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軍の先輩達1(part2 546-550 part3 944,946,947)

輪姦、若ハム、過去

——暴力が、苦痛が、怖いわけではなかった。
下らない嫌がらせや脅迫など痛痒にも感じない。ただ、今グラハムが奴らのされるがまま従っている理由はひとつ。
——明日は、グラハムにとってはじめての、実機による実戦形式の演習が行われる。
シミュレーターによる長い操縦訓練過程を経て、前線に配備されているのと同一のリアルドに、
ようやく実際に乗ることができる。その日を、同期生の誰もと同じく、否、誰よりも強く、
グラハムは待ち焦がれていた。
上級生たちに囲まれ、数の力で抵抗を封じられ、逆らうなら指をへし折ってやると脅されたとき、
そんな程度のことでは屈しないと思った。
卑怯な連中に決して屈服などするものかと、最後の最後まで死に物狂いで逆らってやると、
グラハムの内側の強烈な誇りが叫んだ。そのとき、ふと。

——大きな怪我をしていると、明日の搭乗を外される、と気づいてしまった。
訓練兵の部隊に回されるリアルドの数は十分ではない。訓練成績の上位者しか、
明日の演習には参加できないのだ。骨折などしていれば、別の者が繰り上がるだろう。

痛みなど恐ろしくない。ただ、リアルドに乗りたかった。どんな代償を払ってでも。
そのためになら何だって耐えられると思った。



続き▽

| 名無しの男(達)::2:軍の先輩達 | 2008,02,01, Friday 12:21 AM

刹那1(part2 571)

目標をクチュクチュする

ベッドのカーテンが静かに揺れた。
月影に佇む影に、グラハムははっと身を起こす。
「そこにいるのは…誰だ!」
見覚えのある顔だった。
「アザディスタンの少年、どうして…」
少年の表情は読めない。だが一言、なぜこの世界は歪んでいるのか、とつぶやいた。
「…神は平等だ。人だって分かり合える。だが、どうしようもなく世界は歪んでしまうんだ。
だから、私達は、互いのことを…」

足音がひた、と近づいてきた。
「そうだな、俺たちは、互いのことをよく知る必要がある」
そう言って少年は、何も着ていないグラハムを荒々しく抱いた。

| マイスターズ::2:刹那1 | 2008,02,01, Friday 02:33 PM

医師(カウンセラー)1(part2 603)

「ではそこの椅子に座って楽にしたまえ」
「はい」

カウンセリングを受けに来た美しい青年は素直に腰掛けた。

「で、今日はどういった相談かね」
「は…その…実は私の我慢弱さがどうにかならないものかと」
「我慢、弱い?具体的にはどういったことだね」
「それは…」

言い辛そうに口ごもり俯いてしまった青年の名前はカルテによると
グラハム・エーカー上級大尉。
若くして上級大尉ともなると色々気苦労も耐えないのだろう。
医者はそんな彼に緊張を解くように優しく微笑みかけながらコーヒーを手渡す。

熱いコーヒーを二口ほど飲んだ後、その重い口を開いた。

「あの…普段はまったく平気なんですが、その、せ、性的なことがあると…
色々と我慢がきかなくて」
「ふむ」
「どうしたらいいものか」

医者はゆっくりとグラハムの後ろに立ち
その手を肩に乗せると小さく震えているのが伝わってきた。

「力を抜きたまえエーカーくん。まずはどういった行為に対し
君が我慢弱いのか医者の私には知る義務がある」

| 名無しの男(達)::3:医師(カウンセラー) | 2008,02,02, Saturday 03:29 PM

ダリル2(part2 655,657,658,660)

追悼

予期せぬ死ではなかった。軍に属している限り、誰かが死ぬのは夜が来ることと同じくらい当たり前のことだ。
でも、感情を理屈で割り切れないときがある。
「仕方なかった」
その一言をダリルは言葉にすることが出来ないでいた。
彼はきっと首を振るからだ。自分のせいだ、と。

窓から空を眺める彼は、ハワードは立派だったと一言呟き、そのままだ。
その後ろ姿は、戦場のときと比べると酷く小さく、あまりにも頼りない。
今にも消えてなくなってしまいそうで、気付けば、ダリルは後ろから強く抱き締めていた。

「隊長、今だけでも、忘れましょう。泣いたって、俺は見なかったことにしますから」

続き▽

| オーバーフラッグス::4:ダリル2 | 2008,02,02, Saturday 11:52 PM

ダリル、ハワード1(part2 727-731)

3P、3P、追悼

ブリーフィングルームに、しばしの沈黙が満ちた。

いつも自信たっぷりな態度で、周囲の人間を牽引してきたこの上官が、
素直な弱音を吐いたことにハワードは内心動揺していた。
そんな姿を見たくないという勝手な想いがある一方で、
実力が飛び抜けているがゆえに、孤独であり、上昇志向ばかり強いと誤解されがちである彼が、
実際には情が深い人間でもあるのだと実感させられてもいた。

軍人らしからぬ端正な顔を俯け、グラハムは目を伏せ、じっと何かを噛みしめている。
まだこの部隊がオーバーフラッグスという名前さえ無かった頃から苦楽を共にしてきた自分たちには、
そんな姿を見せてしまうくらいに心を許してくれているのだろう。
ならば、その信頼に応えたいともハワードは思う。彼の苦しみを癒すために、自分たちには何ができるのか。
そう考えたとき、勝手に体が動いていた。
「隊長。——もう、いいでしょう。それよりも少し、休んで下さい」
言って、ハワードはグラハムの隣に立ち、その肩に腕を回す。
上官に対して無礼だとは思ったが、衝動を止められなかった。
「待機中、我々は交代で仮眠をとりましたが、貴方はずっとお休みになっていないでしょう。
もう、いったいどれくらい寝ていないんです」
プライドの高い彼のことで、振り払われるかもしれないと内心ひやひやしていたが、
その気力も無いのか、ただグラハムはされるがままになっている。
「しかし、……対ガンダム特別対策の第一種警戒態勢が解かれていない以上、
 オーバーフラッグスの隊長たる私が現場を離れるわけにはいかない」
毅然と呟く彼の表情にはしかし、さすがに疲労の色が濃い。
それでも、生真面目さと自責の念のあまり、眠れないのだろう。
ふと目が合うと、ダリルもまた反対側からグラハムの腰に手を回した。
「とにかく、部屋に戻りましょう。スクランブルがかかればすぐ呼び出されるのは、何処に居ても同じです」
ダリルがやんわりと説くと、ようやくグラハムは頷く。それでも自分からは歩き出そうとしないグラハムを、
ふたりで促しつつ、部屋へと連れていった。



続き▽

| オーバーフラッグス::5:ダリル、ハワード | 2008,02,04, Monday 09:50 PM

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