって行くのを感じながら、掌に意識を集中させる。
空の手の中に熱が生まれ、灯と言う形を作り出した直後、それは一気に燃え上がった。
振り被った腕を一凪すれば、炎は押しポンプから排出されるかのような勢いで、空気を焼いて閃を描く。
直線を飛んだその先には、ぎこちない動きをするイミテーションがいた。
イミテーションの表面、は何度も燻されたように黒く焦げており、罅割れも起きている。
其処に新たな炎が着地して、ぼうぼうと燃えて表面を焼いたが、それは十秒ほどで鎮火した。

炎を放ったのは、スコールである。
偽物の魔法で創った炎は、やはり、何度やっても、本物の魔法の威力には遠く及ばない。
しかし、一ヶ月前に比べれば、魔力の集約速度は飛躍的に早くなり、延焼時間も長くなった。
近接戦闘を自分の縄張りとし、決して魔法を得手とはしないスコールだが、この変化のお陰で、自身の苦手分野を大分克服する事が出来た。

スコールの魔法修行の監督を務めているのは、シャントットだ。
元の世界でも魔法の研究に携わり、学院で生徒も持っていたと言う経験に違わず、彼女は実に教えるのが上手い。
少々突拍子な事も指示するが、それは全て的を射ており、スコールの魔法レベルを上げるのに効果的なものばかりだった。

今日はシャントット曰く“テストの日”で、スコールはこの一ヶ月で彼女に教わった事、その成果を見せていた。
魔力の集約から発動までの時間ロスの軽減と、威力の底上げと言う課題を、何処までクリアする事が出来たのか。
相対をするイミテーションは下位レベルで、戦う相手としては片手間で終わらせる事が出来るが、魔法のみで戦えと言われると、スコールには些か厳しいものがある。
何度も繰り返し練習、イミテーション相手の実践も熟して来たとは言え、テストを見守るシャントットの目は厳しく、スコールも一瞬とて気が抜けない。

距離を測りながら、ファイアバレット、ブリザドバレット、サンダーバレットを順に放ち、近付いて来れば魔法連弾で牽制する。
イミテーションは動きが鈍い為、当てる事に労は感じなかった。
それよりも、防御用のみと言う条件で握っているガンブレードが、いつもの癖で刃が出ないようにする事の方が大変だった。

サンダーバレットで動きを止めたイミテーションに肉迫し、冷たい腹に掌を当てる。
手の中に集まった力が炎になり、炎弾がゼロ距離で放たれ、イミテーションの身体が吹っ飛んだ。
イミテーションは空中を浮いている間に、身体の構造を保てなくなり、歪な悲鳴を上げて粉々に散る。


「────まあ、合格ラインには足りますわね」


テストを監視していたシャントットが言った。
スコールは滲む汗を拭って、最後の一発で少し焦げた手袋を見下ろす。


「……さっきの一発、少し逆流した」
「言われなくても見えていますわ。真面目な生徒だこと」


評価のマイナス点になるであろう事を、自ら白状するスコールに、シャントットは微かに笑う。

見せて御覧なさい、と言うシャントットに、スコールは焦げた掌を見せる。
焦げているのは手袋の表面だけで、少し燻されたような痕があるのみ。
革に守られた皮膚に影響はなく、何度か握り開きを繰り返しても、痛みを訴える事はなかった。


「これ位なら、マイナス2点かしら」
「……総合点は?」
「68点」
「………」
「ご不満?」


露骨な赤点ではないが、色好いとも言えない微妙な点数に、スコールは眉根を寄せた。


「…一応聞いておきたいんだが、満点は何点になる?」
「200とでも言うと思いまして?其処まで意地の悪い事は言いませんわ。きっちり、100点満点で計算していますわよ」


それを聞いて、スコールは少しだけ安堵した。
辛い点数ではあるが、満点から半分を切った点数だったら、少し落ち込みそうだった。
テストと名のつくものは、スコールにとって、決して軽視は出来ないものだったから。

