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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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カテゴリー「FF」の検索結果は以下のとおりです。

頑張れ私。頑張れ my PC。

  • 2012/07/07 20:52
  • カテゴリー:FF

毎度お久しぶりの日記でございます、すみませんorz
更新も最近ペースが遅くて申し訳ない。書き溜めたまま忘れてるものがポコポコとあわわ(;´Д`) 後から読み返して結局没にしたりとかしてる……

七夕と言う事で、七夕SS書きたいなーと思ったんですが、時間がなくて龍龍しか書けなかったです。FFと最遊記はまた明日……と思ったんですが、明日ってFFクラスコの日じゃないか。数字に絡められるキャラクターで記念日をやると、後で首絞めるって最遊記の時に学習した筈なんですけどね……でも先月ティナスコやっちゃったしなぁ……


最近、パソコンが熱暴走でバシバシ落ちます。絵作業中とかほんとやめて!小説は最近Office Wardで書くから、ある程度は自動バックアップが確保しててくれるんだけど、こっちもどうなるか判ったもんじゃない。
人工風に弱いので、あまり空調を使わない(使っても除湿か26℃キープ)のですが、パソコン使ってるともうちょっと下げた方が良いのかとか思ったり。外気の温度も気掛かりですが、パソコンの熱処理速度が遅いのも心配。ノートパソコンですから、どうしても熱放出の能率が悪くなるのは仕方がないのですが、卓上ファンでも買った方が良いのかなぁと思ったり。でもあれでかいんだよな……あれだけで机の上占領するから、他の作業が出来なくなる。熱放出シートも買ってみたんですが、いまいち効果が見られず(´・ω・`)
本当、どうにかならないものか。これから夏本番だってのに、この状態キツいぞ。9月のFFオンリーのあれこれ書かなきゃいけないのにこの調子って……!

頼む!頑張ってくれパソコン!君が死んだら私は何も出来なくなる!!(割とマジで)

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[絆]岬に吹く風

  • 2012/06/17 23:39
  • カテゴリー:FF
父の日……だったのですが、あんまり関係なくなった(;´Д`)
レオン17歳、エルオーネ13歳。



バラムの岬に、小さな花畑が一つ、ある。
ぞれはずっと昔から其処にあるのだけれど、知っている人はごくごく僅かであった。

小さな花畑一つを見る為に、わざわざバラムから歩いて来るには少々遠く、かと言って車を出すような距離かと言われると、それ程でもない。
少し運動しようか、と思って散歩がてら遠出する分には丁度良い────かも知れないが、ただ散歩をするだけなら、バラムの街の中で十分だ。
途中で魔物に遭うかも知れない危険性を思うと、散歩には不向きである。
それがバグやケダチクと言った、凶暴性や危険度で言えば最弱ランクであるとは言え、魔物は魔物だし、あれらは肉食であるから、警戒するに越した事はない。
……こうした理由から、バラムの岬にわざわざ赴く者が少ない為、小さな花畑の存在も、ごく限られた人の中でのみ知られる事になったのだ。

エルオーネと二人、この数年ですっかり通い慣れた道を歩く。
実際の所、道らしい道はなかったのだが、二人の足取りは迷いなく、真っ直ぐと進んでいる。


「ジェクトさんがね。お土産持って行くなら、お酒にしろって言ってたの」
「それは…悪くはないだろうが、あの人に酒はちょっとな」


エルオーネの言葉に、レオンが苦笑して言えば、そうだよね、と彼女も笑う。


「弱かったんだよね、凄く」
「ああ」
「私もちょっと覚えてる」


くすくすと笑う少年と少女の声が、風に流されて、空に溶ける。
バラムの島の空は遠くまで晴れ渡り、抜けるような青色が広がっていた。

今日は日曜日なので、ガーデンの授業はない。
こんな時、必ず兄と姉の後ろをついて周る弟は、今日は豪快な男の下で、彼の息子と一緒に面倒を見て貰っている。
その所為か、なんとなく片手がスカスカとしているような気がするが、それも今だけの話だ。

岬の先端へと進む緩やかな坂道を上り切れば、其処には小さな黄色の花畑があった。
それは直ぐに終わってしまうような、本当に小さな花畑なのだが、レオンとエルオーネはこの花畑が好きだった。
幼い日、生まれ故郷で毎日のように世話をしていた、母の花畑とよく似ているから。