歩き出したシャントットの後を、スコールはゆっくりとついて行く。
向かうのは、彼女がこの世界で研究所兼住居としている洞窟である。

シャントットは歩を進めながら、後ろを振り返らずに言う。


「貴方の心配の通り、本来なら200点から計算する所ですけれど、貴方は魔法で戦いたい訳ではないのでしょう?」
「ああ」
「貴方の言う“疑似魔法”とやらの仕組みも判っていないし、大甘の判定であるのは確かですわ。けれど、魔法使いではなく、戦士である貴方にとっては、これ位で十分。思っていたよりも魔法の威力が上がらなかったのは残念だったけど」
「……それで68点か」
「ええ」


魔法の発動の時間ロスを減らせたのなら、スコールにとっては十分な収穫だ。
しかし、一ヶ月前ならそれで良いと思えたスコールも、今となっては少し考え方も変わっている。
威力が上がれば、足止めとしても、より良い効果が期待出来る。
スコールにとって相対する敵が“魔女”である事も含め、魔法の威力や扱いは、決して軽んじられるものではなかった。

シャントットの中で、威力の底上げを何処までに想定していたのか、スコールには判らない。
だが、彼女が少しでも納得できるレベルまで叩き上げる事が出来れば、十分に戦闘に活かせる力を身に付けられたと思えただろう。
其処まで行き付けなかった自分に悔しさを覚えつつ、スコールはシャントットの住居へと足を踏み入れた。

シャントットの住居は、研究施設としても備えているからか、色々なもので溢れている。
生活に必要なものは勿論、衣食住に欠かせない水や食料もある。
これらの確保は、魔法を使って創っているものと、モーグリから仕入れて来たものと半々らしい。
“疑似魔法”しか知らないスコールには、到底考えられないような事まで、シャントットは自分の魔法で片付けてしまっているようだった。


「適当にしていなさいな。本はもう一通り読んでしまいましたの?」
「…あんたに薦められたものは読んだ」
「なら、復習するか……もう少し魔法の仕組みを詳しく知りたいなら、三番の本棚の下から三段目かしら。基礎よりも少し深く掘り下げてあるものがありますわ。“疑似魔法”の本もあれば良いのだけど」


中々見付からないものですわね、と呟いて、シャントットは洞窟の奥へ向かう。
その後に続こうとしたスコールだったが、あちらへ、と言うようにシャントットが本棚を指したので、大人しく踵を返す。
スコールは、床に散らばっている本の山を踏まないように気を付けながら、シャントットの示した本棚へ向かった。

洞窟の中にあるものの殆どは、シャントットが集めて来た本と、この世界で得られる魔物の牙や骨、革、毛皮などである。
生活に必要なものと言えば、ベッドとテーブルと椅子が精々で、後は研究資料や機材ばかりだ。
そんな景色も、一ヶ月の間、魔法の修行で彼女の下に通うようになって、すっかり見慣れた光景になっている。

スコールは本棚から適当に本を取り、パラパラとページを捲る。
これらの本の内容が、スコールの扱う疑似魔法の理屈と合うかは判らない。
しかし、知らない知識を得られる事に苦を感じる事はなく、新たな観点・発見を模索するにも、新しい知識は必要不可欠なものとして、スコールは水を得るように吸収して行った。