「一輪だけ、」
「……ああ」


レオンが頷くと、エルオーネは花畑の傍で膝を折り、先並んだ花々を見詰めた。
その中から一輪、綺麗に花弁を開かせた一輪を手に取り、ポケットに入れていたソーイングセットのハサミを取り出して、ちょきん、と茎を切る。
栄養を断たれた花は、きっと幾分もしない内に萎れてしまうだろうが、手折ってしまうよりは保つだろう。
そして枯れた花は、やがて虫達の栄養になり、自然に帰って命を巡り続ける。

エルオーネは花を両手で優しく包むように持つと、レオンを振り返った。
栗色の瞳が柔らかな光と、少しの寂しさを抱いているのを見詰めながら、レオンが歩き出す。

二人が向かう岬の先端には、小さな小さな、墓がある。
其処にはレオンとスコールの母であり、エルオーネにとって第二の母であるレインが眠っている。

彼女が逝去したのは、今から9年前の夏─────…スコールが生まれて間もない頃の事だ。
レオンもエルオーネも、二人の身柄を引き取ってくれたクレイマー夫妻も、そして当時、レオン達と同じように孤児院で暮らしていた子供達も、彼女の死にとても悲しんでいた。
レオンとエルオーネと、クレイマー夫妻だけでひっそりと葬式を済ませると、彼女の遺骨は、この岬へと埋められた。
此処なら子供達のいるバラムの街の全てが見える、バラムガーデンも見える、彼女が好きだった花もある。
だからレオンは、母の墓を、この岬にして欲しいとクレイマー夫妻に頼んだのだ。

小さな墓には、母の名前が印字で刻まれている。
その名前の直ぐ下に、手彫りで刻まれた文字があった。


「……やっぱり、二輪の方が良かったかな」
「そうか?」
「だって、二人一緒の方がおじさんは喜びそうだもん」
「でも、母さんが怒るかも知れないぞ」
「ふふ…それもそうだね。じゃあ、これ」


はい、とまるで其処にいる人に話しかけるように、エルオーネは花を差し出した。
ふわりと柔らかな風が吹いて、エルオーネの頬を撫でる。
ただそれだけの事なのだけれど、レオンとエルオーネは、その風がとても優しいものに感じられた。

レオンは、墓の傍らに添えてある、空のビンを手に取った。
持って来ていた水筒の蓋を開けて、軽く水洗いすると、新しい水をなみなみと注ぐ。
エルオーネが花を其処に活けて、レオンはビンを元の位置に戻した。


「今日のお花は、おじさんの分だよ」
「出来るだけ、直ぐに枯らさないようにしてくれ」


レオンの言葉に、エルオーネがくすくすと笑う。


「大丈夫だよ、おじさんなら」
「だと良いんだが。サボテンに水をやり過ぎて枯らせていた人だからな」
「そんな事してたの?」


益々笑いが止まらなくなって、エルオーネは腹を抱えてその場にしゃがみこんでしまった。
丁度、箸が転がるだけで可笑しい年頃である。
笑いのツボにはまってしまったエルオーネに、レオンも伝染したようにくつくつと笑い出した。

そのままいつまでも笑っていられそうな二人だったが、岬の向こうから強い海風が吹いて、二人の頬を叩く。
先の優しい風とは違う強さに、二人は思わず目を閉じて、─────風が止んだ後、目を合わせて眉尻を下げた。


「早く帰りなさいって?」
「みたいだな」


此処でいつまでも笑っていたら、二人の帰りを待っている弟達を待ち惚けさせてしまう。
いつも一緒にいる筈の兄と姉がいない事に、弟はきっとそわそわとしているだろうし、父の帰りにこっそりと喜んでいた預かり子も、そろそろおやつの時間!と腹を空かせている頃だ。

二人はもう一度、小さな墓に向き合った。
刻まれた名を、其処に眠る大切な人の顔は、記憶の中でとても鮮やかに残っている。


「────いつか、スコールも連れて来てあげなくちゃね」


其処に眠る人達の顔を、小さな弟は知らない。
母の顔は写真が一枚残されているけれど、恐らく、それが“母”だと言う実感が湧かないのだろう。
リビングの窓辺に飾られた写真立を見ては、ことんと首を傾げて、不思議そうな顔で眺めている事がままあった。
写真すら残されていない父の事など以ての外で、最近ようやく、ティーダとジェクトを見て“父”がどんなものであるのか意識し始めている位のものだ。

この墓に眠っているのは、母だけだ。
父は戦争に行ったまま、帰って来なかった。
それでも、こうして二人の名が並んで刻まれているのを見ると、“二人”は今も一緒にいるのだと思える。
例えそれが、単なる自分達への慰めであるとしても、やはり、父と母には二人で一緒にいて欲しい。
二人一緒に、今も自分達を、まだ幼い弟を、見守ってくれているのだと。

──────ふわり、風が吹く。
それは、この岬にいる時にだけ吹く、優しくて温かい風。


「帰ろう、エル」
「うん」


岬に背を向ければ、その背を押すようにまた優しい風が吹いて、二人の足下の花を揺らす。



この風は、きっとバラムの街まで届くだろう。
二人が愛した、子供達の世界まで。





いつか二人揃ってお墓参りさせようと思ってて、折角なので父の日に。
他に母の日、二人の誕生日、レインの命日に行ってます。
嵐の日の翌日は、レオンがガーデン帰りに見に行ったり、時間の空いた休みの日には掃除(草むしりとか)してます。
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[ティナスコ]柔らかい檻

  • 2012/06/08 21:02
  • カテゴリー:FF
どう見てもティナ&スコだけど、ティナ×スコだと言い張ってみる。





青空が広がり、爽やかな風さえも吹き抜けて行く次元城は、此処を根城とする無の魔導師さえいなければ、小休止には丁度良い場所である。
スコール、ティナ、ティーダ、フリオニールの四名は、空間の歪みに飛ばされた拍子に辿り着いた此処で、先のイミテーションの大群を相手にした末に疲労を癒す事に決めた。
しかし、じっとしている事が苦手なティーダは、早速フリオニールにじゃれつき、二人で手合せと言う名の軽い運動を行っている。
休憩しているのに体を動かしては、本末転倒なのではないかとスコールは思うのだが、二人はそんな事はお構いなしで、360°広がる空の中に点在する塔を飛び回りながら、楽しげに剣を交えている。
そんな訳で、スコールとティナの二人は、取り残される形で仲間二名がじゃれつく様子を眺めていたのだが、


「………」
「………」


じぃ、と見下ろしてくる瞳に、スコールは酷く居た堪れない、落ち着かない気分だった。

元より、人の視線というものは苦手な類であったから、それを真正面から受け止める等、スコールにとっては至難の業と言える。
向けられる視線の意味が、好奇であれ嫌悪であれ、悪い意味を持たないものであれ、スコールには大差のない事だ。
“人の視線”そのものが、他者と距離を詰める事を苦手とするスコールにとって、出来るだけ向けられたくないものだったのだ。

しかし、目の前の少女はスコールのそんな心中は知らない。
知ればきっと、直ぐに「ごめんなさい」と謝って目を逸らすのだろうが、それはそれで、此方が悪者になったような気分がしてくる。
それを思うと、スコールは見詰める視線に対し、何を言えば良いのか判らない。
出来るだけ早く、ティナが自分を観察する事に対し、気が済む事を願っているのだが─────かれこれ20分ほど、ティナはこんな調子である。


(なんなんだ……)


何を言う訳でもない、ただただ、見下ろしてくる、藤色の瞳。

見下ろしてくる。
……そう、“見下ろして”いるのである。
身長で言えば、スコールより遥かに小柄である筈の、ティナが、スコールを。

スコールは、頭の後ろでもぞ、と動くものがある事に気付いていた。
それは基本的にはじっとしているのだが、時折、我慢しきれなかったかのように、ほんの少しだけ身動ぎする。
辛いなら止めれば良いのに、とスコールは思っているのだが、見下ろす少女は────時折耐えるように額に汗を滲ませながらも────スコールの頭を自身の膝に乗せて、じっとスコールの顔を観察しているのである。

柔らかい匂いと、感触と、柔らかい藤色の光と。
それらが自分に触れている事が、向けられている事が落ち着かなくて、スコールはどうして良いのか判らない。


(……近い……)