何冊かの本を流し見した所で、シャントットがキッチンから戻って来る。


「此方にいらっしゃいな。紅茶を淹れましたわ」
「……あんたが淹れたのか?」
「今この場に、私と貴方以外に人がいまして?」


シャントットの返しに、それはそうだが、とスコールは真似を寄せる。

いつもなら、修行の後に紅茶を淹れるのは、スコールの役目だった。
師匠への礼節、修行に付き合って貰っている礼として、両者合意で決まった事だ。

カチャ、と陶器が小さな音を立てる。
スコールが本を棚に戻してテーブルに向かうと、柔らかな甘い匂いが鼻腔をくすぐった。


「さ、どうぞ」
「……いいのか?」
「私の紅茶が飲めないと?」
「…そうは言ってない」
「なら、素直に受け取りなさい。テスト明けの一服ですわ」


薄いオレンジ色の紅茶が入ったティーカップが、スコールの前に置かれる。
スコールは小さく「…いただきます」と言って、カップを口に運んだ。

しつこくはない甘さが、スコールの舌を撫でて、喉へと流れて行く。
随分と昔、何処かで飲んだ事があるような味だったが、スコールがそれを詳しく思い出す事はなかった。
ただ、胸の奥が少し暖かくなったような気がして、知らず口元が綻ぶ。


「……美味いな」
「良い茶葉が手に入りましたの。一人で飲んでも詰まらないから、貴方に分けて差し上げたんですのよ」


感謝しなさい、と言うシャントットに、「……どうも」とスコールは言った。

シャントットとこうして紅茶を飲むのは、修行の後では通例になっていた事だ。
が、飲んでいる紅茶が、自分の淹れたものではなく、シャントットの用意したものだと言う違いの所為か、スコールは少し落ち着かない気分になっていた。
予定にない事に弱い性質もあって、スコールの戸惑いは中々拭えない。
出来るだけそれを表情に出すまいとはするものの、手許のカップを見る度に、スコールはことんと首を傾げていた。

そんなスコールを気にせず、シャントットはカップを傾けていた。
一杯目の紅茶が半分まで減った所で、そうそう、と話を始める。


「貴方のテスト結果ですけれど、マイナス点の内の半分は、威力の底上げに関するものですわ」
「ああ。それは、今後も努力を続けて行くつもりだ」
「宜しい。ですが、あなたの実力で言えば、あれに関するイナス点は10点分。後の10点は私の分ですわ」
「……どう言う意味だ?」


思いも寄らないシャントットの言葉と、その意味を図りかねて、スコールは問い返した。


「貴方が魔法向きの戦士ではないとしても、ポテンシャルがあるのは確か。それを期日までに上手く伸ばせなかった、私の落ち度。それでマイナス10点」


それなら、それを自分のテスト結果に反映させなくても良いじゃないか、とスコールは思った。
68点と聞いて微妙な気持ちになった自分を思い出して、スコールはカップに隠して唇を尖らせる。

しかし、ほんのりと甘い紅茶を口にして、スコールは直ぐに考え直した。
まだ伸びしろの可能性があるのに、下手に満足の行く点数を出せば、努力を止めてしまう事を思えば、シャントットの口にした点数は妥当なのかも知れない。
実際、スコールは自分の努力が足りない所為で、威力の底上げが間に合わなかったと思い、これを払拭するにはより一層の修練が必要だと考えた。

────其処まで考えて、じゃあなんで今それをバラすんだ、とスコールは再度首を傾げる。
黙っていれば、スコールは自分の努力不足を補う為に否やはなかったし、シャントットの落ち度と言うものも判らなかっただろうに。


「私としても、今回のテストの結果には、指導者として納得していませんの。私の見立てでは、貴方はもっと上に行ける筈だったから」
「……あんたは十分、色んな事を教えてくれた。俺にはそれで十分だ」


シャントットは魔法の研究をする施設にいた。
しかし、スコールの世界で扱われている“疑似魔法”については、その存在すら知らなかった。
様々な世界が入り交じるこの髪の闘争の世界であっても、スコールの“疑似魔法”は特異なものであるらしい。
だからシャントットも、“疑似魔法”については初心者も同然だった筈だ。
魔法と言えば自分、と言う自負がありつつも、手探りであった事は想像に難くなく、指導するのも自分の経験の通りとは行かなかったに違いない。