じっと見つめる視線が、常のように、遠くから向けられているものであれば、気付かない振りをしている事も出来た。
けれど、今はあまりにも近い距離に、淡い紫を帯びた瞳が、じっとスコールの顔を映し出している。
と言うか、なんで膝枕なんてされているのだろうか。
疲労からほんの一分二分、意識を飛ばしてしまったと思って、目を覚ましてみたら、この状況。

スコールは、それを見返す事も出来ず、しかし露骨に顔を反らすのも良くない気がして、心持ち瞼を伏せた中途半端な視界の中で、ひたすら早く少女の気が済んでくれる事を願っていた。

しかし、ティナは相変わらずじぃっとスコールを見下ろしていて、


「……痛い?」


呟いた声を、スコールは一瞬、聞き逃しかけていた。
それが自分に向けて落ちて来た言葉だと認識するのが遅れたからだ。

スコールが瞼を持ち上げて目を向けると、やはり、近過ぎる位置に少女の顔があった。


「……!」
「痛い?」
「……は?」


息を飲んでいると、もう一度、ティナが呟いた。
思わず、間の抜けた声が漏れる。

“痛い?”
……痛い?
何が?どれが?なんの事だ?

しばらくの間、スコールはぐるぐると、少女の言葉を脳内で反芻させていた。
そのまま数秒、たっぷりと固まっていると、ティナの細い指がスコールの額に触れる。
其処は、他の皮膚に比べて微かに薄い部分があって、少女の白い指は、其処に柔らかく触れていた。


「いたい?」


スコールの、丹精な面立ちに大きく刻まれた、傷痕。
何処か泣き出しそうな表情で見下ろす少女の、言わんとしている事を、スコールはようやく察した。


「……いいや」
「本当?」


じ、と見詰めて問うティナに、スコールは目を伏せる事で肯定を示す。
ティナはそれをしっかりと理解してくれたようで、ほ、と緩んだ吐息を漏らした後、


「じゃあ……痛かった?」


傷が、出来たばかりの時。
この傷が、痕となるまでの間。

かかる前髪を指先に絡めて退かせるティナの指を感じながら、スコールは少しの間沈黙してから、


「…覚えてないな」


思い出せないその理由が、召喚による弊害だと言う記憶の欠如の所為なのか、単に些末な事で覚えていないのか、記憶に残らない程に幼い頃の事であったのか、スコールには判然としない。
けれど、それ程遠い出来事ではなかった、ような気もする─────何も根拠はないけれど。

痛かった、のだろうか。
痛くない、と言う事はなかったと思うのだが、スコールはその辺りの事もよく判らなかった。
その辺りの事を考えようとすると、傷がじんとした────痛みではないのだけれど、むず痒くなるような────感覚がして、スコールはその度に思考する事を放棄するのだ。

目を伏せるスコールに、ティナの手が落ちて来て、頬を包む。


「痛かったね」
「……覚えてないって言っただろ」
「うん」


でも、多分、痛かっただろうなって。
そう言うティナに、「…多分、な」とスコールは曖昧にしか返せない。


「それより、あんた……」
「なぁに?」
「…いつまで、このまま……」


相手が相手だ、下手に跳ね起きて退かせる訳にも行かないので、彼女自身に退いて貰うしかない。
額の傷が見たかっただけなら、もう十分だろう。
撫でる手や、柔らかい匂いも落ち着かなくて、そろそろ解放して欲しい、とスコールは思う。

けれど、ティナはスコールを見下ろしたまま、ふんわりと笑って、


「だめ」


優しい笑顔なのに、逆らえない気がするのは、何故だろう。
けれども、それは決して嫌なものではなくて、


「駄目って、あんた……」
「いいでしょう?もうちょっとだけ」
「………」


ふわ、と明るい色の髪が落ちて来て、スコールの頬を滑る。
ごめんね、と言ってティナがそれを掬い上げた時、淡い花の匂いがした。

見下ろす藤色は、何処までも柔らかくて、何処までも優しくて、………・何かに似ているような気がして、スコールは小さく息を吐いて目を閉じた。


(……もう、勝手にしてくれ)


胸中でそんな事を呟いて、せめてティナの気が済むまで、二人の仲間が戻って来ない事を願った。




ふわふわとした温かさの中で、何か柔らかいものが額に触れたような気がした。






ティナスコは私の癒し(*´∀`*)
ティナママ大好きです。弟なスコール大好きです。
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太陽を見る(ティスコ)

  • 2012/05/21 23:28
  • カテゴリー:FF
現代パロで、幼馴染兼恋人なティスコ。ティスコと言い張る。
日食ネタです。





テレビニュースで何度も流れていて、それを目にして耳にしていても、やはり興味がないと、その情報は頭から抜け落ちて行くものである。
増して、“それ”を見る事が出来るのは、スコールが大の苦手な早朝であると言う。
いつも通りの時間、学校に間に合う時間に起きるのも大変だと言うのに、それより早く目を覚ませなんて、無理難題も良い所だ。

けれど、幼馴染兼恋人であるティーダは、どうしても一緒に見たいのだと言って聞かない。

毎朝、早朝ランニングをしている彼にとって、早起きは苦ではないのだろう。
だから、スコールがどれだけ早起きが苦手か、その為にどれだけの苦労をしなければならないか、彼には判らないのだ。


100年に一度だの、200年に一度だのと言われても、スコールは興味がない。
それも、その現象が見られるのは、一時間二時間程度のものだと言う。
その一時の為だけに、多大な労を要して早起きしろだなんて言われても、スコールは到底気が進まなかった。

─────でも、



『100年に一度しか出来ない思い出っスよ。一緒の思い出にしたいじゃん!』



……きらきらとした青の瞳に見つめられて、そんな事を言われて、スコールがそれ以上拒否できる訳もなく。
流される形で「判った」と返事をしてしまって、当日に至る。


が、約束はしたものの、その日だけ調子良く早起き出来た、なんて事はなく、スコールはその日の朝もいつも通りに眠り続けていた。
昨夜は早めに眠り、携帯電話のアラームも、常よりも一時間以上早くセットしたが、そんなものは関係ない。
鳴り出したアラームは、寝惚けたまま手探りで停止させ、布団の奥に潜り込んで尚も睡眠を貪り続けている。

そんな彼を強引に現実世界へと引っ張ったのは、ランニング帰りの恋人の声だった。



「スコール!おっはよーっス!」



窓の向こうから響く声に、スコールの整った眉が潜められる。

むぅ、と唸って布団の中に潜り込むスコールだったが、呼ぶ声は二度三度と繰り返された。
それでも無視を決め込んでいると、呼ぶ声が止み、代わりにドタドタと階段を駆け上がる音。



「スコール、おはよー!」
「…………うるさ……」



部屋のドアを開けて響き渡る、元気の良過ぎる声。
低血圧のスコールには、毎度頭痛の種であった。

入って来たのは、近所に住んでいる幼馴染のティーダで、現在は恋人関係となっている。
この関係は両方の親公認で、特にティーダの父親のジェクトは、度々息子をけしかける形で二人の関係の発展を願っているらしい。
スコールの父親の方は、なんとも複雑な気持ち(曰く「息子を嫁に送る気持ち」らしい)のようだが、基本的には賛成してくれた。
お陰で、幼馴染だった頃の距離のまま、新たに“恋人”になって、日々を共に過ごしている。

だから早朝からのティーダの襲撃にも、咎める声がないのだ。
同居している父親はまだ寝ているだろうし、義姉も慣れたもので、「ティーダ君、朝ご飯いるー?」なんて声が階下から聞こえて来たりする。


ティーダは義姉に「食べるっスー!」と元気に返した後、スコールが被っている布団を無理やりはぎ取った。



「ティーダ、寒い……」
「起きれば気にならないっスよ。ほら、早く起きた起きた!」
「うぅ……」



無視してもう一度布団に包まろうにも、シーツはティーダに没収されている。
寝転んだままでいれば、間違いなくティーダの連呼攻撃と揺さぶり攻撃に遭うだろう。
寝起きの頭に耳元で賑やかにされるのも、脳を揺さぶられるのも、勘弁して欲しい。