それでも、彼女はあらゆる知識を総動員し、スコールの育成に当たった。
お陰でスコールは、当初の課題であった魔法発動への時間ロスを大幅に縮める事が出来たし、瞬間的に威力を上げるやり方も覚えた。
元の世界で魔法の訓練をしたとして、たった一ヶ月と言う短期間で、同じだけの育成が出来る教師がいるかと言われると、スコールは迷う事なく首を横に振るだろう。

だからスコールは、彼女の指導に満足していた。
しかし、それはあくまで、教わる者が望んでいた結果以上を得られたと思うからだ。


「先程も言いましたけど、私が、納得していないのですわ」


自分のプライドが許せないのだと、シャントットは暗に滲ませていた。
ならば、スコールにこれ以上言える事はない。

もう少し、威力を底上げ出来ていれば、彼女をこうも落胆させる事はなかったのだろうか。
スコールがふとそんな事を頭の隅で考えた時、


「もう一ヶ月、お付き合い頂けませんこと?そうすれば、今までの結果も踏まえて、より良い結果が出せると思いますの」
「……それは俺にとっても有難い。魔法の事は、あんたに教わるのが一番良い」
「あら。殊勝なこと」


シャントットの言葉は、スコールには願ったり叶ったりであった。

性格に多大な難有と言われるシャントットだが、この一ヶ月で判ったが、思いの外彼女は優しい。
無茶振りもあるが、理に適っているものが多く、どうしても方法が合わないのなら、他のやり方も考えてくれる。
感覚重視で、いまいち説明に要領を得ないバッツよりは、座学含め理屈付で説明してくれるシャントットの方が、スコールには判り易かった。


「だから、これからも、付き合ってくれると助かる」
「ええ、宜しいですわよ。貴方は意外と育て甲斐があるし。それに────」


色好い返事を寄越した後、シャントットは何かを言おうとして、止めた。

スコールが目を向けると、シャントットはカップを口に運んで、紅茶を飲んでいる。
何を言おうとしたのか、スコールが気にならないではなかったが、シャントットが答える気配がないのは感じ取れる。
藪を突いてフレアを出す必要はあるまいと、スコールも深く気にせず、自分のカップに口をつけた。




(それに私、案外、気に入っていますの。貴方が淹れた紅茶の味を)






11月8日と言う事で、シャントット×スコール……と言い張る!

相変わらずシャントットが偽物で申し訳ない。
でも、あんまりまともな人がいないFF界の“博士”の中でも、比較的話が出来そうなのはこの人なんじゃないだろうかと言う夢の余り、こんな感じになります。
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[絆]イタズラとお菓子を

  • 2015/10/31 21:35
  • カテゴリー:FF


一度目は、全く知らなかったから、少しばかりがっかりさせてしまった。
二度目は、判っていたから、少しばかり意地悪をしてやった。
三度目ともなると、お互いに判るようになってきたので、大分開き直った形になった。

知らず定着しつつある、この日の為に揃えたお菓子をポケットに入れて、レオンは家路に着く。
いつもなら夜10時を過ぎれば寝る準備を始める弟達だが、今日だけはきっと、ぱっちりと目を覚ましたまま、兄の帰りを待っている筈だ。

レオンのそんな予想に違わず、角を曲がって見付けた家には、リビングの明かりが煌々としている。
ポケットの中の感触を確かめて、レオンは玄関のドアノブを握った。
さて、今年はどう来るか、そんな期待を抱きつつ、ドアを開ける。


「ただいま」
「お兄ちゃん、お帰り!とりっくおあとりーと!」
「お帰り、レオン!トリックオアトリートー!」


帰宅を迎える挨拶もそこそこに、可愛い弟達は早速今日の決まり文句を元気よく告げた。
思った通りとレオンは笑いながら、ポケットに入れていた飴玉や、バイト先の店長から貰った焼き菓子の詰め合わせを差し出す。