仕方なくスコールが起き上がると、ティーダはスコールの手を引いてベッドから立たせた。
ティーダは、ふらふらとした足取りのスコールを、窓辺へと連れて行く。



「はい、これ」
「……ん…?」



ティーダがジャージのポケットから取出し、差し出した物を受け取る。
見ると、板紙に黒い遮光テープが貼られた、小学校の理科の授業で使った太陽グラスだった。



「お前、まだこんなもの持ってたのか?小学生の頃のだろ」
「ん?いや、これ買ったんスよ」
「買った?…どうせ今日しか使わないのに、わざわざ?」



そんな事をしてまで日食が見たかったのか、と呆れたように眉を潜めるスコールに、まあいいじゃん、とティーダが笑って、窓のカーテンを開ける。

空は雲一つない晴天に恵まれているのだが、心持ち、薄暗いように見える。
朝と言うよりも、夕方の明るさ────と言うのが一番近いだろうか。


ティーダは窓を開けると、太陽グラスを翳して早速太陽を見上げようとする。



「ちょっと待て、ティーダ。いきなり見るな」
「大丈夫っス、これ使ってるし」
「それでも駄目だ。使い方はちゃんと習っただろう」
「覚えてないっスよ……もう、いいからスコールも見ろって。今丁度、輪っかになって見える所だからさ!」



言って、ティーダはスコールの手にあった太陽グラスを取り、スコールの眼の前に掲げる。
そんな事をされて、見ろ、と言われても、無理な話だ。

スコールは無言で太陽グラスを取り上げ、自分で目元に宛がった。
十分に暗闇の視界を鳴らしてから、空を見る。
すると、真っ暗でしかなった視界の中に、ぽっかりと光の輪が浮き上がって見えた。



「な、見える?」



隣の声に、スコールは小さく頷く。
へへ、と楽しそうに笑うのが聞こえた。

グラス越しに見える光の輪。
金環日食、と呼び名わされるその現象は、人生の中でそう簡単にお目にかかれるものではないらしい。
だから、見れると言う事そのものが、とても貴重な体験────なのだろうけれど。


太陽グラスをかけたまま、スコールは隣を見た。
其処に幼馴染の顔はなく、視界は真っ黒に塗りつぶされて閉ざされている。



「スコール?」



名前を呼ぶ恋人の顔も、其処には映らない。

グラスを外すと、不思議そうに覗き込んでくる青とぶつかった。
ん?と首を傾げるティーダに、スコールはひらりと太陽グラスを翳して見せ、



「駄目だな。見えない」
「え、マジっスか?でもさっき見えるって」
「見えなかった。……まあ、これが見えなくても、別に問題はないんだが」
「ちょっと貸して」



差し出された手に、スコールは自分の太陽グラスを置いた。
ティーダがそれを翳して太陽を見る。



「……見えてるっスよ?」
「そっちはな」
「?」



どういう意味、と問うてくる青に、スコールは答えなかった。

耳が熱いのは、きっと、絶対、気の所為だ。




そんなもの、最初からいらないんだ。

だってそんなものがなくたって、お前の顔は見えるから。







日食なので、太陽のティーダと。
ティスコだって言い張るよ、これでも。ティスコだよ!

特別な思い出を共有したくて、色々やったり連れて行ったりするティーダと、お前がいればそれでいい、なスコール。私のティスコのイメージは、大体そんな感じです。多分。
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[絆]いつかの未来に泳ぐ空

  • 2012/05/06 22:43
  • カテゴリー:FF


孤児院の頃に使っていたものが残っていたのは、幸いだった。

物置で眠るそれを見付けて、レオンは真っ先にクレイマー夫妻に連絡を取った。
良かったら譲ってほしいと言ったら、二人はいつもと同じように「ええ、どうぞ」とにこやかな返事。
その後、レオンは埃を被っていたそれを手洗濯して綺麗にし、来たる日まできちんと収納して保存した。

そして、5月5日─────レオンの家の傍には、空の大海を泳ぐ大きな魚達の姿があった。



「すごーい!おっきい!」
「でっかーい!」



庭の空を泳ぐ魚を見付けて、スコールとティーダが目を輝かせる。
元気なティーダは勿論、滅多に大きな声を出さないスコールも、今日ばかりは空に響かんばかりの大声を上げていた。

レオン達の家の横には、十メートル程の高さのポールが建てられており、それを中心に魚が空を泳いでいる。
魚は体のあちこちに継ぎ接ぎの痕のようなものがあったが、そんなものは、魚の大きさに夢中になっている弟達には些細な事だ。
大きい、凄い、格好良い!と無邪気にはしゃぐ弟達の姿に、レオンの口元も綻んだ。