「ほら、これだ」
「やったー!」
「お姉ちゃん、お菓子貰ったー!」


万歳して喜ぶ二人に渡していると、キッチンからエルオーネが現れる。
兄を囲んで賑やかな弟達の頭を撫でて、エルオーネは「お帰り」と微笑んだ。
レオンもいつものように「ただいま」と言って、もう一つ、飴玉と焼き菓子の詰め合わせを取り出す。


「エルの分はこれ」
「ありがとう。店長さんに今度お礼言わなくちゃ」
「俺から言ってあるから、気にしなくて良いぞ」


菓子を受け取った後、エルオーネはレオンに座るように促した。
レオンはジャケットをハンガーにかけて、窓辺の食卓テーブルに落ち付く。
スコールとティーダは、ソファに座って早速焼き菓子の袋を開けていた。

二年前、ティーダに因って齎された、ザナルカンドで行われていると言う、ハロウィーンと言う風習は、兄妹弟の間ですっかり定着した。
行事が行われるようになった由来を、レオンはよく知らなかったし、ザナルカンドに住んでいたティーダも余り覚えていない。
それでも、弟達がこの時季に合わせた仮装をした姿は可愛らしかったし、お菓子を貰えると無邪気に喜ぶ姿を見れば、レオンが参加しない訳がない。
お菓子が用意できない大人は、子供達によってイタズラをされるらしいのだが、今の所、レオンにその経験はなかった。
一年目は偶然お菓子を持っていて、二年目はちゃんと準備していた。
勿論、幼い弟達の分だけではなく、妹のものも揃えていたので、彼女からのイタズラも回避している。
レオンとしては、弟達よりも彼女のイタズラの方が怖いのだが、弟達はそんな事は知らず、今年も無邪気にハロウィーンを満喫していた。

一年目と二年目は、それぞれシーツのオバケとカボチャ少年になっていたスコールとティーダだが、今年は黒く尖った帽子を被っている。
エルオーネも同じ帽子を被っており、黒マントをつけて、今年は皆揃って魔法使いに扮したようだ。
その姿をのんびりと眺めていたレオンは、遅い夕飯を持って来てくれたエルオーネに言った。


「今年は、オバケになりきったりはしなかったんだな」


今までのスコールとティーダは、オバケになりきってレオンを驚かせようとしていた。
レオンがハロウィーンと言う行事を知らなかった為、あっさりと言い当ててしまい、弟達は拍子抜けしたようだった。
その件を反省し、二年目のレオンは、判らない振りをして、少し意地の悪い事を言ってやった。
「いないのなら、二人のお菓子は俺が食べてしまおうか」と言ったら、二人は大慌てして、自ら正体を明かした。
素直な弟達が可愛くて、レオンは笑うのを堪えるのに苦労したものだ。

今年も二人がコスプレするのは判っていたから、今年は何をしてくれるだろうかと思っていたのだが、今年の二人は最初から顔を出している。
シーツのオバケや、カボチャ少年のように、怪物に成りきるつもりはないらしい。

ちょっと寂しいな、と思うレオンの言葉に、エルオーネがくすくすと笑う。


「そりゃあ、もうね。二人とも12歳だから」
「…そうか。まあ、そんなものだよな」


お菓子を貰える行事に飛び付かずにはいられないが、何も知らない子供と言う程幼くはない。
子によっては、思春期の入り口でもあり、小さな子供のようにはしゃぐのは難しい。

……ひょっとしたら、昨年、自分がイタズラした所為もあるかも知れない、とレオンは思った。
顔を隠してしまったら、今年も二人がいないものだと思い込んで、自分達のお菓子が減ってしまうかも。
そんな事を考えて、今年は正体を隠す事なく、魔法使いのコスプレだけで兄にお菓子をねだりに来たのかも知れない。

エルオーネが被っていた帽子とマントを脱いで、レオンの前に座る。
レオンから貰った飴を包み紙から取り出して、コロン、と口の中に入れた。


「イチゴかな。美味しい」
「良かった」
「皆同じの味?」
「いや、バラバラだ。スコールはレモンで、ティーダはオレンジ」
「好きなの用意してくれてたんだ」
「一応な。皆一緒なら平等だし、悩む事もないんだが……それじゃ詰まらないし」


どうせ用意するのなら、妹弟が一等喜んでくれるものにしたかった。
そう思ったレオンの宛ては当たったようで、ソファの上では弟達が「好きなやつ!」と頬を膨らませて笑っている。

レオンは夕飯のカボチャのスープをのんびりと食べ終えた。
片付けて来るね、とエルオーネが空になった食器をトレイに乗せてキッチンへ消える。
その頃になっても、スコールとティーダは魔法使いの格好のまま、ソファでじゃれあっていた。
時計を見ると、そろそろ午後10時を迎えようとしており、明日はきっと寝坊するだろう事が伺える。

ソファ前のローテーブルには、ティーダが貰ったお菓子を全て出していた。
ティーダはスティックのチョコ菓子を食べながら、出したお菓子を三つに分けている。
今日食べる物、明日食べる物、明後日食べる物……と計画を立てているようだが、その計画が中々まとまらない。
好きな物を先に食べるか、後に食べるか、其処からうんうん唸るティーダを、スコールは「一個ずつにすればいいのに」と言いたげな表情で見つめている。

少しの間、のんびりと弟達を眺めていたレオンだが、ふと悪戯心が沸いて、席を立った。
ゆっくりと弟達に近付いて行くと、気配に気付いたスコールが顔を上げ、ぱぁっと破顔する。


「お兄ちゃん」
「お菓子、美味しかったか?」
「うん!」


レオンの言葉に、スコールとティーダは揃って頷いた。
良かった、とレオンがスコールの頭を撫でると、スコールは日向の猫のように気持ち良さそうに目を細める。

そんな二人に、レオンはあの言葉を言った。


「スコール、ティーダ。トリック・オア・トリート?」
「えっ」
「へっ?」


まさか兄から────いや、きっと自分達がその言葉を向けられるとすら、彼等は思っていなかったのかも知れない。
周りが見えるようになり、何かあれば兄姉の力になりたいと思っていても、楽しい行事は別だ。
あれがしたい、これがしたいと思っても、その準備をするのは(勿論彼等も手伝うが)兄や姉で、幼い二人は楽しむのが仕事のようなものだった。

思いも寄らぬ兄の言葉に、スコールとティーダはきょとんと目を丸くし、顔を見合わせる。
ずり、と二人の頭からとんがり帽子がずれ落ちて、ソファの上に転がった。
揃って顔を上げた二人の目に飛び込んで来たのは、優しい笑みを浮かべた兄の顔だった。


「トリック・オア・トリート?」
「えっ。あっ。あっ」
「え、え、ちょ、ちょっと待って」


レオンがもう一度同じ台詞を言うと、ようやく理解が追い付いたらしく、二人は慌ててポケットやフードを探り始めた。
自分が何も持っていないと気付くと、ソファの上できょろきょろしたり、クッションの下を探ったり。
隠している訳ではないので、勿論其処に食べられる物などないのだが、二人は一所懸命になって、兄に渡せるお菓子を探した。

結局、何も見付けられなかった二人が行き付いたのは、ついさっき、兄から貰ったお菓子の袋。
レオンがアルバイトをしている喫茶店の店長が、ハロウィンの行事を聞いて持たせてくれたものだ。
二人が今持っているお菓子と言ったら、それしかない。


「ん、ん…」
「えーっと……こ、これ…」
「それは二人のお菓子だろう?」
「あう」
「そ、そーだけど、えーと、えーと」


おずおずとお菓子袋を差し出す二人に、レオンが受け取れない、と暗に言えば、二人は気まずそうに目を反らす。

このお菓子は、店長が弟達にと作ってくれたもので、レオンもそのつもりで持って帰って来た。
これをレオンに渡すのは何かが違う、と言うのは、スコールとティーダも感じている。
しかし、今からお菓子を用意しようにも、空いている店など無いだろう。