ぱたぱたとティーダが駆け寄ってきて、レオンの手を引っ張る。
見下ろせば、きらきらと輝く青がレオンを見上げていて、



「レオン、これ何?でっかい魚!」
「鯉のぼりって言うんだ。ザナルカンドでは見なかったか?」



問い返してみると、ティーダはこっくり頷いて、また魚の下へ駆けて行った。
其処にはスコールがいて、ぽかんと口を開けて空を見上げている。

キィ、と家のドアが開く音がして、朝食の準備をしていたエルオーネが顔を出す。



「レオン、スコール、ティーダ。朝ご飯、食べないの?」
「ああ、直ぐに行く……と、言いたいが、まだ落ち着きそうにないな」



言ってレオンが弟達を見れば、倣ってエルオーネも同じ方向を見た。

二人の小さな弟は、空の魚を指差して、まだはしゃいでいる。
いつもなら目覚めて直ぐに腹を空かせるティーダも、今日はそれ所ではないらしい。

そんな二人に小さく笑い、エルオーネも空を見上げる。



「まだ残ってたんだね、これ」
「物置の奥の方にあったんだ。多分、処分し忘れだったんだと思うが、丁度良かった」
「うん。スコールもティーダも楽しそう」



空を見上げていた二人が、ぱっと身を翻して、二人の下に駆け寄って来る。
エルオーネがしゃがんで目線を合わせると、スコールが彼女に抱き着いた。
ティーダもレオンの腰に突進し、レオンは金色の髪をくしゃくしゃと撫でる。

エルオーネに抱き着いたスコールが、くいくいと彼女の服袖を引っ張った。



「ね、ね、お姉ちゃん。これ凄いね」
「うん?」
「これ!」



これ、とスコールが指差したのは、空を泳ぐ魚達。
いつも大人しいスコールの興奮した様子に、エルオーネはくすくすと笑った。



「うん、凄いね」
「ね!一緒なの、凄いね」
「……一緒?」



予想していなかったスコールの言葉に、レオンが反芻して首を傾げる。
エルオーネも首を傾げるが、スコールはにこにこと嬉しそうに笑っているばかりだ。
そんな弟に代わって、ティーダがレオンの手を引き、空を泳ぐ魚達を指差した。



「あれ、一番おっきいの、レオン!」
「俺?」
「で、二番目の赤いの、エル姉ちゃん!」
「私?」



レオンとエルオーネが空を見上げれば、悠然と泳ぐ大きな真鯉。
その下には、赤い緋鯉が身を翻して空を昇り、またその下には、それぞれ黒と赤の小さな鯉が二匹。

そんでね、とスコールとティーダが声を揃えて、続けた。



「ちっちゃいのが、」
「オレとスコール!」



─────見付けた鯉のぼりのセットが、真鯉と緋鯉、小さな鯉二匹だけではなかった。

この鯉のぼりは、きっとクレイマー夫妻の手作りであったのだろう。
レオンが物置で鯉のぼりを見付けた時には、きっと孤児院にいた子供達の人数分であったのだろう、他にも小さな鯉が何匹かいたのだが、今現在空で泳いでいる子鯉以外は、汚れや破損が酷く、縫い直すのも難しかった為に諦めざるを得なかった。
だから残った鯉のぼりが、真鯉と緋鯉、二匹の子鯉となったのは、全くの偶然の事。

けれども、その偶然が、弟達のこんなに楽しそうな笑顔を見せてくれたのなら、……レオンは不意の喜びに零れる笑みを隠せない。
傍らのエルオーネも、くすくすと楽しそうに笑って、スコールの頭を撫でている。



「────さあ、スコール、ティーダ。朝ご飯にしよう」
「お腹いっぱい食べて、あんな風に大きくならなきゃなね」




空を昇る鯉のように、潮風の中を泳ぐ彼らのように。

弟達が何処までも泳いでいける未来を、願う。






弟達の為ならなんでもやるお兄ちゃん。裁縫だってお手の物。
鯉のぼり見てはしゃいでる子供達って可愛い。

最近は大きな鯉のぼりが空を泳ぐ事も減ってしまいましたが、見かけるとやっぱり「おおっ」って思います。
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