どうしよう、どうしよう、とすっかり困った顔になったスコールと、うんうん唸って渡せるものを探すティーダ。
其処へ、トレイにケーキを乗せたエルオーネがやって来た。


「二人とも、どうしたの?ケーキ、食べるよ?」


エルオーネの言葉を聞いて、悩んでいた二人が顔を上げる。

ローテーブルに、四人分のケーキが並べられた。
スライスされたロールケーキの上に、マロンクリームと、魔女やコウモリの絵が描かれた小さなクッキーでデコレーションされている。
エルオーネが今日に合せて、バラム駅前のケーキ屋で買って来たものだ。

自分達の前に置かれたケーキを見て、そうだ、と二人はレオンに言った。


「お姉ちゃん。僕のケーキ、お兄ちゃんにあげる」
「オレも。オレのケーキ、レオンにあげる!」


弟達の言葉に、エルオーネは目を丸くした。
スコールもティーダも甘い物が好きだから、そんな事を言い出すとは思ってもいなかった。
その上、二人がとても真剣な顔をしているから、尚の事エルオーネには不思議でならない。

くつくつと笑う漏れる聞こえて、エルオーネがレオンを見ると、彼は口元を押さえて笑っていた。


「レオン、二人に何か言った?」
「…ちょっとな。良いよ、スコール、ティーダ。気にしなくて良いよ」
「でも」
「お菓子あげなかったら、イタズラするんだろ?」


心なしか不安げに言うティーダを見て、エルオーネは「……成程」と納得した。
理解すると同時に、兄の悪戯心も理解して、


「スコール、ティーダ。私も、トリック・オア・トリート?」
「えっ、お姉ちゃんも?」
「え、えーと……け、ケーキ分けっこでいい?」


便乗してやれば、予想した通り、スコールとティーダは困った顔になって言った。
どうしよう……と顔を見合わせ、ヒソヒソと話し合う弟達に、レオンとエルオーネは口を押えて笑う。

スコールとティーダは、迷った末に、ケーキを二人に一つずつ渡すと言う結論に至ったらしい。
楽しみにしていたであろうケーキの皿を、おずおずと兄と姉の前に持って行く。
丸い蒼と青が、遠くなったケーキを見つめ、うるうると潤んでいたのを見て、限界だな、と兄姉は察する。


「良いよ、スコール、ティーダ。本当に」
「…でも……」
「ケーキ、皆で食べよ?イタズラもしないから」
「…ほんと?」
「ああ。ケーキは皆で食べた方が美味しいしな」
「その代わり、来年は何か用意してくれると嬉しいかな」


ちゃっかり来年の約束をするエルオーネに、レオンは苦笑する。
しかし、その方が弟達は安心したようで、


「来年、来年ね!」
「絶対準備する!」
「楽しみにしてるね」
「うん!」
「今年の分も準備するね!」
「お兄ちゃんのも!」


イタズラ回避が嬉しいのか、来年の約束が嬉しいのか。
恐らくは両方だろうと思いつつ、レオンとエルオーネは、スコールとティーダのケーキを返す。
戻って来たハロウィン仕様のロールケーキに、二人もホッとした様子で、フォークを手に取った。

四人揃ってケーキにフォークを入れて、口に運ぶ。
おいしい、と笑う弟達の姿に、レオンとエルオーネは頬を綻ばせた。





予想外の展開でびっくりしたちびっ子達。
悪戯かお菓子か、と言う前に、知らない内にイタズラされてた二人でした。

今年は三人揃ってシンプルに、とんがり帽子に黒いマントローブで、魔法使いスタイル。
来年はお兄ちゃんにも何かコスプレさせたいですね。
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